農業現場における労働力不足の解消や作業効率化の切り札として、農業用ドローンの普及が急速に進んでいます。しかし、いざ導入を検討し始めると「機体価格がわかりにくい」「どのメーカーを選べば費用対効果が高いのか」といった悩みに直面する方は少なくありません。本記事では、主要メーカーの最新価格一覧から、ランニングコスト、補助金の活用術まで、導入に必要な情報を網羅的に解説します。
農業用ドローンの価格は、搭載するタンクの容量(積載量)、自動航行機能の有無、そして障害物回避センサーなどの安全性によって大きく異なります。2024年から2025年にかけての市場動向を見ると、機体本体の価格帯は概ね100万円から250万円の範囲に集中していますが、バッテリーや充電器、散布装置などの必須オプションを含めると、総額はさらに変動します。
ここでは、国内でシェアの高い主要メーカー3社(DJI、マゼックス、クボタ)を中心に、代表的な機種の価格と特徴を比較します。
| メーカー | 機種名 | タンク容量 | 本体価格目安(税別) | セット価格目安(税別) | 特徴・ターゲット |
|---|---|---|---|---|---|
| DJI | Agras T50 | 40L | 約170万円 | 約240万円〜 | 大規模圃場向け。強力な2重反転ローターと高度な障害物回避機能を搭載。 |
| DJI | Agras T25 | 20L | 約145万円 | 約190万円〜 | 中規模向け。T50の機能を小型化し、日本の狭小地でも扱いやすい設計。 |
| DJI | Agras T10 | 8L/10L | 約100万円 | 約140万円〜 | 小規模・中山間地向け。軽トラックに積載可能で、一人でも運用しやすい。 |
| マゼックス | 飛助DX | 10L | 約90万円 | 約120万円〜 | 国産メーカー。直感的な操作性と、日本の圃場に特化したダウンウォッシュが特徴。 |
| マゼックス | 飛助mini | 5L | 約61万円 | 約80万円〜 | 超小型モデル。家庭菜園や極小規模の圃場、スポット散布に最適。 |
| クボタ | T25K | 20L | 約170万円 | 要見積もり | DJIのOEM機だが、クボタ独自の営農支援システムKSASとの連携や手厚いサポートが強み。 |
| NTT e-Drone | AC101 | 8L | オープン | 約144万円〜 | バッテリー1本で最大2.5ha散布可能な省エネ設計。軽量で女性でも扱いやすい。 |
価格一覧を見ると、マゼックスやDJIの小型機が安価で魅力的に映りますが、安さだけで選ぶと後悔する可能性があります。以下の基準で選定することをお勧めします。
参考:【2025年最新】農業用ドローンメーカーとおすすめ機体価格比較一覧 - ドローンスクールラボ
(上記リンクでは、各メーカーの詳細なスペックやセット内容の違いについて詳しく解説されています)
農業用ドローンは高額な投資となるため、全額を自己資金で賄うのではなく、国や自治体の補助金をうまく活用するのが賢い導入方法です。2025年度も継続が見込まれる主要な補助金制度を紹介します。これらを活用することで、実質負担額を半額〜3分の1程度に抑えられる可能性があります。
中小企業や個人事業主が、革新的なサービス開発や生産プロセス改善を行うための設備投資を支援する制度です。農業用ドローンの導入は「散布作業の劇的な省力化」として認められやすく、最も利用されている補助金の一つです。
従業員数が少ない小規模事業者(常時使用する従業員が宿泊・娯楽業除く商業・サービス業で5人以下、製造業その他で20人以下)向けの制度です。販路開拓や生産性向上の取り組みを支援します。
農林水産省が管轄する、産地の収益力強化を目的とした事業です。地域全体での取り組みが求められることが多く、JAや地域の協議会を通じて申請するケースが一般的です。
補助金は「申請すれば必ずもらえる」ものではありません。採択率を上げるためには、以下のキーワードを事業計画書に盛り込むことが重要です。
