クワシロカイガラムシ農薬選び方と防除適期の見極め方

クワシロカイガラムシの防除は散布タイミングが命。わずか4日間の防除適期を逃すと効果が激減し、多発生が2〜3年続く事態になります。効果的な農薬選びと散布方法、発生予測のポイントを知っていますか?

クワシロカイガラムシ農薬の選び方と防除方法

孵化直後の4日間を逃すと農薬は効きません


この記事の3つのポイント
防除適期はわずか4日間

孵化盛期の2〜5日後に散布しないと介殻で覆われ農薬が効かなくなる

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散布量は通常の2.5〜5倍必要

10aあたり1000リットルの多量散布で枝幹に薬液を十分付着させる

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冬期1回散布で年間防除可能

IGR剤プルートMCは1〜3月散布で第1〜3世代まで効果持続


クワシロカイガラムシ防除が難しい理由



クワシロカイガラムシは茶園の難防除害虫として知られています。防除が困難な最大の理由は、幼虫が定着後すぐにろう物質の介殻で覆われてしまうためです。介殻に覆われると農薬が虫体に到達できず、どれだけ散布しても効果が得られません。


防除できるのは介殻を持たない孵化直後の幼虫だけで、その期間はわずか3〜4日間程度しかありません。孵化幼虫は長径0.3mm程度の小判形で非常に小さく、母介殻から這い出した後、分散・定着・加害を開始します。定着後は移動することなく、次第にろう物質の介殻で覆われていくのです。


つまり防除適期を逃すと、次の世代まで待つしかないということですね。


さらに難しさに拍車をかけるのが寄生場所です。クワシロカイガラムシは樹冠内の枝や幹に寄生するため、薬剤が付着しにくい位置にいます。通常の茶の病害虫防除では10aあたり200〜400リットルの散布量ですが、クワシロカイガラムシ防除には10aあたり1000リットルという多量の薬液散布が必要になります。


これは通常の2.5〜5倍の散布量です。


農林水産省の発生予察情報に基づく適期防除指導(PDF)では、有効積算温度則を用いた幼虫孵化最盛期の予察法が詳しく解説されています。


クワシロカイガラムシに効果的な農薬の種類

クワシロカイガラムシ防除に使用される農薬は、大きく分けて3つのタイプがあります。それぞれの特徴と使い分けを理解することが効果的な防除につながります。


従来型殺虫剤(接触型)は、孵化幼虫に直接接触して効果を発揮するタイプです。コルト顆粒水和剤やアプロード水和剤などが代表的で、孵化盛期の2〜5日後に散布します。効果は高いものの、散布タイミングを見極める必要があり、年3回の発生に合わせて各世代ごとに防除が必要です。散布量は必ず10aあたり1000リットルを確保し、枝幹に十分薬液がかかるよう丁寧に散布してください。


どういうことでしょうか?


IGR剤(昆虫成長制御剤)の代表がプルートMC(成分名:ピリプロキシフェン)です。このタイプは成虫の越冬休眠期である1〜3月に1回散布するだけで、第1世代から第3世代まで長期間効果が持続します。「待ち伏せ型防除」と呼ばれ、幼虫の孵化時期を見極める必要がないため、防除適期を逃す心配がありません。抵抗性クワシロカイガラムシにも有効で、天敵への影響も少ないという特徴があります。


住友化学のプルートMC製品情報には、使用方法と効果の詳細が記載されています。


マシン油乳剤は、主に10月〜3月の休眠期に使用される農薬です。日農スプレーオイルやトモノールSなどが登録されており、50〜150倍に希釈して散布します。油膜で呼吸を阻害して防除する物理的な作用なので、化学合成農薬ではなく使用回数制限がありません。ただし、クワシロカイガラムシ対象の場合は散布量を十分にし、樹幹がよくぬれるように散布することが重要です。


クワシロカイガラムシの発生時期と防除タイミング

クワシロカイガラムシは地域によって発生回数が異なります。本州の一般的な茶産地では年3回発生し、第1世代が5月中旬〜下旬、第2世代が7月中旬〜下旬、第3世代が9月中旬〜下旬に孵化幼虫が発生します。山間冷涼地では年2回、南九州などの暖地では年4回発生することもあります。


防除適期は各世代の孵化盛期から2〜5日後です。この短い期間を逃すと、幼虫がろう質のカイガラで覆われ、農薬の効果が著しく低下します。産卵時期に散布しても卵には効果がなく、定着後に散布しても介殻に阻まれて虫体に到達できません。


第1世代の防除が最も重要です。


第1世代は発生が比較的揃うため、防除効果が高く、この時期にしっかり防除すれば第2世代以降の発生密度を抑えることができます。一方、第2世代は発生時期が三番茶摘採期と重なることが多く、防除のタイミングが難しくなります。加害時に晴天・乾燥が続くと、茶園の枯死や衰弱が激しくなる時期でもあります。


孵化時期の予測には有効積算温度法が活用されています。前世代の50%孵化卵塊率が半数となる日を起算日として、日平均気温から12.2℃を差し引いた値を積算し、440日度に達した日が次世代の孵化ピークと予測できます。ただし、孵化時期に降雨があると実測日が遅れる傾向があるため、実際の茶園での観察と併用することが大切です。


