パーライト照明の使い方!LED設置の距離と色の種類

農業でパーライト照明を導入するメリットとは?LEDの正しい設置距離や色の種類、効果的な使い方を徹底解説します。収量アップを目指すなら、どの種類のライトを選ぶべきでしょうか?

パーライト照明の使い方

LED照明の種類とパーライトの特徴

農業現場で利用される照明には多くの種類がありますが、中でも「パーライト(PARライト)」と呼ばれる形状のLED照明は、スポット的な照射が可能で、特定の作物や成長段階に合わせて柔軟に活用できる点が特徴です。一般的にパーライト(Parabolic Aluminized Reflector)は、その反射鏡の形状からこう呼ばれ、舞台照明としても知られていますが、農業用としては「PAR30」や「PAR38」といった規格の電球型LEDが広く普及しています。これらは一般的なE26口金に対応しているものが多く、大規模な工事不要で既存のソケットにねじ込むだけで使える手軽さが魅力です。

 

一方で、農業界には土壌改良材としての「パーライト(真珠岩黒曜石)」も存在し、名称が同じであるため混同されがちです。しかし、照明としてのパーライトは「光合成有効放射(Photosynthetically Active Radiation)」、すなわち植物が光合成に利用できる光の波長(PAR領域)を効率よく照射する目的で設計されたものを指す場合もあります。このセクションでは、物理的な形状としてのPAR型ライトと、光の質としてのPARという二つの側面から、その特徴を理解し、栽培環境に最適な種類の選び方を解説します。特に、蛍光灯や高圧ナトリウムランプと比較して、LEDタイプのパーライトは発熱が少なく、植物に近接して設置できるため、多段栽培や狭いスペースでの補光において圧倒的な優位性を持っています。

 

LED照明は蛍光灯に比べて消費電力を大幅に削減しつつ、収穫量を増加させる事例も報告されており、コスト対効果の高い選択肢となりつつあります。

 

設置の距離と照射角度の調整

パーライト照明を効果的に使うための最大のポイントは、「設置距離」と「照射角度」の調整です。LEDは直進性が強い光を放つため、光源から植物までの距離が近すぎると「葉焼け」を起こし、遠すぎると十分な光合成速度が得られないというジレンマがあります。一般的に、農業用LEDパーライトの場合、植物の成長点から30cm~50cm程度の距離が推奨されることが多いですが、これはライトの出力(ワット数)やレンズの照射角度によって大きく異なります。

 

例えば、照射角度が狭い(スポット型の)パーライトを使用する場合、光が集中するため、距離を離しても強い光を届けることができますが、照射範囲は狭くなります。逆に、広角タイプのパーライトは広い範囲をカバーできますが、光の強度が分散するため、植物に近づけて設置する必要があります。この特性を理解し、栽培棚の高さや作物の種類(光飽和点の高いトマトやイチゴ、低いレタスやハーブなど)に合わせて、適切な距離を見極めることが重要です。また、成長に伴って植物の草丈は変化するため、チェーンやアジャスターを用いて照明の高さをこまめに調整できる設置方法を採用することが、長期的な安定生産への近道となります。

 

専門家は葉面からの距離を10〜20cmなど、成長段階に応じて細かく調整することを推奨しており、適切なPPFD(光量子束密度)を確保することが成功の鍵です。

 

参考)植物が喜ぶ植物育成用白色LEDバーライトの正しい使い方と設置…

育成に必要な色と波長の選び方

植物の成長には、単に明るいだけでなく、適切な「色(波長)」の光が必要です。パーライト照明を選ぶ際には、この波長の構成(スペクトル)を理解しておく必要があります。植物の光合成は主に赤色(約660nm)と青色(約450nm)の光を吸収して行われます。赤色の光は光合成を促進し、葉や茎の成長、開花、結実(バイオマス生産)に直接的に寄与します。一方、青色の光は葉を厚くし、徒長(ひょろ長く育つこと)を防ぎ、形態形成を整える役割を果たします。

 

