クラブリンゴは野生種と栽培種の中間的な大きさで、果実重量は約100g前後の小型リンゴの総称です。苦味と渋味を持つため生食には向きませんが、加工用や授粉樹として高い価値を持ちます。植物学的な分類ではなく、用途や大きさによって区分される実用的な呼称として農業現場で広く認識されています。
参考)一木先生のリンゴ講座 第31回「多様なクラブリンゴ(Crab…
授粉専用品種として評価が高いのは「Snowdrift」「Profusion」「Red Bud Crab」の3品種で、これらは「ふじ」との交雑和合性が高く開花期も一致します。花粉稔性が高い二倍体品種であること、十分な花粉量があること、隔年着果しないことが授粉樹として求められる条件です。「メイポール」や「ドルゴ」も「つがる」や「ふじ」の単植園で結実を確保する品種として推奨されています。
参考)リンゴの単植園における授粉専用品種の利用方法
品種選定では栽培特性と醸造特性の見極めが重要です。「ジェネバ」はアントシアニンを多く含み酸味が強いため、ジャムや果実酒、シードル製造に適しています。観賞用としては花の色が純白、ピンク、赤紫と変化に富む品種が庭園樹や街路樹として普及しており、日本でも庭木や盆栽として楽しまれています。
参考)https://www.ruralnet.or.jp/gn/201902/cider.htm
植え付けは厳寒期を除いた落葉期に行い、秋から梅雨までが適期ですが、開花期が早いため秋植えが推奨されます。日当たりの良い場所に浅く植え、水はけと通気性の良い肥沃な土を好みます。夏の水分不足による葉やけを防ぐため、乾燥時にはたっぷりと水を与える必要があります。幼木のうちは霜に弱いので、霜が当たらない場所を選ぶことが重要です。
参考)黄金丸 リンゴ クラブアップルの特徴と育て方
苗木部の部室|クラブアップル育て方詳細
植え付け3年以上経過した苗木の移植方法や鉢増しの具体的手順、YD苗の切り戻し方法について詳しく解説されています。
剪定は年に2回行うのが基本で、生育期の7~8月に基本剪定、落葉期の1~2月に軽剪定を実施します。夏剪定では夏によく伸びる枝を切り詰め、込み合った枝を間引いて風通しを良くします。短い枝に実がなるため、長い枝を切り詰めて脇枝を出すことが重要ですが、最も大切なのは風通しの確保です。冬剪定では短果枝に花芽をつけさせるために、主枝や長果枝の先端を12月に少し切り戻します。
参考)クラブアップルの育て方
植え付け時には地際から60cmくらいに切り戻し、支柱をつけて倒れないようにします。植え付け後4年目から本格的な剪定を開始すると良いでしょう。太い枝を剪定する場合は早春の芽吹き前に行うと回復しやすくなります。
参考)ヒメリンゴの剪定時期や手入れ方法
リンゴには自家不和合性があり、結実を安定させるために異なる品種の混植が一般的に行われています。しかし複数品種の混植園では、9月上旬の病害虫に対する農薬散布など管理上の不具合が生じるため、単植園での栽培が経営効率の面で有利です。
参考)https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010893064.pdf
農研機構|リンゴ単植園における授粉専用品種の利用方法
「ふじ」および「つがる」の単植園で結実を確保するための授粉樹配置と品種選択の研究成果が公開されています。
授粉専用クラブリンゴを導入する方法は、生分解性ポットで養成した大苗を単植園に植栽する方法と、既存樹の樹冠頂部に高接ぎする方法があります。リンゴの並木植えわい化栽培園においては、15m程度の間隔で授粉樹を混植するのが適切で、この間隔を超えると結実率が低下する傾向があります。開花期の異なる2品種を選択して配置することで、より安定した結実が得られます。
参考)https://www.pref.iwate.jp/agri/_res/projects/project_agri/_page_/002/004/386/houbun_10-02.pdf
授粉専用品種を高接ぎによって導入する場合、「Profusion」「Redbud」「Snowdrift」などの品種が強く切り戻す剪定を行うと腋花芽の着生率が低下する特性があるため、剪定管理に注意が必要です。樹姿がコンパクトな品種を選ぶことで、経済品種の栽培スペースを確保しながら効率的な授粉環境を整えることができます。
参考)https://www.kankyou-marc.jp/fukyuu/pdf/840104.pdf
リンゴ栽培では病害虫対策をしないと収穫が皆無になるため、かつては年間16~17回の農薬散布が必要とされていましたが、近年は種々の努力により散布回数を削減しています。病害虫管理の基本は栽培現場で発生している病害虫を直接観察し判定することにあります。
参考)リンゴの病害虫
病害虫が発生しやすい要因として、栽培品種や肥培管理などの栽培条件、接ぎ木更新では台木と穂木の組み合わせによって発病に影響する病害もあります。乾燥、低温多雨、高温多湿などの気象条件も病害虫発生に大きく影響します。それぞれの病害虫の発生条件をよく理解し、予防的な栽培管理を行うことが重要です。
農業害虫や病害の防除|リンゴの病害虫ハンドブック
リンゴ栽培期間中に発生する病害・害虫の被害、形態、発生、防除、薬剤について詳細な写真と解説が掲載されています。
残効期間の長い殺菌剤と固着性展着剤の利用により、年間の散布回数を8回とした防除体系でリンゴの主要病害を防除できる方法も確立されています。有用生物の働きと保全に配慮しながら、農水省に登録された適応薬剤を適切に活用して病害虫の発生を抑制することが必要です。
参考)https://agresearcher.maff.go.jp/seika/4/36/235,530?page=3
夏の水分不足による葉やけを防ぐため、地植えで西日が当たる場所では乾燥防止のマルチングが推奨されます。真夏に直射日光や西日が当たる場所は避け、鉢植えの場合はそのような位置から移動させることで病害虫リスクを低減できます。
