減反政策 なぜ やめ ない米不足と農水省とJA農協

減反政策が「廃止」と言われながらも米不足や価格高騰の中で実質的な生産抑制が続く背景を、価格維持と補助金、農水省とJA農協の利害から読み解きますが、あなたはどこに本当のボトルネックがあると思いますか?

減反政策 なぜ やめ ない理由

減反政策が続く3つの背景
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米不足でも続く生産調整

需要減少を前提にした生産調整の仕組みが続いており、少しの不作や需要増で一気に米不足と価格高騰が起きやすい構造になっている。

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補助金と高米価への依存

減反に協力することで得られる補助金と高い米価が、兼業農家やJA農協の収益構造と結びつき、政策転換の抵抗要因になっている。

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農水省・政治家・JAの政治力学

農水省と与党農林族、JA農協の三者が高米価・減反路線で利害を共有してきた歴史があり、「減反廃止」はタブー視されてきた。

減反政策と米不足・価格高騰のからくり


米の減反政策は、もともと戦後の過剰生産と価格暴落を防ぐために、国が水田面積を抑える仕組みとして1970年前後に本格導入されました。 その後も消費量減少に合わせて生産量を絞る方針が続き、「需要が毎年10万トン減る」という前提で作付けを制限してきたため、少しの不作や需要増でも米不足と価格急騰が起こりやすい需給構造になっています。
近年の「コメ不足」報道では、高温障害で精米歩留まりが落ちたことや、インバウンド増加、小麦高騰によるコメ回帰などが原因として挙げられますが、これらを合計しても需要全体の数%にすぎず、本質的には減反で余裕のない生産水準に抑えてきたことが根っこにあると専門家は指摘しています。

  • 米の需要は「非弾力的」で、価格が多少変わっても消費量は大きく変わらないため、生産量が少し減るだけで価格は大きく上昇しやすい。
  • 逆に豊作になると「豊作貧乏」が起き、価格下落で農家所得が大きく落ちるため、行政は過剰生産リスクを極端に嫌う構造がある。
  • 冷夏で問題になった平成の「コメ騒動」も、潜在的には1400万トン作れるところを減反で1000万トンまで絞っていたため、不作で一気に供給不足になったとされる。
  • 現在も水田の約4割が減反対象とされ、生産量をおよそ650万トン程度に抑える運用が続いているとの分析があり、供給余力の小ささが慢性的なリスクになっている。

米不足なのに「なぜ増産しないのか」という疑問に対して、農水省は「需給は逼迫していない」と説明しつつ、備蓄米の放出など価格を押し下げる措置には慎重で、高米価の維持を優先していると報じられています。 つまり、表向きは需給管理と食料安定を掲げながら、実際には米価維持が強く意識されているため、「不足気味くらいがちょうどよい」というバイアスがかかっているのが、減反がなかなかやめられないからくりの一つです。


参考)「コメを作るな」価格高止まりでも減反を求める 農水省の「罪」…

減反政策と農家・JA農協・農水省の利害関係

減反政策が続く最大の理由の一つは、「誰が得をしているか」という利害関係にあります。 減反に協力した農家には補助金が支払われ、高い米価が維持されることで、コストの高い小規模・兼業農家でも経営を続けられる仕組みになってきました。
JA農協は、高米価によって多数の兼業農家が離農せず農地を握り続け、その農業所得に加えてサラリーマン収入や農地売却益がJAバンクに預けられることで、100兆円規模の巨大金融機関へと成長したと分析されています。

主体 減反政策で得たもの 減反廃止で失う懸念
兼業農家 高米価と減反補助金で、効率が低くても水田を維持できる安定感。 米価下落で採算が合わず、離農や農地売却を迫られる可能性。
JA農協 組合員農家の数と預金量の維持、高米価に連動した販売手数料収入。 兼業農家の離脱で預金・手数料・政治力が低下し、組織基盤が弱まる。
農水省・与党農林族 農家・JAへの政策的影響力や票・組織力を背景にした政治基盤。 価格支持から直接支払いへの転換で、既存の補助金配分スキームが見直されるリスク。

このように、減反を続けることで最も恩恵を受けてきたのは、零細兼業農家とJA農協、そしてその支持を受ける政治家・官僚であり、納税者や消費者の利益とは必ずしも一致していないという指摘があります。 欧米ではすでに高価格による保護から「直接支払い」方式に転換し、生産を抑えずに農家所得を補う制度へ移行したのに対し、日本では価格支持と減反に固執してきたのは、こうした利害構造が背景にあると解説されています。


参考)時代遅れな「減反政策」の代償

減反政策の歴史と「廃止」のまやかし

減反政策は1960年代末から試験的に始まり、1971年に本格実施されて以降、約50年にわたり日本のコメ政策の柱として継続してきました。 当初は食管制度下で増えすぎたコメの政府買い入れを減らし財政負担を抑えることが目的でしたが、1990年代以降は民間流通が主となる中で、米価維持の手段として生産調整が続けられるようになりました。
2018年度から「減反政策は廃止された」と政府が説明したものの、実態としては国から都道府県を通じて行っていた生産数量目標の「通知」をやめただけで、転作交付金など生産抑制に紐づいた補助金は拡充され、民間・JA主導で同様の調整が続いていると複数の研究者が指摘しています。 そのため、専門家の中には「廃止どころか、看板だけ掛け替えられた別の減反」と評する向きもあり、最近の米不足や価格高騰を受けて「コメの生産調整見直しをタブーなく議論する」といった発言がようやく政府内から出てきた段階です。


