地下茎雑草に一回除草剤をまくだけでは、翌年も同じ場所から生えてきます。
スギナ・チガヤ・ヤブガラシ・セイバンモロコシ。これらはすべて、地中を横に伸びる「地下茎」によって繁殖する多年生雑草です。 地上部を草刈り機で何度刈り取っても、土の中の地下茎が生きている限り、必ず再生します。農業現場で「どれだけ刈っても追いつかない」と感じる雑草の大半は、この地下茎タイプです。
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地下茎は地面の表面から数センチ〜20cm以上の深さまで伸びることがあり、スギナの地下茎は地表から1m近くまで達するケースもあります。 根っこのつながりを断ち切らない限り、翌シーズンもほぼ同じ密度で復活します。これが基本です。
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農地・畦畔・畜産草地など、農業現場で特に問題になる地下茎雑草には次のようなものがあります。
農業現場でやっかいな点は、これらが複数種類混在していることです。種類によって有効な除草剤の成分が異なるため、「どれでも同じ」という認識が防除の失敗につながります。
「何度まいても枯れない」という悩みには、ちゃんとした理由があります。
第一の理由は、地上部しか枯らせない除草剤を選んでいるケースです。光合成阻害系(トリアジン系)の除草剤は地上の葉茎を枯らすには適していますが、地下茎へのダメージはほぼゼロです。 目に見えて枯れるので効いたと思っても、地中の生命線は生きています。これは痛いですね。
第二の理由は、散布時期のミスです。除草剤は雑草が活発に光合成をしている時期に散布しないと、成分が地下茎まで移行しにくくなります。 真夏の乾燥期や晩秋以降に散布しても、根まで枯らす効果が大きく落ちます。
第三の理由は、耐性雑草の存在です。世界で500種類以上の「除草剤に効かない耐性雑草」が確認されており、日本の農地にも侵入が進んでいます。 同じ成分の除草剤を何年も使い続けていると、耐性化が進みやすくなります。つまり「効かなくなった」と感じたら、成分のローテーションを考える必要があります。
除草剤の種類を正しく理解することが、根絶への第一歩です。地下茎雑草に使う除草剤は大きく3タイプに分けられます。
| タイプ | 代表成分・製品 | 地下茎への効果 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| グリホサート系(茎葉処理) | ラウンドアップ、サンフーロン、グリホエースPro | ◎ 根まで移行して枯らす | 非選択性のため作物への飛散に注意 |
| グルホシネート系(茎葉処理) | ザクサ液剤、バスタ液剤 | △ 地上部に即効。繰り返し使用で地下茎を弱体化 | 根まで完全に枯らすタイプではない |
| 土壌処理剤(粒剤) | ネコソギエースV、クサノンEX粒剤 | ○ 発芽・初期生育を抑制 | 生育初期・乾燥時は効果が落ちる |
地下茎雑草を「根まで枯らす」目的であれば、グリホサート系の除草剤がもっとも効果的です。 葉・茎から吸収された成分が師管(栄養の流れる管)を通じて地下茎まで移行し、植物全体を枯死させます。これが条件です。
一方、グルホシネート系のザクサ液剤は地上部への即効性に優れ、散布から2〜3日で枯れ始める速さが特長です。 根まで完全に枯らすタイプではありませんが、繰り返し使用することで地下茎のエネルギーを徐々に消耗させ、密度を抑えることができます。
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土壌処理剤(粒剤)は、雑草がまだ小さい時期・または生える前に使うと効果的です。 ネコソギエースVは最大6カ月、クサノンEX粒剤は最大9カ月の抑草効果があり、労力の大幅な削減につながります。これは使えそうです。
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農地・畦畔・果樹園など使用できる農薬の登録内容が異なるため、必ず購入前にラベルの「適用作物・使用場所」を確認してください。
農林水産省の農薬登録情報を確認できる公式データベース。
農薬登録情報提供システム(農林水産省)
散布時期を外すと、同じ除草剤でも効果が半減します。
スギナへの茎葉処理剤(グリホサート系)の最適散布時期は、草丈が20〜30cmに揃う4月〜6月です。 この時期は光合成が盛んで、成分が地下茎まで運ばれやすい状態にあります。1回で根絶を期待するのではなく、10日おきに3回散布することが根絶への近道です。akagi-bussan.co+1
散布方法も重要です。茎葉処理剤は「土に落とした薬液は無効」という原則があります。 雑草の葉の表面にまんべんなく薬液を乗せるイメージで散布します。葉が大きいほど吸収量が増え、地下茎へ届く成分も多くなります。roundupjp+1
ノズルは霧状ではなく、扇形(フラット扇)ノズルを使うと均一散布がしやすくなります。スプレーが風に流れて作物に飛散しないよう、風速3m/秒以下を目安に判断してください。
スギナ防除の具体的なポイントをまとめた資料として参考になります。
除染後畑地のスギナ防除対策マニュアル(農研機構)
除草剤だけに頼ると、いずれ「効かない雑草」になるリスクがあります。これが最大の落とし穴です。
地下茎雑草の根絶には「除草剤+物理的防除の組み合わせ」が最も効果的とされています。 具体的には、グリホサート系除草剤で地上部と地下茎を弱らせてから、耕起(ロータリー耕)で地下茎を物理的に断ち切り、地表に露出させて乾燥・凍結させる方法です。ススキの場合、耕起を繰り返すだけで群落が急激に衰退するケースも報告されています。
粒剤除草剤の散布後に防草シートを敷く二段構えも有効です。防草シートは遮光率95%以上のものを選ぶと、光合成を遮断してチガヤやスギナの再生を物理的に抑えられます。シートの端や継ぎ目から侵入する個体には、ピンポイントで茎葉処理剤を追加散布します。
長期的な対策としては、作物の畝間管理や被覆作物(カバークロップ)の活用も効果があります。 土壌表面を有用植物で覆うことで、雑草の発芽に必要な光を奪い、地下茎雑草の密度を下げることができます。米ぬかや大豆かすなどの有機物を土壌表面に散布することで、ヒエなど一部の雑草の発芽を酸欠状態で抑制できる技術も、有機栽培農家を中心に活用が広がっています。
参考)除草剤に頼らない水田雑草対策に挑戦 |営農情報|農業機械専業…
農業の現場では年間労働時間の削減が経営改善に直結します。地下茎雑草の防除に年間10〜20時間を取られているなら、適切な除草剤と防草シートの組み合わせで半分以下に圧縮できる可能性があります。まず手をつけるべき雑草の種類と場所を1ヶ所に絞り、今シーズンの散布スケジュールをカレンダーに記入することから始めてみてください。
地下茎型雑草(シバムギ・リードカナリーグラス)の草地防除に関する参考情報。
草地更新時の雑草対策(北海道釧路総合振興局)