キウイフルーツかいよう病の症状と防除対策

キウイフルーツかいよう病は、樹体を枯死させる恐ろしい細菌病です。Psa3系統の病原性や発生時期、効果的な防除方法を解説し、あなたの園地を守る実践的な対策をお伝えします。発見が遅れると園地全体への被害拡大につながるこの病気、あなたは正しく対処できていますか?

キウイフルーツかいよう病の症状と防除

発病樹の雄木で採取した花粉は使用禁止です


この記事の3つのポイント
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Psa3系統は病原性が強い

2014年に国内で初確認された新系統で、黄色果実品種への被害が特に大きく、樹体枯死に至る可能性があります

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収穫後から翌年6月が主要伝染期

病原菌の活動適温は10~20℃で、低温期に活発化します。この時期の薬剤散布が感染予防の鍵となります

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早期発見と発病部位の切除が重要

2月上旬から5月下旬を中心に園内を見回り、発病部位を発見したら速やかに切除して周囲への感染拡大を防ぎます


キウイフルーツかいよう病の特徴と系統



キウイフルーツかいよう病は、細菌の一種であるPseudomonas syringae pv. actinidiae(Psa)によって引き起こされる病気で、葉の褐色斑点、新梢枯死、さらには樹体枯死まで引き起こす深刻な病害です。この病原菌には病原性の異なる複数の系統が存在し、それぞれ異なる特徴を持っています。


日本では1984年(昭和59年)に静岡県でPsa1系統の発生が最初に確認されました。この従来系統は国内で長年発生していましたが、2014年(平成26年)5月に愛媛県をはじめとする7県で、より病原性の強いPsa3系統が同時多発的に確認されました。Psa3系統は中国、イタリア、フランス、ニュージーランドなど世界各国で発生が報告されており、国際的にも警戒されている系統です。


Psa3系統の特徴は、既発生国では病原性が極めて強い系統とされていることです。特に緑色果実品種の「ヘイワード」と比較して、黄色果実品種や赤色果実品種での被害が大きいと報告されています。「レインボーレッド(紅妃)」などの中国系品種は特に本病に弱く、適切な防除を講じないと樹木が枯死する場合があります。


つまりPsa3系統は要注意です。


Psa1系統とPsa3系統は、葉の病徴で区別できる場合があります。Psa1系統では葉の斑点の周囲に黄色のハロー(かさ)が大きく形成されますが、Psa3系統では小さいかほとんど形成されません。ただし品種等によってはPsa3系統でもハローが生じる場合があるため、外観だけでの判別は難しく、専門機関での診断が推奨されます。


なお、人体への影響はなく、感染した果実を食べても健康に問題はありません。しかし感染した樹から収穫された果実は品質が低下することがあり、経済的損失は避けられません。


農林水産省:キウイフルーツかいよう病とは(PDF)
こちらには病原菌の系統ごとの発生国や特徴、日本での発生状況が詳しく記載されています。


キウイフルーツかいよう病の発生時期と症状

キウイフルーツかいよう病の発生には明確な季節性があり、病原菌の生育適温が10~20℃であることが大きく影響しています。病原菌は春秋期に増加し、冬期でも少なからず存在しますが、25℃を超える高温時では増殖が極めて低下します。この温度特性を理解することが、効果的な防除対策の基本となります。


2月頃から樹液流動が始まると、皮目や剪定痕などの傷口から病原菌を含む樹液が漏出し始めます。樹液が流れ出た跡は暗赤色に変色するため、この時期の観察が早期発見につながります。樹液の漏出は気温が上がる6月頃まで続き、この間が最も注意を要する時期です。


3月から4月にかけては、発芽間もない新梢が枯死する症状が現れます。新梢枯死は樹の生育を著しく阻害し、収量減少に直結するため、この時期の防除は特に重要です。同じ時期に、花蕾のガクや花弁が褐変する症状も見られます。


