エスレル使い方と効果タイミング

エスレル10は植物ホルモン剤として多くの農作物に利用できますが、使い方を間違えると薬害のリスクが発生します。希釈倍数や散布時期、温度管理など、正しい使用方法を知っていますか?

エスレル使い方と効果

散布後12時間以内に30℃超えると果実に薬害が出ます


この記事の3ポイント
🌡️
温度管理が最重要

散布後12時間以内に30℃以上になると薬害発生。ハウス栽培では換気が必須です

⚗️
希釈倍数は作物で異なる

トマトは300〜500倍、いちじくは500〜1000倍など、作物ごとに適正濃度が決まっています

⏱️
散布タイミングで効果が変わる

トマトは白熟期の果房散布、ぶどうは収穫後の落葉促進など、目的に合わせた時期選定が重要です


エスレル基本の希釈倍数と散布方法

エスレル10は天然植物ホルモン「エチレン」を発生させる植物成長調整剤です。水に溶かして散布するだけというシンプルな使用方法ですが、作物ごとに希釈倍数が大きく異なります。トマトの熟期促進では300〜500倍、いちじくでは500〜1000倍、ぶどうの落葉促進では500〜1000倍、ももの熟期促進では4000倍と、目的や作物によって適正濃度が設定されています。


間違った濃度で散布すると、効果が得られないだけでなく薬害のリスクも高まります。特にトマトやミニトマトでは、濃度が濃すぎると果実表面に茶褐色の斑点が発生する薬害症状が出ることがあります。これは果実の商品価値を大きく損なう結果になります。


希釈の際は必ず水道水または井戸水を使用してください。調製した薬液はその日のうちに使い切ることが原則です。時間が経つとエチレンが気化してしまい、期待した効果が得られなくなります。散布後1〜2日以内に植物体内でほとんどが分解してエチレンを発生させ、作用を発揮するのが基本です。


農林水産省の農薬登録情報提供システムでは、エスレル10の最新の登録内容や適用作物を確認できます


エスレル散布時期とタイミングの見極め方

散布時期を誤ると効果が半減するだけでなく、落果や裂果といった深刻な被害につながります。トマトの場合は各果房ごとの白熟期が散布の適期です。白熟期とは果実がまだ緑色から白っぽく変わり始めた段階を指します。この時期に果房だけに散布することで、3〜7日程度の着色促進効果が得られます。


いちじくでは成熟予定の15日前、つまり果実生長第2期終期が目安となります。早すぎても遅すぎても効果が不十分になるため、果実の肥大状態をよく観察する必要があります。ももでは収穫予定の35日前以降が散布時期ですが、収穫21日前までに散布を終える必要があります。


つまり適期判断が鍵です。


ぶどうの落葉促進では収穫後から剪定前までが使用時期です。剪定の10日程度前に散布することで、葉から茎への養分移行が促進され、早期に葉が黄化落葉します。これにより剪定作業が楽になり、次作の生育も良好になるという二重のメリットがあります。


気象条件も散布タイミングに大きく影響します。散布直後の降雨は効果を減少させるため、天候を見極めてから散布することが重要です。ただし散布3時間後以降の降雨であれば、効果にほとんど影響はありません。


エスレル高温時の薬害リスクと回避策

高温条件下での散布は最も注意すべきポイントです。ハウス内では高温時、具体的には30℃以上の散布を避けなければなりません。さらに重要なのは、散布後2〜3日間も温度が30℃以上にならないよう換気に注意する必要があることです。トマト生産者向けの技術情報では、散布から12時間以内に30℃以上になると薬害が出ると明記されています。


薬害症状としては、果実表面にボツボツと少し陥没した大小の茶褐色の斑点が現れます。この症状が出ると果実の見た目が著しく悪化し、出荷できなくなる可能性があります。1箱数千円の損失が、複数の果房で発生すれば、収益に大きな打撃となります。


対策としては、朝の涼しい時間帯または夕方に散布することです。日中の気温が高い時間帯は避け、散布後の天候予報もチェックして、高温が予想される場合は散布を延期する判断も必要です。ハウス栽培では散布後すぐに換気扇を回すなど、積極的な温度管理を行うことが薬害回避の鍵です。


加温栽培キンカンの研究では、エスレル10は24℃以上で散布する場合、薬害を生じるおそれがあるとされています。作物によって耐性温度が異なるため、初めて使用する作物では少量で試験散布を行い、安全性を確認してから本格使用に移ることが賢明です。


