収穫コンテナのサイズの選び方と種類の規格、運搬方法

収穫コンテナのサイズ選びで悩んでいませんか?この記事では、基本的なサイズの選び方から、材質や規格、さらには効率的な運搬方法や意外な活用術まで詳しく解説します。あなたの農業スタイルに最適なコンテナを見つけるためのヒントが満載ですが、本当にそれだけで十分でしょうか?

収穫コンテナのサイズの選び方

この記事でわかること
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サイズの基本

作物や作業規模に合わせた最適なコンテナ容量と寸法の選び方を解説します。

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種類と材質

PPとPEの違いや、折りたたみ式・メッシュタイプのメリット・デメリットを比較します。

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規格と運搬

JIS規格(T11)との関連性や、荷崩れしにくい効率的なパレット積みのコツを紹介します。

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色と鮮度の関係

コンテナの色が野菜や果物の鮮度保持に与える影響など、意外と知られていない事実を深掘りします。

収穫コンテナの基本的なサイズの選び方と容量の目安

 

収穫コンテナを選ぶ上で最も重要なのが「サイズ」と「容量」です。これらが作物や作業規模に適していないと、作業効率の低下や収穫物の品質劣化に繋がる可能性があります。まずは、基本的な選び方のポイントを抑えましょう。
一般的な収穫コンテナの容量は約45リットル前後ですが、これはあくまで目安です 。重要なのは、自分が主に栽培している作物の種類、一度に収穫する量、そして作業する人の体力を考慮することです。

  • 重量野菜(かぼちゃ、スイカ、大根など):重さに耐えられるよう、コンテナ自体の強度が必要です。容量が大きいと一人で持ち運ぶのが困難になるため、20リットル程度の小さめで頑丈なタイプを複数使用するか、台車や運搬車を使うことを前提に大型のものを選ぶと良いでしょう。
  • 軽量野菜(葉物、ピーマン、ネギなど):かさばるため、ある程度の容量が必要です。40〜50リットルサイズが一般的ですが、ネスティングタイプ(重ねて収納できる)を選ぶと、未使用時の保管スペースを節約できます 。
  • デリケートな果物(いちご、ミニトマト、ブルーベリーなど):潰れや傷を防ぐため、深さのない「浅型」コンテナが最適です 。また、コンテナの網目が細かいと、果実の表面に跡がつきにくく品質を保てます。

サイズの表記は「外寸」と「内寸」があるので注意が必要です 。特に、保管棚や軽トラックの荷台にぴったり収めたい場合は、コンテナを積み重ねた時の高さも考慮し、「外寸」を正確に計算しておくことが重要です。
参考情報として、一般的なみかん箱(10kg入り)の高さが約21cmであることが示されています 。このような既存の資材のサイズを基準に、自身の作物に合った深さを検討するのも一つの方法です。

収穫コンテナの種類と材質で変わる強度と用途

収穫コンテナは、その形状や材質によって特徴が大きく異なります。用途に合わせて最適なものを選ぶことで、作業効率と収穫物の品質は格段に向上します。

材質の違い:PPとPE

プラスチック製コンテナの主な原材料は「ポリプロピレン(PP)」と「ポリエチレン(PE)」です 。

  • ポリプロピレン(PP):最も一般的に使用される材質で、硬くて強度が高いのが特徴です。常温での使用に適しており、多くの野菜や果物の収穫に利用されています 。
  • ポリエチレン(PE):PPよりも柔軟性があり、低温環境に強いという特性があります 。そのため、冷凍・冷蔵保管を伴う作業や、寒冷地での使用に向いています。

形状による種類と特徴

コンテナの形状は、主に「スタッキング」「ネスティング」「折りたたみ」の3種類に分けられます。

種類 特徴 メリット デメリット 主な用途
スタッキングタイプ 上下をまっすぐに積み重ねられる形状。 ・段積みした際の安定性が高い
重量物にも耐えられる強度
・未使用時も同じ大きさなので保管にかさばる イモ類、カボチャなどの重量野菜の運搬・保管
ネスティングタイプ スーパーの買い物かごのように、空の時に重ねてコンパクトに収納できる。 ・未使用時の保管スペースを大幅に節約できる
・ハンドル操作で段積みも可能
・スタッキングタイプに比べると耐荷重性がやや劣る 葉物野菜、ピーマンなどの比較的軽い野菜の収穫
折りたたみタイプ 側面を内側に折りたたんで薄くできる。 ・未使用時に最もコンパクトになる
・大量のコンテナが必要な場合に省スペース化できる
・構造が複雑な分、価格が高くなる傾向がある
・折りたたみ部分に土や汚れが溜まりやすい
白菜、レタスなど、一度に大量に収穫する作物