4月から5月にかけては葉に特徴的な症状が現れます。葉脈に囲まれた2~3mm程度の不正形の褐色斑点が形成され、この病斑から病原菌が漏出します。風雨等により葉から漏出した病原菌が次々に第二次感染を起こし、感染が園地内に拡大していきます。平均気温が20℃近くまで上昇する5月頃から菌の増殖が低下し始め、5月下旬から6月には極めて低くなります。


7月から9月の高温期には病勢が衰えます。


しかし気温が20℃を下回る10月頃から再び菌の増殖が活発になり、病原菌の漏出は落葉期まで続きます。漏出した病原菌は落葉痕や傷口から樹体内に感染し、翌年の伝染源となります。このため収穫後から翌年6月頃までが主要な伝染期となり、この期間の定期的な防除が必要不可欠です。


福岡県:キウイフルーツかいよう病の発生生態と防除対策(PDF)
こちらには月別の発生生態が図解されており、各時期の症状と対策が詳しく解説されています。


キウイフルーツかいよう病の感染経路と伝染方法

キウイフルーツかいよう病の主な感染経路は、雨媒伝染、風媒伝染、器具伝染、苗木伝染などがあります。中でも風雨による伝染が最も重要で、強い風雨により発病が著しく助長されることが知られています。2月以降の強風を伴う雨は細菌を周辺樹や園地へ飛散させ、発生拡大の最大の要因となっているため、最も警戒を要します。


病原菌は葉では気孔や傷口、枝では傷口から侵入します。剪定作業や風雨などにより生じた葉や枝の傷口等から細菌が侵入し、樹体内で増殖を始めます。このため防風垣や防風ネットによる風対策を行い、剪定後は必ず傷口に癒合促進剤を塗布することが感染予防の基本となります。


人為的な伝染経路も見過ごせません。剪定時のハサミやのこぎりなどの器具を介した伝染、接ぎ木による伝染が報告されています。発病樹の枝を切ったハサミをそのまま健全樹に使用すると、病原菌を直接樹体内に持ち込むことになります。このため樹ごとに器具を消毒することが極めて重要です。70%エタノールまたは200ppm以上の濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液での消毒が推奨されています。


受粉作業も感染リスクがあります。


特に発病園で採取された花粉は病原菌を含んでいる可能性が高く、これを使用すると健全園にも病気を広げてしまいます。感染の恐れのない安全を確認された花粉を使用することが必須です。前年から罹病が疑われる場合は、貯蔵花粉も利用しないよう注意が必要です。


苗木や穂木も伝染源となる可能性があります。来歴不明な苗木や穂木の使用は避け、必ず信頼できる供給元から購入するようにします。購入先や購入日、資材の量を記帳しておくと、万が一発生した場合の追跡調査に役立ちます。


園地間の人の移動も注意点です。靴底や服に付着した泥や植物残渣に病原菌が含まれている可能性があるため、園地に出入りする際は手や泥を落とした靴底を70%エタノール等で消毒します。園地から立ち去る前に、服、帽子、靴などに付いた植物残渣を取り除くことも重要な衛生管理です。


キウイフルーツかいよう病の薬剤防除と散布時期

キウイフルーツかいよう病の薬剤防除では、病原菌が傷口や柔らかい組織から侵入するため、管理作業などで傷が生じるときや、生育が旺盛な発芽から新梢生育期を中心に予防的に薬剤散布を行うことが基本となります。使用できる薬剤は主に銅水和剤と抗生物質剤の2種類で、散布時期によって使い分けます。


樹液流動期から出蕾前までは銅水和剤を中心に登録薬剤を定期的に散布します。ICボルドーやクプロシールドなどの銅水和剤は予防効果が高く、この時期の基幹防除剤となります。散布量は300~400L/10aを目安にたっぷり散布することが重要で、枝幹部にも薬液がかかるように丁寧に散布します。樹体各部に菌が付着生存しているため、葉だけでなく枝幹への散布も忘れないようにします。