エスレルアルカリ性薬剤との混用禁止理由

エスレル10は石灰硫黄合剤やボルドー液などのアルカリ性薬剤との混用が厳禁です。これはエスレルの有効成分エテホンがアルカリ性条件下で急速に分解してしまい、効果が失われるためです。混用だけでなく、エスレル散布の7〜10日前後の近接散布も避ける必要があります。


実際の栽培現場では、病害虫防除のために複数の薬剤を使用することが一般的です。その際のスケジュール管理を誤ると、意図せずアルカリ性薬剤とエスレルが近接してしまうケースがあります。栃木県の試験では、農薬とエスレルの混用散布により薬害が発生した事例が報告されています。


フィガロン乳剤は例外です。


温州みかんの全摘果では、エスレルとフィガロン乳剤を混用する使用方法が登録されています。エスレル2000〜8000倍液とフィガロン乳剤1000〜2000倍液を混合し、均一に散布することで摘果効果を高めることができます。この例外を除き、基本的には他の薬剤との混用および同日散布は避けるのが原則です。


散布記録をつけることで、前回の薬剤散布日を確認し、エスレル使用との間隔を適切に保つことができます。スマートフォンのカレンダーアプリや農作業記録アプリを活用すれば、うっかりミスを防ぐことができます。


石原バイオサイエンスの製品ページでは、エスレル10の詳細な使用上の注意事項が確認できます


エスレル果房散布と全面散布の使い分け

トマトやミニトマトでは、果房散布という独特の方法が推奨されています。これは白熟期となった特定の果房だけに散布する方法で、1果房につき約5mlを霧吹き器で直接かける手法です。全面散布と異なり、茎葉や上位段の幼果に薬液がかからないよう注意が必要です。


果房散布のメリットは、必要な部分だけに薬剤を使用できることです。収穫時期の異なる複数の果房がある場合、収穫したい果房だけを選んで散布できるため、薬剤の無駄がなく、経済的です。また上位段の幼果への影響を避けられるため、次の収穫への悪影響もありません。


一方、全面散布は立木全体に散布する方法で、ぶどうの落葉促進やももの熟期促進などで用いられます。散布液量は10アール当たり150〜300リットル程度で、散布液が葉先からしたたり落ちない程度が目安です。過剰な散布は薬害や落葉を助長するため、適量を守ることが重要です。


いちじくでは果面散布という方法が採用されています。成熟予定15日前に、果面が濡れる程度に直接果実に散布します。1果当たり1回の制限があるため、散布した果実を記録しておくか、目印をつけるなどの工夫が必要です。


スピードスプレーヤーでの散布は避けてください。薬液が周辺作物に飛散するリスクが高く、微量でも一般作物に薬害を生じる可能性があるためです。手動噴霧器やハンドスプレーを使用し、丁寧に散布することが安全な使用法です。


エスレル使用後の残留と分解期間

エスレル10の大きな特徴は、散布後の分解速度が非常に速いことです。散布後1〜2日以内に植物体内でほとんどが分解してエチレンを発生し、作物中のエスレル残留量は急激に低下します。数日後にはほぼ消失するため、収穫物の品質に影響を与えることはありません。


この速やかな分解特性により、収穫前日数が比較的短く設定されています。トマトでは各果房ごとの白熟期、ももでは収穫21日前までの使用が可能です。ただしこの使用時期を守らないと、万が一の残留リスクや効果不足につながります。


連年使用しても果樹にほとんど悪影響を及ぼさないことが長年の試験で確認されています。毎年ぶどうの落葉促進にエスレルを使用しても、樹勢が衰えたり収量が減少したりすることはありません。これは天然の植物ホルモンであるエチレンの作用をそのまま現すホルモン剤であるためです。


ただし使用後の噴霧器などは十分に洗浄してください。一般作物にも微量で薬害を生じるため、洗浄が不十分な噴霧器で他の作物に薬剤散布を行うと、意図しない被害が発生する可能性があります。水でよく洗い流し、複数回すすぐことで、残留リスクを最小限に抑えられます。


保管は密栓して直射日光を避け、冷涼な場所で行います。種子、苗、肥料、他の農薬とは隔離して保管し、誤使用を防ぐことが重要です。有効年限は5年ですが、開封後はできるだけ早く使い切ることが推奨されます。