農業現場で資材や収穫物の運搬に欠かせないフレコンバッグ(フレキシブルコンテナバッグ)。ホームセンターやネット通販で「1トンバッグ」と書かれたものを適当に選んでいませんか?実は、「サイズ」と「耐荷重」の関係を正しく理解していないと、作業効率が落ちるばかりか、思わぬ事故や法律違反につながることがあります。
フレコンバッグのサイズ選びは、単に「大きさ」を見るだけでは不十分です。入れるもの(作物、土、肥料)の「重さ(比重)」と、運ぶトラックの「積載ルール」をセットで考える必要があります。この記事では、農業従事者の方が絶対に失敗しないための、サイズ選びの決定版ガイドをお届けします。
まず、フレコンバッグの世界で「標準」とされているサイズを押さえましょう。最も流通量が多く、一般的に「1トン用」として販売されているのは以下のスペックです。
この「1100 × 1100」という数字は、JIS規格(日本産業規格)のパレット(1100mm × 1100mm)にぴったり収まるように設計されています。
参考)フレコンバッグとは?種類や規格の選び方について解説します -…
しかし、ここで注意が必要なのは、「容量1000リットルの袋なら、必ず1トンの物が入るわけではない」という点です。例えば、比重の軽い「もみ殻」をこの袋一杯に入れても、重さは100kg程度にしかなりません。逆に、比重の重い「土砂」や「砂利」を入れると、袋が満杯になる前に耐荷重の1000kgを超えてしまい、吊り上げた瞬間にベルトが切れる事故につながります。
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農業用途では、標準サイズ以外にも以下のようなバリエーションが使われます。
フレコンバッグの形状には、主に「丸型」と「角型」の2種類があり、農業現場では用途によって使い分けるのが鉄則です。
丸型(ラウンド型)の特徴
参考)フレキシブルコンテナバッグの選び方
角型(スクエア型)の特徴
特に、収穫した玄米をJAや集荷業者に出荷する場合、保管スペースの効率化のために「角型」が指定されるケースもあります。また、形状保持機能(内部に隔壁があるタイプなど)を持つ角型バッグは、積み重ねても崩れにくいため、狭い農業倉庫での活用が進んでいます。
参考リンク:トンパックの標準サイズとは?最小から最大までまとめ(ソフトバッグ)
参考リンク解説:サイズ別の容量や寸法が一覧でまとまっており、標準的な「1100×1100」以外のバリエーションを知るのに役立ちます。
「この袋にウチの作物はどれくらい入るのか?」を知るために必須な知識が「かさ密度(かさ比重)」です。これは「1立方メートル(1,000リットル)あたりの重さ」のことです。
農業で扱う主な資材の目安は以下の通りです(水分量や状態により変動します)。
| 品目 | かさ密度 (kg/m³) | 1000L袋に入れた時の重さ目安 | 適したフレコンサイズ |
|---|---|---|---|
| 土・砂 | 1,200 〜 1,600 | 1,200kg 〜 1,600kg | 危険! 小型(500L)推奨 |
| 玄米 | 約 800 | 約 800kg | 標準(1000L)で適量 |
| 堆肥 | 400 〜 600 | 400kg 〜 600kg | 標準(1000L)〜 大型 |
| もみ殻 | 約 100 | 約 100kg | 超大型(1500L〜)推奨 |
参考)https://www.maff.go.jp/kinki/press/chikusan/attach/pdf/251021-1.pdf
失敗しない計算式
必要な容量(L)=かさ密度(kg/L)入れたい重量(kg)
例えば、乾燥した「もみ殻(密度0.1)」を1トン分保管しようとすると、
1000÷0.1=10,000 リットルもの容量が必要になります。つまり、標準の1トンバッグが10袋も必要になる計算です。これを知らずに「1トンバッグだから1トン入るだろう」と思って買うと、袋が足りなくなる事態に陥ります。
逆に、土(密度1.3)を入れる場合、標準バッグ満杯にすると1300kgになり、耐荷重(1000kg)をオーバーしてしまいます。土を入れる場合は、「容量500リットル(0.5m³)」程度の小型バッグを選ぶか、標準バッグの半分までで止める運用が必要です。
寸法的には2個載るが、法律的には1個も満載できない
軽トラックの荷台サイズは、一般的に「長さ1,940mm × 幅1,410mm」程度です。
参考)軽トラックの荷台サイズ・積載ルール完全ガイド|メーカー比較か…
標準フレコン(直径1,100mm)を載せようとすると、幅は収まりますが、2個並べると長さが2,200mmとなり、荷台からはみ出します。道路交通法では、積載物の長さは「車両の長さの1.2倍まで(荷台からはみ出しOKな範囲含む)」ですが、安全面を考えると2個積みはギリギリか、アオリ(荷台の囲い)を閉められない状態になります。
最大の壁は「最大積載量 350kg」
これが最も重要です。軽トラの最大積載量は350kgです。
標準的な1トンバッグに玄米や肥料を満載(約1000kg)にして軽トラに積むと、約3倍の過積載となり、重大な道路交通法違反(および車両の破損リスク)となります。
軽トラで運搬する場合の正解は以下の2つです。
「軽トラ用」として販売されている、一辺60cm程度の小型バッグがあります。これなら中身を入れても重量オーバーしにくく、荷台に複数個積むことができます。
標準バッグを使用する場合でも、中身は350kg以下に抑える必要があります。しかし、大きな袋に少量しか入れないと重心が安定せず、走行中に荷崩れする危険性が高いため、あまり推奨されません。
「サイズが合うから載せる」のではなく、「重さが350kgに収まるサイズを選ぶ」のが、プロの農家の選び方です。
参考リンク:軽トラックの荷台サイズ・積載ルール完全ガイド(マツダ)
参考リンク解説:軽トラックの正確な荷台寸法や、はみ出し可能な長さの法的ルールが詳細に解説されています。
使い終わったフレコンバッグの「その後」も、サイズ選びと同じくらい重要です。農業で使用したフレコンバッグは、法律上「産業廃棄物(廃プラスチック類)」として扱われます。家庭ごみとしてゴミステーションに出すことはできません。
参考)フレコンバッグの廃棄と再利用に関する法規制
処分のコストを下げる「材質」と「排出口」の選び方
底部に「排出口(排出口)」がついているタイプは、中身を出す際に袋を切る必要がありません。これにより、袋を再利用(リユース)できる回数が増え、結果的に年間の資材コストを下げることができます。特に肥料散布機や乾燥機に投入する際、排出口付きは作業時間を大幅に短縮します。
処分する際は、産廃業者に依頼する必要がありますが、このときも「サイズ」が影響します。大きな袋はかさばるため、プレス機などで圧縮できない場合、回収費用が高くなることがあります。使用後は泥や中身をきれいに落とし、小さく折りたたんで紐で縛っておくことで、業者への引き渡しがスムーズになり、処分費用の交渉もしやすくなります。
また、最近では環境配慮の観点から、バイオマス素材を使用したフレコンバッグも登場しており、自治体によっては処分ルールが緩和されるケースもあるため、地元のJAや役場に確認してみるのも一つの手です。