クローラロボットの農業での運搬と草刈りの自律走行の仕組み

農業の現場でクローラロボットがどのように自律走行し、運搬や草刈りを効率化するのか、その仕組みと導入メリットを解説します。あなたの農場にも最適な一台が見つかるでしょうか?

クローラロボットの農業での役割

農業を変えるクローラロボットの3つの特徴
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不整地でも止まらない走破性

泥ねい地や急勾配のあぜ道でも、広い接地面積で沈み込まずに安定して走行します。

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重労働を代行する自動化

重量野菜の運搬や危険な斜面の草刈りを自動化し、身体的負担を劇的に減らします。

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スマート農業への拡張性

GPSやAIセンサーと連携し、自律走行やデータ収集を行う次世代農業の基盤となります。

クローラロボットの不整地での走行と自律走行の仕組み


クローラロボットが農業現場で選ばれる最大の理由は、タイヤ式(ホイール式)の機械では立ち往生してしまうような悪路でも走行できる「圧倒的な走破性」にあります。この走破性を支えているのが、クローラ特有の接地メカニズムです。


通常のタイヤは点で地面に接するため、車体の重量が一点に集中します。これに対し、クローラ(無限軌道)はベルト状の接地面全体で重量を分散させます。これを「接地圧」と言いますが、接地圧が低いほど、水分を含んだ柔らかい土壌や泥ねい地でも車体が沈み込みにくくなります。雨上がりの畑や、水田のあぜ道など、不安定な足場が多い日本の農業環境において、この特性は極めて重要です。


また、クローラロボットはその場での旋回(超信地旋回)が可能である点も、狭い農地での運用に適しています。左右のクローラを逆方向に回転させることで、車体の中心を軸に回転できるため、狭い畝(うね)の間やハウスの端でもスムーズに方向転換が行えます。


最新の自律走行型クローラロボットでは、これらの機械的な特性に加えて、高度なセンサー技術が組み込まれています。


  • GNSS(全球測位衛星システム):衛星からの位置情報を利用し、事前に設定したルートを数センチ単位の誤差で正確に走行します。
  • IMU(慣性計測装置):車体の傾きや加速を検知し、傾斜地でも横転しないように制御を行ったり、スリップを補正したりします。
  • LiDAR(ライダー):レーザー光を使って周囲の障害物を検知し、人や農機具がある場合は自動で停止または回避します。

これらの技術の組み合わせにより、「ただ走れる」だけでなく、「作物を踏まずに」「安全に」走行することが可能になっています。特に、車輪ではスリップして制御不能になりやすい泥地においても、クローラはグリップ力が強いため、自律走行プログラムが想定した通りの挙動を維持しやすいという制御上のメリットもあります。


農業におけるロボット技術の基礎と、移動ロボットが解決する課題については、以下のリンクが参考になります。


モバイルロボットがスマート農業においてどのように生産性や持続可能性の課題を解決しているかについての研究論文(英語PDF)
農業ロボットの種類や導入メリット、今後の課題までを網羅的に解説した記事

クローラロボットによる草刈りと運搬の自動化のメリット

農業現場における最も過酷な作業の上位に挙げられるのが、「傾斜地での草刈り」と「収穫物の運搬」です。クローラロボットは、これらの作業を自動化・省力化する切り札として導入が進んでいます。


1. 傾斜地草刈りのリスク低減と効率化
中山間地域が多い日本では、棚田や果樹園の急な斜面での草刈りが必須です。従来の肩掛け式草刈機では、足元が滑って転落する事故のリスクが常にありました。


クローラ型の草刈りロボットは、低重心設計と高いグリップ力により、最大40度〜45度といった急斜面でも安定して作業が可能です。多くの機種はラジコン操作や自律走行に対応しており、作業者は平坦な安全な場所から操作するだけで済みます。


