チャバネアオカメムシ幼虫の特徴と駆除対策

チャバネアオカメムシの幼虫はスギやヒノキで育ち、成虫が果樹園を加害します。幼虫の発生時期や見分け方、効果的な防除方法を知っていますか?

チャバネアオカメムシ幼虫の生態と被害

果樹園農薬散布しても幼虫はスギ林で育つため防除が無意味です。


この記事の3つのポイント
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幼虫期の特殊な生態

チャバネアオカメムシの幼虫はスギ・ヒノキの球果で育ち、成虫だけが果樹園を加害する特性がある

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発生時期と見分け方

1齢幼虫は餌を食べずに2齢に成長し、体色に個体変異があるため識別には注意が必要

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効果的な防除対策

果樹園での薬剤散布は夕方または早朝が効果的で、発生予察による適期防除が重要


チャバネアオカメムシ幼虫の成長過程とスギ・ヒノキとの関係


チャバネアオカメムシの幼虫は、果樹園ではなくスギやヒノキの林で育つという特殊な生態を持っています。成虫が5月から7月にかけてスギやヒノキの球果に産卵し、孵化した幼虫はその球果を餌として成長していきます。


幼虫は卵から孵化すると1齢幼虫となりますが、この段階では驚くべきことに餌を吸汁せずに2齢幼虫へと脱皮します。


餌を必要とするのは2齢幼虫期以降です。


体長は1齢で約1.8mm、2齢で3mm、4齢で5mmと段階的に大きくなり、5齢幼虫を経て成虫になります。


2齢幼虫にとってスギとヒノキでは餌としての価値が大きく異なります。研究によると、スギ球果を与えて飼育した2齢幼虫の生存率は約20%と極めて低いのに対し、ヒノキ球果を与えた場合の生存率は約70%まで上昇します。ただし、スギ球果でも球果内から取り出した種子を直接与えると、生存率はヒノキとほぼ同程度になります。つまり球果の殻の厚さが生存率に影響しているということですね。


この生存率の違いは、果樹園への飛来数に直接影響します。ヒノキ林が多い地域では、より多くの幼虫が成虫まで育つため、果樹園への飛来リスクが高まります。周辺のヒノキ球果の結実量を確認することで、その年の発生量をある程度予測できます。


農研機構の果樹研究所では、チャバネアオカメムシの詳しい生態情報が公開されています


チャバネアオカメムシ幼虫の発生時期と見分け方の重要ポイント

チャバネアオカメムシの発生時期は地域や年によって異なりますが、主な発生は5月から9月、特に6月から8月に集中します。成虫は4月中旬頃から活動を始め、5月上旬から7月下旬までの長期間にわたって果樹園に飛来する可能性があります。


幼虫の体色には顕著な個体変異があり、見分けが難しいことがあります。一般的には腹部背面が緑色ですが、個体によって淡緑色から褐色まで幅広い色調が見られます。さらに季節によっても体色が変化し、秋が深まると茶色っぱい色に変わっていきます。


光周期の変化が幼虫の体色に影響を与えることも分かっています。日照時間が1日15時間の長日条件から12時間へと短くなると、体色変化が始まります。終齢幼虫や成虫になる前に越冬型への準備として体色を変えていく仕組みです。


幼虫の齢数を判別するには、体のサイズと形状に注目します。1齢幼虫は体長約1.8mmで丸い体型をしており、2齢で約3mm、4齢で約5mmと段階的に大きくなります。5齢幼虫になると羽芽が明確に現れ、成虫への変態が近いことが分かります。


チャバネアオカメムシ幼虫と成虫の加害部位の違いを理解する

チャバネアオカメムシの幼虫と成虫では、加害する場所と対象が全く異なります。この違いを理解することが効果的な防除の第一歩です。


幼虫期はスギやヒノキの球果(種子)を吸汁して育ちます。特に2齢幼虫が球果の胚(養分が多い部分)を吸うことが成長上重要で、この時期に十分な栄養を得られないと死亡率が高まります。スギやヒノキの林では、幼虫が球果に吸汁すると発芽率が著しく低下し、森林の種子生産にも影響を与えます。


一方、成虫は果樹園に飛来して果実を加害します。カンキツ類、リンゴ、ナシ、カキ、モモ、ブドウなど多岐にわたる果樹が被害対象となり、幼果期の被害ほど深刻です。幼果期に加害されると果実は吸汁痕を中心に窪んで奇形となり、その後落果することもあります。成熟期の被害では、吸汁部がスポンジ状になって商品価値が失われます。


この生態の違いが防除を困難にしています。幼虫期をスギやヒノキで過ごし、成虫だけが農作物へ飛来して加害するため、果樹園でいくら農薬散布しても周りのスギ・ヒノキ林から次々と新しい成虫が飛来してきます。発生源での防除が困難なため、果樹園での被害防止が中心となります。


