メイポールは、そもそも「実を大きく売る」よりも、花粉を安定供給する目的で導入されてきたタイプとして紹介されることが多く、濃い紅色の花を多く付ける点が特徴として語られます。
現場では、受粉樹は“咲いている”だけでは足りず、「花粉が採れる」「主力の開花と重なる」「園内で花粉が運ばれる」の3点が揃って初めて投資回収に繋がります。
また、メイポールは枝が横に張りにくく上に伸びる“バレリーナツリー”として説明されることがあり、狭い作業道でも受粉樹を入れやすいという設計上のメリットが出る場合があります。
授粉設計の第一歩は、候補となる受粉樹の開花期が主力品種とどの程度一致するかを、地域データで確認することです。
農研機構の資料では、授粉専用品種の開花について「メイポールは経済品種と同程度」と整理されており、極端に早咲き・遅咲きになりにくい受粉樹候補として扱われています。
意外に見落とされがちなのが「頂芽と側芽で花のタイミングや量がズレる」ことなので、若木期は“咲いた/咲かない”の二択で評価せず、どの部位にどれだけ花が付いたかをメモして翌年の配置・管理に反映すると精度が上がります。
受粉樹は主力品種より“管理を簡略化”したくなりますが、放任すると樹冠が邪魔になったり、日陰を作って主力列の着色を落とす原因になり得るため、台木選びと樹形設計が重要です。
カラムナータイプのメイポールについては、台木の違いが樹体生育・果実生産効率・乾物生産力特性に影響することが研究題目として整理されており、「同じメイポールでも台木で性格が変わる」前提で考えるのが安全です。
省力面では、半わい性台木の選択肢として「JM2」が提示されており、挿し木繁殖が容易、耐水性が高い、根部疫病や一部ウイルス・斑点落葉病への抵抗性などが特性として示されています。
受粉樹は“主力の樹より目立たない存在”であるべきなので、園地が湿りやすい・改植で根が残りやすいなど条件が厳しい場合ほど、こうした台木特性(耐水性・病害抵抗性)を根拠に「枯らさない」設計に寄せると、結局いちばん省力になります。
メイポールは隔年性(一年おきに実をつけやすい)という特徴が語られており、受粉樹として“毎年同じ量の花粉を期待する”運用と相性が悪くなる場面があります。
そのため、受粉樹として安定させたい場合は「結実させない(または最小限に抑える)」発想が有効で、花後の摘花・摘果を“花粉の安定供給のための作業”として位置づけると判断がブレにくくなります。
逆に、加工原料など出口がある園地では、あえて一部を着果させて副産物化する手もありますが、隔年性が強い個体に偏って着果させると翌年の花が薄くなるリスクがあるため、着果させる木・させない木を最初から区分する運用が現実的です。
メイポールは果肉が赤いこと、酸味が強く生食出荷されにくいことが紹介されており、ここを「使い道がない」と決めつけると毎年の摘果が単なるコストになります。
一方で、赤肉・高酸は、少量でも加工で特徴を出しやすい性格なので、たとえば“ブレンド原料(色・酸の調整)”として位置づけると、受粉樹の維持費の一部回収につながる可能性があります。
さらに、受粉樹が希少であること自体がストーリーになり得る、という点は栽培技術とは別軸の武器で、直売・体験園・加工品の説明文で「受粉樹の役割」まで語れると、価格競争から距離を取る導線を作れます。
受粉専用品種の開花期の考え方(メイポール含む)を確認する参考:https://www.naro.affrc.go.jp/org/tarc/to-noken/DB/DATA/064/064-093.pdf
参考)https://www.naro.affrc.go.jp/org/tarc/to-noken/DB/DATA/064/064-093.pdf
台木JM2の耐水性・病害抵抗性など、台木選定の判断材料:JM2
参考)JM2