わき芽管理で最初に押さえる基準は「一番花」です。万願寺とうがらし(甘とうがらし系)は、一番花の上で枝が分かれていく性質があるため、まず一番花の位置を見つけることが作業の起点になります。
現場での基本動作はシンプルで、一番花が咲く頃に「一番花より下のわき芽はすべて摘み取る」が定石です。これは主枝を太らせて樹勢を作り、株元の風通しを上げて病気リスクも下げるための合理的な整理です。
ただし、摘むタイミングが遅れると「わき芽側にも養分が配られた後」になり、主枝づくりが遅れやすくなります。伸びすぎたわき芽を一気に取りすぎると、株が一時的に失速するケースもあるので、理想は小さいうちに“こまめに”です。
具体的には、葉の付け根から出る小さな芽を見つけたら、手でひねって取れるうちに処理するのが早くて確実です(硬くなったらハサミで切り、切り口を荒らさない)。
ここでよくある誤解が、「一番花より上も全部わき芽だから取るべき」という判断です。上位は“結果枝(実を付けて支える枝)”として必要になる局面が出るため、初期は下位を徹底し、上位は“込み合い”と“狙う仕立て本数”で選別する方が失敗しにくいです。
参考:一番花の下のわき芽を摘み取る基準(わき芽かきの位置と理由)
農家web「プランターで始める 万願寺とうがらし栽培」
わき芽処理は「取る/取らない」ではなく、最終的にどの枝を主枝にするか=仕立て方の設計です。仕立て本数の定番は2本・3本・4本で、圃場の密植度、支柱・誘引の方式、作業者の回転、狙う果実サイズで最適解が変わります。
甘とうがらし系(シシトウの栽培整理の考え方)は、1番花より下のわき芽を摘み、主枝を複数本に仕立てる運用が基本として整理されています。さらに、主枝から出るわき芽は「3葉で摘心」など、枝を増やしすぎないための“ルール化”が現場の省力にも直結します。
仕立て本数を決めると、わき芽処理の判断が一気に楽になります。例えば「今年は4本で回す」と決めたら、“残す枝”は4本だけで、他は早めに落とす。逆に「2本で太らせる」なら、残す2本以外は迷わず整理し、葉が重なるところから優先的に間引く。
この“先に設計、後で剪定”の順番が、収穫期の作業爆発(枝が込み合ってから慌てて切る)を防ぎます。
参考:1番花より下のわき芽を摘み、4本仕立て、わき芽は3葉で摘心(整枝の基準)
施設園芸.com「シシトウの栽培方法と育て方!支柱作りやわき芽処理のコツ」
わき芽作業は「どれを取るか」より、「いつ・どの順でやるか」で精度が上がります。おすすめの手順は、(1) 一番花の位置確認 → (2) 一番花より下のわき芽を全摘み → (3) 残す主枝の本数を確定 → (4) 支柱と誘引を先回りで追加 → (5) その後は込み合いチェック、の流れです。
作業のコツは、わき芽を取る前に“通路側から株の芯を覗き”、内向きの枝が増えていないかを確認することです。内側に伸びる枝は、実を付けても収穫しづらく、湿りやすく、葉がこすれて傷みやすいので、早い段階で優先的に整理すると圃場の見た目も締まります。
また、主枝を残した後は「誘引」が実質的な樹勢コントロールになります。ひもを緩めると枝が開き、光が入りやすくなって着果側に傾けやすい、逆に締めると枝が立ち上がり栄養生長寄りになりやすい、という“微調整”が可能です。
この性質を知っておくと、わき芽を取ったのに樹が暴れる(葉ばかり茂る)/逆に実が止まる、といったときに「切る」以外の手が打てます。
剪定ばさみを使う場面もありますが、初期の小さな芽は手で処理できるうちに終わらせる方が早く、切り口も最小限になります。硬く育った枝を切るときは、雨の直前は避け、作業後に株元が蒸れないよう下葉や密集葉も合わせて整理すると、病気の入口を減らしやすいです。
なお、わき芽は同じ場所から何度も出るため、「一回やったから終わり」になりません。圃場の巡回ルーティンに組み込み、週1回でも良いので“新芽チェック日”を固定すると、急に作業量が跳ねるのを防げます。
わき芽をきれいにしても、品質が荒れる圃場は「水肥」が抜けていることが多いです。甘とうがらし系はストレスで辛味が出やすいと言われ、特に高温乾燥は要注意で、真夏のかん水が重要だと整理されています。
つまり、わき芽を取って“葉の蒸散が安定した”タイミングほど、水切れを起こすと一気にストレスが乗りやすいので、整枝後の数日は土の乾き方を意識して見ます。
追肥も同様で、長期どり作型では肥料切れが出やすいです。結果として、曲がり果が増える、ツヤが落ちる、樹勢が戻らない、といった「成り疲れ」のサインが出たら、わき芽の取り方だけを疑うのではなく、水肥の点検を同時に行う方が復帰が早いです。
特に“収穫を遅らせる”と株が疲れる点は重要で、未熟果を適期で回収し続けること自体が樹勢維持につながります。わき芽を整理して収穫しやすい株姿を作るのは、実はこの「取り遅れ防止」の意味も大きいです。
チェックの目安(現場向けに短く)
参考:高温乾燥で辛味が出やすく、真夏のかん水が重要(品質安定の水管理)
施設園芸.com「シシトウの栽培方法と育て方!支柱作りやわき芽処理のコツ」
検索上位の定番は「一番花より下を取る」「仕立て本数を決める」ですが、現場で差が出るのは“わき芽の出方”を株の状態診断に使う視点です。わき芽は単なる邪魔枝ではなく、株が今どちらに傾いているか(栄養生長に寄っているか、負荷で弱っているか)を知らせるサインになり得ます。
例えば、急にわき芽が旺盛に出て葉が厚くなり、節間も伸びるなら、窒素が効きすぎている、灌水が安定して暴れやすい、誘引が立ちすぎている、など“攻めすぎ”の可能性があります。ここで全部を強剪定すると、さらに栄養生長が加速してしまうことがあるため、対策は「わき芽を全滅」ではなく、まず光の入り方と枝の向きを整えて、必要な枝だけ残し、収穫を回して生殖側へ戻す、という順が安全です。
逆に、わき芽が出ない・葉が小さい・新芽が止まるときは、株が弱っていることが多く、ここで強く取りすぎると回復が遅れます。こういう局面では、わき芽を“あえて少し残して葉面積を確保”し、先に水肥と根域(過湿・乾燥の偏り)を整えてから、回復に合わせて整理する方が収量の谷を小さくできます。
この読み方を入れると、わき芽処理が「教科書どおりの固定作業」から、「株の状態に合わせた制御」に変わります。万願寺とうがらしは収穫期間が長いので、初期の正解よりも、途中から崩れた株を“戻す技術”が収量差として出やすいです。
最後に、わき芽の判断に迷ったら、次の一文だけ覚えておくと整理が早いです。
「収穫の動線を邪魔し、内側に影を作り、風を止める枝は早めに落とす。収穫を支え、外へ開き、光を受ける枝は残す。」