硫安(硫酸アンモニウム)は、窒素20〜21%を含む代表的な速効性の窒素肥料で、硫黄(S)も24%以上含む点が特徴です。窒素はアンモニア態で、水に溶けやすく、施用後すぐ効きやすい一方、効きが切れるのも比較的早い(肥効持続20〜40日が目安)ため、栽培ステージに合わせた分施が向TITLE: 硫安肥料使い方量基肥追肥注意点
硫安(硫酸アンモニウム)は、窒素分20〜21%を持つ代表的な窒素肥料で、硫黄(S)も多く含むのが特徴です。副産物由来で流通量が多く、扱いやすい価格帯になりやすい一方、効き方は「速効性寄り」なので、基肥で一気に入れすぎると生育が前に走ることがあります。
基肥での量の目安として、10アールあたり30〜50kgが一般的なレンジとして示されています。ここを出発点にして、土壌診断・前作の残肥・堆肥投入量・作型(早出し/抑制)を加味し、実際の設計量を上下させるのが安全です。
現場で「基肥の量」を決めるときの考え方を、使える形にしておきます。
硫安は土壌中でアンモニウムイオンとして存在し、土壌コロイドに吸着されやすく、溶けた直後に遠くへ流れにくい側面があります。だからこそ「局所濃度」が高くなる施し方(株元のど真ん中にドサッと置く、乾いた表層に帯状に置きっぱなし等)だと、濃度障害や揮散ロスのリスクが出やすい点は意識してください。
基肥の基本動作は「混和」が有利です。全層または耕起深10〜15cm程度の耕作層に混ぜることで、表面に置きっぱなしより揮発ロスを抑えやすい、と整理できます。
基肥を硫安で組むとき、意外と見落とされるのが「硫黄(S)をどれだけ供給しているか」です。硫安は硫黄供給源にもなるため、なたね・ねぎ類など、硫黄要求が比較的高い作物では、硫安を入れることで不足が隠れて解消するケースがあります。逆に言うと、硫黄を別資材で入れている圃場では「Sは足りているのにNだけ足したい」場面があり、そのとき硫安を主役にするとNと同時にSも増える点は、施肥設計として把握しておきたいポイントです。
参考:硫安の成分・性質、土壌中の挙動、基肥・追肥の一般的施用量(10a 30〜50kg/20〜35kg)
http://bsikagaku.jp/f-fertilization/AS.pdf
硫安は溶解性が高く、速効性の窒素肥料として働きます。肥効の持続期間は概ね20〜40日とされ、土壌温度が低いほど長くなる傾向があります。つまり、追肥は「入れたらすぐ効くが、ずっとは持たない」ので、作物の山場(ぐっと伸びる時期、着果・肥大に向かう時期)に合わせて分施するのが合理的です。
追肥の量の目安としては、10アールあたり20〜35kgが一般的なレンジです。とはいえ、この数字をそのまま毎回入れるのではなく、追肥は回数・間隔とセットで考えてください。硫安は効きが早い分、「少量を複数回」に分けると、肥効を狙った時期に当てやすく、過剰での徒長や品質低下も抑えやすくなります。
追肥の動作で差が出るのは、散布後の処理です。乾いた地表に置いて終わりにすると、揮散ロス・濃度ムラが出やすいので、次のどれかを徹底すると失敗が減ります。
また、作物によって「好む窒素形態」が違う点は、追肥設計で効いてきます。水稲などアンモニア態窒素を好む作物では施用後2日程度で肥料効果が見え、畑作物など主に硝酸態窒素を吸う作物では3〜6日程度で効果が見えやすい、という整理がされています。追肥しても反応が遅いと感じたとき、単純に量を増やす前に「気温・土壌水分・通気性の条件で硝化の進み方が遅い/速い」を疑うと、無駄打ちが減ります。
追肥は「効き目の確認方法」を持つと上手くなります。例えば、葉色や草勢、節間伸長、葉の厚み、株元の締まりなど、あなたの圃場で再現性のある観察ポイントを2〜3個に絞り、追肥の都度メモするだけで、翌年の施肥設計が急に精密になります。数字(施用量)だけでなく、反応(草勢)もデータにする、これが追肥の上達法です。
参考:硫安の土壌中での効き始め(2日/3〜6日目安)と肥効持続(20〜40日)、追肥の一般的施用量(10a 20〜35kg)
http://www.fmt.co.jp/technology/fertilizer_database/ryuuan.html
硫安は便利な反面、「やってはいけない使い方」がはっきりしています。ここを押さえるだけで、肥料代のロスとトラブルがかなり減ります。
まず混用の注意です。硫安はアルカリ性肥料と一緒に施用すると化学反応でアンモニア態窒素がガス化し、アンモニアガスとして揮散する恐れがあります。つまり、石灰資材やアルカリ性の資材と「袋の中で混ぜる」「同時に混ぜて散布する」は避け、どうしても併用するなら、硫安が溶けてから別タイミングで施用するのが安全です。