出蕾後は銅水和剤あるいは抗生物質剤を定期的に散布します。


開花前後は特に注意が必要です。


銅水和剤は開花前後、特に中国系品種では薬害が出やすいため、薬剤の選定等に注意します。この時期はアグレプト水和剤(ストレプトマイシン)やカスミン液剤カスガマイシン)などの抗生物質剤の使用が推奨されます。


抗生物質剤の注意点があります。


残効が短いため、防除適期を外さないように注意が必要です。また耐性菌発生のリスクが高いため、同一系統の連用は避け、異なる系統の薬剤をローテーションで使用します。アグレプト水和剤は1000倍散布で収穫90日前まで使用可能で、使用回数は4回以内に制限されています。


収穫後から落葉期にかけても重要な防除時期です。この時期はキウイフルーツかいよう病の病原菌の活動に好適な低温になるだけでなく、落葉痕や剪定の切り口など、菌が侵入しやすい傷口が多く発生するため、銅水和剤を中心に定期的に散布します。特に収穫後、落葉後、剪定前後や新梢伸長時期の薬剤散布を徹底することが、翌年の発生を抑える鍵となります。


強風雨や降雹等で樹が傷ついた場合は、予定外でも速やかに薬剤散布を行います。傷口から菌が侵入するリスクが高まるため、応急的な防除が必要です。この場合は抗生物質剤の散布が効果的とされています。


剪定痕は病原菌の漏出場所や感染場所になるため、すべての剪定痕にトップジンMペーストなどの癒合促進剤を塗布します。塗布後に銅水和剤を中心に登録薬剤を散布することで、二重の防御となります。


佐賀県:収穫後からのキウイフルーツかいよう病対策(PDF)
こちらには収穫後の具体的な防除スケジュールと使用薬剤が詳しく記載されています。


キウイフルーツかいよう病の早期発見と切除対策

キウイフルーツかいよう病の防除において、早期発見による早期対応は最も重要な対策の一つです。本病の症状が発生しやすい2月上旬頃から5月下旬頃を中心に園内を見回り、それ以外の時期も管理作業等で園内に入る際は充分注意を払います。毎日巡回して病気を早期に発見することが、被害の拡大を防ぐ第一歩となります。


発見のポイントは複数あります。枝幹部からの樹液漏出は最も分かりやすい症状で、暗赤色に変色した樹液の跡が目印となります。新梢の枯死や芽枯れも比較的発見しやすい症状です。葉の症状では、葉脈に囲まれた小褐斑が特徴的で、結果枝の基部から10葉までの葉に多く発生します。花蕾の褐変や腐敗も4月頃に確認すべき症状です。


発病部位を発見した場合の対応は品種によって異なります。「ヘイワード」のように比較的耐病性のある品種で、主幹や主幹に近い主枝以外の発病で症状が軽い場合は、発病部位を中心とした切除により発症を軽減させることができます。具体的には発病部から70cmから1m、または前年の枝の基部まで遡って切除し、切り口にトップジンMペーストなどの癒合促進剤を塗布して保護を行います。


中国系品種の対応は厳格です。


「レインボーレッド(紅妃)」などの中国系品種は一般的に「ヘイワード」より耐病性に劣るものが多く、特に「レインボーレッド」は本病に極めて弱い品種です。この品種では結果枝等の発病であっても、周囲への感染拡大を防止するため伐採が推奨されます。「甘うぃ」の耐病性は「ヘイワード」に劣るものの「レインボーレッド」より優れるため、「ヘイワード」に準じた対応ですが、発病部位の切除を徹底し、完全に除去する必要があります。


