目視だけで測ると誤差30%になります
葉面積指数(LAI:Leaf Area Index)は、農業において作物の生育状態を把握するための重要な指標です。具体的には、単位地表面積あたりの総葉面積の比率を表す無次元の数値として定義されます。
たとえばLAIが3という値は、1平方メートルの地表面積に対して、その上部にある植物の葉面積の合計が3平方メートルあることを意味します。つまり、床面積の3倍の葉面積が存在している状態ということですね。この数値は作物の光合成能力や生産性を推定する上で非常に有効です。
農業の現場では、LAIを適切に管理することが収量の最大化につながります。たとえばトマト栽培では、LAIが2.0から3.0の範囲が適正とされ、これは1株あたり健康な成熟葉が15枚から20枚程度に相当します。LAIが低すぎると光を十分に利用できず、高すぎると群落内部まで光が届かず、かえって生産性が低下するリスクがあります。
LAIは面積の比率ですから単位を持ちません。世界的に見ると、砂漠の生態系ではLAIが1以下のものもあれば、最も密度の高い熱帯林ではLAIが9にも達します。日本の中緯度地域の森林や低木林では通常3から6の範囲です。季節性のある作物では、播種から成熟まで大きく変動するため、適切なタイミングでの測定が求められます。
直接測定法は、プロットからすべての葉を刈り取り、それぞれの葉の面積を物理的に測定する方法です。この方法は葉面積指数を計算する最も正確な手法とされていますが、いくつかの大きな課題を抱えています。
最大の問題は時間とコストです。愛知県の研究では、トマト5株(計75から90葉)の測定に約1時間を要したと報告されています。葉を損傷しないように丁寧に扱いながら、高所作業車の昇降を繰り返して測定しなければならないため、作業負担が非常に大きいのです。さらに、フラットベッドスキャナーなどの機器を使って個々の葉面積を計測する必要があり、労力がかかります。
破壊的な測定であることも重要な制約です。すべての葉を刈り取ってしまうため、同じ場所で繰り返し測定することができません。生育段階ごとの変化を追跡したい場合には、複数のプロットを用意して時期をずらして測定する必要があり、さらにコストが増大します。
高いキャノピーの森林では実施が困難です。樹木を伐採してすべての葉を回収するのは現実的ではありません。このため、森林における葉面積指数の測定では、直接法はほとんど採用されず、後述する間接法が主流となっています。
それでも直接測定法には価値があります。正確性が最も高いため、他の測定方法の精度を検証するための基準として使われることが多いのです。研究機関では、新しい推定式やセンサーの精度を確認する際に、直接測定法で得られたデータと比較することで信頼性を担保しています。
間接測定法は、葉面積指数と相関のある別の変数を測定することで、LAIを推定する手法です。非破壊的で繰り返し測定ができるため、現在の農業現場で広く採用されています。代表的な方法として光学的測定法があり、これはキャノピーを透過または反射する光の量からLAIを推定します。
光透過法の原理はビールの法則に基づいています。密なキャノピーほど多くの光を吸収するため、地表に到達する光の量が減少するという関係性を利用します。具体的には、キャノピー上部の入射光とキャノピー下部の透過光の比率(τ)を測定し、これを減衰係数と組み合わせてLAIを計算します。
計算式は次のようになります。
$$LAI = -\frac{\ln(\tau)}{K \times A}$$
ここで、Kは減衰係数、Aは葉の吸収率(通常0.9)です。
携帯型の測定器としてLP-80セプトメーターなどの専用機器が市販されています。これらの機器は80個のPARセンサーを搭載したライトバーで透過光を測定し、外部センサーで入射光を測定することで、その場でLAIを自動計算してくれます。太陽天頂角や葉の角度分布なども考慮した高度なモデルを使用しているため、精度の高い推定が可能です。
測定時の注意点として、光条件の管理が挙げられます。曇天時は光が一様に拡散しているため測定誤差が小さくなりますが、快晴時は直達光による影響で誤差が大きくなる可能性があります。理想的には、一様に曇った空の下で測定を行うか、複数回の測定値を平均化することで精度を向上させます。
