エスマルクDFは、バチルス・チューリンゲンシス(BT)由来の「BT水和剤」で、微生物を利用した殺虫剤として登録されています。農林水産省の農薬登録情報では、登録番号19885、用途は殺虫剤、剤型は水和剤で、成分は「BT菌の生芽胞及び産生結晶毒素」10.0%と示されています。これにより、化学合成農薬とは作用の考え方や効かせ方が少し異なるため、現場での“段取り”が成果を決めます。
エスマルクDFの重要な理解ポイントは「摂食効果」であることです。製品情報では、チョウ目害虫の幼虫に対して摂食効果を有し、接触効果はないと明記されています。つまり、葉面に薬液が付くだけでは足りず、害虫が処理葉を食べる状況を作ることが核心になります。
参考)https://www.greenjapan.co.jp/esmaruku_bt.htm
また、BT剤の中でもエスマルクDFは「生菌剤」である点が現場では効き方の体感に関わります。製品情報では、生菌剤であるため胞子を含まない死菌剤に比べて効果発現が速く、殺虫スペクトルも幅広くなる、と説明されています。BT剤は“万能の即効剤”ではない一方で、正しいタイミングを守るほど、必要十分な防除を安定させやすいタイプです。
エスマルクDFの適用範囲は広く、野菜類・果樹類(りんごを除く/含む)・稲・茶・花き類・観葉植物・樹木類などに適用表が設定されています。たとえば野菜類ではアオムシ、コナガが1000~2000倍、ヨトウムシ・オオタバコガが1000倍で、使用液量は100~300L/10a、使用時期は「発生初期(収穫前日まで)」が基本です。稲ではニカメイチュウ、フタオビコヤガ、イネツトムシ、コブノメイガが500~1000倍、60~150L/10a、発生初期(収穫前日まで)と整理されています。
果樹では、果樹類(りんごを除く)のハマキムシ類が2000~3000倍、シャクトリムシ類・ケムシ類は2000倍、使用液量は200~700L/10a、発生初期(収穫前日まで)です。りんごも同様にハマキムシ類・ケムシ類が2000~3000倍、シャクトリムシ類が2000~4000倍という設定で、作物・害虫によって上限下限が変わります。ここを「だいたいこのくらい」で運用すると、効き目のブレやコスト増につながりやすいので、適用表を“現場の仕様書”として扱うのが安全です。
茶ではチャドクガ、チャノコカクモンハマキ、チャハマキ、チャノホソガが1000倍、使用液量200~400L/10aで、使用時期は「発生初期(摘採7日前まで)」と収穫前日数が明確です。花き類・観葉植物は、オオタバコガ・コナガが1000倍、使用液量100~300L/10a、発生初期となっています。適用表を見て、作物名だけでなく「作物群」や「収穫前日まで/摘採7日前まで」の違いも必ず読み分けてください。
参考:登録情報(適用作物・希釈倍数・使用液量・使用時期の根拠)
農林水産省 農薬登録情報提供システム「エスマルクDF」(登録番号19885)
エスマルクDFは、ラベル・製品情報の注意点として「若令幼虫に有効なので、若令幼虫期に時期を失せず散布」することが強調されています。BT剤は“成虫を落とす”タイプではなく、幼虫が葉を食べる行動とセットで効くため、発生量が増え切ってからの散布はどうしても遅れになりがちです。発生初期の見逃しを減らすには、圃場を「被害が見えるか」ではなく「卵・若齢が出始めたか」で歩く頻度と観察点を変える必要があります。
実務では、エスマルクDFの“効くタイミング”を作るために、次のような手順が現実的です。
・葉裏や新葉、芯部など「食害が始まる場所」を中心に、若い幼虫の有無を短時間でも確認する
・発生初期に合わせ、散布後も圃場を見て「食害の進行が止まり始めたか」を追跡する
・散布液は調製後に放置せず、できるだけすみやかに散布する(効き目の再現性に直結)
なお、BT剤は抵抗性が問題になりやすい害虫(例としてコナガなど)に対し、現場で欠かせない基幹剤として広く使われている、という説明があります。これは「何でもBTだけで済む」という意味ではなく、“効く場面に確実に当てる”運用設計が重要ということです。化学系のローテーションの中で、発生初期にBTで密度を抑え、後半の荒れを作らない、という組み立ては検討価値があります。
エスマルクDFの使用上の注意として、アルカリ性の強い石灰硫黄合剤、ボルドー液などの農薬、さらにアルカリ性の強い葉面施用肥料などとの混用は避けるよう示されています。BTは“生物由来のタンパク質”を主に効かせる設計で、液性の強い影響を受けやすい場面があるため、タンクに入れる順番や混用相手の選別が、効かせ方の差になります。混用可否が曖昧な場合は、安易な同時散布より「日を分ける」方が被害を小さくできることが多いです。
保管面では、吸湿すると固化や効果低下が起こりうるため、湿気に注意し、使用残りは密封して乾燥した冷暗所に貯蔵するよう注意が出ています。ドライフロアブルは粉立ちが少なく計量しやすい一方で、保管管理が甘いと“次回、溶けにくい・ダマになる”などの実害が出やすいので、開封後の袋の扱いは作業標準に落とし込むのが得策です。現場でよくあるのは「効きが悪かった」の原因が散布技術ではなく、実は固化や保管不良だったケースです。
安全面の注意として、蚕に対する毒性があるため養蚕地帯や桑園周辺では施用しない、また飛散に注意することが明記されています。さらに、眼や皮膚への刺激性への注意、散布時のマスク・手袋・作業衣の着用、作業後の洗浄や衣服の分別洗濯など、基本的な安全使用の手順が並んでいます。生物農薬でも「安全装備は省略できない」と理解しておくと、作業品質が安定します。
検索上位の説明は「BT剤」「有機農法にも使用」「発生初期」といった要点に集まりがちですが、現場の成果を分けるのは“剤型を前提にした散布設計”です。エスマルクDFは先端の製剤技術としてドライフロアブルを採用し、製剤過程での殺虫性タンパクの変質を最小限にして高い殺虫活性を実現し、さらに粉立ちが少なく計量しやすい、と説明されています。ここから逆算すると、作業者の計量ミス・吸い込みリスク・投入時のロスを減らし、「散布の再現性」を上げる意図が読み取れます。
この“再現性”をさらに上げるコツは、散布液の調製と散布ルールを決めることです。製品情報では「散布液調製後は放置せず、すみやかに散布」「使用に当たっては展着剤を加用することが望ましい」とされています。展着剤の有無は葉面への付着性に影響し、BTのような摂食型では「幼虫が食べる場所に、必要量が残るか」を左右するため、展着剤の“選び方”以前に「加用するかしないか」を決めて現場で統一するだけでも結果が揃いやすくなります。
さらに、適用表にある使用液量(例:野菜類100~300L/10a、果樹200~700L/10a)を「最低量で済ませる」か「上限寄りで確実に濡らす」かは、圃場の葉量・樹冠・密植度で変わります。BT剤は接触効果がないため、ムラ散布で“食べていない葉”が多いと結果が鈍りやすいのが弱点になります。そこで、散布前に圃場の葉量を見て、液量レンジの中でどこを狙うかを決め、同じ圃場条件なら同じ設定で回す——この地味な運用が、翌年の作業を楽にします。
参考:製品の特長(ドライフロアブル、摂食効果、注意事項の根拠)
農薬情報サイト「エスマルクDF」(特長・使い方・注意事項)