
農業用ドローンの導入を検討する際、最も気になるのはやはり「価格」ですが、表示価格だけで判断するのは危険です。機体本体の価格に加え、セット内容(バッテリーの本数、充電器、散布装置)、そして導入後の維持費を含めたトータルコストで比較する必要があります。2025年の市場トレンドとして、低価格化が進む一方で、高機能化による価格の二極化も見られます。ここでは、主要メーカーの最新モデルを中心に、価格と性能のバランスを深掘りしていきます。
2025年現在、国内で流通している農業用ドローンの価格相場は、おおよそ100万円から300万円の範囲に収まっています 。市場を牽引しているのは、世界的なシェアを持つDJIと、日本の農業現場に特化した国内メーカーであるマゼックスなどです。
参考)【2025年最新】農業用ドローン価格完全ガイド
まず、圧倒的なシェアを誇るDJIのラインナップを見てみましょう。
最新のフラッグシップモデルである「Agras T50」は、本体価格だけで約170万円前後、バッテリーや充電器を含めたセット価格では250万円〜300万円近くになります 。このモデルは40kgの積載能力と強力な散布性能を持ち、大規模農家や請負業者向けです。
参考)【2025年最新】農業用ドローンメーカーとおすすめ機体価格比…
一方で、より日本の圃場サイズに適した中型機「Agras T25」は、セットで約180万円〜200万円程度となっており、取り回しの良さとコストパフォーマンスで人気を集めています 。さらに、小規模農家向けの「Agras T10」は、セット価格で120万円〜140万円程度と導入しやすい価格帯ですが、積載量が8L(タンク容量10L)と限られるため、散布面積が広い場合はバッテリー交換の手間が増える点を考慮する必要があります 。
参考)https://agrijournal.jp/lineup/drone/
次に、国内メーカーのマゼックスです。
同社の代表機種「飛助DX」は、セット価格で約90万円〜120万円程度と、DJI製に比べて安価な設定が魅力です 。マゼックスの特徴は、直進アシスト機能などの必要な機能に絞り込むことでコストを抑えている点にあります。また、5Lタンクを搭載した小型機「飛助mini」であれば、60万円台からの導入が可能であり、中山間地域や狭小地での利用を考える農家にとっては非常に現実的な選択肢となります 。
参考)農薬散布ドローンの価格はどのくらいなのか? 農業散布におすす…
その他、ヤマハ発動機の「YMR-08」は、産業用無人ヘリコプターで培った高い安定性と信頼性が売りですが、価格は約270万円〜と高額な部類に入ります 。しかし、長期間の運用や手厚いサポート体制を重視するJAや大規模法人には根強い人気があります。また、クボタなどの農機メーカーが販売するドローンは、基本的にDJIや他社製品のOEM(相手先ブランド製造)であることが多いですが、農機具としてのローンが組みやすい、いつもの販売店で修理が頼めるといったメリットがあり、価格以上の安心感が付加価値となっています 。
参考)https://www.jnouki.kubota.co.jp/product/drone/T10K-T30K/
| メーカー | 代表機種 | タンク容量 | 価格目安(セット) | おすすめユーザー |
|---|---|---|---|---|
| DJI | Agras T50 | 40L | 250〜300万円 | 大規模農家、散布請負業者 |
| DJI | Agras T25 | 20L | 180〜220万円 | 中規模農家、汎用性重視 |
| DJI | Agras T10 | 8L | 120〜150万円 | 小規模農家、初めての導入 |
| マゼックス | 飛助DX | 10L | 100〜130万円 | コスパ重視、自分だけで散布 |
| マゼックス | 飛助mini | 5L | 70〜90万円 | 中山間地、狭小地、軽量重視 |
| ヤマハ | YMR-08 | 8L | 270万円〜 | 信頼性重視、長期運用 |
価格を比較する際は、必ず「バッテリーが何本必要か」を計算に入れてください。1回の飛行で約10分〜15分程度しか飛ばないため、連続して作業を行うには最低でも3本〜4本のバッテリーと、急速充電器のセットが必須となります 。
参考)農業ドローンの運用コストは?圃場に合わせた料金診断でおすすめ…
参考リンク:【2025年最新】農業用ドローン価格完全ガイド(機種別比較とスペック詳細)
農業用ドローンは高額な投資ですが、国や自治体の補助金をうまく活用することで、実質的な負担額を半額以下、場合によっては3分の1程度まで抑えることが可能です 。2025年度もいくつかの主要な補助金制度が継続、または新たに公募される見込みです。
参考)【2024-2025年版】 農業用ドローン導入に活用できる、…
最も代表的なのが「ものづくり補助金」です。
これは中小企業や個人事業主が、生産性向上のために革新的なサービス開発や試作品開発、生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援するものです。農業用ドローンも「生産性向上に資する設備」として認められるケースが多く、採択されれば導入費用の1/2〜2/3(上限額あり)が補助されます 。ただし、申請には詳細な事業計画書の作成が必要であり、採択率は必ずしも高くありません。行政書士などの専門家のサポートを受けるのが一般的です。
参考)【2025年最新】産業用ドローン購入に活用できる補助金4選
次に使いやすいのが「小規模事業者持続化補助金」です。
これは販路開拓や生産性向上の取り組みを支援するもので、補助上限額は通常枠で50万円(要件を満たせば最大200万円)と少なめですが、申請のハードルが比較的低いのが特徴です 。ドローンを使って農産物のブランディング強化(例:減農薬栽培のPR)や、作業効率化による収量アップを目指すといったストーリーで申請可能です。
さらに、農林水産省が主導する「スマート農業実証プロジェクト」や、各自治体が独自に行っている「スマート農業導入支援事業」も見逃せません 。これらは地域ごとに条件や募集時期が異なるため、地元の普及指導センターやJA、役場の農政課に問い合わせるのが最も確実な情報収集方法です。特に「強い農業づくり交付金」などの産地生産基盤パワーアップ事業は、地域単位や協議会単位での申請となる場合が多いですが、高額な補助が期待できます。
補助金申請の注意点:
参考リンク:農業用ドローン導入に活用できる最新補助金情報と申請のコツ
価格や補助金以外に、現場で後悔しないための選び方にはいくつかの重要なポイントがあります。単に「大は小を兼ねる」と考えがちですが、農業用ドローンにおいては、機体が大きすぎると逆に運搬や取り回しが困難になり、稼働率が下がってしまうことがあります 。
参考)Redirecting...