半球写真法も間接測定の一つです。魚眼レンズを使ってキャノピーを下から撮影し、画像解析によって植生のピクセルと空のピクセルを区別してLAIを推定します。画像をアーカイブできるため、後から再解析が可能という利点がありますが、画像処理に時間がかかることや、ユーザーの主観が入りやすいという課題もあります。
光学的手法では、葉の塊り具合によって推定誤差が生じることがあります。葉がランダムに分布していないクラスター状のキャノピーでは、過小評価される傾向があります。このため、空間的に分布した多数の測定点でデータを収集し、平均値を求めることで誤差を軽減する工夫が必要です。
葉面積指数の測定理論や各手法の詳細な比較について、METER Groupの専門ガイドで解説されています
農業の現場では、専用の測定機器がなくても葉面積指数を推定できる簡易計算式が開発されています。これらの手法は、葉の一部のサンプル測定値から全体のLAIを推定するもので、実用性が高く評価されています。
トマトの場合、長崎県が開発した推定式が代表的です。7複葉目までの葉面積を固定値1060平方センチメートルとし、8複葉目以降の平均葉幅から株あたりの葉面積を計算します。
具体的な計算式は次の通りです。
$$LAI = \frac{(1060 + (0.3 \times W^2 - 4.0 \times W + 55.2) \times N)}{10000} \times D$$
ここで、Wは8複葉目以降の平均葉幅(センチメートル)、Nは8複葉目以降の複葉数、Dは栽植密度(株/平方メートル)です。この方法では、上位葉の葉幅だけを測定すればよいため、作業時間を大幅に短縮できます。
宮城県の研究では、さらに簡便な推定法が提案されています。株あたりの葉枚数と、10枚目から最下葉のうち中庸な葉の葉長×葉幅から株あたりの葉面積を求め、栽植密度を乗じてLAIを推定する方法です。この手法は測定対象を絞り込むことで、隣接株との葉の重なりによる測定誤差を減らす工夫がされています。
パプリカについても、各葉位の葉長と葉幅、10節目以下推定節位までの葉枚数、主枝密度の3種類のデータを入力するだけで、容易に推定LAIを算出できる方法が確立されています。品種や栽培時期によって係数を調整することで、高い精度が維持されます。
柿やミカンなどの果樹では、新梢長と葉面積の回帰式を作成する方法が採用されています。最も代表的な樹を選んで新梢長を測定し、回帰式から樹あたりの葉面積を計算し、10アールあたりの植え付け本数を乗じることでLAIを推定します。一度回帰式を作成すれば、以降は新梢長の測定だけで済むため効率的です。
これらの簡易推定式を使う際の注意点があります。推定式は特定の品種や栽培条件で開発されたものなので、異なる品種や環境で使用する場合は、実測値と比較して補正が必要になることがあります。また、定期的に実測値と推定値を照合し、推定精度を確認することが推奨されます。
長崎県農林技術開発センターが開発したトマトの葉面積指数推定方法の詳細な計算式と検証結果が公開されています
近年、スマートフォンを使った葉面積指数の測定技術が急速に発展しています。従来250万円程度する専用測定器に代わる低コストな選択肢として、農業現場での普及が進んでいます。
高知県が開発したユズ向けのLAI測定アプリは、スマートフォンのインカメラに魚眼レンズを装着し、樹冠半径の2分の1の位置からスマートフォン本体上部を樹体中心に向けて撮影するだけで、LAIを推定できます。このアプリの測定精度は、専用のLAI計測器と比較して誤差が±0.14程度と高い水準を保っています。たとえばLAIが3.0の樹木を測定した場合、実測値は2.86から3.14の範囲に収まるということですね。
山梨県が開発した「ぶどう棚の明るさ計測アプリ」も実用化されています。画像解析AIを用いて葉面積指数の近似値を示すもので、LAI計測器による計測値と比較した精度は±0.14程度となっています。ブドウ栽培において、棚の明るさ管理は果実の品質に直結するため、簡単に測定できるこのアプリは生産者から高い評価を受けています。