「ヘイワード」であっても、樹液の漏出等のかいよう症状が主幹等に発生している場合は、周囲への感染拡大を防止するため伐採します。主幹部や骨格枝の主幹付近に症状が及んでいる場合は、樹の伐採が避けられません。早期発見できれば発生枝の切除などで病原菌の除去が可能ですが、症状が進行した場合は樹全体を犠牲にせざるを得ないため、早期発見の重要性が理解できます。


発生園の雄木は汚染花粉の飛散や利用を防ぐため、伐採します。雄木から採取された花粉は園地全体への感染源となる可能性が高く、被害拡大のリスクが極めて大きいためです。


伐採した枝葉等の処分も重要です。細菌の飛散を防止するため、速やかに焼却またはビニル等で覆います。切り株はひこばえが発生しないように処理して、ビニル等で覆い、ビニルが隠れるまで土をかぶせます。適切な処分を怠ると、伐採後も園地に病原菌が残存し、再発の原因となります。


キウイフルーツかいよう病の防風対策と園地管理

キウイフルーツかいよう病の防除において、防風対策は薬剤防除と並んで極めて重要な位置を占めています。本病原菌は風雨で拡散するため、防風施設および雨よけ施設の設置は感染拡大の防止効果が高く、特に「レインボーレッド」「甘うぃ」及び雄木ではこれらの設備の導入が強く推奨されます。


防風ネットや防風垣の設置により、園地内への病原菌の飛散を物理的に遮断できます。周辺からのかいよう病菌の飛散をできるだけ少なくすることで、苗木への感染や健全樹への二次感染を防ぎます。風当たりが強い場所では特に発病が多いため、園地の立地条件に応じた防風対策が必要です。防風林の整備も効果的で、冬季のうちに防風林・防風網の整備を行うことで、翌年の被害を軽減できます。


雨よけ施設の効果も見逃せません。雨媒伝染を防ぐため、簡易的な雨よけハウスや雨よけシートの設置が有効です。特に発芽から開花期にかけての降雨時に効果を発揮し、葉や花蕾への感染を大幅に減らすことができます。ただし施設の導入にはコストがかかるため、被害の大きい品種や発生リスクの高い園地から優先的に導入を検討します。


園地の衛生管理が感染拡大を防ぎます。


器具や人への病原菌の付着による伝染を防ぐため、徹底した衛生管理を行います。園地に出入りの際は手や泥を落とした靴底を70%エタノール等で消毒し、園地から立ち去る前に服、帽子、靴などに付いた植物残渣を取り除きます。複数の園地を管理している場合は、発生園から健全園への移動順序にも注意が必要で、健全園を先に作業してから発生園に入るようにします。


ハサミやのこぎりなどの管理器具は園地ごとに決められたものを用意し、樹ごとに200ppm以上の濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液又は70%エタノールを用いて消毒して使用します。発病樹の切除後は必ず器具を消毒してから次の作業に移ります。消毒液はスプレーボトルに入れて作業時に携帯すると便利です。


収穫かご等に植物残渣を混入させないことも重要な衛生管理です。収穫や剪定の際に出た枝葉等は園外に持ち出し、速やかに焼却または適切に処分します。園地内に放置すると伝染源となるため、作業後は必ず清掃を行います。


品種選定と植栽計画も長期的な防除対策となります。「レインボーレッド」「甘うぃ」及び雄木の植栽時には、かいよう病発生園および隣接園地への導入は推奨されません。新規植栽や改植の際は、発生リスクを考慮した品種選定と配置計画が重要です。耐病性品種への更新も選択肢の一つとなります。


苗木、穂木、花粉等の生産資材については、感染の恐れのある資材を使用しないよう、安全を確認された資材を購入します。購入先や購入日、資材の量が後日確認できるよう必ず記帳しておくと、万が一発生した場合のトレーサビリティ確保に役立ち、被害拡大の経路解明につながります。


キウイフルーツに発生するバクテリア(細菌)病の見分け方と防除方法
こちらには細菌病全般の見分け方と、防風対策を含む総合的な防除方法が詳しく解説されています。




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