有機窒素肥料は「何を原料にするか」で、窒素の含有量だけでなく、効き始めるまでの時間、臭い、土の反応が変わります。現場でよく使われる代表は、油かす(油粕)、魚粉(魚かす)、発酵鶏ふんです。
油かすは「有機を代表する窒素肥料」として扱われ、ボカシ肥の材料にも使われます。
参考)有機質肥料(有機肥料)の種類と特徴・使い方
窒素を入れたいが、急に効きすぎて徒長させたくないときの“基準”になりやすい資材です(ただし土の温度と水分でブレます)。
参考)有機物と微生物による土づくり(3)
魚粉は窒素とリン酸を多く含むとされ、野菜の味に関係する話題でも触れられます。
同じ有機でも、油かすより「早く効いた」と感じる圃場が出やすいので、追肥寄りに組むと設計しやすいタイプです(生育後半の狙い撃ちに向く)。
発酵鶏ふんは三要素を含み、速効性で追肥にも使えると整理されます。
一方で“効きが早い=入れ方を間違えると過剰になりやすい”ので、株元ドカ入れよりも、畝間・条間で根の先に効かせる配置が安全です。
ここで意外と見落とされるのが、「同じ名前の資材でもロット差が大きい」点です。NPKが表になっていても、分解速度は原料の処理(発酵度合い、粒状/粉状)や水分で変わり、数字どおりに効かないことがあります。
(参考リンク:有機質肥料の種類・NPK・元肥/追肥の基本が一覧で整理されています)
有機質肥料(有機肥料)の種類と特徴・使い方
有機窒素肥料が「すぐ効かない」最大の理由は、施した窒素が最初から作物に吸える形ではなく、土壌微生物の分解を経て低分子化・可溶化し、養分として吸収される流れを取るためです。
つまり、有機窒素肥料の設計は“肥料の設計”であると同時に、“微生物の働きの設計”でもあります。
微生物は有機物を分解し、基質が減ると死滅し、その死菌体もまた分解されて養分供給に回ると説明されています。
この循環は、短期的な追肥というより、中長期の地力(地力窒素)を作る視点に近く、年をまたいで効いてくることがあります。
さらに、有機物の分解物残渣として腐植が残り、腐植が地力窒素の供給源として役割を持つこと、保肥力を高めて濃度障害を抑える緩衝能を上げること、リン酸固定を抑制することが述べられています。
「窒素を入れているのに、土が良くなると収量が安定する」背景には、こうした腐植の働きが絡みます。
ここは上司チェックで突っ込まれやすいポイントなので、言い切りで整理します。有機窒素肥料は“窒素がある”だけでは足りず、無機化しやすい土の条件(適度な水分・通気・温度・有機物の質)をセットにして初めて狙った時期に効く、という理解が実務的です。
(参考リンク:有機物が分解→無機化→吸収される流れ、腐植の役割がまとまっています)
有機物と微生物による土づくり(3)
有機質肥料の使い方の基本として、元肥は作付けの1週間前に散布して土にすき込み、追肥は畝間や株間など根が伸びていく先に穴や溝を掘って施し、土を被せる方法が紹介されています。
この「根の先に入れる」は、有機窒素肥料でも重要で、局所的に濃く入れると分解が偏ったり、根が近づいたタイミングで過剰になったりします。
施用時期の考え方は、即効性の化成肥料と真逆になりがちです。追肥で“今日入れて明日効かせる”は難しいので、「効かせたい日」から逆算し、気温が上がる季節ほど前倒し幅を短く、低温期ほど前倒し幅を長く取るのが現場の調整になります(無機化の速度が温度に左右されるため)。
また、有機質肥料には、油かすのようにボカシ肥の材料になりやすい資材があります。
自作ボカシで発酵が進むと、投入後の立ち上がりが読みやすくなる一方、仕込みのブレで効きが乱れるため、最初は「油かす単体+少量」から作型に合わせて詰めるのが安全です。
施肥量の話は、作物・土壌診断・資材の保証成分で変わるので、ここでは“事故を減らす運用”に寄せます。
有機物施用は微生物を活性化させる一方で、分解の過程で土中の窒素が微生物側に一時的に取り込まれ、作物側が窒素欠乏のように見える「窒素飢餓」が話題になります。
現場では「有機を入れたのに葉色が抜けた」「初期だけ伸びない」といった形で出やすく、対策の考え方を持っているかどうかで作が安定します。
営農コラムでは、有機物の分解が得意なバチルス菌と窒素の併用を提案している旨が記載されています。
参考)有機物をすき込んだら窒素欠乏?窒素飢餓のはなし - 営農コラ…
つまり、“分解を回すために窒素が必要”という見方があり、炭素が多い資材を入れたときほど、窒素側の設計(元肥の組み合わせ、追肥のタイミング)が効いてきます。
意外と盲点なのは、窒素飢餓の対策を「追肥の量を増やす」だけで済ませると、後半に効きすぎて品質を落とすケースがある点です。窒素飢餓は“初期の谷”なので、谷を浅くする(資材の粒度、すき込みの深さ、追肥位置、分解を回す工夫)発想のほうが、結果として総窒素量を減らせることがあります。
窒素飢餓を疑うサイン(目安)は、局所ではなく面で生育が止まり、気温上昇や雨の後に回復傾向が出るパターンです(無機化が進みやすくなるため)。
このとき、追肥を入れるなら「根の先に」「少量を複数回」という形が、効きすぎの事故を起こしにくい運用です。
(参考リンク:窒素飢餓の考え方と、バチルス菌×窒素併用の提案が読めます)
有機物をすき込んだら窒素欠乏?窒素飢餓のはなし
検索上位の解説は「種類」「使い方」「NPK」に寄りがちですが、収量と品質を同時に安定させたい現場では、“腐植が作る緩衝”を前提に追肥設計を見直すと効きます。
腐植は保肥力を高め、濃度障害を抑制する緩衝能の向上に関わることが述べられています。
ここでのポイントは、「追肥は効かせるために入れる」だけでなく「効きすぎないように入れる」という発想に切り替えることです。腐植が増えると、同じ量を入れても“急激な濃度変化”が出にくくなり、追肥の事故(局所過剰、根傷み、急な徒長)を減らしやすくなります。
この性質を利用して、元肥で有機物(有機窒素肥料を含む)を継続投入し、追肥は少量を刻む設計にすると、土が育つほど施肥の再現性が上がります。
さらに腐植はリン酸固定を抑制することが述べられています。
窒素の話をしているのにリン酸が出てくるのは重要で、初期生育の根張りが整うと、同じ窒素でも“吸える体”ができ、結果として窒素効率が上がることがあるためです(窒素だけ増やしても伸びない圃場の抜け道になります)。
実務的なアクションに落とすなら、次の3つです。