肥料散布機トラクター中古の価格相場と種類・選び方の徹底解説

肥料散布機を中古で購入する際の種類の違いや、トラクターとの適合性、ヤフオクの相場価格を解説します。古い機種の部品供給や腐食のリスクなど、購入前に知っておくべき注意点は何でしょうか?

肥料散布機とトラクターの中古

中古肥料散布機選びの重要ポイント
🚜
種類と適合の確認

ブロードキャスターかライムソワーか、トラクターのヒッチ規格(3点リンク)が合うかを確認します。

💰
価格相場と購入先

ヤフオクの現状渡しは5万円前後からですが、整備済みの販売店モデルは価格が高くなります。

🔧
部品供給と腐食

スター農機やササキなどの古いモデルは部品供給終了のリスクがあり、シャッター固着の確認が必須です。

中古の肥料散布機(インプルメント)を導入することは、農業経営のコスト削減において非常に有効な手段です。新品であれば数十万円から高いものでは100万円近くする機械も、中古市場であれば数万円から手に入れることが可能です。しかし、トラクター用のアタッチメントの中でも、肥料散布機は特に「腐食」と「固着」のリスクが高い機材であり、安易に価格だけで選ぶと「使えない鉄くず」を買わされることになりかねません。

 

肥料散布機は、使用する肥料の化学成分(特に酸性やアルカリ性の強い石灰など)によって金属部分が激しく劣化します。前の所有者が使用後に徹底的な洗浄と注油を行っていたかどうかで、機械の寿命は大きく変わります。中古市場に出回る機体は、農家が離農や買い替えで手放したものが多く、中には長期間納屋で放置され、可動部が完全に錆びついているものも少なくありません。

 

この記事では、失敗しない中古肥料散布機の選び方について、種類の違いやトラクターとのマッチング、そしてプロだけが知っている具体的なチェックポイントを深掘りして解説します。

 

農業トラクターのすべて:就農者から農家まで必読の完全ガイド
参考)【農業トラクターのすべて】就農者から農家まで必読の完全ガイド

リンク先には、トラクターの基礎知識から、新品と中古のメリット・デメリット比較、購入時のチェックポイントまで網羅的に解説されています。

 

肥料散布機トラクター中古の種類とブロードキャスター・ライムソワーの違い

 

中古の肥料散布機を探す際、最初に直面するのが「ブロードキャスター(ブロキャス)」と「ライムソワー」のどちらを選ぶべきかという問題です。これらは見た目が似ているものもありますが、散布できる肥料のタイプや散布方式が根本的に異なります。ここを間違えると、予定していた肥料が撒けない、あるいは詰まって作業にならないというトラブルが発生します。

 

ブロードキャスター(遠心式散布機)
ブロードキャスターは、ホッパーの下にある円盤(スピンナー)が高速回転し、遠心力で肥料をバラ撒くタイプです。

 

  • 適した肥料: 粒状肥料(化成肥料)、ペレット堆肥
  • メリット: 散布幅が広く(6m〜15m以上)、作業効率が非常に高いです。
  • デメリット: 粉状の肥料(消石灰など)は舞い上がってしまい、うまく飛びません。また、風の影響を受けやすいです。
  • 中古選びの注意: スピンナーの「羽根(ベーン)」が摩耗していないか、穴が空いていないかを確認してください。ステンレス製ホッパーのモデルは錆に強く人気があります。

ライムソワー(落下式散布機)
ライムソワーは、ホッパーの底にある繰り出しロールが回転し、真下にカーテンのように肥料を落とすタイプです。

 

  • 適した肥料: 粉状肥料(石灰、ヨウリン)、微細な土壌改良材。
  • メリット: 粉状のものが舞い上がりにくく、地面に近い位置で正確に散布できます。風の影響を受けにくいです。
  • デメリット: 散布幅が機械の幅(1.5m〜2m程度)に限定されるため、広い畑では往復回数が増えます。
  • 中古選びの注意: 湿気を含んだ石灰などが内部で固まる「ブリッジ現象」が起きやすいため、内部の撹拌(かくはん)軸が正常に回るか、底部のシャッターが腐食で固着していないかが最大のチェックポイントです。

マニュアスプレッダーとの違い
マニュアスプレッダーは主に「堆肥(牛糞や鶏糞)」を散布するための大型機械です。ブロードキャスターやライムソワーとは用途が異なり、水分量の多い有機物を撒くためにコンベアベルトとビーター(破砕爪)を備えています。中古市場でも大型トラクター向けが中心となります。

 

