大根の肥料は「何がいいか」を一言で決めるより、まず土の条件を整えて“肥料が効く土台”を作るのが近道です。BSI生物科学研究所の資料では、ダイコンの適正土壌pHは5.5〜6.5とされ、酸性が強い場合は石灰質肥料でpH調整しつつカルシウムを補う必要があると説明されています。
石灰質肥料は、耕起前に全面散布して作土層に混和してから畝立て、という順番が基本です。 ここで重要なのは「pHを上げれば上げるほど良い」ではない点で、同資料はpHが7.0を超えないよう施用量を調整する注意を明記しています。
元肥(基肥)は、早すぎる施用が損になりやすいのも見落としポイントです。BSI資料では、窒素は流亡の恐れがあり、リン酸も土壌固定で難溶化しやすいので、利用効率低下を避けるため基肥は播種の5〜7日前に施す、と整理されています。
参考)https://bsikagaku.jp/cultivation/radish.pdf
また、タキイの栽培マニュアルでも、元肥は夏季は播種5〜7日前、冬季は14〜20日前に施し、十分耕起して土になじませるとされています。 作型(気温)で“元肥を入れてから播くまでの寝かせ期間”が変わる点は、露地の作業計画に効きます。
堆肥は「入れれば入れるほど良い」資材ではありません。BSI資料では、未熟堆肥は奇形根、硬い固形物のある堆肥は岐根の原因になり得るため、未熟堆肥や固形物のある堆肥を施用しない、と注意されています。
つまり「大根の肥料は何がいい?」の答えの前提として、完熟堆肥を選び、異物(未分解のワラ塊・木片など)を畝の中に入れないことが、根形と秀品率に直結します。
農業従事者向けに“設計の目安”を持つなら、面積当たりの成分量で把握しておくとブレません。BSI生物科学研究所の資料では、ダイコン1作に必要な施肥量は10aあたり窒素・りん酸・加里がそれぞれ15〜20kgで、基肥としてそれぞれ12〜15kg、追肥としてそれぞれ3〜5kg(または窒素のみ3〜5kg)とされています。
さらに、10aあたり1500〜2500kgの堆肥を基肥として施用する場合は、基肥中のN・P・Kをそれぞれ7〜10kgに減らせる、と記載があります。 ここはコストだけでなく、過剰窒素による葉勝ちや病害リスクを避ける意味でも重要です。
一方、家庭菜園〜小区画の目線で確認しやすい単位として、タキイのマニュアルは10㎡当たり成分量でチッソ100〜200g、リン酸150〜200g、カリ100〜200gを元肥の目安として提示しています。
同マニュアルでは、気温が高く生育が早い作型ではチッソ成分を100g以下にして生理障害や割れを防ぐ、と明記されています。 高温期に窒素を強く効かせると“葉が伸びるのに根が詰まらず割れる”側へ倒れやすい、という現場感と一致します。
実務上は、まず土壌診断(pHと主要要素)でスタートし、次に「堆肥を入れるか」「入れるなら完熟か」「作型は高温期か低温期か」を加味して基肥を決めるのが失敗しにくい順番です。BSI資料も、圃場ごとに養分が大きく異なるため作付け前の土壌診断と適正な施肥設計が必要と述べています。
大根の追肥は「回数」より「当てるタイミング」が収量と品質を左右します。BSI資料では、秋冬ダイコンは追肥1回が必要で、葉が5〜7枚展開して幼苗期から主根肥大期に入る頃(播種後20〜25日頃)に、2回目の間引きに合わせて行うとされています。
施用量は10aあたり、窒素・りん酸・加里がそれぞれ3〜5kgの化成肥料、または窒素だけ3〜5kg、施用位置は2条播きなら畝の中央にすじ状、1条播きなら畝肩に沿ってすじ状、と具体的です。
追肥の“やり方”で最重要なのは肥料焼け回避です。BSI資料は、肥料が株にかからないように撒くこと、追肥後に速やかに中耕・培土を行うことを注意点として挙げています。
