人工呼吸器 モード 一覧 基本設定と使い分け解説入門

人工呼吸器モードの種類と特徴、初期設定やNPPV・波形モニターの基本を農業現場の事故や急変にも役立つ形で整理すると、どこから学ぶべきでしょうか?

人工呼吸器 モード 一覧 基本解説

人工呼吸器モード一覧の全体像
💡
代表的モードと換気様式

A/C・SIMV・CPAPなどの基本モードと、VCV・PCV・PRVCといった量規定・圧規定換気の考え方を整理します。

⚙️
初期設定と管理のポイント

FiO2・VT・呼吸回数・PEEPなどの初期設定の目安と、PEEPを段階的に上げる実際的な考え方をまとめます。

👩‍🌾
NPPV・CPAPと波形モニター

農作業事故や農薬中毒などで人工呼吸器管理になった場面も意識しながら、NPPVモードとグラフィックモニターの読み方の基本を解説します。

人工呼吸器 モード 一覧 基本と種類の違い

 

人工呼吸器の換気モードは、「いつ」「どのくらい」空気を送るかというルールの組み合わせで決まり、代表的なものとしてA/C(補助・調節換気)、SIMV(同期式間欠的強制換気)、CPAP(持続的気道陽圧)が挙げられます。
A/Cは設定した回数分は必ず強制換気が入り、患者の自発呼吸があればそれもトリガーにして同じ換気が入るため、重症患者で「とにかく換気量を確保したい」場面でよく使われます。
SIMVは設定した回数分だけ強制換気を入れつつ、それ以外の自発呼吸は圧サポート(PS)だけを付与するため、離脱の練習や自発呼吸が戻りつつある患者に向いているとされています。
一方、CPAPは強制換気を行わず、常に一定の陽圧をかけて肺胞を保ち、酸素化を改善するモードで、睡眠時無呼吸症候群や急性心原性肺水腫などで代表的に用いられます。

 

参考)NPPVで使用するモードと設定は?

これらのモードの内部では、量を基準にするVCV(量規定換気)と、圧と時間を基準にするPCV(圧規定換気)、その中間的なPRVCなどの換気様式が組み合わさっており、同じ「A/C」でもVCVかPCVかで波形やリスクが変わります。

 

参考)https://www.jseptic.com/ce_material/update/ce_material_10.pdf

さらに、APRVやBIPAP、PAV、HFOといった「特殊モード」もあり、ARDSや高度な肺保護が必要な場面で選択されることがありますが、実際の臨床で頻度が高いのはまずA/C・SIMV・CPAPとVCV・PCVの組み合わせです。

 

参考)人工呼吸器のモード・完全解説【たった1つの重要な考え方】※初…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モード 換気様式の例 主な特徴 よく使う場面
A/C VCV または PCV 設定回数分は必ず強制換気が入り、自発呼吸も同じ換気で補助される 重症肺炎、ARDS初期、農薬中毒などでしっかり換気量を確保したいとき
SIMV VCV または PCV + PS 決めた回数だけ強制換気し、それ以外の自発呼吸には圧サポートのみ行う 離脱トレーニング、自発呼吸が戻りつつある回復期
CPAP PEEPのみ + 任意でPS 自発呼吸に一定の陽圧をかけ、機能的残気量を増やして酸素化を改善する 睡眠時無呼吸、急性心原性肺水腫、NPPVでの酸素化改善

農業従事者の視点では、圃場での外傷や農薬暴露、熱中症などから急性呼吸不全に陥り、救急搬送後にA/CやSIMVで管理されるケースが想定されるため、「どのモードが今選ばれているのか」を家族として聞き取り、状態のイメージを持つだけでも不安軽減につながります。

 

参考)人工呼吸器の看護|設定・モード・アラーム対応まとめ

人工呼吸器 モード 一覧 初期設定と管理ポイント

人工呼吸器の初期設定では、モードの選択に加えて、FiO2(一回目は高めに設定し、SpO2や血液ガスを見ながら速やかに下げる)、一回換気量VT、呼吸回数、PEEP、トリガー感度などを系統立てて決める必要があります。
成人ではVTを体重あたり低め(いわゆる肺保護換気)に抑えつつ、PEEPを3〜5cmH2O程度から開始し、心不全なら4〜10cmH2O、ARDSなら8cmH2O以上といった範囲を目安に病態ごとに調整する方法が紹介されています。
特にPEEPは「酸素化のつまみ」として重要で、上げれば肺胞虚脱が減り酸素化は改善しやすい一方で、心拍出量の低下や肺過膨張のリスクが増えるため、2cmH2Oずつ段階的に変化を見ながら調整することが推奨されています。

