あなたが育てているラベンダー、品種を間違えると夏に丸ごと枯れて数万円分の苗が全滅します。
ラベンダーをひとことで説明しようとすると、すぐに壁にぶつかります。なぜなら、世界に自生するラワンドゥラ属の植物は47種にのぼり、一般に流通している品種だけでも大きく6つの系統に分類されるからです。農業や栽培の現場で「ラベンダーを育てたい」と思った時、この系統の違いを知らずに苗を選ぶのは、地図なしで山道を歩くようなものです。
系統ごとの特徴を整理すると、次の6つになります。
| 系統名 | 特徴 | 代表品種 |
|---|---|---|
| アングスティフォリア系 | 香り最強、耐寒性◎、耐暑性× | ヒドコート、おかむらさき |
| ラバンディン系 | 大型、香り強め、暑さ・寒さ両対応 | グロッソ、プロバンス |
| ストエカス系 | ウサギ耳型、観賞用、香り弱め | アボンビュー、キューレッド |
| デンタータ系 | ギザギザ葉、四季咲き、暑さに強い | リンダ・リゴン |
| プテロストエカス系 | レース状の葉、耐寒性なし、通年咲き | ビナータ |
| スパイカ系 | 強い草系の香り、精油向き | スパイクラベンダー |
「ラベンダーといえば紫色の穂」というイメージを持つ方が多いですが、花の形・色・葉の形はそれぞれ大きく異なります。つまり、画像で見比べることが系統判断の第一歩になります。
農業目線で特に押さえておきたいのは、系統によって耐暑性・耐寒性が180度異なるという点です。アングスティフォリア系(イングリッシュラベンダー)は気温−15℃の雪の下でも越冬できる一方、夏の高温多湿にはきわめて弱く、梅雨から夏にかけて枯れることが多いです。逆に、プテロストエカス系(レースラベンダー)は気温10℃以下になると致命的なダメージを受けます。同じ「ラベンダー」という名前でも、これだけ性質が違うということです。
品種の系統を見分けるには、まず花穂の先端を確認します。花穂の頂点にリボン状・ウサギの耳のような苞葉があればフレンチ系(ストエカス系・デンタータ系など)、苞葉がなく花穂がそのまま終わっていればイングリッシュ系(アングスティフォリア系・ラバンディン系)です。これが最速の見分け方です。
参考:ラベンダーの植物学と栽培についての詳細な解説(日本メディカルハーブ協会)
https://www.medicalherb.or.jp/archives/232281
イングリッシュラベンダーは、ラベンダーの中のラベンダーとも呼ばれる最もオーソドックスな品種です。北海道・富良野の紫色の畑を思い浮かべる方は多いと思いますが、それがまさにこの系統です。草丈は50〜60cmほどで、細くすっとした茎に紫色の花穂をつける姿が特徴的です。花穂の先に余計な飾りはなく、シンプルに穂状で終わります。これが「フレンチ系と見比べた時のわかりやすい違い」です。
香りの強さはラベンダー全品種の中でもトップクラスで、収油率は1%前後とされています。精油を1kgつくるのに生花が約100〜200kg必要になる計算です。これは、精油取引での価値が高い反面、農業的な生産効率が低いことを意味します。
この系統が農業で問題になりやすいのが、暑さと蒸れへの弱さです。本来は地中海沿岸の標高1,700m付近の高地に自生するため、日本の夏特有の高温多湿には著しく適応しにくい傾向があります。特に関東以西の平地では、夏越しに失敗して丸ごと枯れるケースが少なくありません。一方、耐寒性は群を抜いており、雪の下であれば−30℃でも越冬が可能という報告があります。これが北海道栽培の強みです。
代表品種としては次のものが知られています。
- ヒドコート:1920年代に英国で作出。濃紫色で草丈50cm。RHS(英国王立園芸協会)のガーデンメリット賞受賞。
- おかむらさき:北海道・富良野で選抜された品種。富良野ラベンダーとも呼ばれ、精油生産に多用される。
- マンステッド:1916年発表の歴史ある品種。草丈30cmとコンパクト。
- インペリアル・ジェム:花穂が長く多花性、ドライフラワーにも向く。
