ホコリダニ農薬いちご防除体系天敵

ホコリダニの見逃しやすい初期症状から、いちごで使える農薬の考え方、天敵・UV-Bなど非薬剤の組み合わせまでを現場目線で整理します。薬剤抵抗性や散布ムラで失敗しないために、あなたのほ場で最初に見直すべき点はどこでしょうか?

ホコリダニ農薬いちご

ホコリダニ農薬いちご:現場で迷わない全体像
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症状→原因の切り分け

葉の萎縮・芯止まり・果面褐変は似た症状が多い。痩果(種)の周りの褐変など、ホコリダニ特有の見え方を押さえます。

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農薬の使い方は「順番」と「当て方」

ホコリダニは小さく新芽周りに潜むため、効く成分でも散布ムラで外します。作用機構のローテーションと散布の当て所が要点です。

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天敵・UV-Bで抵抗性を回避

薬剤抵抗性が問題化しやすいダニ類は、天敵カブリダニやUV-Bなどを組み合わせて「増やさない設計」にすると安定します。

ホコリダニ症状いちご見分け方

ホコリダニ類(チャノホコリダニ等)は成虫が約0.2mmと極小で、肉眼確認が難しい害虫です。
そのため「虫を見つけてから対策」では遅れやすく、最初は症状の出方で疑うのが現実的です。
いちごで典型的に出る症状は、新芽や上位葉の異常から始まります。


参考)https://www.semanticscholar.org/paper/0256cc85dbbf264dddd3018ee72dbcc126199cd5

具体的には、上位葉の葉柄・葉脈が暗褐色に変色し、果実も暗褐色に変色して硬くなる(硬化)ことがあると整理されています。

被害が進むと生長点(芯)付近まで褐変して「芯止まり」様に見えることがあり、ここまで行くと回復が難しくなります。


参考)チャノホコリダニ

現場で特に役立つのが「果実被害の見分け」です。

奈良県の資料では、果実の褐変はアザミウマ類の被害と似るが、アザミウマは痩果(種子)からやや離れた場所が褐変しやすいのに対し、チャノホコリダニは痩果(種子)の縁が褐変しやすい、と差を示しています。

この“痩果の縁”チェックは、ハウス巡回で短時間にできる割に当たりが取りやすいので、疑い段階のスクリーニングに向きます。

発生の広がり方も特徴があります。

初発は局所的に1~数株程度で始まり、そこから隣接株へ分散していくとされるため、早期は「点」で、遅れると「面」になりやすいです。

だからこそ、症状株を見つけたら周辺株もセットで見て、発生中心をつぶす動きが重要になります。

参考:ホコリダニの発生・被害の特徴(症状の要点)
奈良県「促成イチゴ栽培における難防除害虫防除マニュアル」:ホコリダニ類の症状、アザミウマ類との果実被害の違い、初発が局所的で広がる点などがまとまっています

ホコリダニ農薬いちご登録注意

ホコリダニ対策で一番危ない落とし穴は、「効く薬を選んだのに効かない」ではなく「登録・使用条件のズレで、そもそも使い方が合っていない」ことです。
奈良県のマニュアルでも、農薬は作成時点(2024年5月1日)現在の登録内容を基にしており、実際に使う際はラベルで登録内容を確認するよう強調されています。
いちごの現場で起こりやすいのが、ハダニ用の防除設計の中にホコリダニが紛れ込むケースです。

ダニ類は「同じダニだから同じ薬で何とかなる」と思われがちですが、対象害虫の登録がないと“計画としては成立しない”ので、まずは対象(ハダニ類/シクラメンホコリダニ/チャノホコリダニ等)を分けて整理してください。

たとえば奈良県資料では、定植後のハダニ類防除として散布する「コロマイト水和剤」は、シクラメンホコリダニにも登録がある、と明記されています。

同じく奈良県資料では、天敵導入後にホコリダニ類の発生が確認された場合、天敵への影響が少ない薬剤として「スターマイトフロアブル」による防除を行う、と整理しています。

静岡県のUV-B資料の実証試験の表でも、試験区の農薬使用内訳に「ホコリダニ防除3回を含む」と注記があり、ホコリダニが“別枠で管理対象になりやすい”ことが分かります。


参考)https://www.semanticscholar.org/paper/4f5b43878addb1d307a19dad12281a86d30f0e23

さらに、天敵を使う体系では「薬剤選択」が狭くなります。

奈良県資料は、天敵(カブリダニ等)は様々な殺虫剤の影響を受けやすく、使用できる薬剤が制限される点を背景として述べています。

つまり、ホコリダニが出た瞬間に強い薬へ飛びつくと、ハダニの天敵体系を崩して二次災害(ハダニ再燃など)を呼びやすいので、体系内で“使えるカード”を事前に決めておくのが安全です。

参考:県の体系設計(天敵・薬剤の考え方が具体的)
奈良県マニュアル:天敵利用前後での薬剤選択、ホコリダニ類への対応(モベント灌注、コロマイト、スターマイト等)の位置づけが書かれています