タキイのマニュアルでも、追肥は間引き終わり頃(本葉5〜6枚のころ)に行い、1回につき10㎡当たりチッソ成分20〜30gを目安に、追肥後は土寄せと軽い中耕を行う、とされています。 “追肥→土寄せ”をセットにするのは、肥料を土に入れて揮散・流亡を減らし、根が肥効域に当たりやすくするためです。
なお、追肥の遅れは品質トラブルの入口になります。BSI資料は、追肥が遅れると葉ばかりが茂り根の太りが悪くなるため、間引きのタイミング(播種後20〜25日)で行うと述べています。
同様にタキイも、追肥の遅れは葉の出来具合や裂根につながりやすいので注意、としています。 「追肥を忘れたから後でまとめて多めに」は逆効果になりやすいので、作業工程に組み込んでおくのが安全です。
大根栽培の“肥料の失敗”は、肥料袋の種類選びより、過多と障害物で起きることが多いです。タキイは、ス入りは収穫遅れで起きやすい一方で、多肥条件によっても促進され、高温時に生育が旺盛なものにも多いと説明しています。 つまり「窒素を効かせて葉が勢いよく出た」=「根の中身が充実する」とは限りません。
又根(岐根)については、土づくりの段階で原因を潰せます。タキイは、発芽して直根が真っすぐ伸びる時に先端の成長点が土塊や肥料に当たったり、乾燥などで傷むと又根になる、としています。
BSI資料も、硬い土塊や石、肥料、未熟堆肥などに直接触れると曲がりや股割れになりやすいので、耕起・整地で障害物をできる限り取り除くと述べています。 “肥料を局所にドサッと置く”“未熟堆肥の塊が畝の中に残る”は、ここに直撃します。
対策は、次の3点を徹底すると再現性が上がります。
現場で意外と効くのが「収穫適期を外さない」運用です。BSI資料は、収穫が遅れるとス入りで品質が落ちるとし、外側の葉が垂れて中心の葉が横に開き平らに見える状態を収穫適期のサインとして紹介しています。 肥料設計が合っていても、採り遅れは品質を持っていくので、出荷計画とセットで管理します。
検索上位では「おすすめ肥料〇選」のような話になりがちですが、農業経営としては“肥料銘柄”よりも「土壌診断→成分量設計→作業で再現」のほうが利益に直結します。BSI資料が強調するように、前作・土質・堆肥投入の有無で土壌中養分は大きく異なるため、作付け前に土壌診断を行い適正な施肥設計が必要です。
ここを省くと、同じ圃場でも「去年は良かったのに今年は裂根」「同じ肥料なのに青首の出方が違う」といったブレが出ます(原因が気象だけに見えてしまい、改善が遅れます)。
独自視点として、施肥設計を“作業工程に落とす”とミスが減ります。たとえば、BSI資料の推奨どおり「播種5〜7日前に基肥」→「播種後20〜25日(葉5〜7枚、間引き)で追肥」→「追肥後すぐ中耕・培土」という工程を、作業日報・チェックリストに固定します。 肥料が効く・効かない以前に、散布日がズレることが最も損失になりやすいからです。
もう一つ、意外に効くのが「高温期の窒素をあえて削って品質を守る」判断です。タキイは、高温期の作型は生育が早いのでチッソ成分を100g以下/10㎡にして生理障害や割れを防ぐ、と具体的に示しています。 量を入れて“見た目の勢い”を作るより、障害を減らして秀品率を上げたほうが、結果的に粗利が残るケースは多いです。
最後に、肥料選定の着地点を実務的にまとめると、次の考え方が扱いやすいです。
土壌pH・施肥量・追肥タイミングの基準(ダイコン栽培の基礎がまとまっています)
https://bsikagaku.jp/cultivation/radish.pdf
元肥・追肥の成分量目安(10㎡当たり)と、高温期に窒素を抑える注意点が確認できます
https://www.takii.co.jp/tsk/manual/daikon.html