フルボ酸は、森林の土壌中で長い年月をかけて生成される貴重な有機酸ですが、実は身近な材料を使って農業用の簡易的な「フルボ酸含有液」を自作することが可能です。高価な資材を購入し続けるコストを削減し、自分たちの畑の土着菌と相性の良い資材を作ることは、持続可能な農業経営において大きなメリットとなります。ここでは、腐葉土や専用ペレットを使用した抽出方法について、プロの視点から詳細に解説します。
フルボ酸作りにおいて最も重要な工程は、原料となる「腐植」の選定です。すべての腐葉土から良質なフルボ酸が抽出できるわけではありません。以下の基準で材料を選定してください。
また、抽出容器として2リットルのペットボトルや、大量に作る場合は漬物樽(20リットル程度)を用意します。透明な容器は中の色の変化(琥珀色への変化)を確認しやすいため、初心者の実験にはペットボトルが適しています。
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ここでは、失敗の少ない「エアレーション(曝気)」を取り入れた抽出手順を紹介します。単に水に漬け込むだけでなく、空気を送り込むことで好気性微生物を活性化させ、腐敗を防ぎながら抽出効率を高めます。
手順のステップ:
エアレーションを行わない「静置法」の場合は、毎日1回必ずボトルを激しく振って酸素を供給してください。ただし、抽出には2週間~1ヶ月程度かかる場合があります。
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自作したフルボ酸液(抽出液)は、原液のまま使用してはいけません。植物にとって濃度が高すぎると、逆に根を傷める「濃度障害」を引き起こすリスクがあります。適切な希釈倍率を守って使用しましょう。
基本的な希釈と使用方法:
| 使用方法 | 希釈倍率 | 頻度 | 目的・効果 |
|---|---|---|---|
| 土壌灌水 | 500倍~1000倍 | 1〜2週間に1回 | 土壌団粒化の促進、根張り強化、肥料吸収効率の向上 |
| 葉面散布 | 1000倍以上 | 1週間に1回 | 光合成促進、夏場の高温ストレス軽減、気孔の開閉調整 |
| 育苗期 | 2000倍 | 必要に応じて | 活着促進、徒長防止、細根の発達支援 |
具体的な散布テクニック:
じょうろや動噴を使用する際、展着剤を少量加えることで葉への付着性が高まります。また、通常の液体肥料(N-P-K)と混合して使用することで、肥料成分を「キレート化(金属イオンを挟み込んで運びやすくする作用)」し、植物への吸収率を劇的に高めることができます。特に、微量要素欠乏(マグネシウムや鉄不足による葉の黄化など)が見られる場合に効果的です。
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農業現場で特に注目されているのが、フルボ酸と鉄を結合させた「フルボ酸鉄」の自作です。植物は光合成に鉄分を必要としますが、土壌中の鉄は水に溶けにくい形(酸化鉄)で存在することが多く、そのままでは吸収できません。フルボ酸は鉄をキレート化し、植物が吸収できる形に変える力を持っています。
フルボ酸鉄の簡易作成レシピ:
この「フルボ酸鉄液」は、特に光合成能力が低下する曇天続きの時期や、冬場の施設栽培で威力を発揮します。葉色が薄くなった際に葉面散布すると、数日で緑色が濃くなる回復効果が期待できます。
園芸用腐葉土と鉄クギを使ったフルボ酸鉄の安全な作り方手順
参考)フルボ酸鉄とは
自作フルボ酸はコストパフォーマンスに優れていますが、市販の工業製品と比較して「成分の不安定さ」と「安全性」に注意が必要です。検索上位の記事にはあまり書かれていない、現場で直面するリアルなリスクについて解説します。
1. 純度と「フミン酸」の混入
厳密な化学定義では、フルボ酸は「酸にもアルカリにも溶けるもの」、フミン酸は「酸性では沈殿するもの」と区別されます。自作の抽出法(水抽出)では、フルボ酸だけでなく、水溶性のフミン酸やその他の有機酸も混ざった「腐植抽出液」となります。これは農業資材としては優秀ですが、「純粋な高濃度フルボ酸」ではないことを理解しておきましょう。市販の高価なフルボ酸資材と同等の少量添加(例えば10,000倍希釈など)では効果が出にくい場合があるため、自作の場合はやや濃い目(500倍程度)で使うのが一般的です。
2. 病原菌と腐敗のリスク
原料の腐葉土が未熟であったり、動物性の堆肥(牛糞など)が混ざっているものを使用したりすると、大腸菌や植物病原菌(フザリウムなど)を増殖させてしまう恐れがあります。抽出中に「ドブのような悪臭」がした場合は失敗です。絶対に畑に撒かないでください。正常な抽出液は、土の香りや微かな酸味のある香りがします。
3. 保存期間の限界
自作液には保存料が含まれていないため、長期保存には向きません。抽出後は冷暗所に保管し、1ヶ月以内に使い切ることを推奨します。液面にカビの膜が張った場合は、変質している可能性があるため廃棄してください。
自作フルボ酸は、あくまで「土壌微生物の活性化剤(バイオスティミュラント)」の一種として捉え、基本的な施肥設計(チッソ・リン酸・カリ)を疎かにしないことが、収量アップへの近道です。
植物を活性化させるフルボ酸とフミン酸の違いと腐植酸の基本知識
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