また、多くの収穫コンテナは「メッシュタイプ」になっています。これは通気性を確保し、収穫物の蒸れを防ぐためです。さらに、洗浄後の水切れが良いというメリットもあります 。

収穫コンテナのJIS規格とモジュール化の重要性

収穫コンテナを効率的に運用する上で、見過ごされがちながら非常に重要なのが「規格」、特にJIS(日本産業規格)で定められた輸送用パレットとの連携です。
日本の物流で標準的に使用されているパレットに「T11型パレット」があります。これは、サイズが1100mm × 1100mmとJISで規格化されています 。そして、多くの収穫コンテナはこのT11型パレットに無駄なく積載できるよう設計されています 。これを「モジュール化」と呼びます。
例えば、外寸が約52cm x 36cmのコンテナであれば、T11パレットに以下のように積むことができます。

  • 長辺(52cm)を2列(52 x 2 = 104cm)
  • 短辺(36cm)を3列(36 x 3 = 108cm)

このように、パレットのサイズから逆算してコンテナの寸法を決めることで、トラックの荷台や倉庫のスペースを最大限に活用し、輸送コストの削減や保管効率の向上に繋がります。
特に大規模な農家や法人では、コンテナの選定時にこのパレットとの整合性を考慮することは必須と言えるでしょう。JRの鉄道コンテナやISOの海上コンテナなど、異なる輸送手段でもT11型パレットは積載効率が高く評価されており 、まさに物流の基幹をなす規格なのです。
農業用資材メーカーのサイトでは、製品がT11モジュール対応かどうかを明記している場合が多いので、購入前には必ず確認することをおすすめします 。
コンテナの標準化に関するより詳細な情報は、以下のリンクから確認できます。

 

青果物流通の標準化に向けて - 国土交通省四国運輸局

収穫コンテナのサイズを活かした効率的な収納と運搬術

適切なサイズのコンテナを選んだら、次はその能力を最大限に引き出す「収納」と「運搬」の技術が重要になります。特に、パレットを使った運搬(パレタイズ)は、作業の省力化と安全性向上の鍵です。

荷崩れを防ぐパレット積みの基本

荷崩れは、収穫物の損傷に直結する重大な事故です。以下の基本原則を守ることで、リスクを大幅に減らすことができます。

  1. 重いものから順に積む:重心を低くすることで、全体の安定性が増します。同じ種類の作物でも、水分量などによって重さが異なる場合があるため、感覚的に重いコンテナを下にするのが鉄則です 。
  2. 交互に積み上げる(レンガ積み):同じ向きで積み上げるのではなく、各段でコンテナの向きを90度変えて積み上げる方法です。これにより、段同士が噛み合い、横滑りを防ぎます。
  3. オーバーハングさせない:コンテナがパレットの端からはみ出さないように注意します 。はみ出した部分は非常に不安定で、少しの衝撃で荷崩れの原因となります。
  4. 最後に重しを乗せる:最上段の中央に、やや重いコンテナを置くことで、全体の結束力を高める効果が期待できます 。

積み方のパターン

荷物のサイズに応じて、様々な積み方(回し)のパターンが存在します。例えば、「10回し」は1面に10個の荷物を積む方法で、6個の塊と4個の塊を組み合わせて作ります 。これらのパターンを覚えておくと、様々なサイズのコンテナに柔軟に対応できます。
また、コンテナを運ぶための専用台車(ドーリー)を活用するのも非常に有効です。収穫したコンテナを畑の端まで手で運ぶのではなく、その場で台車に積んでいけば、体力の消耗を大幅に抑えることができます。
パレットへの積み方のパターンは、図解で解説されているサイトが参考になります。

 

パレットの積み方7パターンを解説!荷崩れしない積み方とは? - Kiefel Co., Ltd.

