作土層が深いほど収量が上がると信じている農業者は多いですが、実は作土深15cm未満の圃場でも適切な管理次第で収量差がほぼ出ないケースが報告されています。
作土深とは、耕起・施肥・根の活動が主に行われる表層土壌の深さのことです。一般的に水田では15〜20cm、畑では20〜30cmが「理想的な作土深」とされています。この数値はA4用紙の縦幅(約29.7cm)と比べるとイメージしやすいですね。
作物の根は作土層の中で養分と水を吸収します。作土が浅いと根域が制限され、乾燥ストレスや養分不足が起きやすくなります。つまり作土深は収量の土台です。
農研機構の研究では、水稲の作土深が1cm深くなるごとに約2〜3%の増収効果が見られたデータもあります。10aの水田で考えると、作土を5cm深くすることで収量が10%以上改善する可能性があります。これは使えそうです。
一方で、やみくもに深く耕せばいいわけではありません。心土(作土層の下)をむやみに混入させると土壌の物理性が悪化するリスクがあります。深さの管理が条件です。
測定方法は主に3種類あります。目的と予算に応じて使い分けることが大切です。
スコップ法だけで十分と思いがちですが、色の変化が明確でない黒ボク土や灰色低地土では判断を誤ることがあります。意外ですね。
硬度計を使う場合、測定は必ず圃場内の5か所以上で行い、平均値を出すことが推奨されています。1か所だけで判断すると、圃場の局所的なばらつきに引きずられる危険があります。測定点数が条件です。
農業改良普及センターや都道府県農業試験場では、土壌断面調査を無料または低コストで依頼できる場合があります。まず最寄りの普及センターに相談する、という行動1つで済みます。
作物の種類によって目標とする作土深の基準は異なります。一律に「深ければよい」は間違いです。
| 作物・圃場種別 | 目標作土深 | 備考 |
|---|---|---|
| 水稲(水田) | 15〜20cm | 15cm未満は収量低下リスク大 |
| 大豆・麦(畑) | 20〜25cm | 排水性確保も同時に必要 |
| 野菜(根菜類) | 30cm以上 | ダイコン・ニンジンは特に重要 |
| 果樹園 | 40〜60cm | 深根性のため深耕が効果的 |
水田では20cmを超えると「深耕」と分類され、専用の深耕ロータリーが必要になります。通常のロータリー耕では15〜18cm程度が上限です。道具の限界が基準です。
畑の大豆栽培では、作土深が20cm未満だと根粒菌の活動域が狭まり、窒素固定量が減少するという研究結果があります。施肥コストの増加につながるため、見逃せないポイントです。
根菜類を栽培する場合、作土深30cm未満ではダイコンが曲がったり二股になったりする「又根」が多発します。出荷規格外品が増え、収益に直接影響します。痛いですね。
農林水産省の「農業生産基盤整備」指針でも、汎用耕地の作土深確保は生産性向上の基本条件として位置づけられています。
農林水産省:農業生産基盤整備に関する情報(作土深確保・排水対策の基本方針を確認できます)
測定結果が基準を下回っていた場合、対策は大きく3つに分かれます。どの場面の問題なのかを先に確認することが重要です。
まず、作土が単純に浅い場合は「深耕(しんこう)」が有効です。サブソイラーや深耕ロータリーを使って耕起深を20〜30cmに拡大します。ただし1回の深耕では土壌構造が不安定になるため、2〜3年かけて段階的に深めるのが原則です。
作土深は十分だが硬盤層(こうばんそう)が問題の場合は「心土破砕(サブソイリング)」が効果的です。硬盤層とは、耕起・機械走行の繰り返しで固まった非透水性の層で、深さ25〜40cm付近に形成されます。これが排水不良や根の伸長障害を引き起こします。つまり作土深だけ測っても不十分なケースがあります。
施肥設計への応用も重要です。作土深が浅い圃場では肥料の保持容量も少なく、施肥した窒素が流亡しやすい傾向があります。分施(施肥を分割して行う)や緩効性肥料の利用が有効です。肥料コストと環境負荷の両方を下げられます。これが条件です。
農研機構:土壌管理技術パンフレット(作土深・硬盤破砕に関する実証データが掲載されています)
測定は一度やって終わりではありません。年1回の定点観測が圃場の変化を早期に捉える鍵です。
測定結果を記録せずに「だいたい覚えている」で管理している農業者は少なくありません。しかし作土深は年間0.5〜1cmずつ浅くなることがあり、5〜10年で気づかないうちに5cm以上損失しているケースがあります。これは見逃せない変化です。
記録の方法はシンプルで構いません。
記録さえあれば問題ありません。農業日誌やスマート農業アプリ(例:agri-note、クボタのKSAS)を活用すると、圃場ごとのデータを一元管理できます。確認するという行動1つで十分です。
また、地域の農業改良普及員や農協の営農指導員に測定結果を共有することで、地域全体の土壌改良計画と連携できます。個人の記録が補助金申請(農地中間管理機構関連の基盤整備事業など)の証拠書類になる場合もあります。記録が条件です。
作土深測定は特別な技術がなくても始められます。まずスコップ1本で圃場を掘ってみることが、収量改善の第一歩になります。
新潟県農林水産部:土壌診断と作土深改善の手引き(現場レベルの測定手順と記録方法が詳しく解説されています)

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