京都府のクワシロカイガラムシ総合防除マニュアルには、発生予察の具体的な方法が詳しく掲載されています。


クワシロカイガラムシ散布方法と散布量の重要性

クワシロカイガラムシ防除では、散布方法が防除効果を大きく左右します。通常の茶病害虫防除と同じ感覚で散布しても、十分な効果は得られません。


散布量は10aあたり1000リットルが基本です。これは他の主要なチャ害虫に対する薬剤防除の2.5〜5倍にあたる量で、茶株内部の枝幹まで薬液を到達させるために必要な量となります。散布量を減らすと、樹冠内部に寄生しているクワシロカイガラムシに薬液が届かず、防除効果が大幅に低下してしまいます。


乗用型防除機を使用する場合は、専用ノズルの選択が効果を左右します。静岡県の研究によると、D6噴口(摘採面上部から樹幹内への下向き散布)とカイガラ噴口(防除機クローラーから樹幹内への上向き散布)を組み合わせた散布が最も高い付着率を示しました。摘採面からだけでなく、株元からも薬液を送り込むことで、樹幹内部まで確実に薬液を届けることができます。


アーチ型噴口も効果的です。


手散布の場合は、枝幹に直接薬液がかかるよう、茶株内部に丁寧に散布してください。特に株元部分は寄生密度が高いことが多いため、十分に薬液をかけることが重要です。霧状の細かい散布では樹冠内部まで到達しにくいため、ある程度の水圧で散布することをおすすめします。


散布タイミングも大切で、降雨前後は避けましょう。散布直後に雨が降ると薬液が流れてしまい、効果が低下します。また、高温時の散布は薬害のリスクがあるため、早朝や夕方の涼しい時間帯に散布するのが安全です。


クワシロカイガラムシ防除に米ぬかを活用する方法

化学合成農薬だけに頼らない防除方法として、米ぬかを活用した防除技術が注目されています。埼玉県の研究では、米ぬかを茶株内に施用することでクワシロカイガラムシの発生を抑えることができると報告されています。


米ぬかによる防除メカニズムは、米ぬかに付着したカビ(糸状菌)がクワシロカイガラムシに寄生し、死滅させることです。米ぬかを10aあたり40kg相当量、チャ株内の幹枝に付着させることで防除効果が確認されています。特に茶株内が湿っているとき、つまり降雨後や薬剤防除直後に米ぬかを処理すると、高い抑制効果が得られます。


薬剤散布後に米ぬかを追加処理した区で最も効果が高くなります。


実際の防除体系としては、孵化幼虫発生期の薬剤散布に加えて、米ぬかを茶株内に施用する方法が推奨されています。DMTP乳剤などの登録農薬を散布した後、米ぬかを追加処理することで、薬剤単独よりも高い防除効果が得られることが実証されています。米ぬか単独処理でも薬剤散布と同程度の防除効果を示すケースもあります。


ただし注意点もあります。米ぬか処理は天敵への影響も大きい可能性があるため、天敵の存在により発生が抑えられているレベルの茶園では、米ぬか防除を行うかは慎重に判断する必要があります。発生が多く認められる茶園や、農薬使用を減らしたい有機栽培・特別栽培の茶園では、有効な選択肢となるでしょう。


iPLANTの米ぬかを使ったカイガラムシの防除法解説には、詳細な試験結果と処理方法が掲載されています。


クワシロカイガラムシ多発時の対応と天敵の活用

クワシロカイガラムシが多発してしまった場合の対応策を知っておくことは重要です。大発生すると防除効果が著しく低下し、2〜3年続く事態になることがあります。多発園では中切り更新を実施してから防除すると効果的です。


中切りにより寄生密度の高い古い枝を除去し、新しい枝での再スタートを図ることができます。発生程度が低い園では、周辺部のみの額縁防除でも対応可能ですが、中心部まで多発している場合は全面防除が必要です。多発園では防除回数を増やすのではなく、適期に確実な防除を行うことが肝心です。


天敵を活かした防除も見逃せません。


クワシロカイガラムシには複数の土着天敵が存在します。寄生蜂類(ヤノネキイロコバチなど)や捕食性テントウムシ類(クロツヤテントウなど)が代表的で、これらの天敵は自然発生的にクワシロカイガラムシの密度を抑制する働きをしています。高知県や静岡県の研究では、県内に生息する土着天敵の探索と活用方法が検討されています。


天敵を保護するためには、広範囲に効く殺虫剤の多用を避けることが重要です。選択性の高い農薬やIGR剤は天敵への影響が少ないため、総合的病害虫管理(IPM)の観点からも推奨されます。交信攪乱剤ハマキコン-Nを利用してハマキムシの防除を省略し、減農薬を可能にすることで、クワシロカイガラムシの天敵密度を高く保つことができたという報告もあります。


防除に失敗して多発させないためには、毎年の発生状況を記録し、自園の発生パターンを把握することが大切です。発生が多かった年の翌年は特に注意が必要で、第1世代からしっかり防除することで、年間を通じた発生密度を低く抑えることができます。指導機関が発表する発生予察情報を活用し、地域全体で防除適期を合わせることも効果的です。




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