農業と環境保全を両立する仕事を理解するうえで土台となるのが、環境保全型農業という考え方です。
環境保全型農業とは「農業の持つ物質循環機能を生かし、生産性との調和に配慮しながら、土づくり等を通じて化学肥料や農薬による環境負荷を軽減する持続的な農業」と定義されています。
この定義のポイントは、単に農薬や化学肥料を減らすだけでなく「生産性とのバランス」と「物質循環機能の活用」を重視している点です。
参考)環境保全型農業関連情報:農林水産省
たとえば堆肥の利用やカバークロップ(被覆作物)の導入、用水路・畦の生きものに配慮した管理など、地域ごとの工夫を組み合わせることが求められます。
参考)https://www.maff.go.jp/j/kanbo/yuryo_jirei/pdf/28jirei_zentai.pdf
環境保全型農業に関わる仕事は、現場での生産だけでなく、技術指導、制度設計、販路づくり、教育・普及などに広がっています。
参考)環境保全に係る仕事がしたい!どんな仕事がある?
そのため「汗をかく現場の仕事がしたい人」と「企画・調整が得意な人」のどちらにも、活躍できるフィールドが存在します。
参考)農業・植物を扱う仕事紹介 日本自然環境専門学校
環境保全型農業の制度や定義を確認するには、農林水産省の公式情報が最も信頼しやすいです。
農業と環境保全に関わる仕事は、「生産現場」「地域づくり」「専門職」の三つのレイヤーでイメージすると整理しやすくなります。
生産現場では、有機農業や環境保全型農業に取り組む農業法人・個人農家での栽培スタッフ、堆肥センター職員、果樹の有機・自然農園の従業員などが代表的です。
堆肥センターの現場スタッフは、剪定枝や落ち葉などの資源を受け入れ、重機で撹拌しながら堆肥を製造し、それを農家へ運搬・散布することで地域内で資源循環を実現しています。
この仕事は「香りや温度で発酵の進み具合がわかるようになる」など、現場ならではの技能が蓄積されるのが特徴です。
参考)株式会社野田自然共生ファーム(堆肥センター現場スタッフ)|農…
有機・自然農の果樹農園やオーガニック野菜農園では、栽培に加え、選別・袋詰め・出荷・直売所や通販での販売まで担当するケースも多く、環境配慮型の商品を消費者へ届けるまでを一気通貫で担います。
参考)果樹 有機/自然農の求人 - 農業・酪農・牧場求人情報ならあ…
出荷作業では、セット野菜の内容を季節ごとに組み替えながら、農薬に頼らず育てた作物の魅力を伝えるラベルや通信を工夫することも大切な仕事になります。
参考)採用情報
地域づくりのレイヤーでは、環境・農業系NPOのスタッフとして、里山保全や農村景観の保護、市民参加の生き物調査イベントなどを企画・運営するポジションがあります。
参考)関西での環境・農業系NPO求人募集
また、地域おこし協力隊として、地場産品のブランド化や環境保全活動と連動した農業体験プログラムの企画に携わるケースも増えています。
環境保全型農業の代表的な取り組みとして、減農薬・減化学肥料栽培や、有機JAS認証の取得、地域堆肥の利用、カバークロップの導入などが挙げられます。
秋田県大潟村では、村内の全農業者が参加する組織をつくり、減農薬・減化学肥料栽培や有機JAS認証取得、地域堆肥の利用による資源循環を推進している事例があります。
循環型農業では、家畜の排せつ物を堆肥化して畑に還元したり、作物残さを家畜の飼料に使ったり、食品残さからエコフィード(リサイクル飼料)を製造するなど、農場内外の資源を回す仕組みが実践されています。
合鴨農法のように、田んぼに合鴨を放して雑草や害虫を食べてもらうことで農薬散布を減らし、さらに糞を肥料として活かす方法も、環境保全と生産性を両立させた事例として知られています。
参考)農業でSDGs実現!取り組み事例や課題も解説
こうした取り組みは、SDGsの「飢餓をゼロに」「つくる責任つかう責任」「気候変動に具体的な対策を」など複数の目標と関わっており、農業の現場でSDGsを体感しながら働ける点が大きな魅力です。
企業レベルでも、農機メーカーや種苗会社、JAグループなどが環境負荷低減技術の開発や、スマート農業を通じた省エネ・省資源の取り組みを進めており、農業者と一体となってプロジェクトを進める仕事も増えています。
環境保全型農業の制度や事例を体系的に知るには、農林水産省や環境省の資料が役立ちます。