収穫コンテナは色で選ぶ?鮮度保持と意外な関係

収穫コンテナといえば、緑やオレンジといった色が一般的ですが、この「色」が実は収穫物の品質、特に鮮度保持に影響を与える可能性があることはあまり知られていません。これは主に「遮光性」と「特殊素材」という2つの観点から説明できます。

遮光性と野菜の鮮度

多くの野菜や果物は、収穫後も光に当たることで呼吸や代謝を続けます。これが品質の劣化(しなび、変色など)につながる一因です。特に、光を嫌う性質のある野菜(じゃがいもの発芽など)にとっては、遮光性の高いコンテナで保管・運搬することが鮮度維持に有効です。
黒や濃い色のコンテナは光を遮る効果が高いため、こうした作物に適しています。最近では、インテリアにも馴染むとして黒色のコンテナが家庭菜園用途で人気ですが 、プロの現場でも品質管理の観点から色の選択が重要になるケースがあるのです。

鮮度保持機能を持つ特殊コンテナ

さらに進んで、「コンテナ自体が鮮度を保つ」という高機能な製品も存在します。例えば、「エンバランス」という特殊なプラスチック素材を使用したコンテナがその一例です 。
この素材は、食品の腐敗を促進するのではなく、食品自体を元気にするというアプローチで鮮度を保つとされています。公式サイトの実験データでは、通常のポリエチレン袋に入れたミニトマトが21日後に黒く変色し腐敗臭がしたのに対し、エンバランス加工の袋に入れたものは弾力や香りが良く保たれていたという結果が示されています 。これは、コンテナの色というよりは材質そのものの機能ですが、見た目では判断できない付加価値として注目すべき点です。

意外な「静電気防止」機能

もう一つ、意外な機能として「静電気防止」があります。乾燥した環境では、プラスチックコンテナは静電気を帯びやすく、チリやホコリを吸着してしまいます。これは、衛生面で特に気を使うキノコ類や葉物野菜にとっては問題です。
この問題を解決するのが「導電性コンテナ」です 。樹脂に導電材を配合することで、静電気の帯電を防ぎ、ホコリの付着を根本から防止します 。電子部品の輸送などで使われることが多い技術ですが、農業分野でも品質管理を徹底したい場合に非常に有効な選択肢となります。洗浄しても性能が変わらないため、長期的に衛生環境を保つことができます 。
また、農業分野での直接的な応用例はまだ少ないものの、静電気を利用して害虫の侵入を防いだり 、雑草を除去したりする研究も進められており 、静電気コントロールは今後の農業技術の一つのキーワードになるかもしれません。

知られざる収穫コンテナの「その後」:耐用年数とリサイクル

収穫コンテナは丈夫で長く使えるものですが、もちろん寿命があります。また、不要になったコンテナをどう処分するかは、環境配慮の観点からも重要です。

収穫コンテナの耐用年数

法的な「法定耐用年数」としては、コンテナは器具・備品に分類され、構造や用途によって異なりますが、おおむね5〜7年程度とされています 。香川県の農業経営指標では、収穫用コンテナの耐用年数を3年として計算している例もあります 。
実際の寿命は使用状況に大きく左右されます。紫外線による劣化、重量物の運搬による負荷、洗浄時の扱いなどが影響します。ひび割れや大きな変形が見られたら、安全のために交換を検討すべきサインです。

使用済みコンテナの処分とリサイクル

不要になったプラスチック製の収穫コンテナは「産業廃棄物」の「廃プラスチック類」に該当するため、家庭ごみとして捨てることはできず、法律に則って適正に処理する必要があります 。
しかし、廃棄する以外にもいくつかの選択肢があります。

  • メーカーによる回収:一部のコンテナメーカーは、自社製品の回収サービスを行っています。回収されたコンテナは、新しいコンテナの原料として再利用されることがあります 。例えば、回収したコンテナを再生材として中間層に使い、新しい原料で表面を覆う「三層成型構造」の技術で、環境に配慮した製品が作られています 。
  • 中古買取業者への売却:状態が良ければ、中古の農業資材として買い取ってもらえる場合があります。産廃として費用を払って処分するのではなく、有価物として売却できる可能性もあるのです 。
  • JAなどでの回収:地域によっては、JA(農業協同組合)が回収窓口となっているケースもあります。

近年、農業分野でもSDGs(持続可能な開発目標)への貢献が重視されており、プラスチックごみの排出抑制は大きな課題です 。コンテナをできるだけ長く使い、不要になった際はリサイクルに回すことは、環境負荷を低減する上で非常に重要な取り組みと言えるでしょう。
また、安全な食料供給という観点から、収穫コンテナが「食品衛生法」に適合しているかも確認したいポイントです。直接食品が触れる器具や容器包装には厳しい基準が設けられており、米用のフレコンバッグなどでは法適合品が標準となっています 。野菜や果物用のコンテナを選ぶ際も、メーカーの仕様書などで確認すると、より安心して使用できます。

 

 


三甲 ボックス型メッシュコンテナ SKA80KBLL