栽培で意外とやりがちな失敗が、株元への水分過多です。この系統は根腐れに対して特に敏感で、株元が常に湿った状態になると「フザリウム菌による道管病」が進行しやすくなります。発症すると枝が一本ずつ枯れていき、最終的に株全体が枯死します。これを防ぐには、株元だけを水はけのよい用土(鹿沼土や籾殻くん炭など)で管理することが有効です。根腐れ予防が基本です。
ラバンディン系は、アングスティフォリア(真正ラベンダー)とスパイクラベンダー(ラティフォリア)の自然交雑種です。両親の良いところをかけ合わせたような強靭さがあり、暑さにも寒さにも対応できる「オールラウンダー」として農業従事者から特に注目されています。草丈はイングリッシュ系よりも大きく、1mを超えることも珍しくありません。花穂もひとまわり大きく、長い花茎の先に重厚感ある穂をつけます。
世界の精油生産におけるラバンディン系のシェアは全体の75%にのぼります。残りがアングスティフォリア20%、ラティフォリア5%です。収油率は1〜3%と真正ラベンダーを大きく上回ります。1リットルの精油をつくるのに必要な花の量で比較すると、真正ラベンダーが約140kgなのに対し、ラバンディン系はおよそ40kgで済むというデータがあります。これは収益性で3倍以上の差が出るということです。
代表品種の「グロッソ」は甘みのある香りで有名で、フランスのプロヴァンス地方でも精油生産の主力品種として使われています。現地では収穫機械による大規模栽培が確立しており、バレンソール高原でラバンディン'グロッソ'が一面に咲く光景はラベンダー観光の名所になっています。グロッソは花茎が長いため、ラベンダースティック(飾り細工)にも向いています。
ラバンディン系のその他の主な品種は次の通りです。
- プロバンス:薄青紫色の花穂が特徴。柔らかい香りで人気。
- アラビアンナイト:グロッソに似た濃い花色。株が大型になる。
- インプレス・パープル:耐暑性があり、蒸れにも比較的強い。形がコンパクトにまとまりやすい。
- スーパーセビリアンブルー:夏越し・冬越しの両方が可能な希少品種。
ラバンディン系でも高温多湿には注意が必要です。「暑さに強い」という説明を見て、梅雨時の蒸れを油断しがちな方がいます。これは危険な思い込みです。梅雨前には必ず株元を剪定して風通しをよくし、雨水が株元に溜まらないよう管理することが大切です。
フレンチラベンダーは「ウサギの耳」に似た花姿が最大の特徴です。花穂の先端から飛び出している紫色のひらひら(苞葉)が耳のように見えることから、見た人が思わず目を止める品種です。この苞葉の有無が、他の系統との最も直感的な見分けポイントになります。草丈は50〜60cmで、花色は紫・白・ピンク・赤など豊富なバリエーションがあります。
香りはイングリッシュ系と比べると控えめですが、その分、観賞価値が高く、農業的には観光農園・ポット販売・切り花用として利用価値があります。押し花にも適しており、クラフト系の二次加工商品との相性も良好です。
ストエカス系の精油にはフェンコンやカンファーといったケトン類が多く含まれており、真正ラベンダーとは成分が大きく異なります。このため、妊婦・授乳中の女性や乳幼児には使用を避けるべきとされています。農業側から販売する場合は、この点を利用者に正しく伝える必要があります。
開花時期は4月〜6月で、ラベンダーの中では最も早い系統のひとつです。旬の時期が短いため、農業的には「早い開花を活かした観光誘致」や「他のラベンダー品種と組み合わせて開花期間を分散させる」という戦略が有効です。デンタータ系(四季咲き)と組み合わせれば、ほぼ年間を通じてラベンダーが楽しめる農園設計も可能です。
代表品種を紹介します。
- アボンビュー(エイボンビュー):美しい紫色の苞葉が目を引く定番品種。
- キューレッド:赤みがかった色合いが珍しく、観賞価値が高い。
- わたぼうし:3月から咲き始める早咲き品種。
- マドリード・ピンク:ピンク系の柔らかい花色で人気。春から咲く早咲き品種。
耐寒性はやや弱く、氷点下5℃以下になる地域では防寒対策が必要です。ただし耐暑性はある程度あるため、日本の関東〜九州エリアでも比較的育てやすい系統です。
