パキラは中南米を原産とする常緑高木で、その育てやすさとインテリア性の高さから、室内観葉植物として不動の人気を誇ります。「発財樹(Money Tree)」という別名を持ち、風水的にも金運アップや商売繁盛の効果があるとされ、オフィスや家庭のリビングに置かれることが多い植物です。しかし、いくら丈夫なパキラとはいえ、室内環境特有の「光量不足」や「通気性の悪さ」が原因で、気づかないうちに株が弱ってしまうケースは少なくありません。
室内でパキラを美しく健康に育てるためには、自生地である熱帯環境を擬似的に再現しつつ、日本の四季に合わせたメリハリのある管理が必要です。特に重要なのは、植物の「光合成」と「呼吸」を妨げない環境づくりです。室内管理では、屋外と違って自然の風や雨がないため、飼い主が意識的に水と風、光をコントロールしなければなりません。これから解説する各ポイントを押さえれば、初心者の方でも枯らすことなく、青々としたパキラを長く楽しむことができるでしょう。
農薬や肥料の専門メーカーが解説する、基本に忠実な育て方の記事です。
【パキラの育て方】植え替えのコツを紹介します - HYPONEX
パキラは「耐陰性」という日陰に耐える力を持っていますが、基本的には日光を好む植物です。室内で育てる場合、置き場所の選定がパキラの健康状態を左右する最大の要因となります。
理想的な置き場所の条件
もっとも推奨される場所です。パキラは強い直射日光、特に真夏の西日に当たると「葉焼け」を起こし、葉が白く変色して枯れてしまいます。レースカーテンで光を和らげることで、森林の木漏れ日のような環境を作ることができます。
エアコンの乾燥した風や冷気は、植物にとって大敵です。直接風が当たると、葉の水分が急速に奪われて乾燥し、ハダニなどの害虫が発生しやすくなるほか、極端な温度変化でストレスを受け、落葉の原因になります。
参考)パキラの育て方・栽培方法
部屋の隅は空気が滞留しやすく、光も届きにくいため、パキラが「徒長(とちょう)」しやすくなります。徒長とは、光を求めて茎だけがひょろひょろと長く伸びてしまう現象で、株の体力が落ち、見た目も悪くなります。
日照不足のサインと対策
もしパキラの葉の色が薄くなったり、茎の間隔が間延びしてきた場合は、日照不足のサインです。この場合、急に直射日光に当てるのではなく、数日かけて徐々に明るい場所へ移動させるか、週に2〜3日、午前中の柔らかい光に当てる「日光浴」を行うと良いでしょう。ただし、真夏の屋外への移動は葉焼けのリスクが高いため注意が必要です。
参考)観葉植物 パキラ|育て方 知識 モール人気ランキング上位
建材メーカーが提案する、インテリアとしてのパキラの配置と環境についての記事です。
パキラの育て方 観葉植物を室内で育てる方法と環境にやさしい... - DAIKEN
「水やり3年」と言われるほど、植物の水やりは奥が深く、特に室内栽培のパキラを枯らす原因のNo.1は「水のやりすぎによる根腐れ」です。パキラは幹の部分に水分を蓄える性質があるため、乾燥には比較的強い植物です。常に土が湿っている状態は、根が呼吸できずに窒息し、腐ってしまう原因となります。
参考)https://andplants.jp/blogs/magazine/pachira
季節ごとの水やりのメリハリ
この時期はパキラがぐんぐん成長するため、水をよく吸収します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと与えてください。受け皿に溜まった水は必ず捨てましょう。溜めたままにすると、そこから雑菌が繁殖したり、根腐れを誘発したりします。
気温が下がると成長が緩やかになり、水をあまり吸わなくなります。この時期の水やりは「控えめ」が鉄則です。土の表面が乾いてから、さらに2〜3日(環境によっては1週間)待ってから水を与えます。土の中までしっかり乾かすことで、パキラの樹液濃度が高まり、耐寒性が増す効果もあります。
葉水(はみず)の重要性
水やりとは別に、霧吹きで葉に水をかける「葉水」は毎日行うのが理想的です。室内は特にエアコンなどで乾燥しがちです。葉水には以下の効果があります。
根腐れを疑うべき症状として、「土が湿っているのに葉がしおれる」「幹の根元がブヨブヨしてくる」「異臭がする」などがあります。こうなった場合は、直ちに水やりを中止し、乾燥させて様子を見るか、腐った根を取り除いて植え替えを行う必要があります。
参考)https://andplants.jp/blogs/magazine/pachira-overwinter