比較項目 手作業(刈払機) クローラロボット草刈機
身体的負担 非常に重い(振動・重量・足場の悪さ) 軽い(遠隔操作または監視のみ)
安全性 転倒・刃の接触リスクあり 人が斜面に立ち入らないため安全
作業効率 1日あたり数アールが限界 人手の数倍~十数倍の面積を処理可能
対応斜度 人が立てる範囲に限られる 45度程度の急斜面も走行可能

2. 収穫・運搬作業の重労働からの解放
カボチャ、大根、キャベツなどの重量野菜や、果樹の収穫コンテナの運搬は、腰への負担が大きく、長年の作業で体を痛める農家が後を絶ちません。


「追従型」や「自律走行型」のクローラ運搬車は、収穫作業を行う人の後ろをついて回ったり、満載になったコンテナを自動で集荷場所まで運んだりします。これにより、人は「収穫する」という付加価値の高い作業に集中でき、単なる「移動」や「運搬」という非生産的な時間を削減できます。特にぬかるんだ畑では、手押しの運搬車(一輪車など)を押すこと自体が重労働ですが、クローラであればパワフルに走破してくれます。


ラジコン式草刈機がどのように急斜面での作業負担を軽減しているか、および運搬ロボットの事例については以下が参考になります。


最大傾斜45度でも安定して作業可能なラジコン草刈機「アラフォー傾子」の製品詳細
農業向け運搬ロボット「メカロン」や自律走行型草刈りロボットの販売・マーケティング事例

クローラロボットの開発動向とスマート農業への導入

現在、クローラロボットの開発は、単なる「足回り」の提供から、AIと連携した「統合的な作業システム」へと進化しています。これを牽引しているのが、日本のスマート農業推進の動きです。


従来の開発は、大手農機メーカーが製造する大型のトラクターやコンバインのクローラ化が主流でした。しかし近年では、ベンチャー企業や大学発のスタートアップによる、小型・軽量で多機能なクローラロボットの開発が活発化しています。これらの新しいロボットは、以下のような特徴を持っています。


  • 電動化(EV化): エンジン式に比べて騒音が少なく、排気ガスが出ないため、ビニールハウス内や畜舎内での作業に適しています。また、構造がシンプルになるためメンテナンスも容易です。
  • アタッチメント交換方式: 台車部分は共通のクローラユニットを使用し、上部のアタッチメントを付け替えることで、「運搬」「農薬散布」「草刈り」「監視」など、一台で複数の役割をこなすモジュール型のロボットが登場しています。
  • 群制御(スワームロボティクス): 一台の大型機械ではなく、小型のクローラロボットを複数台同時に稼働させる考え方です。万が一、一台が故障しても作業が止まらず、土壌を踏み固めるリスクも分散されます。

スマート農業への導入においては、RTK-GNSS(リアルタイムキネマティックGPS)基地局の整備も重要です。これにより、クローラロボットは数センチ以内の誤差で正確に畝(うね)の間を走行できるようになります。さらに、カメラで撮影した画像をAIが解析し、病害虫の発生箇所を特定してピンポイントで農薬を散布するといった高度な活用も実用化されつつあります。


スマート農業におけるロボット技術の全体像や、導入による具体的な経営上のメリットについては、以下の記事が詳しいです。


ロボット技術を農業に導入する4つのメリット(大規模化、省力化など)と最新技術
スマート農業の仕組みやメリット・デメリット、ICTとロボット技術の活用について

クローラロボットの価格と選び方における重要なポイント

クローラロボットの導入を検討する際、最も気になるのが価格と選び方です。価格帯は機能によって大きく異なりますが、大まかな相場を理解しておくことが重要です。


価格帯の目安

  • 小型電動クローラキット(自作・研究用): 数十万円〜
    簡単な運搬や、独自の装置を載せて実験的に使うためのベースユニットです。
  • ラジコン草刈機: 200万円〜500万円
    エンジンの馬力や対応する傾斜角度によって価格が変動します。プロ仕様のものは高額ですが、耐久性が高く、耐用年数も長いです。
  • 自律走行型運搬・作業ロボット: 300万円〜800万円以上
    GNSSやLiDARなどの高価なセンサー類を搭載しているため、価格は高くなります。