1. 圃場サイズとタンク容量のバランス
一般的に、10Lの農薬で約1ヘクタール(1町歩)の散布が可能とされています。ご自身の管理する圃場が一枚あたりどのくらいの大きさなのかを確認しましょう。
2. 自動航行機能とRTKの必要性
最近の機種には、事前に設定したルートを自動で飛行する「自動航行機能」が標準装備されているものが増えています。ここで重要になるのがRTK(リアルタイムキネマティック)測位です。通常のGPSでは数メートルの誤差が出ますが、RTK基地局やネットワークRTKを利用することで、誤差を数センチ単位に抑えることができます 。
参考)【2025年最新】 代表的な農業用ドローン&メーカーまとめ
3. 粒剤散布装置への換装
液剤だけでなく、肥料や除草剤などの粒剤を散布したい場合は、散布装置(タンク)の交換のしやすさもチェックポイントです。DJIやマゼックスの機種は、比較的簡単に液剤タンクと粒剤タンクを載せ替えることができますが、メーカーによっては専用工具が必要だったり、手間がかかったりするものもあります 。
参考リンク:失敗しない農業用ドローンの選び方完全ガイド2025
導入時に見落とされがちなのが、購入後にかかるランニングコストです。「機体を買えばあとは電気代だけ」と思っていると、年間の維持費の高さに驚くことになります。実際には、年間で数万円から数十万円単位の費用が発生します 。
参考)https://www.pref.tochigi.lg.jp/g58/documents/20240318145323.pdf
1. バッテリーの劣化と交換費用
最も大きな出費となるのがバッテリーです。農業用ドローンのバッテリーは高出力であるため消耗が激しく、一般的に充放電回数300回〜500回程度、あるいは期間として1年〜2年で寿命を迎えます 。
参考)【実際いくらかかるの?】農業用ドローンの導入費用と使用感をお…
2. 年次点検とメンテナンス費用
自動車に車検があるように、ドローンにも定期点検が必要です。メーカーの保証を受けるためには、年1回の定期点検(オーバーホール)が必須条件となっていることがほとんどです。
3. 保険料(賠償責任保険・機体保険)
万が一の墜落や、散布した農薬が隣の畑や車にかかってしまった(ドリフト)場合の損害賠償に備えるための保険です。
これらを合計すると、年間で約13万円〜50万円程度の運用コストを見込んでおく必要があります 。このコストを上回るだけの「農薬散布委託費の削減効果」や「労働時間の短縮効果」が得られるかどうかが、導入の成否を分けるポイントとなります。
参考リンク:農業ドローンの年間維持費シミュレーションとコスト削減術
初期投資を抑えるために「中古」の農業用ドローンを検討する方もいますが、これには新品購入にはない大きなリスクが伴います。中古車と違い、ドローンの中古市場はまだ成熟しておらず、品質評価の基準が曖昧だからです 。
参考)農薬散布ドローンの中古購入は危険!?デメリットを解説
独自視点:目に見えない「墜落歴」と「内部腐食」
中古ドローンの最大のリスクは、過去の墜落歴や水没歴が隠されている可能性があることです。外装カバーさえ交換してしまえば、内部のフレームに歪みがあったり、モーター軸にダメージが蓄積していたりしても、外見からは判断できません。
また、農薬散布機特有の問題として、薬剤による内部腐食があります。前の所有者のメンテナンスが悪かった場合、基盤や配線コネクタが農薬の成分で腐食していることがあり、これが飛行中の突然の電源断や制御不能(暴走)につながる恐れがあります 。
サポートと登録の継承問題
バッテリーの「死にかけ」リスク
中古機体に付属しているバッテリーは、充放電回数の上限に達している「寿命寸前」のものである可能性が高いです。見た目は綺麗でも、飛ばしてみると数分で電圧低下を起こし、墜落の原因になることがあります。結局、新品のバッテリーを買い直すことになれば、中古の価格メリットはほとんど消えてしまいます 。
参考)酪農場における散布ドローン:成功例よりも失敗例の方が学ぶこと…
結論として、農業用ドローンに関しては、信頼できる正規代理店から新品を購入し、アフターサポートを確実に受けられる状態にしておくことが、長期的なコストパフォーマンスと安全性の面で最も賢明な選択と言えます。どうしても中古を選ぶ場合は、メーカー認定の整備済み製品(リファービッシュ品)や、整備記録簿が完全に残っている個体に限定すべきです。
参考リンク:農薬散布ドローンの中古購入が危険な理由と失敗しないチェック項目

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