ムギダニ対策を知って牧草の収量と品質を守る方法

ムギダニは春と秋に牧草や麦類を集中的に加害し、収量・品質に深刻な被害をもたらす害虫です。早期発見から薬剤防除・天敵活用まで、農業従事者が実践できる対策をまとめました。あなたの圃場は大丈夫ですか?

ムギダニ対策で牧草の収量と品質を守る

ムギダニを見つけてから薬を撒いても、すでに収量が3割以上落ちていることがある。


ムギダニ対策 3つのポイント
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発生時期を把握する

ムギダニは5〜8℃で最も活発に動く。春(3〜4月)と秋(11〜12月)が被害のピークで、特に春の被害が収量に大きく影響する。

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早期発見が命

夕刻や曇天日に株元を観察すると発見しやすい。胴体が黒く脚が橙赤色という特徴で識別できる。

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薬剤はローテーションで

同一系統の農薬を連続使用すると薬剤抵抗性が発達する。異なる系統の農薬を年1回ずつローテーションするのが原則。

ムギダニの基本的な特徴と発生時期を知る


ムギダニ(学名:Penthaleus major)は、ダニ目ミドリハシリダニ科に属する農業害虫です。体色は胴体が黒く、脚が橙赤色という特徴的な見た目をしており、肉眼でも確認できるサイズです。


参考)島根県:ムギダニ(トップ / しごと・産業 / 農林業 /…


活動適温は5〜8℃と低温です。これが重要なポイントで、多くの害虫が夏場に活発になるのとは逆に、ムギダニは春と秋に猛威をふるいます。 夏は休眠状態(越夏卵)で過ごし、10月上旬〜中旬にふ化して活動を再開します。jppa+1
被害が集中するのは、春(3〜4月)と秋(11〜12月)の年2回です。特に春の加害は甚だしく、その後の牧草の収量に直接影響します。 牧草の株元に多数集まっているのが確認できたら、被害が進行中のサインです。pref+1
発見しやすいタイミングがあります。晴天の日中は葉の裏などに隠れていますが、夕刻や曇天日に圃場に入ると、比較的容易に個体を確認できます。 早期発見のためには、こうした時間帯を意識した巡回が効果的です。


参考)http://jppa.or.jp/archive/pdf/54_05_36.pdf


ムギダニ被害が牧草の収量・品質に与える影響

ムギダニの被害は、見た目以上に深刻な経済的ダメージをもたらします。過去には牧草や飼料作物の収量・品質に大きな損害をもたらした記録があります。 特にイネ科牧草で深刻な被害が起きやすく、草勢が弱い経年草地ほど発生リスクが高まります。pref.fukushima+1
被害が拡大すると何が起きるのでしょうか?
ムギダニが加害する主な作物は、イネ科牧草・麦類・野菜(キャベツダイコンなど)です。野菜の場合、結球野菜では結球部に侵入して加害するため、商品価値がまったくなくなることがあります。 株が小さいうちに被害を受けると萎ちょうして枯死するケースもあります。


牧草地での被害では、春の加害後の収量低下が長期的な生産コストに跳ね返ります。一度収量が落ちた草地は回復に時間がかかるため、「早めに気付いていれば」という後悔につながりやすい害虫です。


これは使えそうな知識ですね。


被害が出やすい条件を整理すると以下の通りです。



  • 🌱 草勢が弱い経年草地(同じ草地を何年も使い続けている場所)

  • 🌡️ 低温・乾燥が続く春先や晩秋

  • 🗓️ 3〜4月・11〜12月の発生ピーク時期

  • 🌥️ 曇天・気温が低め・湿度が高い日

ムギダニ対策の早期防除と適切な薬剤の選び方

ムギダニ防除の基本は、低密度のうちに手を打つことです。密度が上がってから対処すると、散布回数が増えて薬剤抵抗性のリスクも高まります。


早め・早めの防除が原則です。



参考)ローテーションでダニ対策


代表的な防除薬剤として広く使われているのが、スミチオン乳剤(MEP剤)の1,000倍液です。 牧草・イネ科草地のムギダニに対して登録があり、現場での実績も豊富です。pref.iwate+1
散布する際の重要なポイントが2つあります。