参考:農林水産省 農業用ドローンカタログ・補助金情報
(農林水産省が公開している資料で、補助金の対象となるドローンの要件やカタログスペックが確認できます)
機体価格に直結する最大の要素がタンク容量(積載量)です。タンク容量は単に「一度に運べる農薬の量」だけでなく、1日の作業可能面積やバッテリーの消耗度合いにも関わってきます。自分の農地規模に合わない容量を選ぶと、余計なコストがかかったり、作業が終わらなかったりする原因になります。
以下の表は、タンク容量ごとの一般的な散布性能と、推奨される農地規模をまとめたものです。
| タンク容量 | 1フライトの散布面積 | 1haあたりの飛行回数 | 推奨農地規模 | メリット・デメリット |
|---|---|---|---|---|
| 8L 〜 10L | 約 0.8ha 〜 1.0ha | 約 1.0 〜 1.2回 | 〜 5ha | メリット: 機体が軽く、バッテリーも安価。軽トラに積載可能。デメリット: 大規模地ではバッテリー交換の手間が膨大になる。 |
| 16L 〜 20L | 約 1.6ha 〜 2.0ha | 約 0.5 〜 0.6回 | 5ha 〜 20ha | メリット: 多くの日本の圃場サイズ(30a〜1ha区画)にマッチし、無駄が少ない。デメリット: 機体重量が増し、運用にはある程度の体力と経験が必要。 |
| 30L 〜 40L | 約 3.0ha 〜 4.0ha | 約 0.25 〜 0.3回 | 20ha 〜 | メリット: 圧倒的な散布スピード。請負防除業者向け。デメリット: 機体価格が高額(200万円超)。バッテリー1本が重く(10kg超)、充電環境の整備も大変。 |
価格一覧を見る際、タンク容量だけでなく吐出機能にも注目してください。
農業用ドローンを導入する際、機体価格ばかりに目が行きがちですが、実は免許(技能認定)の取得費用と、毎年の維持費が大きなウェイトを占めます。「買ってみたものの、維持費が払えずに手放した」という事態を避けるため、隠れたコストを把握しておきましょう。
現在、農業用ドローンを飛行させるために法的に必須となる「免許」はありませんが、農薬を空中散布するためには、国土交通省への飛行許可承認申請が必要です。この申請をスムーズに通すため、また安全確保のために、民間資格または国家資格の取得が事実上の必須条件となっています。
機体価格以外に、年間で約20万円〜40万円程度の維持費を見積もっておく必要があります。
参考:【2025年最新】農業用ドローン価格完全ガイド | 維持費と資格の詳細
(維持費の内訳や、機種ごとのバッテリー価格について詳細なシミュレーションが掲載されています)
価格を抑えるために「ヤフオク」や「メルカリ」、あるいは中古農機具店で中古の農業用ドローンを探す方もいるかもしれません。新品の半値以下で出品されていることもあり非常に魅力的ですが、農業用ドローンの中古購入には、一般の空撮ドローンとは比較にならないほど高いリスクが潜んでいます。検索上位の記事ではあまり触れられない、独自の視点から中古のリスクを解説します。
農業用ドローンは、使用後に水洗い洗浄を行いますが、それでも微細な農薬成分が機体内部の隙間から侵入しているケースが多々あります。
近年の農業用ドローン(特にDJI製など)は、盗難防止や安全管理のため、機体とユーザーのアカウントが紐付けられています。
「バッテリー4本付き!」というお得な中古セットを見かけることがありますが、これには注意が必要です。
どうしても中古で導入したい場合は、個人売買は避け、メーカーや正規代理店が整備・点検を行い、保証を付けた「認定中古機(リフレッシュ品)」を選ぶべきです。初期費用をケチった結果、散布シーズン真っ只中に故障してしまい、手作業で散布する羽目になっては本末転倒です。
参考:農業用ドローンの導入にかかる価格の相場と中古のリスク
(中古市場の現状や、新品と比較した場合の長期的なコストパフォーマンスについて言及されています)

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