環境保全型農業関連情報(農林水産省)
里地里山での環境保全と農業の連携事例(環境省PDF)
「農業×環境保全の仕事」と聞くとボランティア的で収入が不安というイメージが先行しがちですが、実際には雇用条件が整った求人も少しずつ増えています。
環境再生型農業や有機農業に関わる求人では、正社員・契約社員・地域おこし協力隊など多様な雇用形態があり、社会保険や賞与、資格取得支援が完備された案件も見られます。
たとえば、自治体出資の堆肥センターでは、堆肥生産・運搬・散布や資源受け入れを担う現場スタッフを募集しており、賞与や昇給、猛暑対策手当、資格取得支援など、安定志向の人にも魅力的な待遇が整えられています。
勤務時間は8時〜17時で残業は少なめ、休日も日・祝日とシフト制の土曜休みがあり、生活リズムを整えやすい条件になっているケースもあります。
一方で、小規模な有機農園や観光農園では、繁忙期に労働時間が長くなったり、住み込みやシェアハウス型の生活が前提だったりすることも多く、「暮らし方」とセットで仕事を選ぶ視点が重要です。
参考)環境保全型農業による、美味しくて安全な水稲栽培をおこなってい…
オーガニック農園では、野菜の出荷作業を週3日程度で担当するアルバイト募集のように、副業や複業と組み合わせやすい働き方も見られ、ライフスタイルに合わせて関わり方の濃淡を調整しやすくなっています。
環境保全に関わる公務員や行政職では、環境職として大気・水質・自然保護などの業務とともに、持続可能な農業や農村環境への配慮を含む政策づくり・事業実施を行うポジションもあります。
参考)食と自然をつなぐプロフェッショナルへ!農業に関する仕事内容と…
農林水産省職員や都道府県の農政部門職員は、食料の安定供給とともに水田・畑・森林・海の環境保全、農山漁村振興など幅広い視野で仕事をするため、「現場と制度をつなぐ役割」に魅力を感じる人には大きなやりがいがあります。
農業・環境分野の職種や働き方を俯瞰したいときには、職業紹介サイトのまとめが参考になります。
農業・植物を扱う仕事紹介(日本自然環境専門学校)
環境保全に係る仕事の種類(gooddoマガジン)
農業と環境保全の仕事では、体力や現場作業の技能だけでなく、データ分析やコミュニケーション、企画力など、多様なスキルが武器になります。
たとえば環境社会検定試験(いわゆるeco検定)などで環境全般の知識を押さえておくと、農業現場の取組をSDGsやカーボンニュートラルと結び付けて発信しやすくなり、企業や行政との連携時に説得力を持たせやすくなります。
環境保全型農業に関する専門資格としては、環境社会保全士や土壌環境リスク管理者、水・土壌の保全に関わる環境サイトアセッサーなど、生産者支援やリスク管理に特化した資格も存在します。
これらは一般の就職サイトではあまり目にしないものの、農業協同組合や地方自治体、環境系コンサルティング会社などで、土壌汚染対策や環境配慮型プロジェクトを進める際に重宝される人材像です。
参考)自然にかかわる仕事21選|向いている人の特徴をジャンルごとに…
意外な広がりとして、環境保全型農業の現場経験を活かして「環境教育」「観光・体験型農業」「企業研修プログラム」へキャリアを広げる例も増えています。
参考)https://www.env.go.jp/nature/satoyama/conf_pu/22_02/2_shiryou2-2.pdf
たとえば、里山保全と農業体験を組み合わせたNPOでは、企業の新人研修として田植え・草取り・生き物観察を組み合わせたプログラムを提供し、環境と食のつながりを体感してもらうサービスを展開しています。
また、環境再生型農業や有機農業に取り組む農場での経験をきっかけに、環境再生に特化したコンサルタントや、ESG投資の観点から農業・林業・自然資本に関する分析を行う金融系の職種へ転じる人もいます。
参考)https://jp.indeed.com/q-%E7%92%B0%E5%A2%83%E5%86%8D%E7%94%9F%E5%9E%8B%E8%BE%B2%E6%A5%AD-%E6%B1%82%E4%BA%BA.html
現場でのリアルな感覚を持つ人材は、机上の議論だけでは見えにくい課題を指摘できるため、専門性の高いポジションで評価される可能性が高いのです。
環境保全や持続可能性に関する資格・キャリア情報は、環境系ポータルサイトにまとまっています。