ホコリダニ農薬散布ムラ対策

ホコリダニは「当たりにくい場所」にいて「目で見えにくい」ため、薬剤が効かない原因の多くは成分ではなく散布の当て方(物理的な到達)です。
奈良県資料は、気門封鎖剤について“丁寧に散布する”こと、さらに薬害が生じやすいので混用や乾きにくい時間帯を避けることを注意点として挙げています。
この“丁寧に散布”は抽象的に見えますが、ホコリダニ対策では特に具体化する価値があります。
散布ムラを減らすコツは、狙う部位を固定することです。


ホコリダニ類は上位葉、新芽、葉柄・葉脈、蕾、幼果などの柔らかい部位で問題になりやすいとされます。

つまり、葉裏全面を狙うハダニ散布の感覚だけだと外すことがあり、「新芽周り」「葉柄基部」「花房・幼果周辺」を意識して当てると改善しやすいです。

現場で再現しやすい手順にすると、次のようになります。


  • 入口から見て症状株が出た列を“重点列”に決め、そこは歩行速度を落として散布する(ムラを作らない)。​
  • ノズル角度を固定し、新芽の“中心に向けて当てる時間”を必ず作る(新芽は逃げ場になりやすい)。​
  • 1回の散布で終わらせようとせず、体系として“次の手当て”を前提に密度を落とす(初発が局所的に始まる害虫だからこそ、中心部を繰り返しつぶす)。​

また、天敵を入れている場合は散布前に「天敵への影響」を必ず点検してください。

奈良県資料は、天敵導入後にホコリダニが出た場合の薬剤選択を示しており、体系内での追加防除の考え方が整理されています。

“効かせるために強くする”ではなく、“体系を壊さずに密度を下げる”発想の方が、結果的に収量と労力が安定します。

ホコリダニ天敵カブリダニいちご併用

ダニ類の防除は、薬剤抵抗性や効果低下が背景にあり、天敵などの生物的防除が普及してきた経緯があります。
奈良県の促成いちごでは、ハダニ類・アブラムシ類・アザミウマ類などで殺虫剤の効果低下が進み、従来法だけでは防除が困難になっている、という問題意識が明確に示されています。
この“効きにくさ”は、ホコリダニ単体の話ではなく、ほ場全体の防除体系の設計問題として捉える方が強いです。
天敵の代表例として、ハダニ類にはチリカブリダニやミヤコカブリダニが使われます。

奈良県資料では、ミヤコカブリダニは花粉等を食べて定着できるため、ハダニが増える前に使える(予防的利用が可能)と説明されており、体系設計の核になります。

また「チリカブリダニだけでは発生初期に追いつかず急増する報告があるため、両種活用で安定が期待できる」とも述べ、複線化の重要性を示しています。

ホコリダニ“だけ”を天敵で完結させるのは簡単ではありませんが、実務上のメリットは別にあります。


それは、ハダニを天敵で安定させると、ダニ類全体に対して“薬剤を連打しない設計”が作りやすくなり、抵抗性リスクと散布回数を下げられる点です。

静岡県資料では、UV-B照射+光反射資材+天敵カブリダニの体系で、ハダニ類を長期間抑制しつつ農薬数の大幅削減が期待できる、とされています。

さらに同資料の現地試験では、慣行区に比べて農薬使用(剤数・回数)が削減され、体系としての省農薬化の方向性が示されています。

参考:UV-B+天敵で薬剤依存を下げる(設備条件・注意点が具体的)
静岡県「あたらしい農業技術 No.655」:UV-Bの照射条件、光反射資材、ミヤコカブリダニ・チリカブリダニ併用、冬季の障害注意などが具体的です

ホコリダニ独自視点いちご初発封じ動線

検索上位の多くは「薬剤名」や「おすすめ」に寄りがちですが、現場で差が出るのは“初発の封じ方”を作業動線に落とし込めるかどうかです。
奈良県資料が示すように、ホコリダニの初発は非常に局部的で1~数株程度から始まり、隣接株へ分散していくタイプです。
この性質は、薬剤や天敵以前に「見つけた時点での動き方」を変えるだけで被害総量を下げられる、という意味でもあります。
ここでは、ほ場で実行しやすい“初発封じの動線”を提案します(独自視点)。


  • 🔎 週2回の巡回で、見る場所を固定する:上位葉(新芽周り)+果面(痩果の縁の褐変)だけは必ず見る。​
  • 📍 症状株を見つけたら「中心株+左右2株+前後2株」をワンセットで扱う:初発が点で始まり隣接へ広がる性質に合わせて、作業単位を最初から“面の最小単位”にする。​
  • 🧺 摘葉のタイミングを体系と合わせる:天敵放飼後1~2週間は摘葉を控えるべき、という注意があり、作業で天敵を捨てる事故を避ける必要がある。​
  • 🧴 散布は「全体を薄く」より「発生中心を確実に」:局所発生段階で中心を潰せると、後半の散布回数・被害果の発生が減りやすい。​

さらに、ホコリダニ被害はアザミウマ被害に似るため、誤認による“無駄散布”が起こりがちです。

痩果(種子)周りの褐変という差を使えば、少なくとも「アザミウマだけを狙う散布を続けて泥沼化する」確率を下げられます。

初発封じの動線は、薬剤抵抗性や資材費とは別軸で効くので、上司チェックでも“現場の工夫”として説明しやすいはずです。