離型剤とシリコンスプレーの違いと農機具への使い方や選び方

離型剤とシリコンスプレーは同じもの?農業現場での具体的な活用法や、溶剤の有無による選び方の違いを解説します。農機具のメンテナンスや出荷作業が驚くほど楽になるプロのテクニックとは?
離型剤とシリコンスプレーのポイント
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機能と製品の違い

離型剤は「役割」でシリコンスプレーは「製品名」。多くのシリコンスプレーは離型剤として使える。

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農業での活用

泥汚れの付着防止や収穫コンテナの滑り改善など、潤滑以外の用途で作業効率が劇的に向上。

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選び方の注意点

プラスチックやゴムには「無溶剤タイプ」が必須。用途を間違えると農機具の破損原因になる。

離型剤とシリコンスプレー

離型剤とシリコンスプレーの違いと使い分け


「離型剤」と「シリコンスプレー」は、ホームセンターの売り場でも混同されやすい言葉ですが、厳密には「用途(目的)」と「成分(物質)」という異なるカテゴリの言葉です。この違いを理解していないと、思わぬトラブルを招くことがあります。


  • 離型剤(りけいざい):
    • 型(モールド)から成形物を綺麗に外すための「役割」を指します。
    • 成分はシリコン以外にも、フッ素、ワックス、界面活性剤などが使われることがあります。
    • 塗装ができるタイプ(ペインタブル)や、高温に耐えるタイプなど、工業用途に特化した製品が多いです。
  • シリコンスプレー:
    • シリコーンオイルを主成分とした「スプレー製品」の総称です。
    • その効果の一つとして「離型作用」があるため、簡易的な離型剤として広く代用されています。
    • 離型以外にも、潤滑、艶出し、防水、防汚など多目的に使われます。

    農業現場において、「離型剤を買ってきて」と言われた場合、特殊な工業用成形を行わない限り、一般的には「シリコンスプレー」を購入すれば正解です。しかし、後述する「塗装への影響」や「樹脂への攻撃性」を考慮する場合、安易に安いシリコンスプレーを選ぶと失敗します。


    例えば、農機具の再塗装を予定している場合、通常のシリコンスプレー(シリコーンオイル)が付着していると、塗料を弾いてしまい「ハジキ(フィッシュアイ)」という塗装不良を起こします。この場合は、シリコンスプレーではなく「非シリコン系離型剤」や「ペインタブル(塗装可能)シリコン」を選ばなければなりません。


    信越化学工業株式会社:シリコーン離型剤の種類と特徴(外部サイト)
    専門的な離型剤の種類や、シリコーンが持つ「化学的に不活性」という特性について詳しく解説されています。


    離型剤シリコンスプレーの農機具メンテナンスへの使い方

    農業において離型剤(シリコンスプレー)は、単なる「潤滑油」以上の価値を発揮します。特に「汚れの付着防止(マッドリリース)」としての効果は、毎日の作業時間を大幅に短縮します。


    泥・草の付着防止テクニック

    • 草刈機(自走式・刈払機)のカバー裏:
      • 草刈り作業中、カバーの裏に草の汁や粉砕された草がへばりつき、重くなることがあります。事前にシリコンスプレーを吹き付けて乾燥させておくと、コーティング膜ができ、草が驚くほど落ちやすくなります。
      • 使用後の水洗いも格段に楽になります。
    • 耕運機の爪・ロータリー:
      • 粘土質の畑では、耕運機の爪やカバー内に泥が詰まり、負荷がかかって燃費が悪化します。
      • 作業前にたっぷりスプレーしておくことで、泥離れが良くなり、エンジンの負担を軽減できます。
    • スコップ・鍬(クワ):
      • 土おこしの際、泥が道具にくっつくと作業効率が落ち、腰への負担も増えます。
      • 金属部分にスプレーすることで、サクサクと土に刺さり、泥を投げ捨てる際もスムーズに離れます。
      • 冬場の除雪スコップに使用すれば、湿った雪の付着も防げます。

      収穫ハサミ・摘果バサミのヤニ対策

      果樹や野菜の収穫では、植物の樹液(シブ・ヤニ)がハサミの刃に付着し、切れ味が悪くなるだけでなく、刃の動きが重くなります。


      1. 作業の合間に、刃の汚れをタオルで拭き取る。
      2. シリコンスプレーを刃の両面に軽く吹く。
      3. 数回開閉して馴染ませる。

      これだけで、ヤニの付着を最小限に抑え、軽い力で作業を続けられます。5-56などの浸透潤滑剤(石油系)は油のにおいが強く、作物への匂い移りが心配ですが、「無溶剤タイプ」や「食品機械用(フードグレード)」のシリコンスプレーであれば、安心して使用できます。


      呉工業株式会社:シリコンスプレー製品情報(外部サイト)
      無溶剤タイプの特徴や、紙・木材・ゴムなどへの適応性について確認できます。


      【独自】離型剤シリコンスプレーを活用した出荷作業の効率化

      多くの農業ブログでは「機械のメンテナンス」に焦点が当てられていますが、実は出荷作業場(選果場)でのロジスティクス改善こそ、シリコンスプレーが最も費用対効果を発揮する場面です。


      重量野菜(白菜、キャベツ、大根など)や、箱詰めされた果物は、1ケースで10kg~20kgになります。これらを一日何百回も持ち上げて移動させる作業は、農家の腰痛の最大の原因です。ここで「滑り効果」を最大限に活用します。