  • 散布タイミング:夕刻や曇天の日に行う。ムギダニが活発に活動する時間帯に散布することで効果が高くなる。

  • 🔄 ローテーション散布:同一系統の薬剤を連続使用しない。薬剤抵抗性の発達を防ぐためには、異なる作用機構を持つ薬剤を年1回ずつ使い分けることが推奨される。

薬剤抵抗性の問題は深刻です。ダニは卵から成虫までのサイクルが早く、抵抗性を持ちやすい生き物です。 同じ薬剤を使い続けると、その薬が「効かないダニ」が選択的に生き残り、増えていきます。3剤以上を用意してローテーションするのが理想的ですが、最低でも2剤を交互に使うことが現実的な対策です。fmc-japan+1
また、気門封鎖剤(サフオイル乳剤・サンクリスタルなど)を定期的に組み合わせると、薬剤抵抗性を持たせにくくなる効果が期待できます。 化学農薬だけに頼らない防除の組み立てが、長期的に見て有効です。


ムギダニ対策に使える天敵・耕種的防除法

薬剤防除だけに頼らない方法もあります。農薬を使い続けることで天敵まで死滅させると、害虫の「誘導多発生(リサージェンス)」を引き起こすリスクがあります。 つまり農薬が逆効果になる場面があるということです。


参考)https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/files/Saishingijyutsu_2-14_3.pdf


耕種的防除として有効な方法を以下にまとめます。



  • 🌾 収穫後の残渣処理の徹底:刈り取り後に残渣を残さないことで、越夏卵の生存場所を減らせる。

  • 💧 草地の草勢維持:適切な施肥と更新で草勢を保ち、ムギダニが増えにくい環境を作る。

  • 🌿 圃場周辺の植生管理:天敵が定着しやすい環境を整えることで、自然な抑制効果が期待できる。

ダニの天敵昆虫としては、カブリダニ類(ミヤコカブリダニ・チリカブリダニなど)が知られています。 ただし天敵製剤は注文から入荷まで時間がかかることがあるため、発生が予想される時期の前に手配することが必要です。 入荷が遅れると意味がないため、早めの準備が条件です。


耕種的防除と薬剤防除を組み合わせた「IPM(総合的病害虫管理)」の考え方が、近年の農業では推奨されています。一つの手段に頼らず、複数の対策を組み合わせることが、持続可能な防除につながります。


以下のリンクでは、天敵を活用した害虫管理の最新手法が詳しく解説されています。ムギダニを含む草地害虫の防除計画を立てる際の参考になります。


農研機構:土着天敵を活用する害虫管理 最新技術集(PDF)

ムギダニ対策で見落としがちな「越夏卵」への対応

多くの農業従事者が見落としがちなのが、夏の間に圃場に残っている越夏卵への対応です。ムギダニは夏場に成虫・幼虫は姿を消しますが、圃場の土壌や残渣中には休眠卵(越夏卵)が残っています。 この卵が10月上旬〜中旬にふ化して次の世代の加害が始まります。


見えないから安心、とはいかないのが越夏卵の怖いところです。


秋の防除を始めるタイミングとして重要なのは、「ふ化が始まる10月上旬前後」です。 この時期に圃場をチェックし、幼虫の密度が上がる前に初期防除を行うことで、その後の被害を大きく抑えられます。


参考)http://jppa.or.jp/archive/pdf/64_11_39.pdf


また、越夏卵を圃場に残さないための対策として、刈り取り後の残渣を早めに処分することが有効です。 特に草勢が弱い経年草地は残渣が多くなりやすく、翌年の発生源になるリスクが高まります。草地の更新(再播種)を検討するタイミングの目安にもなります。





























時期 ムギダニの状態 推奨される対策
3〜4月(春) 活発に活動・加害のピーク 夕刻に巡回・スミチオン乳剤1000倍散布
5〜9月(夏) 越夏卵として休眠中 残渣処理・草地更新の検討
10月上旬〜 ふ化・幼虫密度が上昇 早期発見・初期防除の実施
11〜12月(秋) 活発に活動・第2の被害期 ローテーション薬剤で防除

以下の岩手県の防除試験レポートでは、スミチオン乳剤の防除効果と散布のタイミングについて実証データが掲載されています。牧草地でのムギダニ防除を計画する際の参考になります。


岩手県:牧草のムギダニ防除殺虫剤(スミチオン乳剤)試験レポート(PDF)