デンタータ系とプテロストエカス系は、農業従事者の間でもまだあまり知られていない系統です。しかし、使い方次第で大きなメリットがあります。
デンタータ系(別名:フリンジ・ラベンダー)は、ギザギザした歯型の葉が最大の特徴です。ラテン語で「デンタータ」は「歯のような」を意味し、この名の通り、葉の縁には細かい鋸歯が並びます。草丈は60〜80cmで、白い産毛で覆われた銀緑色の葉はシルバーリーフとして観賞価値もあります。花色は他の系統と比べて薄めです。
農業的な最大のメリットは「四季咲き」であることです。5月〜8月の開花に加え、秋にも咲くため、1年に2回収穫・販売のタイミングがある計算になります。しかも暑さに強いため、日本の夏を比較的乗り越えやすい品種です。多湿と寒さが苦手な点は管理で補うことができます。代表品種には「リンダ・リゴン」「スーパーサファイアブルー」があります。
プテロストエカス系(レースラベンダー)は、レースのように細かく切れ込んだ美しい葉が特徴の観賞用品種です。ほぼ通年咲き続けるため、季節を問わず花のある農園づくりに活用できます。ただし、耐寒性は系統の中で最も低く、気温10℃以下では致命的なダメージを受けます。冬は必ず室内または温室管理が必要です。屋外の地植えには基本的に適しません。
ここでひとつ覚えておくべき活用法があります。デンタータ系の四季咲き性を活かして「オフシーズン(秋〜冬)の観光農園集客」に利用する農家が増えています。一般的なラベンダー農園の集客は初夏に集中しますが、デンタータ系を組み合わせることで秋の来場者を取り込める可能性があります。つまりデンタータ系は収益の平準化に効果的です。
参考:ラバンディン系の精油生産効率と品種別データ(ブルーダルジャン農園)
https://bleudargens.jp/blogs/blog/48
ラベンダーの品種選びで最も多い失敗のパターンが、「見た目がきれいだったから」「画像でラベンダーに見えたから」という理由だけで苗を購入するケースです。農業での栽培においては、これが大きな金銭的損失につながることがあります。
たとえば、アングスティフォリア系(イングリッシュラベンダー)の苗を関東〜九州の平地で大量購入して地植えした場合、翌年の夏に高温多湿で大半が枯れるリスクがあります。苗の単価が数百円だとしても、50株購入して40株枯れれば、苗代だけで数千円の損失です。土づくりや労働時間を含めると損失はさらに大きくなります。
正しい品種選びの手順は次の通りです。
1. 栽培地域の夏の気温・湿度を確認する(平地・高地・沿岸部で大きく異なります)
2. 用途を明確にする(精油用・観賞用・観光農園用・ドライフラワー用など)
3. 系統を系統表と照らし合わせて絞り込む
4. 品種名を学名レベルで確認してから購入する
特に4番目の「学名確認」は見落とされがちなポイントです。ホームセンターや苗店では「フレンチラベンダー」「イングリッシュラベンダー」といった通称だけで販売されることが多く、どの系統のどの品種なのかが曖昧なケースが多々あります。学名(例:*Lavandula angustifolia* や *Lavandula × intermedia*)が表示されている苗を選ぶと、栽培計画が立てやすくなります。学名確認が重要です。
また、精油を目的とする農家が見落としやすい点として「ラバンディン系の精油はアングスティフォリア系の精油と成分が異なる」という事実があります。リラックス・鎮静効果を売りにしたい場合は真正ラベンダー(アングスティフォリア系)の精油が必要ですが、収量・収益効率だけを優先するとラバンディン系に流れがちです。目的に応じた品種選択が農業収益を左右します。
苗の購入先として信頼性が高いのは、専門のハーブ農園や農業試験場からの苗、あるいは学名表示のある通販専門店です。「画像だけで選ぶ」を卒業して「系統と用途で選ぶ」習慣をつけることが、長期的な農業収益につながります。
参考:農家が解説するラベンダーの育て方・品種選びのポイント(マイナビ農業)
https://agri.mynavi.jp/2023_11_21_246545/
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