ダイナミクス 土壌 炭素 微生物 団粒 透水性

ダイナミクス 土壌を「炭素」「微生物」「団粒」「透水性」の動きとして捉え、収量と環境の両立に効く見方と手順を整理します。現場の観察と診断をどう結びますか?

ダイナミクス 土壌

記事の概要
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土壌は「動く仕組み」で見る

炭素・水・空気・微生物の相互作用(ダイナミクス)を理解すると、施肥や耕起の判断が速くなります。

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診断は化学性だけで終わらせない

透水性や粗孔隙など物理性の指標をセットで押さえると、根域と収量のブレ要因が見えます。

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意外な論点:深い層の炭素

表層だけでなく下層までの炭素の動きが重要になる土壌タイプがあり、管理の狙い所が変わります。

ダイナミクス 土壌 炭素の動態と収量


土壌のダイナミクスを「炭素の動態」として捉えると、単なる土づくりが“収量・温暖化・肥料投入”の同時最適化に直結していることが見えます。農研機構は、主要穀物(トウモロコシ、コメ、コムギ、ダイズ、ミレット、ソルガム)について、表層30cmの土壌炭素量と収量の関係を機械学習で解析し、土壌炭素を増やす管理が増収や温暖化緩和、窒素肥料の節減につながり得ると定量的に示しています(増収効果には“頭打ち”がある点も重要です)。
現場での理解を助けるため、炭素を「貯める箱」ではなく「出入りする口座」と考えると整理しやすいです。投入(堆肥・残渣・根・被覆作物など)と、支出(微生物分解→CO2放出、侵食流亡など)が同時に起き、その差し引きが土壌炭素の増減になります。増えるときは、たいてい“投入が増えた”だけでなく、“分解のスピードが落ちた/安定化した”がセットで起きています。


参考)(研究成果) 農地の炭素量増加による3つの相乗効果を世界規模…

ここで注意したいのが、「炭素を増やす=何でも有機物を入れる」ではない点です。農研機構の結果でも、増収効果が見込める範囲を超えると収量の伸びは頭打ちになり得ると推定されており、作物・土壌・気候に応じて目標水準を現実的に置く必要があります。

ダイナミクス 土壌 微生物と団粒

土壌ダイナミクスの「エンジン役」は微生物です。有機物が入ると微生物が分解して栄養塩を放出し、同時に微生物バイオマスが増え、難分解性の有機物が残って団粒を安定化させる、という循環が整理されています。
団粒は一度できたら固定ではなく、形成と崩壊が繰り返される“動的”な構造です。団粒が壊れると内部の有機物が分解されやすくなり、炭素が無機化(CO2化)しやすい、という視点は、耕起砕土・過度な乾湿の振れを考えるうえで効いてきます。


参考)https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010872653.pdf

また、団粒の「接着剤」は一種類ではありません。微生物由来の粘着物質や菌糸などが粒子同士を結び、さらに動物(例:ミミズ)の関与も含めた生物相の働きで、団粒が発達しやすい環境が整うとされています。


参考)団粒構造とは? 植物が良く育つ土壌に必要な要素と土の作り方 …

このため、微生物を増やしたいなら“餌(有機物)”だけでなく、“住みやすさ(通気・水分・温度・過度な攪乱の少なさ)”まで含めて設計すると、ダイナミクスとして一貫します。

現場での観察ポイント(簡易)を挙げます。


  • スコップで掘った断面で、角ばった塊(団粒が少ない)か、粒状でほぐれる(団粒がある)か。
  • 雨の後に表面が硬い膜状(クラスト)になっていないか。
  • 根が“横に逃げる”層(硬盤・過湿層)がないか。

    これらは土壌炭素そのものの測定ではありませんが、炭素の「安定化(=団粒や鉱物との結合)」が進みやすい状態かどうかの当たりを付けるのに役立ちます。

ダイナミクス 土壌 透水性と粗孔隙

土壌のダイナミクスは、雨が降った瞬間に一気に可視化されます。水が「浸みるのか」「溜まるのか」「流れるのか」で、根域の酸素供給、微生物の働き、肥料成分の移動が変わるからです。
透水性の良否は、大きな隙間(粗孔隙)の多少に左右され、粗孔隙量として15〜20%(ほ場容水量時の空気量)が望ましく、10%以下では透水不良になりやすい、という目安が示されています。


参考)https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/attach/pdf/tottori01-9.pdf