特徴 ブロードキャスター ライムソワー
散布方式 遠心力で飛ばす 下に落とす
得意な肥料 粒状(化成肥料) 粉状(石灰・粉末)
散布幅 広い(効率◎) 狭い(機械幅のみ)
風の影響 受けやすい 受けにくい
中古リスク スピンナーの腐食・穴あき 繰り出し部の固着・詰まり

ライムソワーで肥料散布!価格とブロードキャスターとの違い
参考)ライムソワーで肥料散布!価格とブロードキャスターとの違い・中…

リンク先では、ライムソワーの具体的なメリットや注意点、悪天候時の運用方法について詳しく解説されています。

 

肥料散布機トラクター中古のアタッチメントと3点リンクの適合確認

欲しい肥料散布機の種類が決まっても、手持ちのトラクターに取り付けられなければ意味がありません。トラクターと作業機(インプルメント)を接続する規格には「3点リンク」という世界共通の規格と、日本のメーカー独自(日農工規格)の「オートヒッチ(ワンタッチ)」が存在します。中古購入で最もトラブルが多いのが、この「マッチング(適合)ミス」です。

 

標準3点リンクのカテゴリー
多くのトラクターは「標準3点リンク」を採用していますが、トラクターの馬力によってカテゴリー(サイズ)が異なります。

 

  • カテゴリー0: 20馬力未満の超小型トラクター用。ピン径などが細い。
  • カテゴリー1: 20〜50馬力程度。日本の主力トラクターのほとんどがこれに該当します。
  • カテゴリー2: 50馬力以上の大型トラクター用。

中古で出回っている古い肥料散布機には、このカテゴリーが明記されていないことがあります。特に注意が必要なのが、トップリンク取り付け穴の径ロアリンクのピン径です。これらが合わないと装着できません。

 

日農工規格(ワンタッチヒッチ)の罠
日本のトラクターは、作業機を簡単に着脱できる「ワンタッチヒッチ(オートヒッチ)」が普及しています。しかし、これには「Sヒッチ」と「Lヒッチ」などの種類があり、互換性がありません。

 

  • Sヒッチ(0形・1形): 15〜30馬力クラスの小型〜中型トラクターに多い。クボタやヤンマーの小型機で採用。
  • Lヒッチ(2形): 30〜50馬力以上の中型〜大型トラクター用。取り付け枠の幅が広いです。
  • A-1 / A-2 / B形: これらは「特殊3点リンク」と呼ばれ、メーカー専用の装着方式です。他社製トラクターにはそのままでは付きません。

PTO軸の長さと回転方向
肥料散布機はトラクターのPTO(動力取り出し軸)からの回転で駆動します。

 

  • ジョイントの長さ: 中古で購入した散布機に付属しているユニバーサルジョイント(ドライブシャフト)が、あなたのトラクターに対して「短すぎる」場合は届きませんし、「長すぎる」場合は持ち上げた時に突っ張ってしまい、トラクター側のPTOケースを破壊する恐れがあります。適切な長さに切断・調整する必要があります。
  • 逆転PTO: 一部の古い散布機や輸入機には回転方向の指定がある場合がありますが、国産のブロードキャスターは通常、標準の正回転(時計回り)で使用します。

トラクターのリンク機構と作業機のヒッチの組み合わせ解説
参考)トラクターのリンク機構と作業機のヒッチの組み合わせ解説

リンク先では、標準3点リンクや日農工規格(Sヒッチ、Lヒッチ)の違い、各メーカーの互換性について図解付きで詳細に説明されています。

 

肥料散布機トラクター中古のヤフオク・販売店での価格相場

中古肥料散布機の価格は、購入ルートによって大きく異なります。主に「農機具販売店」と「ヤフオクなどの個人売買・オークション」の2つのルートがありますが、それぞれにリスクと相場が存在します。

 

ヤフオク・個人売買の相場とリスク
ヤフオクでの落札相場は、状態によりますが3万円〜10万円程度がボリュームゾーンです。

 

  • 現状渡し(ジャンク扱い): 1万円〜3万円。動作確認がされていない、または「回転しました」程度の説明のみ。ホッパーに穴が空いている、シャッターが動かないなどの致命的な欠陥がある可能性が高いです。
  • 実動品: 5万円〜10万円。農家が離農して出品したものなど。ある程度のリスクを許容できるなら、最もコスパが良い価格帯です。
  • リスク: 送料が非常に高額(数万円)になる、または「引き取り限定」であることが多いです。遠方の場合、交通費だけで安さを相殺してしまうことがあります。

農機具販売店の相場とメリット
専門店での中古価格は、10万円〜25万円程度が目安です。

 