 

参考)https://kango-oshigoto.jp/hatenurse/article/4482/

呼吸回数や吸気時間(PCV)・流量(VCV)、圧支持(PS)、トリガー感度なども、「酸素化」「換気(二酸化炭素排出)」「同調性」のどれに主に影響するかを整理しておくと、設定変更の意味が直感的に理解しやすくなります。

 

参考)人工呼吸器の使いかた(2) 初期設定と人工呼吸器モード(大野…

例えば、農作業中の外傷でARDS様の肺障害を起こした患者では、VTを控えめにしつつ、PEEPとFiO2のバランスを見ながら酸素化を確保することが、長期的な肺保護の観点からも重要になります。

 

参考)人工呼吸器管理と人工呼吸器関連肺炎の基礎知識

     

  • FiO2:搬送直後は高めにしてSpO2と血液ガスで早期に調整する
  •  

  • VT:肺保護のために体重あたり低めに設定し、血液ガスに応じて微調整する
  •  

  • PEEP:3〜5cmH2Oから開始し、病態に応じて2cmH2O単位で慎重に増減させる
  •  

  • トリガー・PS:患者の自発呼吸と機械のタイミングを合わせる調整項目として重要

人工呼吸器モードごとの初期設定値と、それが「酸素化・換気・同調性」のどこに主に効くかをまとめた教育用資料も公開されており、学習に役立ちます。

 

参考)https://minamikyoto.hosp.go.jp/dest/pdf/profession/kensyu/20240308-1.pdf

人工呼吸器モードと初期設定の解説(日本集中治療教育研究会)

人工呼吸器 モード 一覧 使い分けと看護

モードの使い分けでは、「自発呼吸の有無・程度」「肺の硬さ(コンプライアンス)」「原因疾患」という3つの軸で考えると整理しやすく、強い鎮静が必要な重症ARDSならA/C+PCV、自発呼吸が戻りつつある回復期ならSIMV+PSやCPAPが候補になります。
COPD増悪などでCO2貯留が主体の患者では、NPPVのS/Tモードや、SIMVで自発呼吸を生かしながら換気をサポートする戦略がしばしば取られますが、高度な低酸素血症や気道分泌過多では挿管下のA/Cに切り替えることもあります。
看護の場面では、モードそのものを完全に理解していなくても、「なぜこの患者にこのモードが選ばれているのか」「今日の方針は“しっかり休ませる”のか“自分で呼吸してもらう”のか」という臨床的な意図をつかむことが重要だと指摘されています。

 

参考)https://kango-oshigoto.jp/media/article/50169/

農業現場からの搬送患者では、普段は健康な人が突然重症化するケースが多く、家族は「急に機械につながれている」ショックが大きいため、A/Cで全て肩代わりしているのか、SIMVやCPAPで徐々に自分の呼吸に戻しているのかを、図や波形を用いて説明することが心理的支援にもなります。

 

参考)人工呼吸器のグラフィックの見方は?

     

  • 休ませたいとき:A/Cで十分な換気量と回数を確保し、鎮静を併用することが多い
  •  

  • 離脱へ進めたいとき:SIMV+PSやCPAPで自発呼吸を評価しながら支援する
  •  

  • CO2貯留主体:NPPV(S/Tモードなど)でマスク換気を優先し、失敗時は挿管も検討する
  •  

  • 家族説明:モード名よりも「どれくらい自分の力で呼吸しているか」を図示して伝える

人工呼吸器 モード 一覧 NPPVとCPAPの基礎

NPPV(非侵襲的陽圧換気)では、マスクを介して陽圧をかけることで挿管せずに換気・酸素化を補助し、その代表的なモードにCPAP、Sモード、Tモード、S/Tモードなどがあります。
このうちCPAPモードは、吸気と呼気の両方で一定の陽圧を保つシンプルな方式で、睡眠時無呼吸症候群や急性心原性肺水腫、軽症の急性呼吸不全で酸素化を改善する目的に広く使われています。
S/TモードやBiPAPなどの二相性NPPVでは、吸気時に高いIPAP、呼気時に低いEPAP(CPAPやPEEPに相当)を設定し、換気量を補いながら呼吸仕事量を減らすことができます。