この数字の意味は、「水が抜ける=根が呼吸できる=微生物の働きも安定する」という連鎖を、現場の改善目標に落とし込める点にあります。

透水性が悪い圃場で“有機物を増やして団粒化すれば解決”と考えたくなりますが、まずは原因を分けてください。


  • 表層のクラスト化(雨滴衝撃・細粒化)
  • 硬盤(機械踏圧・同じ深さの耕うん)
  • 排水不良(暗渠明渠・出口条件)
  • 土性(粘土質で水が停滞しやすい)

    原因によって、対策の優先順位(サブソイラ、排水、被覆、耕起体系の変更、投入資材の質)が変わります。

実務で使える「診断→手当て」の流れ(例)です。


  • 雨後24時間で水たまりが残る:まず排水路と出口を点検し、次に硬盤の有無を掘って確認。
  • 表面だけ締まる:被覆(残渣・草生)と、微細化しにくい耕うん条件の見直し。
  • 乾くとカチカチ:有機物投入だけでなく、過乾燥を避ける水管理・マルチ・通路の踏圧管理もセット。

    透水性は「測る」だけでなく、日々の作業設計に組み込むとダイナミクスとして効いてきます。

ダイナミクス 土壌 長期連用試験と堆肥

土壌のダイナミクスは“短期の手応え”と“長期の結果”が一致しないことがあります。だからこそ、同一圃場で管理の違いを長期に追う「長期連用試験」の知見は、現場の判断を助けます。
国際農研の45年以上の長期連用試験データ解析では、化学肥料と有機物(作物残渣や堆肥)の組合せが土壌炭素貯留量の増加に効果的で、特に堆肥の施用は作物残渣の還元より効果的であることが示されています。


参考)(研究成果) バイオ炭の農地施用による炭素貯留量を簡便に算出…

さらに、土壌タイプで炭素の増え方が変わり、粘土質では表層に集中しやすい一方、砂質では1.0mまで全層で効果が見られた、という結果は重要です。

この「砂質では深くまで効く」という話は、意外に見落とされがちです。深い層で炭素が増えると、根域が深く使える年(干ばつ年など)に差が出やすく、短期の見た目(表面がフカフカ)だけでは判断できない“持久力”に関わってきます。

また、国際農研はIPCCの算定基準(表層0.3m)を超えて、砂質土壌では下層への炭素貯留の評価も重要だと示唆しています。

農業者の目線に置き換えると、「表層改良だけを頑張っても、作柄の不安定さが残る圃場では、下層まで含めた根域設計(排水・踏圧・深耕・有機物の入れ方)」が論点になり得る、ということです。

ダイナミクス 土壌 独自視点:深層の炭素

検索上位では「表層30cmの炭素」「団粒」「微生物」が中心になりがちですが、現場の改善を加速させる独自視点として“深層の炭素”を前提にした管理設計を提案します。国際農研の長期試験では、砂質土壌で1.0mまで炭素貯留の有意な効果が見られ、表層評価だけでは見落としが出る可能性が示されています。
深層の炭素を増やす発想は、「深く耕す」だけではありません。鍵は“炭素を深く運ぶ仕組み”で、代表例は以下です。


  • 根を深く伸ばせる状態(硬盤・過湿の解消)を作り、根由来炭素を増やす。
  • 表層の有機物を分解させ過ぎず、根域で安定化しやすい環境を維持する。
  • 砂質で肥沃度が落ちやすい圃場では、有機物+化学肥料の組合せで土壌炭素と肥沃度の改善が同時に起き得る、という長期データの示唆を利用する。​

ここで「深層に効かせたいのに、表層にしか効いていない」サインも挙げます。


  • 表層だけ黒く、20〜30cm以深で根が減る。
  • 乾き始めると急に萎れる(深根化していない)。
  • 排水が悪い場所で特に生育がブレる(深い層が使えない)。

    この場合、炭素投入量の議論に入る前に、透水性・踏圧・硬盤といった“深さ方向の障害”を潰すほうが、土壌ダイナミクスの改善としては近道です。

——参考リンク(権威性のある日本語)——
世界の主要穀物で、土壌炭素増加が「増収・温暖化緩和・窒素肥料節減」にどう関係するかの定量結果。
(研究成果) 農地の炭素量増加による3つの相乗効果を世界規模…
45年以上の長期連用試験から「堆肥が残渣より効果的」「砂質では1.0mまで効果」「IPCC表層0.3m評価の限界」を示す。
https://www.jircas.go.jp/ja/release/2024/press202426
透水性診断の目安(粗孔隙量15〜20%が望ましい、10%以下で透水不良など)。
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/attach/pdf/tottori01-9.pdf




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