果樹園への飛来は餌不足がきっかけです。ヒノキやスギ林における球果の消耗、つまり餌としての質の低下により、新成虫が果樹園に飛来します。飢餓耐性が低い個体から順に移動を開始するため、球果の劣化程度を観察することで飛来時期の予測が可能になります。


チャバネアオカメムシ幼虫の効果的な駆除と防除対策の実践方法

チャバネアオカメムシの防除は、幼虫が育つスギ・ヒノキ林と成虫が加害する果樹園という二つの場所を考慮する必要があります。


果樹園での薬剤防除は、成虫の活動特性を活かすのが基本です。果樹カメムシは夜行性で、特に日没後から1時間が最も活発に活動します。そのため農薬散布は夕方または早朝に行うと効果的です。日中は球果や果実の陰に潜んでいるため、薬剤がかかりにくいという問題があります。


使用する薬剤にはネオニコチノイド系の「ダントツフロアブル」や「スタークル液剤10」、有機リン系の「スミチオン乳剤」、ピレスロイド系の「トレボン乳剤」などがあります。これらの薬剤には残効性や耐雨性に差があるため、飛来が多い果樹園では薬剤の特性を理解して使い分けることが重要です。


物理的防除として、袋かけが有効です。特に幼果期の吸汁被害は深刻なため、果実が小さいうちに袋をかけることで直接的な被害を防げます。ナシ、モモ、ビワ、ブドウなどでは有袋栽培により被害軽減が可能です。


果樹園周囲を目の細かい防風ネットで覆うことで、物理的に飛来を抑制する方法もあります。ただし設置コストと手間がかかるため、小規模園や高価値品種の栽培に限定されることが多いでしょう。


発生予察による適期防除が最も効率的です。周辺のヒノキ・スギ球果の結実量を前年秋に調査することで、翌年の発生量をある程度予測できます。球果量が多い年は発生が多くなる傾向があり、早めの警戒が必要になります。


集合フェロモンを利用した誘引トラップによる発生モニタリングも行われています。トラップでの誘殺数を確認することで、果樹園への飛来時期や密度を把握し、薬剤散布のタイミングを判断できます。発生初期に適切な防除を行うことで、被害を最小限に抑えられますね。


FMCジャパンの害虫Wikiでは、チャバネアオカメムシの防除方法が詳しく解説されています


チャバネアオカメムシ幼虫発生予測から見る次世代防除戦略

チャバネアオカメムシの防除において、発生予測技術の向上が新たな防除戦略の鍵となっています。従来の発生予察では、ライトトラップによる成虫の誘殺数調査が主流でしたが、より早期に正確な予測を行う手法が開発されています。


ヒノキ林における幼虫発生開始時期の推定法が確立されています。ヒノキ球果を採集して2齢幼虫を飼育し、生存率を調べることで、その年の幼虫発生時期の早晩を省力的に推定できます。球果が餌として有効になる時期と野外での幼虫発生消長には密接な関係があり、球果の成熟度から発生時期を逆算できるのです。


スギとヒノキでは増殖源としての価値が大きく異なることも、予測に活用できます。周辺林がスギ主体かヒノキ主体かによって、その年の発生量が変わってきます。ヒノキが多い地域では警戒レベルを上げる必要があるということですね。


振動を利用した新しい防除技術の研究も進んでいます。チャバネアオカメムシは振動に対する感受性を持つことが解明されており、特定の振動パターンを与えることで行動を制御できる可能性があります。この技術が実用化されれば、薬剤使用量を大幅に削減できる環境に優しい防除法となります。


地域全体での広域防除も効果的です。個々の果樹園だけでなく、地域の発生源であるスギ・ヒノキ林周辺での一斉防除や、防風林への薬剤散布を行うことで、地域全体の密度を下げることができます。ただし森林への薬剤散布は環境影響を考慮する必要があり、慎重な検討が求められます。


果樹園の立地選定も長期的な対策となります。新規に果樹園を造成する際には、スギ・ヒノキ林からの距離を考慮することで、飛来リスクを低減できます。カメムシの飛翔能力には限界があるため、発生源から離れるほど飛来数は減少します。


気象データと発生量の関係も明らかになってきています。暖冬の年は越冬成虫の生存率が高くなり、翌春の発生量が増える傾向があります。冬季の気温データから翌年の発生量をある程度予測し、早めの準備を行うことができます。


これらの予測技術と防除手段を組み合わせることで、より効率的で持続可能な防除体系の構築が可能になります。発生量が少ない年には薬剤散布回数を減らし、多い年には重点的に対策を講じるという、メリハリのある防除が実現できるでしょう。


愛知県が公開している果樹カメムシの発生予察マニュアルでは、具体的な調査方法が紹介されています




イッセイ(Issei) bibibi蟲 1.8#48 ミドリカメムシ