  • 整備済み: 専門店では、ベアリングの交換、オイル漏れの修理、腐食部分の補修を行ってから販売します。
  • 保証: 短期間でも動作保証がつく場合があり、購入後のトラブル相談も可能です。
  • メリット: 自分のトラクターへの適合(マッチング)を調べてくれるため、規格違いで取り付けられないという失敗を防げます。

価格を左右する要素
中古価格が高くなる(価値が残る)ポイントは以下の通りです。

 

  1. ステンレスホッパー: 鉄製ホッパーは錆びて穴が空きやすいため、ステンレス製は古くても高値がつきます。
  2. 電動シャッター: トラクターの運転席からリモコンで散布のON/OFFができるモデルは人気があり、高価です。手動レバー式は安価です。
  3. スタンド(キャスター)付き: 保管時に移動しやすいキャスター付きスタンドが付属していると評価が高いです。

肥料散布機 中古の落札相場・落札価格 - Yahoo!オークション
参考)Yahoo!オークション -「肥料散布機 中古」(農業機械)…

リンク先では、直近のヤフオクでの肥料散布機の落札価格一覧が確認でき、リアルタイムの相場感を把握するのに役立ちます。

 

肥料散布機トラクター中古のメンテナンスと部品供給の注意点

中古農機具を選ぶ際、多くの人が見落としがちなのが「部品供給の有無」と「内部腐食の深刻さ」です。特に肥料散布機は、構造が単純に見えても、重要部品が一つ壊れるだけで鉄屑同然になってしまいます。

 

メーカーごとの部品供給状況
日本の肥料散布機市場では、「スター農機(IHIアグリテック)」と「ササキ(ササキコーポレーション)」が2大メーカーです。また、クボタやヤンマーの純正アタッチメントとして販売されているものも、実はこの2社のOEM製品であることが多いです。

 

  • スター農機(IHIアグリテック): 生産終了後10年を経過すると部品供給が終了する傾向があります。古いオレンジ色のモデルなどは、ユニバーサルジョイントやギアボックスの内部部品が出ないことがあります。
  • ササキ: 比較的古いモデルでも消耗品(スピンナーやシャッター関連)が入手しやすい場合がありますが、電装系(リモコンコントローラー)が壊れると、部品代だけで10万円近くかかるケースがあります。

致命的なチェックポイント:シャッターの固着
中古購入時に必ず確認すべきなのが、「シャッター(排出口)の開閉スムーズさ」です。

 

  • 症状: 肥料の成分がガイドレール部分に入り込み、湿気でセメントのように固まります。無理にレバーを動かすと、リンケージ(連結棒)が曲がったり、折れたりします。
  • 修理の難易度: 軽度なら洗浄で直りますが、重度の場合はホッパー全体を分解し、サンダーで錆を削り落とす必要があります。これは非常に手間のかかる作業です。
  • 見分け方: 現物確認の際、シャッターレバーを指一本で動かせるなら合格です。両手で体重をかけないと動かない、あるいはハンマーで叩かないと動かないものは、分解整備が必要です。

意外な盲点:撹拌(かくはん)軸の根本
ホッパーの内部、肥料を混ぜる「アジテーター(撹拌棒)」の根本は、最も肥料が溜まりやすく、腐食が進む場所です。ここからギアボックス内に肥料成分や水分が浸入すると、ギアオイルと混ざり、内部からギアを腐食させます。

 

  • チェック方法: ギアボックスの下側や、PTO入力軸のオイルシール周辺からオイル漏れがないかを確認してください。オイルが漏れている=シールが劣化している=水や肥料が入っている可能性が高いです。

DIY修理の限界
「安く買って自分で直そう」と考える方も多いですが、肥料散布機のボルト類は酸で激しく錆びついており、通常のスパナでは回らず、ねじ切れることがほとんどです。ガス切断機やボルトヒーターなどの設備がない場合、単純な部品交換さえも困難を極めることがあります。中古を選ぶ際は、「可動部がすべて手でスムーズに動くか」を最優先基準にしてください。

 

スター製品部品表/取扱説明書 - IHIアグリテック
参考)株式会社IHIアグリテック スター製品部品表/取扱説明書

リンク先では、スター農機(IHIアグリテック)の旧型モデルの部品表や取扱説明書が検索でき、部品供給が続いているかを確認する手がかりになります。

 

これだけは買うな!中古農機具の落とし穴
参考)これだけは買うな!中古農機具の落とし穴 - 農機具通販ノウキ…

リンク先では、部品供給終了のリスクや、外見ではわからない内部故障の見極め方について、プロの視点から警鐘を鳴らしています。

 

 


ヤマト農磁 肥料散布機 グリーンサンパーエコノミー