成虫が飛んでいる時期に薬剤を撒いても、すでに莢の中に幼虫が入っていると効果はほぼゼロです。
エダマメシンクイガ(学名:Leguminivora glycinivorella)は、マメ科作物、とくにエダマメや大豆の莢を食い荒らす害虫です。成虫は体長わずか7〜8mm前後の小型の蛾で、一見すると目立たない存在です。
意外ですね。
年に1回発生し、成虫が現れる時期は8月上旬から9月上旬にかけてです。この期間は落花後間もない若い莢が形成される時期と重なるため、産卵場所を与えやすい条件が揃います。
つまり8月の圃場管理が勝負です。
孵化した幼虫は莢の表面から潜り込み、内部の子実(豆の実)を直接食害します。体長は10mm内外(ちょうど爪の先ほどの大きさ)で、若い幼虫は乳白色をしています。老熟すると紅色を帯びてくるのが大きな特徴で、これによって似た害虫との区別が比較的容易です。
被害莢の内部は虫糞で満たされており、外側から見ただけでは気づきにくいのが厄介なところです。被害が進むと出荷できない莢が急増し、収益に直接影響します。
幼虫は莢の中に入ってしまうと薬剤が届きません。
これが基本です。
エダマメシンクイガは九州各県の秋大豆を中心に多く発生が確認されています。局地的にはシロイチモジマダラメイガよりも発生密度が高くなることもあり、早播きした圃場での被害が目立つ傾向があります。
品種による被害差も明確に出ます。研究や現場の観察から、多粒種や毛じ(茸)のない品種は被害が軽い傾向があることが知られています。毛じとは葉や莢の表面にある細かな毛のことで、これが産卵しやすい足場になると考えられています。
これは使えそうです。
早播きすると開花・莢形成の時期がシンクイガの産卵最盛期と重なりやすくなります。逆に言えば、播種時期をずらすことで被害を大幅に軽減できる可能性があります。産卵期と開花が一致しないよう播種時期を調整するのが原則です。
品種選びと播種時期の調整だけで、被害リスクをかなり下げられます。
防除で最も重要なのは「いつ撒くか」です。幼虫が莢の中に侵入してからでは薬剤は届かないため、成虫が産卵する前後を狙う必要があります。
具体的には、成虫の発生最盛期から被害の出現初期、すなわち8月中旬〜8月下旬が薬剤散布の適期です。この時期に1〜2回散布するのが基本的な防除体系とされています。
防除適期はたった2〜3週間しかありません。
薬剤の選択に際しては、登録農薬の中から有機リン系・ピレスロイド系・ジアミド系など複数の系統をローテーションすることで、薬剤抵抗性の発達を防ぐことができます。同じ薬剤を毎年使い続けると、効果が落ちていくリスクがあります。
これは痛いですね。
散布タイミングを正確につかむためには、フェロモントラップを使って成虫の飛来数を定期的にモニタリングする方法が有効です。フェロモントラップを圃場に1〜2基設置しておくと、成虫のピークを視覚的に確認できます。農協や普及センターがトラップの設置指導を行っている地域もあるので、まず相談してみるのが最短ルートです。
8月中旬を逃さないことが条件です。
エダマメの莢が被害を受けたとき、農家が真っ先に思うのは「どの害虫か?」という疑問です。エダマメシンクイガと混同されやすいのが、同じく大豆・エダマメを加害するシロイチモジマダラメイガです。
両者の最も簡単な見分け方は、幼虫の色です。エダマメシンクイガの老熟幼虫は紅色を帯びるのに対し、シロイチモジマダラメイガの幼虫は白っぽいままです。莢を割って幼虫を確認し、色を見るだけで区別できます。
つまり幼虫の色が判断の鍵です。
なぜ見分けが重要かというと、発生時期や産卵習性が微妙に異なるため、同じ防除プログラムでは対応しきれないケースがあるからです。また地域によってどちらが優占種かが変わるため、自圃場でどちらが多いかを把握することが、防除コストの無駄を省くことにもつながります。
| 比較項目 | エダマメシンクイガ | シロイチモジマダラメイガ |
|---|---|---|
| 老熟幼虫の色 | 紅色を帯びる | 乳白色のまま |
| 幼虫体長 | 10mm内外 | やや大きい傾向 |
| 主な発生地域 | 九州各県・秋大豆産地 | 全国的に広く分布 |
| 産卵部位 | 落花後の若莢 | 莢・葉など |
間違った判断が防除の空振りにつながります。
多くの農業者はシンクイガ対策を「被害が出てから考えるもの」と捉えがちです。しかし実際には、播種計画の段階から対策を組み込むことで、薬剤散布の回数を減らしながら高い防除効果を得ることができます。
具体的には、産卵期(8月上旬〜9月上旬)に莢が若い状態でないよう、開花・莢形成の時期を産卵ピークとずらす播種設計が有効です。例えば早生品種を適切な時期に播種して莢形成を7月中に終わらせるか、逆に晩生品種で9月以降に莢形成をずらすかという選択肢があります。
播種時期の設計が最大の防除ツールです。
また、複数の品種を組み合わせて収穫期を分散させる「リレー栽培」は、リスク分散の観点からも有効です。仮に1ロットがシンクイガ被害を受けても、別ロットでカバーできます。1品種に集中すると被害が一気に広がりやすくなります。
圃場の記録(いつ播種し、いつ開花し、被害がどの時期に出たか)を年次でつけておくと、翌年の播種計画の精度が上がります。手書きのノートでも構いませんが、農業系の記録アプリ(アグリノート、Fieldsなど)を使うと過去データの検索や比較が簡単になります。
まず記録をつけることから始めてみましょう。
防除は薬剤だけではありません。播種設計と品種選びが、最もコストのかからない防除手段です。
エダマメシンクイガ防除の基本情報(九州農政局・福岡県資料)。
マメシンクイガの生態・防除情報(福岡県病害虫防除所)|薬剤散布時期・幼虫の特徴など防除の基本が確認できます