「秀品」に出荷しても、糖度が低ければリピーターは離れます。
農産物の品質を語るとき、多くの農業従事者がまず思い浮かべるのは「見た目」です。箱の側面に印字された「秀・優・良」という等級表示は、まさに外部品質——形、色付き、傷の有無——を基準にランク付けしたものです。しかし、この等級は消費者が最も気にする「おいしさ」とは、実は別の話になります。
外部品質(外観品質)とは、目で確認できる農産物の特性全般を指します。具体的には色、形状、大きさ、表面の傷・汚れの有無、光沢感などが該当します。一方で内部品質とは、糖度(甘さ)、酸度(酸味)、熟度、水分量、栄養成分の含有量、そして内部障害(空洞・褐変・腐敗など)といった目に見えない特性です。つまり、外部品質が「見た目の美しさ」なら、内部品質は「食べたときの体験」と言い換えられます。
これが原則です。
農産物流通技術研究会の石谷孝佑氏は、「見て美しい」という外観品質は消費者の購買意欲を刺激する重要な要素ではあるが、消費者がふたたび購入するかどうかは、食べて美味しいという味・香り・食感などの内部品質要素が大きく影響すると指摘しています。つまり、外部品質は「最初の1回」を売るための武器であり、内部品質は「次の購入」を決定づける要素というわけです。
両方を理解することが基本です。
農産物の品質に詳しい専門家の解説はこちら。
青果物の品質とは何か、どのように高めるか|農産物流通技術研究会
内部品質を構成する要素のうち、農業従事者が特に意識すべき項目が4つあります。糖度、酸度、熟度、そして内部障害です。それぞれがどう「商品価値」に結びつくのかを整理すると、栽培管理や出荷判断の精度が大幅に上がります。
まず糖度です。甘さの指標であり、Brix値(°Bx)で表されます。同じ木から採れたミカンでさえ、糖度は個体によってばらつきがあり、農研機構の研究では「敏感な人は0.5度の糖度の違いを感じ取れる」とされています。糖度が高い農産物は消費者評価が高く、ブランド化の根拠にもなります。福岡県みやま市の「山川みかん」では、糖度12.5度以上・酸味1%以下を「ハニーみかん」、糖度11.5度以上を「マイルド130」と別ブランド化して差別化を図っています。
次が酸度です。酸度は糖度と組み合わせて「糖酸比(甘味と酸味のバランス)」を評価するのに使われます。糖度が高くても酸度が強すぎると「甘酸っぱい」ではなく「酸っぱい」と感じられてしまうため、バランスの確認が欠かせません。これは使えそうです。
熟度は「食べごろかどうか」を判断する指標です。未熟なまま出荷すれば味が落ち、過熟であれば流通中に劣化します。適切な熟度で出荷することが、消費者満足と輸送クレーム回避の両方に直結します。
内部障害は、空洞・褐変・腐敗など外側からはわからない内部の異常です。果実の中身が空洞になっている(すあかり)、スイカの内部が変色している——こういったケースは外見では判断がつきません。高品質な商品の中に1個でも内部障害品が混入すると、クレームだけでなく農園の信頼失墜にもつながります。内部品質が条件です。
果物と野菜の品質検査への応用(外部品質・内部品質の解説)|CHNSpec
農業従事者なら誰でも知っている「秀・優・良」という等級。しかし、この等級が外部品質——形、色付き、傷の有無——のみをもとに判定されていることを、改めて認識している人は意外と少ないかもしれません。
JA系統出荷(農協を通じた出荷)では、農産物の箱に「等級」と「階級(サイズ)」が表示されます。等級は「秀 > 優 > 良」の順で、基本的に外観のみで判断されます。みかんを例にとると、果実の着色の程度、形の整い方、表面の傷の有無などで等級が決まり、糖度は等級の決定要素には含まれていません。
つまり、「秀品」であっても糖度が低い個体は存在し得るということです。逆に、少し形が曲がっている「優品」や「良品」でも、糖度が非常に高くおいしい農産物は普通にあります。消費者が「秀品だから甘い」と思って購入し、期待を裏切られてしまうのは、この乖離が原因のひとつです。
意外ですね。
農産物の等級が糖度などの内部品質を反映していない理由は、長い流通の歴史にあります。かつては農産物を青果市場に集め、目視で選別・出荷するのが主流であり、見た目での評価が合理的でした。内部品質を一つひとつ破壊検査することは、実質不可能だったからです。しかし近年、光センサーによる非破壊検査技術が普及し、内部品質を外部品質と同様に数値化・選別できる時代になっています。この変化が農産物のブランド化に大きな影響を与えています。
