茄子ハダニ(主にナミハダニ等を含むハダニ類)は、葉裏に寄生して細胞内容物を吸汁し、葉表に白い点状のかすれ(退色斑)が出るのが典型です。
進むと葉が黄化して光合成が落ち、株全体の勢いが落ち、果実の肥大やつやにも影響が出やすくなります(「葉で稼ぐ」ナスほど痛い)。
現場の見取り調査は「葉裏を見る」が基本で、特に株の内側・通路側・ハウスの肩(乾きやすい場所)を優先し、1回の巡回で同じ順番で観察すると変化に気づきやすいです。
意外と見落としやすいのが「糸(クモの巣状)」が出る前の段階です。糸が出た時点で密度が上がっていることが多く、薬剤の当たりムラも増えます。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/df50250989470d3d271e72e5535029d494c1b1f5
そこで、ルーペ(10倍程度)を常備して、白い点状症状が出た葉は必ず葉裏で成幼虫・卵の有無を確認してください。
卵が多いのに成虫が少ない場合は、散布しても次世代が一気に立ち上がるため、「卵に効く手段」や「次の手」を同時に設計するのがコツです。
防除の開始は、都道府県が整理した「要防除水準」を目安にすると、判断がブレにくくなります。
野菜の要防除水準の整理では、なすのハダニは「施設栽培:5頭/葉、露地栽培:2頭/葉」で、到達したら即時防除という目安が示されています。
この数値は「いま散布するか」を決めるスイッチなので、カウント方法をチーム内で統一してください(例:中位葉を中心に、葉裏の雌成虫+幼虫を数える、など)。
ポイントは、平均密度だけでなく“分布”も見ることです。ハダニは最初はホットスポット(部分的な多発)になりやすく、平均だけだと手遅れになりがちです。
意外な現場あるあるとして、「通路側だけ強い」「換気口付近から広がる」「端株だけ早い」など偏りが出ます。
だから、要防除水準に達していない段階でも、局所的に達している場所があれば、スポット処理+環境調整+天敵導入準備を先に打つと全体散布を減らしやすいです。
ハダニ防除で必ず意識したいのは、ハダニ類が薬剤抵抗性を発達させやすい生物学的特性を持つこと、そして化学的防除だけに寄せると限界が来やすいことです。
薬剤抵抗性管理の考え方として、作用機構(IRACコード等)を意識したローテーション、混用、IPM体系の併用が重要だと整理されています。
現場で起きがちな失敗は「効いた実感がある剤を続けてしまう」ことで、短期的には楽でも中長期で効力低下を招きやすい点です。
具体策はシンプルに3つです。
・同一作用機構の連用を避け、作用機構の異なる剤に切り替える(ローテーション)。
・“効きムラ”を減らす散布(葉裏への到達、展着、風量・水量・ノズル、株姿に合わせた当て方)を徹底し、半端に生き残らせない。
・化学以外の選択肢(気門封鎖剤、天敵、物理的手段など)を必ず組み込み、化学剤にかかる選抜圧を下げる。
もう一つ、意外と効く“運用の工夫”があります。ハダニは「発生してから強い剤で叩く」よりも、「密度が上がり切る前に、非化学(気門封鎖など)を挟み、天敵や次剤につなぐ」方が、結果的に散布回数と被害の両方を減らしやすいです。
抵抗性は「効かなくなってから」では遅く、問題化していない時期から前倒しで対策するのが合理的、という整理も重要です。
ハダニ対策は、殺ダニ剤だけでなく、多様なIPM技術が実用化されていることが整理されています(気門封鎖剤、カブリダニ製剤、土着天敵、UV-B等)。
特に気門封鎖剤は、2000年代以降に有効成分数が増え、現場での利用が進んでいるという位置づけです。
気門封鎖剤は“作用点が化学殺ダニ剤と違う”ため、抵抗性回避の一手になりやすく、ローテーションの中に入れやすいのが利点です。
天敵ではカブリダニ類の活用が代表的で、体系化すると薬剤散布回数の削減や抵抗性管理に寄与しやすい、という考え方につながります。
さらに少しマニアックですが、「天敵が殺虫剤に弱い」が壁になりやすい一方で、合成ピレスロイド剤に抵抗性を示すチリカブリダニが市販製剤内で見つかった、という研究成果もあります。
合成ピレスロイドは天敵に悪影響が強く、散布後にハダニが大発生するリサージェンスを引き起こしうる、という指摘もあるため、天敵を使う圃場では“ハダニを増やす散布”を避ける設計が重要です。
IPMを現場で回すコツは、次のように「目的」で資材を使い分けることです。
・密度を落とす:葉裏に当たる散布+初期のスポット処理。
・次世代の立ち上がりを遅らせる:気門封鎖剤を挟む、卵が多い局面での手段選択を誤らない。
・増殖を抑え続ける:天敵が働ける環境(薬剤選定・散布間隔・影響の少ない剤の選択)を整える。
「何を使うか」だけでなく、「どう当てるか」も成果を左右します。ハダニは葉裏中心なので、散布は葉裏到達を最優先に、葉が重なる株姿なら剪葉や整枝で“当たる形”に戻すのが、薬剤抵抗性の回避にもつながります(当たりムラは生き残りを増やすため)。
検索上位の記事は「症状」「農薬」「天敵」「発生条件」などの説明が中心になりがちですが、現場で差が出るのは“運用(チーム設計)”です。ここは意外と語られにくいので独自視点として掘ります。
まず、要防除水準(施設:5頭/葉、露地:2頭/葉)を「紙に印刷して、誰が見ても同じ判断」になるようにし、調査ルート・調査葉位・記録方法までセットで決めます。
この“見える化”は、薬剤抵抗性管理で重要なリスクコミュニケーション(関係者の対話・連携)にもつながる、という整理がされています。
次に、防除暦を「固定の散布予定表」ではなく、「判断で動く分岐表」にします。例えば、
・調査で基準未満:環境・株姿の調整+スポット監視強化。
・基準到達:即時防除、ただし同一作用機構は使わない(次回も含めて2手先まで決める)。
・卵が多い/糸が出た:当たりムラを疑い、散布設計(ノズル・水量・葉裏)を先に修正。
そして最後に、「失敗の芽」を先に潰します。ハダニで崩れる圃場は、だいたい次のどれかが入っています。
・初期の見落とし(糸が出るまで気づかない)。
・散布が葉表中心で葉裏に届いていない。
・効いた剤の連用で抵抗性を招く。
・天敵を入れたのに、影響の大きい剤を後から打ってしまう(体系が崩れる)。
この“運用の型”を作ると、同じ農薬・同じ天敵でも結果が変わります。防除は技術ですが、同時にチームのルール設計でもある、という感覚を持つと、茄子ハダニの再発・再燃が減ります。
要防除水準(なすハダニの基準)を確認する箇所の参考リンク。
https://www.jppn.ne.jp/jpp/bouteq/bojosuijun_data/yasai.pdf
薬剤抵抗性管理と多様な防除技術(気門封鎖剤、天敵、UV-B等)の整理の参考リンク。
https://www.nippon-soda.co.jp/nougyo/wp-content/uploads/2023/03/001_005.pdf
チリカブリダニと合成ピレスロイド、リサージェンスの注意点の参考リンク。
https://www.naro.go.jp/project/results/laboratory/vegetea/2000/vegetea00-016.html