      作業台とコンベアの摩擦ゼロ化

      • 選果台・パッキングテーブル:
        • ステンレスやベニヤ板の作業台にシリコンスプレーを塗布し、乾いた布で拭き上げます。
        • 効果: 重い段ボール箱やコンテナが、まるで氷の上のように指一本でスライドできるようになります。持ち上げずに「滑らせて」移動できるため、腰への負担が激減します。
      • ローラーコンベアの側面ガイド:
        • コンベア自体の回転軸(ベアリング)への注油は一般的ですが、意外と見落としがちなのが「側面ガイド(枠)」です。
        • 箱が枠に接触した際の摩擦抵抗を減らすことで、途中で箱が引っかかるトラブルを防ぎ、スムーズな流れを作れます。

        収穫コンテナ(サンテナ)の重ね技

        収穫時、トラックの荷台でコンテナを積み重ねたり、奥へ押し込んだりする作業があります。


        • コンテナの底面リブ:
          • シーズンの初めに、所有しているコンテナの底面(接地するリブ部分)にまとめてシリコンスプレーを吹いておきます。
          • プラスチック同士の摩擦が減り、積載した状態でのコンテナのスライドが非常に軽くなります。
          • 特に、軽トラックの荷台(ゴムマット)の上でコンテナを奥に押す際、摩擦が大きいと腰を痛めますが、ここでも滑りが良いと楽に積み込みが可能です。

          ⚠️注意: ただし、滑りすぎによる荷崩れには十分注意してください。トラック輸送時は必ずロープがけが必要です。また、床に付着すると人間が転倒する重大な事故につながるため、塗布作業は必ず屋外やブルーシートの上で行ってください。

          離型剤シリコンスプレーの選び方とゴムやプラスチックへの影響

          ホームセンターには数百円の安い缶から、千円を超える高い缶まで様々なシリコンスプレーが並んでいます。農業用途で選ぶ際、最も重要な基準は「溶剤(石油系溶剤)」が含まれているかどうかです。


          「溶剤入り」と「無溶剤」の決定的な違い

          種類 特徴 メリット デメリット 農業での主な用途
          石油系溶剤入り シリコーンオイルを石油系の液体で希釈している。 ・乾燥が早い・洗浄効果も若干ある・価格が安い ・ゴムやプラスチックを溶かす(膨潤させる)・発泡スチロールを溶かす 金属部品の潤滑、錆びたネジ、農機の金属チェーン
          無溶剤(水性・100%) 溶剤を含まない、または水性エマルジョン。 ・素材を傷めない(ゴム・樹脂OK)・安全性が高い ・乾燥が遅い場合がある・価格がやや高め パッキン、Oリング、ビニールハウスのレール、収穫ハサミ、樹脂コンテナ

          農業現場でやってはいけない間違い

          1. ビニールハウスの被覆材(POフィルム・農ビ)への付着:
            • 溶剤入りのスプレーがフィルムにかかると、その部分が硬化したり白濁したりして、劣化が早まります。ハウスの天窓開閉ワイヤーやレールに注油する際は、絶対に「無溶剤タイプ」を使用してください。
          2. 防除用動噴(スプレイヤー)のパッキン:
            • 薬剤タンクの蓋や、ホースの接続部にあるゴムパッキン(Oリング)の滑りを良くするために溶剤入りを使うと、ゴムが膨張(膨潤)してしまい、逆に蓋が閉まらなくなったり、液漏れの原因になったりします。ここでも無溶剤タイプが必須です。
          3. 発泡スチロール箱(トロ箱):
            • 市場出荷用の発泡スチロール箱を滑らせようとして、安価な溶剤入りスプレーを吹くと、一瞬で表面が溶けて穴が空きます。

          株式会社エーゼット:シリコーンスプレーの種類の解説(外部サイト)
          AZ(エーゼット)などのメーカーサイトでは、商品ラベルの「成分表示」の見方や、溶剤の有無による使い分けが詳しく記載されています。


          離型剤シリコンスプレー使用時の注意点と除去方法

          便利なシリコンスプレーですが、シリコーンオイルは一度付着すると「完全に取り除くのが非常に難しい」という厄介な性質を持っています。


          1. 床・通路への飛散は「労働災害」の元

          選果場や納屋のコンクリート床にシリコンミストが散布されると、そこはスケートリンクのように滑りやすくなります。高齢者が多い農業現場では、転倒による骨折は廃業につながりかねない重大事故です。


          • 対策: スプレー時は対象物の下に新聞紙や段ボールを敷く。もし床に付着した場合は、洗剤では落ちにくいため、パーツクリーナー等の脱脂剤で念入りに拭き取るか、土やオガクズを撒いて吸着させてから掃き掃除をします。

          2. 塗装予定箇所へは厳禁

          軽トラックの荷台のサビ止め塗装や、農機具の再塗装を自分で行う場合、シリコン成分がわずかでも残っていると塗料を弾きます。


          • 対策: 塗装作業を行う場所(ガレージ等)では、シリコンスプレーを使用しないのが鉄則です。空気中に漂ったミストが壁に付着し、それがまた落下してくるだけでもハジキの原因になります。

          3. シリコンの除去方法(落とし方)

          誤って付着させてしまった場合、水洗いでは落ちません。以下の手順で除去します。


          • シリコンオフ(脱脂剤): カー用品店で売られている塗装前処理用の溶剤が最も効果的です。
          • パーツクリーナー: 簡易的な除去には使えますが、完全ではないことがあります。
          • 中性洗剤+お湯: 無溶剤タイプ(水性)であれば、ある程度は落とせますが、油性タイプは困難です。

          4. 作物への直接付着

          食品衛生法に適合した「食品機械用」以外の工業用シリコンスプレーは、出荷する野菜や果物に直接かからないようにしてください。収穫カゴやコンテナに塗布した後は、十分に乾燥させ(溶剤を飛ばし)、清潔な布で余分な油分を拭き取ってから作物入れてください。


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