注意すべき点は、産直品や個人出荷の農産物には、そもそも「秀・優・良」の表示基準がない場合が多いことです。JA系統出荷以外の農産物にはこの等級分けが適用されないため、直売所やEC販売では独自の品質基準を設けることが差別化の鍵になります。
農産物の等級「秀・優・良」は形・色・見た目で決まり、味はまた別|831biyori
かつて内部品質を測るには、果実を切って糖度計に果汁を垂らす「破壊検査」しかありませんでした。切った果実は出荷できなくなるため、大量の農産物を全数検査することは事実上不可能でした。この課題を解決したのが「近赤外線分光法を用いた非破壊検査」です。
仕組みはシンプルです。果実に近赤外線(波長800〜2,500nm帯の光)を照射すると、果実内部の水分・糖分・酸度などの成分に応じて光の吸収・透過パターンが変化します。このパターンをセンサーで読み取り、統計処理を施すことで、果実を傷つけることなく糖度・酸度・熟度・内部障害の有無を数値化できます。果実の外見はまったくそのままです。
これは画期的な技術です。
光センサー選果機は、この技術をコンベアに組み込んだ装置です。農産物を供給口に入れると、光を当てながら1時間あたり最大1万8,000個(SMART-SORTERの場合は約1.8t/h相当)を自動選別できます。測定できる項目は糖度、酸度、熟度、内部障害、大きさ、外観(オプション)など多岐にわたります。ヤンマーの「ひかり庵」や三井金属計測機工の「SMART-SELECTOR」などが代表的な製品で、みかん・りんご・桃・トマト・ミニトマトなど幅広い品目に対応しています。
農家にとってのメリットは大きく2つあります。第一に、内部障害品の出荷を防ぎクレームリスクを大幅に下げられること。第二に、糖度保証付きブランドを立ち上げ、通常品より高い単価での販売が可能になることです。内部品質管理が安定すれば、リピーター獲得にも直結します。光センサー選果機の導入コストは機種・規模により異なりますが、農林水産省の資料では1,000万円前後~市販とされており、導入補助金の活用も検討できます。
光センサー選果機とは?仕組みと各メーカー比較|果物選果機ナビ
光センサーで内部品質を「測る」ことはできても、そもそも内部品質が高くなければ意味がありません。では農業従事者として、内部品質——特に糖度や食味——を高めるためにできることは何でしょうか。ここでは、検索上位には少ない、実際の栽培現場での取り組みを掘り下げます。
まず前提として知っておくべきなのは、内部品質は栽培段階だけでなく、収穫後の管理にも大きく左右されるという点です。青果物は収穫後も生きており、呼吸によって糖や有機酸を消費し続けます。収穫から販売までの時間が長くなるほど、糖度は低下し、食感や香りも劣化します。これが基本です。
収穫タイミングの見極めは、糖度に直接影響します。未熟収穫は糖度が低く、過熟収穫は流通中の劣化が速い。「食べごろ」を熟度センサーや糖度計(簡易型の非破壊ハンディタイプも市販されています)で確認しながら収穫することが、内部品質安定の第一歩です。
土づくりと施肥管理も重要な要素です。窒素過多の状態では果実が大きくなりやすい一方で糖度が下がりやすくなります。カリウムは糖の蓄積を促す要素として知られており、収穫前のカリウム管理が糖度向上につながるケースがあります。ただし品目・品種によって最適な施肥設計は異なるため、県の農業試験場や普及センターのデータを参考にすることが条件です。
水分ストレスの適切な管理も、内部品質向上に関係します。収穫直前に適度に水分を制限することで、果実の糖度が上昇する現象は果樹・野菜を問わず多くの品目で報告されています。ただし、過度な水分ストレスは果実肥大を妨げるため、バランスの調整が必要です。
収穫後の予冷と低温管理は、内部品質の「維持」に欠かせません。収穫直後に素早く予冷(品温を下げること)を行うことで、呼吸速度を抑え、糖や香り成分の消耗を最小限にできます。予冷を怠ったまま常温で数時間放置するだけで、品質は目に見えて低下します。収穫後の管理も内部品質の一部だということを覚えておけばOKです。
簡易型の非破壊糖度計(ハンディタイプ)を使えば、圃場でその場で果実の糖度を確認できます。光を果実に当てるだけで数秒で糖度が表示されるため、収穫判断の精度が大幅に上がります。農業資材ショップやオンラインで購入できるものも増えており、まず1本試してみるだけでも栽培管理の感覚が変わるはずです。
食品の品質保証のための研究開発(糖度の個体差と品質管理の解説)|農林水産技術会議
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