参考)【家で育つ果実】花も実も可愛いクラブアップル! 育て方&美味…
クラブリンゴの収穫時期は品種によって異なりますが、観賞用途では9月上旬から中旬が切枝適期となります。果実は9月上旬以前の幼果期から赤色を呈し、9月中旬までの採枝では10日間以上の日持ち日数があります。食用品種の「アルプス乙女」などは10月下旬から収穫が可能で、一本で結実する特性を持ちます。
参考)【果樹】リンゴ「アルプス乙女」栽培日記(結実までの年数:2年…
渋味や酸味が強いクラブリンゴは生食には向きませんが、加工品にすると優れた風味を発揮します。シードルやお菓子、ジャムなどの加工品では、この渋味や酸味がかえって味に深みを与え、新しい販路開拓のチャンスとなります。クラブアップルや古来の品種(国光、和林檎など)、海外原産の品種はタンニンを多く含み、シードル製造に適しています。
「ジェネバ」はアントシアニンを多く含み爽快な酸味と甘さが特徴的なジュースに仕上がり、取引先ではアップルパイ、ケーキやパンの具材としても利用されています。果実はそのまま食べてもあまり美味しくありませんが、ジャムや果実酒に加工することで高い商品価値が生まれます。「メイポール」や「高坂林檎」を使った手づくりジャムでは、りんごの果皮をそのまま使用し、砂糖とレモン汁のみを加えて製造する方法が実践されています。
参考)クラブアップル収穫間近!
| 加工品目 | 適した品種 | 特徴 | 収穫時期 |
|---|---|---|---|
| シードル | ジェネバ、国光 | タンニン豊富、酸味強い | 9月~10月 |
| ジャム | メイポール、高坂林檎 | 果皮利用可、着色良好 | 9月~10月 |
| ジュース | ジェネバ | アントシアニン豊富、爽快な酸味 | 9月~10月 |
| 菓子類 | 各種クラブリンゴ | 酸味が味に深み、香り豊か | 9月~10月 |
クラブリンゴ栽培で収益性を高めるには、授粉樹としての機能と加工用果実の販売を組み合わせた複合的な活用が効果的です。単植園に授粉専用品種として導入することで、経済品種の結実が安定し収量が向上します。同時に、授粉樹から収穫される果実を加工用として販売することで、追加収益が得られます。
観賞価値の高い品種を選定すれば、春の花と秋の果実を鑑賞する目的での販売も可能です。「プロフュージョン」は実付き枝物として利用可能で、9月上旬から中旬に採枝することで切り花市場への出荷もできます。花の色が純白、ピンク、赤紫と変化のある品種は造園業者への苗木販売も見込めます。
参考)https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/nourin/nosui/files/H23P65.pdf
🌸 観賞用途での付加価値
🍎 授粉樹としての経済効果
🍯 加工用果実の販路開拓
栽培面積が限られる場合でも、「メイポール」のように縦に伸びる樹形の品種を選ぶことで、狭いスペースに混植することが可能です。コンパクトな樹姿の品種を選定することで、経済品種の栽培面積を犠牲にせず、効率的に授粉環境を整備できます。
参考)https://www.facebook.com/100057270348699/posts/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%96%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%AB-%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AB%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%A7%E3%82%82%E3%81%A3%E3%81%A8%E3%82%82%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%91%E3%82%AF%E3%83%88%E3%81%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B4%E3%81%AE%E6%A8%B9%E9%80%9A%E5%B8%B8%E3%81%AE%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B4%E3%81%AF%E5%8F%97%E7%B2%89%E6%A8%B9%E3%81%8C%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%A7%E3%81%99%E3%81%8C%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B9%E4%B8%8A%EF%BC%92%E6%9C%AC%E3%82%82%E6%A4%8D%E3%81%88%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%A8%E3%81%8A%E5%9B%B0%E3%82%8A%E3%81%AE%E6%96%B9%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%81%AF%E7%B8%A6%E3%81%AB%E4%BC%B8%E3%81%B3%E3%82%8B%E6%A8%B9%E5%BD%A2/1112900410628960/
鉢植え栽培では落葉果樹専用培養土の「果樹の土」を使用し、夏の乾燥に注意しながら管理することで、観賞用や直売所での苗木販売も展開できます。栽培技術の確立と複合的な活用方法の検討により、クラブリンゴは農業経営における新たな収益源として期待できる作物です。