せとかを高品質で収穫している農家の8割以上は、摘果を「やりすぎ」と感じるほど徹底的に行っています。
せとかは「柑橘の大トロ」とも呼ばれるほど食味が優れていますが、その分栽培難易度は温州みかんと比較して明らかに高いとされています。農業試験場のデータによると、初年度のせとか栽培で満足のいく品質(糖度13度以上・酸度0.8以下)を達成できる農家は全体の40%程度にとどまるという報告もあります。
果皮が非常に薄く(約2〜3mm)、物理的な傷がつきやすいのが最大の特徴です。温州みかんの果皮が5〜7mm程度あることと比べると、外部環境へのダメージを受けやすさが全く異なります。
また、せとかは「隔年結果性」が強い品種です。つまり、豊作の年の翌年は着果が極端に減るというサイクルに陥りやすいということですね。このサイクルを防ぐには、毎年の摘果管理が欠かせません。
さらに、2月〜3月の収穫期に向けて秋口から果実の肥大が進みますが、この時期の気温変動に敏感で、急激な温度低下(5℃以下)が続くと浮皮や裂果が発生しやすくなります。厳しいところですね。
加えて、台木の選択も難易度を左右します。カラタチ台木では樹勢が強くなりすぎて着果しにくく、ヒリュウ台木では小玉果になりやすいという特性があるため、地域の土壌条件に合わせた台木選びが重要です。
せとか栽培における摘果は「やりすぎくらいでちょうどいい」という現場の声があるほど、徹底的に行う必要があります。目安としては、葉果比(葉の枚数に対する果実の比率)を50〜60枚に1果が基本です。
温州みかんの葉果比が20〜25枚に1果であることを考えると、せとかがいかに少ない着果数で管理が必要かがわかります。葉50枚=おおよそA4用紙1枚分の面積に1果だけ、というイメージです。
摘果は2回に分けて行うのが一般的です。
第2回摘果を怠った場合、果実1個あたりの可食部重量が目標の250g前後に達せず、150〜180g程度の小玉で終わるケースが多く報告されています。出荷規格(2Lサイズ以上)に満たない果実が増えることで、農家1反(約10アール)あたりの収益が2〜3万円程度損失になる可能性もあります。痛いですね。
摘果と同時に確認したいのが、果実の扁平率です。せとかは扁平形(上下方向が短い)が特徴ですが、縦横比が1:1に近い球形になっている果実は、着果部位や樹勢に問題がある可能性があります。早めに摘果候補として処理しましょう。
せとかは果実の糖度を高めるために、窒素・リン酸・カリウムのバランスが非常に重要です。窒素過多になると果皮が厚くなり食味が落ちるため、施肥量の設定には注意が必要です。
一般的なせとかの施肥体系は以下の通りです。
| 時期 | 施肥の目的 | 窒素(N)量の目安 |
|---|---|---|
| 3月(春肥) | 新梢促進・着花安定 | 成木1本あたり50〜70g |
| 6月(夏肥) | 果実肥大促進 | 30〜50g |
| 9月(秋肥) | 糖度向上・翌年の花芽分化促進 | 40〜60g |
秋肥のタイミングが遅れると、糖度上昇に必要な炭水化物の蓄積が不十分になります。つまり秋肥は9月末までが原則です。
また、カルシウム欠乏にも注意が必要です。果実内のカルシウムが不足すると「果肉褐変症」が発生しやすくなり、外見は問題なくても切ってみると果肉が茶色く変色しているケースがあります。これは出荷後のクレームに直結するため、収穫1〜2ヶ月前の葉面散布(塩化カルシウム0.3%液)が有効です。
土壌pHの管理も重要で、せとかの適正pHは5.5〜6.5です。酸性が強くなるとカルシウムやマグネシウムの吸収が阻害されるため、年1回の土壌診断をおすすめします。JAや農業改良普及センターで診断を依頼すれば、費用は1検体あたり1,000〜3,000円程度が目安です。これは使えそうです。
せとか栽培で最も注意が必要な病害は「かいよう病」です。果皮が薄いせとかはかいよう病の感染を受けやすく、感染した果実は外観が著しく損なわれ、商品価値がほぼゼロになります。
かいよう病はXanthomonas axonopodisという細菌が原因で、降雨や風による飛散で感染が広がります。特に展葉直後の新葉は感染しやすく、春〜夏の新梢展開時期(4月〜7月)が最も警戒が必要な時期です。
そうか病は糸状菌(かび)が原因で、主に幼果や新葉に「いぼ状の突起」が形成されます。感染果は外観品質が低下し、秀品率に直接影響します。ダコニール1000やベンレート水和剤などの殺菌剤を、発病前の予防散布として5月〜6月に行うのが基本です。
農薬散布の記録はPCやスマートフォンのアプリで管理するのが効率的です。「アグリノート」などの栽培管理アプリを使えば散布履歴を一元管理でき、散布間隔の確認や収穫前日数の計算ミスを防ぐことができます。
農林水産省:農薬に関する情報(登録農薬・使用基準の確認に活用)
あまり語られることが少ないのが、せとかの「着色遅延」問題です。温州みかんが10〜11月に着色するのに対し、せとかの完全着色は早くても12月下旬〜1月、地域によっては2月以降になることもあります。この着色遅延は糖度や酸度の問題とは別に起きるため、「見た目が緑なのに食味は完熟」という状態が続き、収穫適期の判断を難しくします。
着色は果皮内のクロロフィル(緑色素)がカロテノイド(橙色素)に転換されることで進みますが、この転換には気温の低下が必要です。夜温が10℃以下になることでクロロフィル分解が促進されるというのが一般的な理解ですね。
ここで注目したいのが「樹冠の被覆管理」です。収穫3〜4週間前(11月下旬ごろ)にシルバーポリマルチを樹冠下に敷くことで、反射光による果面温度の低下と光合成促進を同時に狙う方法が実践農家の間で試されています。
また、せん定によって「なり枝(結果母枝)の位置を樹冠外側に集める」設計にすると、果実への直射日光量が増え、着色促進につながります。内側の徒長枝は早めに除去し、外向きの枝を残す方針でせん定を組み立てるのがポイントです。
着色が遅れた果実を見た目で早期収穫してしまうと、酸度が1.5以上残った状態となり、食味が著しく悪化します。収穫適期の判断は糖酸比(糖度÷酸度)で15〜20を目安とするのが条件です。簡易糖度計(屈折式)は1本3,000〜5,000円程度で入手できるため、収穫判断に活用することをおすすめします。
農研機構:カンキツ類の栽培管理マニュアル(せとかを含む栽培指針の参考に)
愛媛県農業協同組合(JAえひめ):せとかの主要産地による栽培情報・技術指導資料