土壌25gにたった10頭いるだけで、収穫した大根が全滅することがあります。
参考)https://www.hro.or.jp/agricultural/center/result/kenkyuseika/gaiyosho/h03gaiyo/1990119.htm
キタネグサレセンチュウ(学名:Pratylenchus penetrans)は、土壌中に生息する体長わずか0.2mm程度のウナギ型の線虫です。 根菜類の産地では非常に広く分布しており、北海道の調査ではダイコン栽培圃場の約80%にネグサレセンチュウ類が確認されています。 つまり、何も対策をしていない畑では、高い確率で既に潜んでいると考えるべきです。apron-web+1
他のネグサレセンチュウが根の内部に侵入するのに対し、キタネグサレセンチュウは根の表皮に外部から寄生し、腐敗や褐変を引き起こす点が特徴です。 大根の根表面に「水ぶくれ+中心に褐変」ができ、白い大根の肌が汚く変色します。 見た目の問題だけで、食べても体に害はありませんが、市場・スーパーへの出荷基準をほぼ満たせなくなります。potato-museum.jrt+1
増殖の適温は15〜25℃で、春から夏の地温上昇とともに活発に動きます。 播種から約25日で大根の肥大根に侵入し、白斑が現れ始めます。 対策が遅れると、収穫時に取り返しがつきません。pref+1
被害の典型症状は、根の表皮に現れる「白濁した斑点」と「その中心部の黒点・褐変」です。 初期は灰褐色〜淡灰色で目立ちませんが、収穫期に近づくにつれ白斑が顕著になり、ひどい場合は斑点の中心部がひび割れや奇形(寸づまり・分岐)を起こします。snowseed+1
数字で見ると深刻さがよくわかります。土壌25gあたりの被害許容密度はダイコンで10頭とされています。 名刺の上に10粒の砂を置いたイメージですが、それだけの数でも出荷できない大根が続々と出始めます。密度が土壌25gあたり約50頭に達すると、商品化率は50%を下回ります。
半分以上が廃棄になるということです。
被害の程度は播種期・品種・栽培法に関わらず、あくまで播種時の土壌中の線虫密度に依存します。 同じ品種を同じ方法で育てても、土壌密度が違えば結果は全く異なります。
つまり、栽培前の土壌診断が最大の防衛策です。
🔎 キタネグサレセンチュウの密度診断や各被害症状の写真は農研機構の公開資料が参考になります。
農林水産省:センチュウ密度と被害程度の予察(PDF)
「マリーゴールドを植えれば線虫が減る」という知識は広く知られています。これはほぼ正解ですが、品種の選択を間違えると思わぬリスクが生まれます。 一般的な花つきのフレンチマリーゴールドを使うと、開花した花がオオタバコガ幼虫の餌となり、別の被害を招くことがあります。ppn-lab.hatenablog+1
神奈川県農業技術センター三浦半島地区事務所の試験で、花がつかない品種「エバーグリーン」がキタネグサレセンチュウの密度抑制に有効であることが実証されました。 また、マリーゴールドの根から分泌される「アルファー・テルチェニール」という物質が土中の線虫を死滅させる機能を持ちます。 線虫の約80%が死滅したという検証データもあります。takii.co+2
🌸 花なし品種「エバーグリーン」の詳細は生産者向け資料にまとまっています。
タキイ種苗:ネグサレセンチュウを抑制する花の咲かないマリーゴールド(三浦産地事例)
エバーグリーンは5月中旬〜7月に播種し、約2か月間栽培してすき込むのが基本です。
播種量の目安は1.5L/10aです。
すき込み後に石灰窒素を施用すると、マリーゴールドの腐熟が促進され、土壌消毒効果も同時に得られます。 マリーゴールドの効果は3年間続くとの報告もあります。 手間を惜しまず毎年行うことで、薬剤コストを大きく削減できます。cacn+1
薬剤防除の核となるのは、播種前の粒剤施用と収穫後のくん蒸剤処理の組み合わせです。 粒剤はネマキックやフォースなど有効成分の違う製品を年ごとにローテーションして使うことで薬剤抵抗性の発達を防ぎます。
これが基本です。
参考)【試作】秋作の大根-ネグサレセンチュウ防除体系 - 農業LA…
くん蒸剤の「キルパー(クロルピクリン)」は、季節に関係なく線虫とその卵を死滅させる効果があります。 収穫後の増えた線虫を「リセット」する目的で使うのが合理的な使い方です。ただし毒劇物に該当する製品も多いため、初めて使用する際はJAや関係機関への事前相談が必要です。ja-yokosukahayama+1
| 防除資材 | 使用タイミング | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 粒剤(ネマキック等) | 播種前・土壌混和 | 栽培期間中の線虫密度を抑制、毎年有効成分をローテーション |
| キルパー(クロルピクリン) | 収穫後・くん蒸 | 線虫・卵を死滅、季節を問わず使用可。毒劇物のため要注意 |
| マリーゴールド(エバーグリーン) | 前作・2か月栽培 | 根分泌物が線虫を駆除、オオタバコガ誘引リスクなし |
| エンバク(ヘイオーツ) | 前作・2か月栽培 | 密度低減効果あり、播種量15kg/10a、露地での実用性が高い |
| キチン系資材(カニガラ等) | 土壌投入(任意) | 線虫体のキチンを分解する菌を増やす、劇的効果より土づくり目的 |
慣行防除で被害を抑えきれなかった場合、現状ではほぼ「お手上げ」になります。 「体系防除」を年間カレンダーに落とし込んで管理することが重要です。
🏛️ 農薬登録・使用基準の確認は農林水産省の最新情報を参照ください。
神奈川県:キタネグサレセンチュウの薬剤による防除(PDF)
多くの農家が見落としているのが、播種前の土壌中線虫密度の定量的な把握です。 被害の程度は栽培品種や管理方法よりも「播種時密度」にほぼ決まるにもかかわらず、事前診断を行っている農家は少数派です。 対策の予算と手間を正しく割り振るために、密度を「数字」で知ることが出発点です。
簡易的な方法として「指標植物診断」があります。 翌年大根を植える予定の圃場の土壌を12cm素焼き鉢に取り、ゴボウを播種して2か月間温室内で栽培します。ゴボウの根に現れる壊死斑の数と密度には高い相関があり、栽培の可否を事前に判断できます。 この方法は費用がほぼかからず、専門業者に頼まずとも実施できます。naro.go+1
さらに、農研機構は「ゴボウ3週間苗の壊死斑数」でキタネグサレセンチュウ密度を推定する手法を開発しています。 回帰式まで公開されているため、数値で密度を把握できます。
これは使えそうです。
キタネグサレセンチュウ密度が土壌25gあたり30頭以下であれば大根は全量生食用として出荷できる計算となり、50頭を超えると商品化率が急激に低下します。 この数字を判断基準に持っておくだけで、「今年は農薬を使う必要があるか否か」の合理的な判断ができます。naro.go+1
🔬 農研機構による密度推定手法の詳細はこちら。
農研機構:ゴボウを指標としてキタネグサレセンチュウ密度とニンジンの線虫被害が推定できる
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種 1kg アウェナストリゴサ えん麦野生種 ネグサレタイジ 緑肥作物 その他 酪農 畜産 緑肥 牧草 タキイ種苗 米S 代引不可 (登録品種名:ネグサレタイジ)