NECが開発した「葉面積指数推定アプリ」は、果樹などの樹木をスマートフォンのカメラで撮影するだけで、植生の生産能力を示すLAIを推定し、測定対象ごとに記録を管理できる機能を備えています。測定データを時系列で保存できるため、生育の変化を追跡しやすいという利点があります。
Google Playで入手できる「Easy Leaf Area」は、4平方センチメートルの赤い紙を葉の横に置いて写真を撮るだけで、数秒で非破壊的に葉の面積を測定できます。個葉の面積測定に特化したアプリですが、これを複数の葉で繰り返し、栽植密度と組み合わせることでLAIの推定も可能です。
アプリを使用する際の留意点として、撮影条件の統一が重要です。曇天時や明るさが一定の時間帯に測定することで、測定誤差を最小限に抑えられます。また、スマートフォンのカメラ性能によって精度が変わる可能性があるため、最初に専用機器や実測値と比較して、使用する端末での補正係数を確認しておくことが推奨されます。
アプリによる測定は、日常的なモニタリングに向いています。専用機器を持ち歩く必要がなく、思い立ったときにすぐ測定できるため、圃場の細かな変化を見逃しにくくなります。ただし、公式な記録や研究目的で使用する場合は、専用機器での検証も併用することが望ましいでしょう。
山梨県が開発したぶどう棚の明るさ計測アプリの使用方法と精度検証結果が公開されています
葉面積指数を適正範囲に管理することは、作物の収量と品質を最大化するために不可欠です。LAIが最適値から外れると、光合成効率や養分利用効率が低下し、生産性に悪影響を及ぼします。
トマト栽培では、LAIが4から5の範囲が最適とされていますが、時期によって調整が必要です。千葉県の指導では、2月頃までは3程度、それ以降は3から4に保つことが推奨されています。低日射期に株あたりの葉数を少なくすることでLAIを低下させ、群落内部まで光を入れることで、果実の品質向上につながります。1株あたり15枚程度の健康な成熟葉を維持することが、実践的な目安です。
LAIが低すぎる場合の問題点について説明しましょう。光を十分に捕捉できないため、個体群全体の光合成量が減少します。たとえばLAIが1.5程度しかない場合、入射光の多くが地表まで到達してしまい、作物が利用できる光エネルギーが無駄になってしまいます。結果として、収量が本来のポテンシャルより20から30パーセント低下することもあります。
逆にLAIが高すぎると、別の問題が発生します。群落上部の葉が光を過度に遮蔽し、下部の葉に十分な光が届かなくなります。下葉は光合成よりも呼吸による炭水化物の消費が上回る状態となり、群落全体としての純光合成量が減少します。さらに、過繁茂による通風不良で病害が発生しやすくなり、肥料利用効率も低下します。
適正LAIを維持するための具体的な管理方法として、摘葉作業があります。トマトでは、古い下葉や病害葉を適切に除去することで、LAIを調整します。除去のタイミングは、新葉の展開速度とバランスを取りながら判断する必要があります。一度に多くの葉を除去すると急激なストレスを与えるため、少しずつ継続的に行うことが基本です。
栽植密度もLAIに大きく影響します。株間や条間を適切に設定することで、個体あたりの葉面積と栽植密度の積として表されるLAIをコントロールできます。密植しすぎると個体間競争が激しくなり、疎植では土地利用効率が低下します。品種特性や栽培環境に応じた適正密度を見極めることが重要です。
施肥管理とLAIは密接に関連しています。窒素過多の状態では葉が過度に繁茂し、LAIが高くなりすぎる傾向があります。逆に窒素不足では葉の展開が遅れ、LAIが低くなります。定期的にLAIを測定し、その値に応じて追肥量を調整することで、理想的な生育バランスを保つことができます。
環境制御と組み合わせた管理も効果的です。ハウス栽培では、LAIの値に応じて換気や遮光、CO2施用などを調整することで、光合成効率を最大化できます。LAIが適正範囲にあっても、温度や湿度が不適切では生産性が低下するため、総合的な環境管理の一環としてLAIを位置づけることが求められます。

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