室内でパキラを長く育てていると、枝が天井まで伸びてしまったり、葉が茂りすぎてバランスが悪くなったりします。適切な「剪定(せんてい)」は、見た目を整えるだけでなく、株の内部の風通しを良くし、病害虫を防ぐために不可欠な作業です。
剪定に最適な時期
剪定はパキラの体力を消耗する作業なので、成長が旺盛で回復力の高い「5月〜7月」に行うのがベストです。冬場や真夏の猛暑日に剪定を行うと、株が弱って枯れ込むリスクがあるため避けましょう。
参考)パキラの育て方|枯れるのは水やりのせい?初心者が失敗しないコ…
剪定の具体的な手順
どのくらいの高さにしたいか、どの方向に枝を伸ばしたいかを事前にイメージします。
パキラの幹や枝にある、節のような横線や少し膨らんだ部分のすぐ上に「成長点(新芽が出る場所)」があります。この成長点の少し上(1〜2cm上)をカットすることで、そこから新しい芽が伸びてきます。成長点を残さずに切ってしまうと、新芽が出にくくなるので注意が必要です。
剪定後のケア
剪定直後は、切り口から雑菌が入らないように注意します。太い枝を切った場合は、市販の癒合剤を塗っておくと安心です。また、剪定後は葉が減って水分の蒸散量が減るため、水やりの頻度を少し控えめにし、直射日光の当たらない明るい日陰で休ませてあげましょう。新しい芽が出てきたら、徐々に通常の管理に戻します。
園芸用品メーカーが解説する、剪定や植え替え、病害虫対策に特化した記事です。
パキラに元気がない・枯れそうなときはどうする?7つの原因... - 住友化学園芸
パキラは熱帯植物であるため、寒さは苦手です。日本の冬、特に冷え込む夜間の室内管理には細心の注意が必要です。枯らしてしまう原因の多くは、冬場の温度管理と水やりの失敗にあります。
最低温度の確保
パキラが健全に冬越しするためには、最低でも「5℃〜10℃」以上の室温が必要です。日中は暖房が効いていて暖かくても、夜間や明け方は急激に室温が下がることがあります。
参考)パキラに元気がない・枯れそうなときはどうする?7つの原因・対…
参考)https://shop.miipas.com/blogs/plants/pachira-over-the-winter
冬場の肥料について
冬はパキラの成長が止まる「休眠期」にあたります。この時期に肥料を与えると、根が養分を吸収しきれずに「肥料焼け」を起こし、最悪の場合は枯れてしまいます。冬場は肥料(置き肥、液肥ともに)を一切与えず、水やりのみで管理します。もし活力剤を与えたい場合は、肥料成分の入っていないリキダスなどの植物活力液を規定倍率より薄めに希釈して与える程度に留めましょう。
冬の水やりトラブル
前述の通り、冬は「乾燥気味」が基本ですが、暖房器具を使用している室内は極度に乾燥していることがあります。土は乾かしつつも、葉水はこまめに行い、湿度を保つことが重要です。また、冷たい水道水をそのまま与えると根がショックを受けるため、汲み置きをして室温(20℃程度)に戻した水を与えるのがプロのコツです。
観葉植物専門店が教える、冬のトラブル(葉の黄変や落葉)への具体的な対処法です。
パキラの冬越し方法|トラブルと対処法について - AND PLANTS
検索上位の記事でもあまり深く触れられていないポイントですが、室内でのパキラ栽培において「風(空気の循環)」は、光や水と同じくらい重要です。自然界では常に風が吹いており、植物は風を受けることで気孔の開閉を調整し、蒸散を促し、根から水を吸い上げるポンプの役割を果たしています。また、風に揺られることで幹が太く丈夫になるという効果もあります。
サーキュレーターが必要な理由
最近の高気密住宅では、換気をしないと空気が動かず、植物の周りに湿気が滞留します。これはカビや根腐れ、害虫の温床になります。
風通しが悪いと、パキラは弱々しく育ちがちです。適度な風を当てることで、引き締まった株に育ちます。
サーキュレーターの正しい使い方
最強の風を至近距離で当て続けるのはNGです。植物が乾燥しすぎてストレスになります。「首振り機能」を使い、部屋の空気を大きく循環させるイメージで回します。
パキラに直接向けるのではなく、壁や天井に向けて風を送り、その跳ね返りの「微風」がパキラの葉を優しく揺らす程度が理想的です。
特にたっぷりと水やりをした後は、鉢内の水分が過剰になりがちです。サーキュレーターで鉢の周りの空気を動かすことで、土の表面の乾燥を促し、根腐れのリスクを大幅に下げることができます。
24時間回し続ける必要はありませんが、日中の数時間や、外出して窓を開けられない時、梅雨時期などは積極的にサーキュレーターを活用してみてください。これだけで、パキラの葉の色ツヤや元気さが劇的に変わることがあります。室内園芸のプロは、光よりも風を重視することさえあるのです。