葡萄の肥料は、秋・春・夏に毎回追加するのではなく、一年間に必要な量を、基肥・追肥・礼肥へ配分して考えます。露地の成木と家庭の鉢では量の決め方も違います。品種、樹齢、土、枝の伸び方を確認し、日程だけで施肥を決めないことが基本です。

基肥は翌年の生育を支える土台ですが、秋に全量を施す方法がどこでも適するわけではありません。長野県の資料では10~11月が基本で、有機配合肥料などは9~10月から施す場合も示されています。砂質土壌や積雪地では、春にも分けて施す方法を取ります。
秋と春の違いは、年間量を増やすことではなく、施す時期を分けることです。秋に予定量を入れたうえで、春にも同じ量を追加すれば、計画以上の投入になりかねません。前年の施肥記録を見て、春の分が残っているか確認します。
同資料にある窒素10kgや14kg/10aなどの数値は、地域や品種などの条件を伴う園地の施肥例です。10aは1000㎡であり、一本当たりの量でも全国共通の上限でもありません。一本の量が知りたい場合も、植栽間隔、樹齢、仕立て方、根の広がりを無視して単純に当てはめないでください。
窒素成分量と製品の重量も別です。計算の例として、窒素1kgをN10%の肥料だけで補うなら、製品は1kg÷0.10=10kgとなります。これは換算の説明で、一本への施肥量を勧める数値ではありません。
同じ園地でも若木と成木では必要量が違います。長野県の短梢・無核栽培の指導には、初期の樹勢が強い場合に窒素を控える考え方もあり、成木の表を若木へそのまま使えません。
鉢は別の体系で考えます。タキイの6~7号鉢の栽培例では、3月に緩効性肥料15~20g、5月と9月に玉肥2~3個を施します。これは該当する鉢栽培の例であり、圃場の窒素kg/10aと、鉢へ入れる製品gを直接比較することはできません。玉肥も製品によって大きさや成分が違うため、使用する製品の表示を確認します。
出典:長野県の施肥基準、家庭での鉢栽培例
追肥は、基肥や土からの養分だけでは不足する場合に検討します。枝が強く伸び、葉色も濃い樹では追加を見送り、伸びが弱い樹では着果量、水分、根の状態を先に確かめます。暦の同じ日に全樹へ施す方法ではありません。
新梢が強く伸び続け、葉色も濃いなら、暦どおりの追加をいったん見直します。逆に枝の伸びが弱くても、すぐに肥料不足と決めず、水不足や過湿、根の不調、実の付けすぎなどを確認します。原因が根や水にあれば、増肥だけでは解決できません。
判断するときは、一本の枝だけでなく、樹全体の伸び方と着果量を見ます。追肥する場合も年間計画の残量から配分し、「夏の分は別枠」として足し続けないようにします。収穫時期の違う品種へ、同じ日程をそのまま適用するのも避けてください。
礼肥は、収穫後も葉が働いている間に養分の回復を支えるための施肥です。実を収穫したら樹の活動が終わるわけではなく、残った葉は翌年の生育に使う貯蔵養分を蓄えるうえでも重要です。
ただし、収穫直後という日付だけで一律に与えません。品種の収穫期や葉の状態、それまでの施肥量を確認します。葉が十分に残っているか、傷みや病気で働きが落ちていないかも見てください。肥料だけを増やしても、葉の機能を置き換えることはできません。
晩生品種などで収穫後の施肥と秋の基肥が近づく場合は、二重計上に注意します。礼肥を施した日、製品、量を記録し、基肥と合わせて年間量へ算入します。名称が違うから別々に満量を与える、という扱いにはしないでください。
出典:年間の施肥管理
肥料の袋から入れる窒素だけでなく、土や過去に施した堆肥から供給される分も考える必要があります。地力窒素とは、土の有機物などが分解されて供給される窒素です。毎年堆肥を入れている園で、化学肥料だけを基準量まで追加すると、供給が多くなる可能性があります。
土壌診断では、養分の蓄積や土の状態を調べ、施肥記録、堆肥の種類と量、枝の伸び方を合わせて判断します。土の分析値だけ、葉色だけといった一つの情報で、年間量を決めないことが大切です。
長野県の実例には、生坂村の5年生ナガノパープルを雨よけ・短梢栽培した園で、牛堆肥を併用し、化学肥料の窒素を10kgから3.1kg/10aへ減らした事例があります。化学肥料由来の窒素は69%減り、2年間、収量・品質に大きな影響は見られませんでした。
この69%は、堆肥分を含む総窒素の削減率ではありません。また、別の品種や土、樹齢でも同じ結果になる保証はありません。参考にすべき点は削減率のまねではなく、土からの供給と樹の状態を確かめながら化学肥料を見直したことです。
出典:堆肥併用の減肥事例

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肥料と新梢管理は、どちらかで他方のやりすぎを帳消しにする関係ではありません。強く伸びる枝を摘心しても、土に入れた過剰な窒素がなくなるわけではないため、施肥計画そのものを見直します。
枝葉が混み合えば、果実や葉に届く光が不足しやすくなります。一方で葉を減らしすぎると、果実へ養分を送る働きまで損ないます。見た目をすっきりさせるために一度に切るのではなく、仕立て方に応じて枝の配置と重なりを確認してください。
糖度や着色は、肥料だけで決まりません。日照、葉の働き、着果量も関係します。色付きが悪いから追肥する、甘くしたいから肥料を増やす、と短絡せず、まず枝の伸び、葉の混み方、実の量、これまでの投入量を照合します。
強樹勢なら追加を止めて原因を確認し、不足が疑われる場合も土と根の状態を確かめて必要量を検討する。この順序で、肥料と枝管理の両方をやりすぎないことが、判断の基本になります。
出典:樹勢に合わせた栽培管理
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