あなたの畑の半分は、水の性質の勘違いで quietly 利益を失っています。
多くの現場では「雨や潅水の翌日には余分な重力水は抜けてくれるから、多少多めにかけても大丈夫」という感覚で水を入れているはずです。実際、灌漑設計の教科書でも「24時間経てば標準的な土壌では大部分の重力水は排除される」と説明されています。
ところが麦を使った試算では、300mmという大雨相当の潅水を24時間かけて行うと、5日後まで重力水が根域に残り、深層への縦浸透量は910mmにも達するケースが報告されています。 これは水田1枚(10a)で換算すると、東京ドーム約0.7杯分の水が「根に使われずに抜けていく」イメージです。かなり大きいですね。
このような深い浸透は、水だけでなく肥料の窒素も一緒に流し去ります。10aあたり300mm潅水すると、水道代やポンプの電気代で数千円規模、加えて追肥分も地下へ逃してしまう計算になります。つまり、重力水を前提にした「とりあえず多め」潅水は、コストと環境の両面で損の大きい選択ということですね。
結論は「24時間で抜けるから多めに潅水しても良い」とは言えない、です。
このリスクを抑える場面では、「1回ドカン」ではなく「少量多頻度」潅水が有効です。ある施設園芸の試験では、200m²あたり日射比例制御灌水に比べて、タイマー制御の少量多頻度潅水のほうが水の下方浸透が小さく、上・中層の含水率を高く保てたうえ、潅水コストも約10%削減できたと報告されています。
つまり少量多頻度が基本です。
教科書的には、土壌水は吸着水・毛管水・重力水に分けられ、なかでも毛管水が植物にとって「最も重要な水源」とされています。 毛細管現象によって土壌の中・小孔隙に水を引き上げ、根が乾いている方向へとじわじわ移動していきます。これは「見えない点滴チューブ」のような役割ですね。
ただし、毛管水のすべてが作物に利用できるわけではありません。土壌表面や粒子に強く吸着している部分は、実質的には吸着水と同じで、根が吸えない「無効水」とされています。
つまり「毛管水=全部使える水」という常識は成り立たないということですね。
植物が利用できるのは、重力水と毛管水の一部だけです。 例えば、壌土の田間持水量(重力水が抜け切った状態)を100とすると、pF値が上がっていくにつれて、可給水量はそのうち半分~3分の1程度にまで減っていきます。 感覚的には、バケツ一杯の水だと思っていたのが、ふたを開けてみると実際に汲めるのは半分以下、というイメージです。chiba-u+2
結論は「毛管水の一部しか使えない」と理解して設計する、です。
この事実を踏まえると、圃場のpFを見ながら潅水量をコントロールできる簡易センサーの導入は、投資対効果の高い選択肢になります。例えば、1台数万円クラスの土壌水分センサーを10aごとに1本入れておけば、「今日はもう少し我慢できる」「ここは思ったより乾いている」といった判断が日常的に可能になります。どういうことでしょうか?
こうした計測に慣れてくると、あなたの感覚と数値のズレも見えてきます。
吸着水(吸湿水)は「空気中の湿気を土壌が吸い取った水分で、土壌表面に吸着している」と説明され、一般に「作物には役に立たない水」とされています。 そのため「どうせ使えない水だから意識しなくていい」と見なされがちです。
しかし、圃場が極端に乾燥したあとで一気に潅水した場合、この吸着水の層が厚くなりすぎて、次に入れた水の多くが、また「吸着水→無効水」に回ってしまうことがあります。つまり、いくら水を入れても、根が届く前に土粒子に抱え込まれてしまうのです。痛いですね。
もう一つの問題が「踏圧」です。収穫作業やトラクタ走行で土が締め固められると、微小孔隙が増えて毛管水と吸着水の比率が変わり、「水はあるのに吸えない」状態が長く続きます。 体感としては、表面5cmはしっとりしているのに、少し掘るとカラカラ、という場面です。
参考)http://www.cr.chiba-u.jp/lab/Kondoh-laboratory/edu/lec/hydrology/hydrology_1_No03.pdf
この状態で慌てて潅水を増やすと、上層で吸着水を増やしつつ、下層には重力水として抜ける、という最悪のパターンになります。つまり「水のやり損」です。
こうしたリスクを避ける場面では、まず「踏まない」設計が有効です。通路と作物列を明確に分け、作物列はできるだけ人も機械も入れないようにするベッド栽培や高畝化は、その典型例です。