参考)【コメ高騰】小泉大臣「もう減反をやめるんだ」どうなるコメ政策…

  • 参議院調査資料などでも、米の生産調整は1970年代以降、段階的な制度変更を重ねながらも一貫して「過剰在庫と価格下落防止」を目的に続いてきたと整理されている。
  • メディア各社やシンクタンクは、「2018年で減反は終わった」というイメージと、現場では依然として生産調整に参加しないと補助が受け取りにくいという実態とのギャップを問題視している。
  • 最近のコメ高騰局面で、政府・与党の一部から「コメ政策の誤り」や「歴史的な政策転換」という表現が出ており、長年のタブーだった減反見直しがようやく政治日程に載りつつある。

こうした経緯を踏まえると、「減反政策はもう終わったのだからなぜやめないのか』という問い自体がおかしい」という反論は、現場の仕組みや補助金の設計を十分に見ていない表層的な理解だと分かります。 名目上の「廃止」と、実質的な生産調整・高米価維持が続いている現実を分けて考えることが、米不足と減反の関係を議論するうえで欠かせません。


参考)減反政策とは 国がコメの生産抑制 - 日本経済新聞

減反政策が品種改良・単収・食料安全保障に与えた意外な影響

あまり知られていないポイントとして、長期にわたる減反が「単収向上のインセンティブ」を弱め、日本のコメ生産性の伸びを世界水準から大きく遅らせたという指摘があります。 水田面積の4割を意図的に遊ばせながら高米価を維持する政策の下では、単位面積あたりの収量を上げる品種改良や栽培技術の開発が、行政や研究機関にとって「タブー」に近い存在になりやすかったとされています。
実際、減反導入期には日本と同程度だったカリフォルニア米の単収が、現在では日本の約1.6倍に達し、かつて日本の半分ほどだった中国にも追い抜かれたというデータが紹介されています。 もし日本の水田全体でカリフォルニア並みの単収を達成できれば、長期的には1700万トン以上の生産も可能と試算されており、その一部を輸出に回せば、国内の需給変動があっても輸出量の調整で価格と自給率を安定させられる「攻めの食料安全保障」が実現し得ると論じられています。


参考)減反政策 - Wikipedia

  • 平時には輸出によって余剰分をさばき、危機時には輸出に回していた分を国内供給に振り向けるという「輸出を兼ねた備蓄」の考え方は、財政負担の少ない安全保障策として注目されている。
  • 減反と高米価の組み合わせは、国際価格との競争力を失わせ、日本米の輸出拡大を遅らせた要因の一つとされる一方、最近はカリフォルニア米との価格差が縮まり、日本米の方が安くなるケースも出てきている。
  • 気候変動や地政学リスクで世界の穀物供給が不安定化する中、自国の潜在的な生産力をあえて抑え続ける減反は、長期的な食料安全保障の観点から見直すべきとの声が強まっている。

このように、減反政策は単に「余ったコメを減らす仕組み」ではなく、日本の稲作技術の方向性や、世界市場でのポジション、さらには危機対応力にまで長期的な影響を与えてきました。 米不足のニュースだけを見ると短期の需給に目が行きがちですが、「なぜやめないのか」を考えるうえでは、こうした単収や輸出ポテンシャルへの影響も押さえておく価値があります。


参考)http://smk2001.com/img/jijyou/20231113-01.pdf

減反政策を本当にやめるための現実的なシナリオ

検索上位では、減反政策の問題点やJA・農水省の利害が多く語られる一方で、「では具体的にどうやめるのか」という実務的な設計までは踏み込んでいないケースも少なくありません。 欧米の事例や国内議論を踏まえると、減反を本当にやめるためには、高米価と生産抑制に依存した現行スキームから「主業農家への直接支払い+輸出・高付加価値化」に軸足を移す段階的なシナリオが現実的だと考えられます。

  • 価格支持から所得支持へ:米価を国際水準に近づけつつ、規模拡大や専業志向の高い主業農家に対しては、欧米型の直接支払いで所得を下支えすることで、生産量を絞らずに経営安定を図る。
  • 水田の多面的活用:食用米だけでなく、飼料米・加工用米・輸出用ブランド米など用途別に戦略を分け、水田をフル稼働させながら需要サイドの開拓も同時に進める。
  • JAのビジネスモデル転換:高米価と兼業農家の預金に依存したモデルから、輸出や高付加価値品目、スマート農業支援など「稼ぐ農業」を支える収益源にシフトするよう、制度面・ガバナンス面の改革を進める。
  • 地域水田の維持策の再設計:農地保全や水管理など公共的機能については、減反補助ではなく「多面的機能支払い」など別枠で支えることで、生産調整と地域保全を切り離す。

こうした方向性は、すでに一部の政策文書や有識者提言でも示唆されており、「減反をやめる=農家を見捨てる」ではなく、「減反に頼らず農家を支える」仕組みへの転換こそが日本農業の再生につながると論じられています。 米不足と価格高騰をきっかけに、減反政策を「やめない理由」を洗い出すだけでなく、「どうやめて次の稲作モデルを作るのか」という議論に踏み込めるかどうかが、これからの大きな分かれ道になるでしょう。


参考)コメの生産調整見直しも「タブーなく」 関係閣僚会議で議論 石…

減反政策の歴史的経緯と制度の中身を整理するうえで、日本の公的資料やシンクタンクの解説は非常に参考になります。


RIETI「令和のコメ騒動、根本的な原因を問う」:米不足と減反政策、JA・農水省の利害構造を詳しく解説しているコラムです。
参考)RIETI - 令和のコメ騒動、根本的な原因を問う




日本のコメ問題-5つの転換点と迫りくる最大の危機 (中公新書 2701)