塩化カリウム肥料(塩化加里)は、主成分がKClの加里肥料で、水に溶けやすい「水溶性」の単肥です。
加里(カリウム)は植物体を直接つくる材料ではない一方、浸透圧の調整やデンプン・タンパク質の生成や移動などに関わり、作物の生育や品質に影響します。
塩化加里は加里(K2O)含有量が57~62%(60%品が多い)とされ、同時に塩素(Cl)も多く含む点が最大の特徴です。
現場で「効きがいい」と感じやすいのは、水溶性で即効性があるためで、基肥でも追肥でも使える位置づけです。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10441835/
一方で“万能”ではなく、塩素が関与するトラブル(品質低下、塩味、発芽・苗障害など)が起き得るため、使い方は「作物の塩素耐性」と「土壌・水分条件」で分岐させるのが基本です。
ここで大事なのは、塩化加里の評価を「カリが入る」だけで終わらせないことです。塩化加里は生理的酸性肥料でもあり、作物がカリを吸収した後に塩素が土壌側に残り、長期的に土壌の酸性化に関わる可能性があると整理されています。
ただし塩素イオンは土壌コロイドに吸着しにくく、雨水や灌漑水で洗い流されやすいので、乾燥地域を除けば土壌に蓄積しにくい、という性質も押さえておくと判断がブレません。
塩化加里は即効性で、基肥と追肥に適している一方、種肥には不適とされています。
理由は、土壌中の塩素濃度が高い条件だと、種子の発芽遅れ・発芽率低下、苗の生育不良や枯死が起こり得るためです。
基肥で使うときの基本は「全面散布→耕うんでよく混和」です。水溶性なので局所に固めると濃度が上がりやすく、混和不足が濃度障害の引き金になります(特に乾きやすい畑・施設)。
参考)肥料としての塩化カリウムの特徴と効果、使用方法について
追肥で使うときは、効きが早い分、必要量を一度に入れず分けて施す判断が有効です(溶脱しやすい性質があるため、多量施用は2回施肥とする考え方も示されています)。
参考)[113]水稲における塩化カリの追肥(放射性セシウム対策)
また、水稲の例では、塩化カリは基肥だけでなく中間追肥として全面散布する運用が紹介されており、倒伏回避で基肥を控えた田、一発肥料のみで穂肥分のカリが不足しそうな田、稲わらを持ち出した田などが「補給したい条件」として挙げられています。
同じ水稲で、追肥の時期は移植後1か月頃から幼穂形成期頃が効果的と考えられ、多量施用なら2回施肥(例:田植え後1か月前後と出穂前20~15日)という具体例も提示されています。
注意点として、塩化加里は“溶ける=早く効く”反面、“溶ける=雨や潅水で動く”でもあります。追肥は「根が動き出すタイミングに合わせる」ほどロスが減り、作物に効きとして返りやすくなります。
塩化加里の最大の落とし穴は、塩素感受性作物での品質・加工適性の低下です。
具体的には、モモ・ブドウ・スイカなどの果物類では、塩化加里の施用で糖度が下がったり、薄い塩味を感じて食感が悪くなることがある、と整理されています。
また、ジャガイモやサツマイモなどのイモ類では、多量施用で塊茎・塊根の収量やでん粉含有量が低下する可能性が示されています。
さらにタバコでは、外観上は生育が良くても、加工した紙巻タバコの火付きが悪く、途中で火が消えやすくなるなど、燃焼性に悪影響が出る例が示されています。
逆に言えば、塩素が必ず悪者というより「作物で評価が分かれる」のがポイントです。塩素は繊維化作用を促進し、病害抵抗性を高める働きがあるともされ、綿・麻などの繊維作物では塩素不足で繊維が短くなり強度が落ちるが、塩化加里施用で繊維が長く強靭になる、という説明もあります。
したがって、塩化カリウム肥料の使い方は、作付け体系で決めやすいです。
✅ 使いやすい側:水稲など(無硫酸根肥料として老朽化水田・湿田に適するという整理もある)
⚠️ 慎重側:果樹の一部、イモ類、タバコなど(品質・加工性に影響が出やすい)
この「作物適性」は、単に“施肥設計”ではなく“販売品質”に直結するため、コスト優先で塩化加里を選ぶと損失が肥料代を超えることがあります。
土壌側の注意点は、大きく2つです。「塩害(塩類の問題)」と「土壌pH(酸性化)」です。
塩化加里は塩素を多量に含むため、塩類アルカリ土壌では塩害を増強する恐れがある、とされています。
また、塩化加里は生理的酸性肥料で、作物がカリを吸収した後、塩素が土壌に残って酸性化させる、という分類が明確に説明されています。
ただし塩素イオンは蓄積しにくく、雨水や灌漑水で洗い流されやすいので、乾燥地域を除けば酸性化作用は無視できる場合がある、という“条件付き”の見方も同時に提示されています。
意外と見落とされがちなのが、塩素イオンが他の塩基(カルシウムやマグネシウムなど)を引きずって流亡させ、結果として酸性化に関わるので注意が必要、という説明です。
つまり、土壌pHを守るには「石灰資材を入れる」以前に、塩化加里を“入れ過ぎない・偏らせない”が第一になります。加里を入れる目的(倒伏対策、品質、吸収ピークへの同調)を言語化し、必要量だけ入れるのが安全です。
現場向けチェックリスト(入れ子なし)
土壌pHを測る話で混同が起きやすいので補足します。土壌pHには水で測るpH(H2O)と、KCl溶液で測るpH(KCl)があり、pH(KCl)はpH(H2O)より0.5~1程度低い(酸性側)値が出ることがある、と解説されています。
参考)https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_001982.html
肥料が塩化カリ“だから”pH(KCl)を使うという意味ではなく、「測り方で数字がズレる」点を知らないと、前年との比較で誤判定しやすい、という実務上の注意です。
土壌・塩素の公的な考え方(pHや化学性改善の背景に使える)
新潟県資料:土壌の酸性改良(pH)と、生理的酸性肥料の扱いの整理
https://www.pref.niigata.lg.jp/uploaded/attachment/80278.pdf
検索上位で多いのは「特徴・注意点・作物適性」ですが、現場で差が出るのは“施肥設計の考え方”です。塩化加里は安価で使いやすい一方、塩素感受性作物に当たると品質・加工適性で損をし得るため、単純な肥料単価だけで判断しない方が結果的に安定します。
独自視点として、塩化加里の使い方を「圃場の分割管理」に落とすと事故が減ります。例えば同じ経営でも、①露地で雨が当たり塩素が流れやすい区画、②施設で塩類が残りやすい区画、③果菜・果樹など品質が売価に直結する区画、④稲作でカリ需要ピークが読みやすい区画、で“同じ単肥を同じ量”は危険です。
塩化加里を使う区画は「基肥で混和を丁寧に、追肥は分施でピークに合わせる」へ寄せ、使わない(または減らす)区画は「塩素感受性作物に合わせて硫酸加里など別資材へ」寄せる、という二段構えが現実的です。
さらに、塩化加里は「種肥に不向き」という明確なルールがあるので、ここを守るだけで初期トラブルがかなり減ります。
“肥料は効けば勝ち”ではなく、“初期でつまずかない設計”が最終的な収量と労力を守る、という視点で、塩化カリウム肥料の使い方を組み立ててみてください。