農産物流の改善は、最新システム導入より先に「現場の共通言語」を揃えるのが近道です。青果・花き・水産・加工食品などで、パレットや外装、コード・伝票、物流用語の標準化を進めるガイドラインが整理されており、特に標準パレットは1,100mm×1,100mm(11型)を基本とする考え方が示されています。
現場で効きやすいのは「荷役」の改善です。ばら積み中心だと、積込・荷下ろしが人手依存になり、時間が読めず、荷待ち・付帯作業が増えます。一方でパレット化が進むと、フォークリフト前提の作業設計ができ、荷役時間の短縮と平準化が狙えます。
参考)https://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokkyo/food_value_chain/document/r6/attach/pdf/r6_4_haifu-2.pdf
ただし、パレットだけ導入しても、外装(段ボール等)のサイズが合わないとオーバーハング(はみ出し)や箱つぶれリスクが残ります。資料では、パレットに合う外装サイズの推奨や、最大寸法1,100×1,100からはみ出さない積付け、最大総重量1tなど、運用で事故を減らす考え方も整理されています。
標準化で見落とされがちなのが「外装表示」です。表示内容・位置・フォントを揃えると、検品や仕分けの迷いが減り、場内物流(市場内の動線・仮置き・積替え)も設計しやすくなります。
また、外装サイズを揃える取り組みは、単に「箱を変える」話ではなく、選果ライン・集出荷施設・積付けパターンまで波及します。実例として、選果場整備に合わせて11型パレットに適合した選果レーンやロボットパレタイザーを導入し、段ボールサイズを見直して出荷を開始したケースが示されています。
意外に効くのは「養生の標準化」です。荷崩れ対策は強く巻けばよいわけではなく、湿気による品質劣化も避ける必要があるため、品質と作業性の両方を満たすルール化が重要になります(誰がやっても同じ結果になる状態を作る)。
標準化の次に効くのが、デジタル化・データ連携です。資料では、納品伝票の電子化、コード体系・物流用語の標準化、トラック予約システムの導入など、紙と口頭連絡に起因するムダを減らす方向性が整理されています。
農業側(産地)にとっての実務メリットは、出荷予定・出荷実績・パレット情報が揃うことで、積込計画と配車計画のすり合わせがやりやすくなる点です。これにより、当日の「急な積み直し」「伝票差し替え」「受付待ち」のような、作業者の疲弊につながる時間が減り、結果として出荷の安定性が上がります。
さらに、場内物流改善推進体制の取組事項として、パレット管理ルールの合意形成・周知徹底や、回収率の算出、積替え作業の機械化なども挙げられており、デジタルは単体導入ではなく運用ルールとセットで効果が出ることがわかります。
輸送力不足が前提になる時代は、遠隔産地ほど「一気通貫の直行」だけに依存するとリスクが高まります。資料では、物流の標準化・デジタル化・モーダルシフト・ラストワンマイル配送等を一体で進めること、そして新たな食品流通網の構築として「中継共同物流拠点」の整備支援が位置づけられています。
中継拠点が効くのは、(1)長距離区間の幹線輸送をまとめる、(2)地域内配送を束ねる、(3)温度帯(冷蔵・冷凍)を維持したまま積替えする、という3点です。標準パレットでの輸送と組み合わせることで、中継時の荷役が速くなり、トラックバースの回転も上げやすくなります。
モーダルシフト(鉄道・船舶等への転換)は万能ではありませんが、標準化とデータ連携が進むほど適用範囲が広がります。なぜなら、積替え・混載・予約枠の調整がしやすくなり、天候や道路事情の影響を受けたときも代替ルートの設計がしやすくなるからです。
検索上位の解説は「標準化しましょう」で止まりがちですが、現場で詰まるのは「パレットが返ってこない」「誰の責任か曖昧」の問題です。資料でも、パレット管理責任者の配置、場内の保管場所設定、紛失・破損を防ぐ管理、場内外の物流改善に向けた協議の実施など、管理体制そのものが推奨事項として示されています。
さらに意外性のあるポイントとして、卸売市場でのパレット回収・返却の改善に「ナッジ手法(行動経済学に基づく自発的行動を促す手法)」を使ったモデル実証が紹介されています。市場内でチラシ・ポスター掲示や、スマートフォンでレンタルパレットを撮影して参加するキャンペーンなどを行い、回収率が直近2~3年で大きく改善した旨が示されています。
農業者側の実装アイデアとしては、罰則やお願いだけで回そうとせず、「返却しやすい動線」「返却したくなる仕掛け」「返却できない日を作らない運用」の3点を設計します。例えば、返却場所を固定し、返却対象が一目でわかる表示を統一し、回収率を定例で見える化して協議会で共有すると、関係者間で“効く改善”に集中しやすくなります。
場内物流の改善は、施設改修や大型投資だけが解ではありません。ナッジのように、小さなデザイン変更や参加型の仕組みで、返却・整頓・撮影・報告といった行動が連鎖し、結果的に輸送効率や荷役効率に跳ね返るのが農産物流の面白いところです。
青果・花き・水産・加工食品の物流標準化(パレット、外装、伝票、トラック予約等)の政策・実例(パレット化率データ、場内物流改善推進体制、ナッジ実証、中継共同物流拠点の考え方)
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001841646.pdf