次に表層施用の注意です。硫安が溶けて生じるアンモニア態窒素は、条件によって揮発損失が起きます。特にアルカリ性土壌では、表層施用ほどアンモニアの揮発損失が高くなるとされるため、全層・深層施肥が推奨されています。水田の場合も、表層の酸化層と還元層の境目で硝化と脱窒が同時に起こり、一部の窒素が脱窒で失われる可能性がある、という整理がされています。
最後に土壌pH(酸性化)の注意です。硫安は生理的酸性肥料で、施用後に硫酸イオンが土壌中の塩基(カルシウムやマグネシウムなど)を引きずって流失させ、土壌pHを下げる要因になり得ます。長期大量施用では土壌が次第に酸性に傾くため、定期的にpHを測り、pH5.0以下になれば消石灰や苦土石灰などで適正pHに戻す、という管理が推奨されています。
ここで「意外と知られていない実務ポイント」を1つ入れます。
硫安を毎年きちんと入れているのに、ある年から急に効きが悪く感じる圃場は、窒素の問題というより「pHが落ちて根の張りが弱い→吸収が鈍い→追肥で追いかける→さらに酸性化」というループに入っていることがあります。硫安の量を増やす前に、pHと塩基バランスを見直すと、施肥量を増やさずに草勢が戻るケースが出ます。
注意点の要点(チェック用)
参考:混用禁止(アルカリ性肥料)、表層施用回避(全層/深層10〜15cm推奨)、酸性化とpH5.0以下での矯正目安
http://bsikagaku.jp/f-fertilization/AS.pdf
硫安は畑でも水田でも使われますが、同じ量・同じ手順で良いとは限りません。違いは「酸素があるか(好気/嫌気)」「水が動くか」「窒素がどの形で残るか」に集約されます。
水田で注意したいのは、硫酸イオンが湛水下の酸素欠乏環境で硫化水素に還元され、水稲根の生育と吸収機能に害を与え、「秋落ち」につながる可能性がある点です。老朽化水田に硫安の施用が好ましくない理由として説明されることがあり、圃場条件(強湿田、還元が強い、根腐れが出やすい等)を踏まえて使う必要があります。
一方で、老朽化水田の土壌改良や冬季乾田方式の普及などで、硫安施用による秋落ち現象がほとんど見られず、水田に硫安を施用しないという束縛がなくなった、という整理もされています。つまり現代の水田では「一律禁止」ではなく、圃場の還元リスクを見ながら、施用位置(深さ)と時期でリスクを潰す、が現実解です。
畑では、硝化作用(アンモニア態→硝酸態)が進むスピードが、土壌種類・通気性・水分・温度に左右されます。有機物が少なく通気性が良い砂質土壌は速く、土壌温度が高いほど速い傾向があり、重粘土では嫌気化しやすくアンモニウムが長く残る、と整理されています。畑の追肥で「効きが早すぎる/遅すぎる」と感じるときは、施肥量の話の前に、この硝化の条件を点検すると原因が見えます。
水田・畑で共通して効く運用のコツは、施用深さを意識することです。全層または深層(耕作層10〜15cm目安)に入れることで、揮発損失や脱窒損失のリスクを下げやすい、という方向性は共通です。
参考:秋落ち(硫化水素)に関する説明、硝化作用と制御因子(通気・水分・温度)、全層/深層施肥の推奨
http://www.fmt.co.jp/technology/fertilizer_database/ryuuan.html
検索上位の記事は「使い方」「量」「注意点」を丁寧に説明しますが、実際の圃場で差が付くのは、量の計算より「再現性」です。同じ10aでも、畦際・水口・水尻・踏み固めた作業道沿いで、効き方が変わるのは珍しくありません。だから、硫安の使い方を一段上げるには「どこに、どれだけ、どう撒いたか」をズレなく繰り返す工夫が効きます。
具体策は、難しい機械投資より先に、次の3つで十分に改善します。
ここで「意外な情報」として強調したいのは、硫安は肥効が20〜40日程度とされるため、追肥の結果が出るまでに“数週間”の評価軸が必要だという点です。散布翌日〜3日での見え方は「効き始め」で、収量や品質に効いたかどうかは、その後の天候・根の状態・次の追肥との重なりまで含めて判断する必要があります。短期の見え方だけで追肥を重ねると、最終盤で窒素過多(徒長・病害・品質低下)に寄りやすくなります。
さらに、硫安は土壌pHに影響し得るため、記録は「量のログ」であると同時に「pH管理のログ」になります。年ごとのpH測定(できれば同じ時期)と、硫安の投入量の累積を並べると、酸性化の兆候を早く掴めます。肥料コストが上がるほど「無駄打ちしない仕組み」の価値が上がるので、まずは記録と計量で、硫安の効かせ方を安定させるのが最短ルートです。
参考:硫安の肥効持続(20〜40日)と、酸性化・pH管理の必要性(pH5.0以下で矯正検討)
http://bsikagaku.jp/f-fertilization/AS.pdf