選び方のポイント

  1. 動力源(エンジン vs バッテリー):
    屋外の広大な草地で長時間パワーを必要とするならエンジン式が有利です。一方、ハウス内作業や、静音性が求められる住宅地近くの農地、およびメンテナンスの手軽さを重視するなら電動(バッテリー)式が推奨されます。

  2. クローラの幅とパターン:
    接地圧を下げるには幅広のクローラが良いですが、畝の間を走る場合は車幅の制限があります。また、クローラの表面パターン(ラグ)の形状によって、泥抜けの良さやグリップ力が変わります。使用する土壌の質(粘土質か砂地か)に合わせて選定する必要があります。

  3. メンテナンス体制:
    クローラはゴム製品であり、消耗品です。特に砂利道や舗装路を頻繁に走ると摩耗が早くなります。交換用クローラの入手性や、故障時の修理対応が迅速なメーカー・販売店から購入することが、農繁期に機械を止めないために極めて重要です。


導入に際しては、農林水産省の「スマート農業実証プロジェクト」などの補助金が活用できる場合があるため、地元のJAや普及指導センターに相談することをお勧めします。

費用対効果や補助金の活用、導入時の課題については以下の情報が役立ちます。

スマート農業ロボットの導入費用、補助金、成功のポイントについての解説

クローラロボットのオープンソース活用と自作の可能性


最後に、検索上位の記事にはあまり出てこない独自視点として、「クローラロボットの自作(DIY)」と「オープンソースソフトウェア」の活用について触れておきます。これは、コストを抑えつつ、自分の農場に特化した機能を実装したいと考える技術志向の生産者にとって非常に魅力的な選択肢です。

近年、農業ロボット開発の敷居は劇的に下がっています。その中心にあるのが、「ROS(Robot Operating System)」や「ROS 2」といったロボット制御用のミドルウェアと、汎用的なクローラユニットの登場です。

1. 汎用クローラユニットの活用
従来、クローラロボットを作るには、足回りの設計から鉄工所での加工まで大変な労力が必要でした。しかし現在は、「CuGo(キューゴー)」のような、産業用・農業用に開発された「電動クローラユニット」が販売されています。これらはモーターとクローラが一体化しており、アルミニウムフレームなどで繋ぐだけで、簡単に移動台車を作成できます。

こうしたユニットを使えば、例えば「収穫したコンテナを3つ載せられる幅」「特定の畝の高さに合わせた荷台」など、市販品にはないサイズの運搬車を自作することが可能です。

2. ソフトウェアによる高機能化
ハードウェアを組み立てた後、ROSなどのソフトウェアを組み合わせることで、自律走行機能を実装できます。


  • ArduPilot(アルデュパイロット): 元々はドローン用のオープンソースソフトウェアですが、現在は地上のローバー(車両)制御にも対応しています。安価なフライトコントローラーを使うことで、GPSウェイポイントに沿った自動走行を低コストで実現できます。
  • ROS / ROS 2: より高度な制御が必要な場合に使われます。LiDARや深度カメラのデータを処理し、障害物回避やSLAM(自己位置推定と環境地図作成)を行うためのライブラリが世界中の開発者によって共有されています。

実際に、農業大学校の学生や兼業農家のエンジニアが、これらの技術を使って「自動除草ロボット」や「自律運搬車」を試作する事例が増えています。すべてをメーカー製品に頼るのではなく、足回りだけを購入し、制御系はオープンソースを活用して自作するという「ハーフメイド」な導入スタイルは、今後の農業DXの隠れたトレンドになる可能性があります。


クローラユニットを使った開発事例や、ROS対応のプラットフォームについては以下のリンクが参考になります。


電動クローラユニット「CuGo」を使って移動ロボットを簡単に製作する事例
クローラロボット開発プラットフォームのROS2対応と不整地走行の強み
ROSと市販モジュールを使って農業用自動走行運搬車を自作する技術解説




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