溝切りは、田んぼに溝を作って排水口へつなぎ、落水・中干しを「狙ったタイミングで」効かせるための作業です。排水が早くなるほど中干しが安定し、結果として過繁茂の抑制や収量・品質のブレ低減につながりやすくなります。
特に見落とされがちなのが「ガス抜き」です。土中には硫化水素やメタンなどの有害ガスがたまり得るため、溝切りで排水性を上げて酸素が入りやすい状態に寄せることが、根の健全化に直結します。クボタの水田管理解説でも、溝切りの目的として排水・中干しの円滑化と、有害ガス(硫化水素、メタンガスなど)を抜く効果が明示されています。
また、溝は「乾かすだけ」の設備ではありません。干ばつ気味の年は、逆に溝が水の逃げ場ではなく“溜め場”になり、溝に水を残して急場をしのぐ使い方もできます。溝に残った水が生き物の避難場所になる、という意外な副次効果も紹介されています。
参考リンク(溝切りの目的・効果/有害ガス/干ばつ時の考え方/溝の目安寸法)
https://www.kubota.co.jp/kubotatanbo/rice/management/grooving.html
溝切りは「とりあえず溝があればOK」ではなく、寸法とつなぎ方で効果が決まります。基本の目安は、溝の間隔が2〜5m程度、溝の深さが約10〜15cm、溝の幅が約20cmです(圃場条件で調整)。これは、排水能力と作業時間、稲体へのダメージ(踏圧・倒伏)をバランスさせた、現実的な落としどころです。
ポイントは“必ず排水口へつなぐ”ことです。途中で溝が途切れていたり、交差部が泥でふさがると、そこがボトルネックになって排水が遅れます。排水が遅れると、中干しの「効き」が圃場内でムラになり、根張り・分げつ・登熟のムラに波及しやすくなります。
溝設計の現場的なコツは、次の順で考えると判断が速いです。
参考リンク(溝の間隔2〜5m/深さ10〜15cm/幅約20cmの目安)
https://www.kubota.co.jp/kubotatanbo/rice/management/grooving.html
溝切機は「どれが最強」ではなく、圃場条件と作業体制で最適解が変わります。代表的には、手押し(歩行)タイプ、乗用タイプ、田植機などの機械に取り付けるアタッチメント型の3系統で考えると整理しやすいです。
手押しタイプは導入コストを抑えやすい一方、面積が増えるほど体力負担と時間コストが増えます。小区画・小面積、または溝切り頻度が少ない場合に現実的です。乗用タイプは作業者の疲労を減らし、一定速度で真っ直ぐ溝を引きやすいのが利点で、規模が大きいほどメリットが出ます。
アタッチメント型は、すでに所有している田植機・管理機の活用でコストを抑えつつ、作業能率を上げやすいのが魅力です。ただし“取付できる前提”で話を進めるのは危険で、ヒッチ形状や仕様違いで適合しないケースがあり得るため、型式・仕様確認と、実機での干渉チェックが重要になります。
機種選定のチェック項目(現場で効く順)
参考リンク(田植機アタッチメントの取付・適合注意点の記載)
https://www.kk-bizen.jp/product_introduction/drypaddy_drainage/groove_cutter/
溝切機での失敗は、多くが「土の状態」と「調整不足」で起きます。作業前に水をしっかり抜き、表面がある程度締まるのを待ってから、薄く水を入れて走行しやすくする、という段取りが基本です。土が柔らかすぎると溝が崩れ、硬すぎると機械負荷が増えて直進性も落ちます。
調整の要はプラウ(溝切部)です。共立(やまびこ)の溝切機資料では、溝幅は上面金具の蝶ボルト穴位置を移動して調整し、溝の深さはプラウ止めボルトを緩めてプラウ角度で調整する旨が示されています。つまり「深さ=前後姿勢」「幅=取付位置」という考え方で、泥の抵抗と溝形状を合わせ込みます。
参考リンク(プラウ調整:溝幅・溝深さの具体的調整方法)
https://yamabiko.g.kuroco-img.app/files/topics/5212_ext_1_0.pdf
現場で効く“崩れない溝”の作り方(作業中に迷ったらここを見る)
安全面も軽視できません。取扱説明書では、溝切機は水田での溝切り作業を目的とした機械であり、目的外使用をしない注意が明記されています。水田は滑り・転倒・巻き込みが起きやすい環境なので、整備(ボルト緩み、回転部の泥詰まり)と、圃場の障害物(石、暗渠口)の事前確認が作業品質にも直結します。
参考リンク(水田作業用であること、目的外使用を避ける注意)
https://www.maruyama.co.jp/instruction/pdf/237228_05_SNE-266.pdf
溝切りは一般に「排水のため」と説明されますが、実は“水を残す器”としても機能します。クボタの解説では、干ばつ時には溝に水を溜めることで対応策となり得ること、さらに溝に溜まった水がオタマジャクシやアメンボなどの避難場所にもなることが紹介されています。排水一辺倒ではなく、気象の振れに備える「可変インフラ」として溝を捉えると、溝切りの価値が上がります。
この視点を実務に落とすと、溝の作り方も少し変わります。例えば、排水口へ直結する“幹線”は確保しつつ、圃場の一部は溝の深さを控えめにして、必要なら水を残せる区画を作る、といった発想です(※地域の用水事情・落水ルール、土壌条件に合わせて調整)。干ばつ年に「全部抜ける」設計にしてしまうと、いざ水が欲しい時に溝が水を逃がし続けることがあり、田面のひび割れや根のストレスを助長する場合があります。
意外性があるのは、生き物の避難場所という話が“情緒”で終わらない点です。生き物が集まる水域があると、田面全体が極端に乾く局面でも、微小な水環境が残りやすくなります。もちろん、害虫・病害・雑草の条件にもなり得るため、溝を「残す/落とす」の判断は、田面の乾き具合、稲の草丈・生育、次の防除計画とセットで考えるのが現実的です。
参考リンク(干ばつ時に溝へ水を溜める/生き物の避難場所になる)
https://www.kubota.co.jp/kubotatanbo/rice/management/grooving.html

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