最近の研究では、これらに加えて「遠赤色光(Far-Red, 730nm付近)」や「紫外線(UV)」、さらには緑色の光も植物の生理作用に重要な影響を与えることが分かってきています。例えば、遠赤色光を加えることで「陰避難反応」を刺激し、葉面積を拡大させて成長を加速させる効果(エマーソン効果などに関連)が期待できます。農業用パーライト照明には、これらの波長を最適にブレンドした「フルスペクトル型」や、特定の成長段階に特化した「赤青特化型」などがあります。育成初期の苗作りには青色成分が多めのものを、開花・結実期には赤色や遠赤色を含むものを選ぶなど、目的に応じた色の使い分けが、作物の品質と収量を左右します。

 

遠赤色光(FR)の追加は、炭水化物濃度を高め、成長を促進させる効果があることが示されており、赤と青の比率と組み合わせることで作物の品質をコントロールできます。

 

参考)https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpls.2024.1383100/full

夜間に赤色や遠赤色の光を照射(ナイトインタラプション)することで、バジルのようなハーブのバイオマスや特定成分の生成を最適化できるという研究結果もあります。

 

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11597572/

独自の視点:反射シートとの併用効果

ここで、検索上位の記事にはあまり詳しく書かれていない、現場ならではの独自視点として「反射シート(特にパールライト』等の製品)」と「パーライト照明」の併用テクニックを紹介します。通常、パーライト照明は上部から下方向へ光を照射しますが、作物の下葉や内側の葉には光が届きにくく、光合成効率が落ちる原因となります。そこで、土壌面や栽培ベンチに光反射率の高い白色シートを敷設することで、照明から漏れた光や透過した光を乱反射させ、下方向から葉の裏側に光(散乱光)を当てることが可能になります。

 

実は、この「下からの光」は、気孔の開閉や蒸散活動、さらには光合成の促進に意外なほど大きな効果を発揮します。特に「パールライト」という名称の農業用反射シートは、高い拡散反射率を持ち、地温の上昇を抑えつつ光環境を改善する資材として知られています。照明器具の「パーライト」と資材の「パールライト」を組み合わせることで、限られた電力エネルギーを無駄なく植物に取り込ませる「3Dライティング」とも言える環境を構築できます。これは、照明の台数を増やすよりも低コストで、全体の光量子量を底上げできる賢い運用方法です。

 

反射マルチシート「パールライト」は、太陽光や人工光を拡散反射させ、色付けや光合成を促進する効果があり、照明と組み合わせることで光の利用効率を最大化できます。

 

参考)光合成促進・反射マルチシート 「パールライト®」|…

農業現場でのコスト管理と寿命

最後に、導入にあたって避けて通れない「コスト」と「寿命」について解説します。LEDパーライトは初期費用が白熱球や蛍光灯に比べて高価ですが、その寿命は長く、一般的に20,000時間から50,000時間程度とされています。しかし、農業現場は高温多湿であり、農薬散布などの影響も受ける過酷な環境です。カタログスペック通りの寿命を全うさせるためには、防塵・防水性能(IP規格)が高いモデルを選ぶことが必須です。特に「IP65」以上の等級を持つ製品であれば、散水時の水しぶきや湿度による故障リスクを大幅に低減できます。

 

また、ランニングコストである電気代を抑えるためには、必要な時間帯だけ点灯させるタイマー制御や、自然光(太陽光)の強さに応じて調光するシステムの導入も検討すべきです。最近では、ヒートシンク(放熱板)の形状を工夫し、ファンレスで静音かつ故障しにくい設計の農業用LEDパーライトも増えています。安価な家庭用や舞台用のパーライトを流用すると、防水性の不足や放熱不良ですぐに故障し、結果的に交換コストが高くつくことがあるため、「農業用」として設計された耐久性の高い製品を選ぶことが、長い目で見たコスト削減につながります。

 

農業用に開発されたLEDは、IP67などの高い防水等級を持ち、農薬散布や湿度の高い環境にも耐えられるよう設計されているため、安心して導入できます。

 

参考)LEDを農業に活かすメリット・デメリットとは?効率的な生産活…

パーライト照明活用のポイント
💡
PAR形状と波長の理解

スポット照射が得意なPAR型LEDを選び、赤・青・遠赤など目的に合った波長(スペクトル)を確認して導入しましょう。

📏
適切な距離と角度

成長点から30〜50cmを目安に設置し、葉焼けを防ぎつつ必要な光量を確保。成長に合わせて高さを調整できる工夫が重要です。

反射材との相乗効果

反射シートを併用して下からの散乱光を補うことで、照明の電気代を変えずに全体の光合成効率を劇的に高めることができます。