加えて、完熟堆肥や有機物を入れて団粒構造を回復させると、微小孔隙と中孔隙のバランスが整い、吸着水に偏らない保水を実現しやすくなります。 団粒構造の回復が原則です。epataiwan.blogspot+1
「一度にたっぷり潅水した方が手間も少ないし、根も深く張る」という考えは、畑仕事の現場ではよく聞かれます。ですが、先述の試験のように、1回潅水区では重力水として下方に抜ける水が多く、多頻度区に比べて上・中層の含水率が低くなることが示されています。
1日1回300mlを与えるのと、1日10回30mlずつ与えるのとでは、同じ3Lでも、根が実際に使える水の量が違ってくる、というイメージです。つまり少量多頻度なら問題ありません。
底面給水型の自動潅水プランターは、この「毛管水をうまく供給する」仕組みの代表例です。底面のタンクから紐を伝って水が上がり、プランター内では余分な重力水がなく、毛管水として必要な分だけ供給される構造になっています。fuzoku-gu-farm.blogspot+1
これを露地やハウスで応用するイメージとして、浅めのサブタンク+毛管マットを畝下に敷き、タイマーで水位を管理する方法があります。部材としては、ホームセンターのコンテナや防草シート用の不織布マットで代用できるので、10aあたり数万円レベルから試すことも可能です。これは使えそうです。
また、給液タンク用ポンプにタイマーを付けるだけでも、少量多頻度潅水は実現できます。 朝夕2回のところを、1時間ごとに数分ずつに分割するだけで、毛管水帯を厚く保ちつつ、深層への縦浸透を抑えることができます。
こうした設定のコツは、「1回あたりの潅水時間を、表土が軽く湿る程度」に抑え、翌日の土壌水分の推移を実際に観察することです。つまり現物でチューニングする、ということですね。
ここまでの話を踏まえると、重力水・毛管水・吸着水を意識した土づくりは、「水の3層構造を、自分の圃場なりにデザインし直す作業」と言えます。一般的な教科書や研修では、土壌水分の説明で終わってしまい、実際のルールづくりまでは踏み込まないことが多いはずです。
しかし、実際に収量とコストを左右するのは、「あなたの圃場で、どこまでを許容するか」という現場ルールです。結論は「自分なりのpFと踏圧の基準を持つ」ことです。
例えば、次のような独自ルールを作るイメージです。
・pF2.3以上になったら、その作物は「ストレス開始ゾーン」と見なす
・畝肩の土壌水分が、このゾーンに3日以上とどまらないよう潅水する
・収穫機やトラクタは、毎回同じ通路だけを走らせ、作物列の踏圧はゼロに近づける
・作土10cmの容積重が1.3g/cm³を超えたら、有機物投入や浅耕で団粒回復を優先する
これらを見える化するには、年に1回でも構わないので、簡易すき取りやペネトロメータ、簡易pF測定器を使ってデータ化しておくと役立ちます。 〇〇が条件です。zennoh.or+1
さらに一歩進めるなら、「自分の圃場の水の履歴」をメモしておくことも有効です。例えば、「7月第3週に30mmの夕立+翌日の潅水で根腐れが出た区」と「同じ条件でも無事だった区」の違いを書き留めることで、「この土質なら30mmまでは許せる」「この畝は20mmで限界」という感覚が数字と紐づいてきます。
こうした現場の経験知と、重力水・毛管水・吸着水の理屈を重ね合わせることで、教科書には載っていない「あなたの圃場専用マニュアル」ができあがります。つまり経験と理論の両方が必要ということですね。
土壌水分の基礎用語とpFについて、もう少し体系的に学びたい場合は、JA全農の土壌・肥料用語集が参考になります。
参考)土壌肥料用語集 は行
土壌水分とpFの基礎用語(JA全農 土壌肥料用語集)
土壌水の分布や重力水・毛管水のイメージ図を確認したい場合は、大学の水文学・土壌学の講義資料も役に立ちます。soil.en.a.u-tokyo.ac+1
土壌水と毛管力・重力の関係を解説した講義資料(千葉大学)
最後に、重力水・毛管水・吸着水の仕組みを直感的に理解したいときには、底面自動潅水プランターの説明が視覚的に分かりやすい資料になります。fuzoku-gu-farm.blogspot+1
土壌水と植物の関係と底面自動潅水の仕組みの解説記事
あなたの圃場では、まずどの作物・どの区画で「水の3層」を見直してみたいですか?