 

参考)NPPVの特徴と種類(BiPAP Vision、NIPネーザ…

CPAPが「気道を開き続けることによる酸素化メイン」であるのに対し、S/Tモードは「換気量の不足を補うこと」にもフォーカスしており、CO2貯留を伴うCOPD増悪などでよく選択されます。

 

参考)人工呼吸器の使いかた(3) NPPV(大野博司)

農業従事者では、農薬吸入やビニールハウス内での高温環境による呼吸不全など、病態が改善すれば早期にチューブを抜去できるケースも多く、その橋渡しとしてNPPVが検討される場面があります。

一方で、意識障害が強い場合や大量誤嚥が疑われる場合にはNPPVは適さないため、マスクか挿管かを迷ったときは、誤嚥リスクや意識レベル、協力の可否といった基本条件をチェックすることが重要です。

 

参考)https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2017/173011/201721030A_upload/201721030A201806081625303070010.pdf

NPPV各モードの特徴や、適応・禁忌、具体的な圧設定の例を詳しくまとめた日本語解説も公開されています。

 

参考)https://www.jseptic.com/ce_material/update/ce_material_08.pdf

NPPVモードと設定の詳細解説(看護roo!)

人工呼吸器 モード 一覧 波形モニター解説

グラフィックモニターは、圧・流量・換気量などを時間やループで表示し、患者の呼吸状態と人工呼吸器との同調性を「視覚的に」把握するための強力なツールです。
圧波形やフロー波形、一回換気量のトレンド、圧量曲線やフローボリュームカーブなどを組み合わせてみることで、リーク、自己呼吸とのミスマッチ、気道閉塞やAuto-PEEPなどの異常を早期に疑うことができます。
教育用資料では、まずVCVとPCVそれぞれの「正常波形」を頭に入れ、そこからのズレを違和感として捉えることが推奨されています。

 

参考)【人工呼吸器】グラフィックモニターの読み方のキホン

例えば、VCVで吸気フローが直線的な台形になっているはずのところがガタガタしていれば、患者が強く自発呼吸している、あるいはカフリークがある可能性を考える、といった具合です。

 

参考)https://www.jseptic.com/ce_material/update/ce_material_12.pdf

     

  • 圧波形:ピーク圧とプラトー圧の差から、気道抵抗の増大やコンプライアンス低下を推測する
  •  

  • フロー波形:呼気がゼロまで戻る前に次の吸気が始まっていれば、Auto-PEEPを疑う
  •  

  • 圧量ループ:ループが「開いた形」になれば肺のリクルートや過膨張のヒントになる
  •  

  • トレンド:呼吸回数や分時換気量、一回換気量の変化から、離脱のタイミングや疲弊の兆候をとらえる

ARDSなどで使われるAPRVでは、Phigh・Plow・Thigh・Tlowといった独特の設定があり、長い高圧フェーズの合間に短い圧解放で換気を行うため、波形も通常のA/Cとはかなり異なる形になります。

こうした特殊モードの波形まで含めて理解するのはハードルが高いですが、「まず自施設でよく使うモード(A/C・SIMV・CPAP)の正常波形を覚える」というステップを踏めば、農業従事者の家族としてモニターを眺めたときにも、変化に気づきやすくなります。

 

参考)人工呼吸器 モード・設定│医學事始 いがくことはじめ

グラフィックモニターの具体的な読み方と、正常・異常波形の例を豊富に載せた日本語の教材も公開されています。

人工呼吸器グラフィックモニターの基礎解説(日本集中治療教育研究会)

 

 


波形がもっと読める!人工呼吸器トレーニングドリル:全50問で正常を見極めて異常をキャッチ! (みんなの呼吸器 Respica 2025年冬季増刊)