ダイコンサルハムシは成虫・幼虫ともアブラナ科の葉を食害し、穴あきから網目状へ進むと一気に見栄えと生育が落ちます。特に幼苗期に多発すると枯死することがあるため、発芽〜本葉期の見回り密度を上げる価値があります。島根県の整理では、年2〜3回発生し、成虫は枯草の株元や落葉下、石垣の隙間などで越冬します。成虫は4月頃から見られるものの、大部分は晩夏まで越冬場所で過ごし、気温が20℃前後に下がると活動を始め、9〜10月に最も多くなるとされています。さらに意外な点として、成虫の生存期間が野外で約500日にも及ぶ、産卵数が約1,200個、秋期の卵期間が約5日・幼虫13〜16日・蛹約12日と、秋の世代進行が速いことが挙げられます。だからこそ「今年出た分を叩くだけ」ではなく、周辺環境と越冬場所も含めて“入ってこさせない”設計が効いてきます。加えて、刺激すると足を縮めて地面に転がり落ちる習性があるため、見回り時に株を軽く揺らして落下個体を確認するだけでも、早期発見の助けになります。これらの生態とタイミングを知った上で、薬剤は“発生の始まり”に合わせて短期決戦で効かせるのが基本方針になります。参考:島根県の発生生態・被害診断の要点(発生時期、越冬場所、産卵数など)
島根県:虫害名:ダイコンハムシ
薬剤防除で最も重要なのは「いつ散布するか」で、秋作の晩夏〜初秋(畑へ出現し始める時期)に初動を取れるかが勝負です。タキイの解説でも、成虫で越冬して春〜夏は眠り続け、9〜12月に発生する“変わり種”とされており、秋口の対策が合理的だと分かります。ここで失敗しやすいのが、「穴が増えてから散布」「散布は一回で終わり」という考え方です。卵〜幼虫〜蛹のサイクルが秋に早い(卵約5日、幼虫13〜16日)ため、初回散布のタイミングが遅いと、畑の中で世代が回って“効いているはずなのに次々出る”状態になりやすいからです。散布は、成虫・幼虫が葉上にいるタイミングで当てるのが基本で、被害葉が増えてからではなく、圃場の一部で穴あきが散見された時点で着手すると被害の面積を小さくできます。もう一つのコツは、落下習性を利用して散布前に株を軽く揺らし、葉裏や株元の個体を露出させてから当てることです(作業者が安全にできる範囲で)。風がある日はドリフトしやすく、葉裏に当たりにくいので、無理に散布せず条件の良い時間帯に回す判断も結果的に効率が上がります。参考:発生が9〜12月に偏る点、秋作で被害が多い点(散布タイミングの根拠)
タキイ種苗:ダイコンハムシ(ダイコンサルハムシ)
農薬選定で絶対に外せないのは、①作物が「だいこん」であること、②対象害虫に「ダイコンサルハムシ(またはダイコンハムシ)」が明記されていること、③使用時期(収穫前日数)・希釈倍数・使用回数を守れること、の3点です。タキイも、登録のない薬剤の使用や登録条件以外の使用が農薬取締法で禁止であること、さらに商品性や産地信用を損なう恐れ、健康被害への配慮が必要であることを明確に注意喚起しています。現場では「効きそうな成分名」を先に覚えるより、ラベルに書かれた登録内容で判断する運用がミスを減らします。例として、JA上伊那の「だいこん登録農薬適用表(2022年9月1日現在)」には、ダイコンサルハムシを適用病害虫に含む薬剤として、コテツフロアブル(IRAC 13)や、ダイコンハムシに対してアクタラ顆粒水溶剤(IRAC 4A、収穫7日前まで、2,000倍)などが記載されています。こうした“表にある情報”を使うと、希釈・時期・回数まで一気に確認でき、現場の判断速度が上がります。注意点として、同じ商品名でも作物・害虫の組み合わせで使用条件が変わることがあるため、手元の年版・地域の情報で照合し、最後は必ずラベルに戻る癖を付けてください。参考:だいこんでの適用(ダイコンサルハムシ/ダイコンハムシ、希釈倍数、収穫前日数など)
JA上伊那:だいこん登録農薬適用表
同じ系統の薬剤に頼り続けると、効きが鈍る(抵抗性が進む)リスクが高まるため、IRACコードを目印に“系統をずらす”のが基本です。JA上伊那の適用表には、ネオニコチノイド系を含むIRAC 4A、クロルフェナピルのIRAC 13など、系統の異なる殺虫剤が並んでいるため、ローテーション設計の材料になります。ここで大事なのは「商品名を変えたつもりでも、系統が同じ」という落とし穴を避けることです。例えば、4Aの薬剤を続けて使ってしまうと、見かけ上は別の製品でも“同じ仕組みの攻撃”を繰り返していることになります。ローテーションの作り方は単純で、同一作型の中で、初回は速効性を重視、次は別系統で取りこぼしを拾い、3回目が必要ならさらに別系統へ、と「同じIRACを続けない」だけでも効果の安定性が上がります。農薬だけで完結させず、次のH3の耕種的防除をセットで入れると、散布回数そのものを減らせる可能性が出て、結果として抵抗性対策にもなります。現場で迷う場合は、適用表でIRACを確認し、地域の指導機関やJAにローテの妥当性を相談すると安全です。参考:だいこん登録農薬適用表におけるIRACコード表記(ローテーション検討の根拠)
JA上伊那:だいこん登録農薬適用表
検索上位が薬剤名の紹介に寄りがちな一方で、実は効き目が出やすい独自視点は「圃場の外側」にあります。兵庫県の資料では、ダイコンサルハムシは後ろ翅がなく飛べないため、周辺の雑草から“歩いて”移動してくるとされ、ほ場周辺の雑草を除去することで被害がかなり抑えられると述べています。つまり、薬剤散布の上手さだけでなく、侵入経路そのものを断つのが効率的です。特に意外に効くのが、刈り取った草をほ場内や周辺に放置しないことです(枯れ草の下に潜むことが多いとされるため)。ここを徹底すると、秋口に畑へ入ってくる“初期個体数”が減り、散布回数を減らせる可能性があります。加えて、島根県の記述にあるように、枯草の株元・落葉下・石垣の隙間などが越冬場所になり得るので、圃場周辺の資材置き場、畦畔の枯れ草、石積み周りなども点検ポイントになります。現場での実装としては、次のようにシンプルに運用すると続きます。
- 収穫後〜播種前:畑の外周と畦畔の除草、刈草は撤去(放置しない)。
- 秋口の見回り:山際・外周からチェック(侵入が起きやすい所から)。
- 初期発生時:薬剤は“面で一気に”ではなく、外周を含めて効率よく当てる。
この「雑草+枯草管理」は、薬剤コストの節約だけでなく、散布の心理的負担(やらなきゃ感)を下げる効果もあります。参考:飛べないため雑草から歩いて移動、除草で被害を抑えられる点、刈草放置NGの理由
兵庫県:〔ダイコンサルハムシ〕