農地で太陽光発電の収益と費用!失敗しない許可や仕組み

農地で太陽光発電を行う「ソーラーシェアリング」の仕組みから、2025年の最新法改正による許可基準、実際の収益と費用まで徹底解説。災害時の活用や作物への意外なメリットとは?
この記事の要約
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収益と費用の現実

売電と農業のダブル収入が可能ですが、50kW規模で約1,200万円〜の初期費用と緻密な収支計画が必要です。

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2025年の許可基準

法改正により営農実態の確認が厳格化。10年の長期許可を得るための条件や手続きのポイントを解説します。

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作物と未来の可能性

遮光率30%でも育つ作物や、災害時の地域電源としての役割など、単なる投資を超えた価値を紹介します。

農地で太陽光発電

農地で太陽光発電の仕組みとメリット・デメリット


「農地で太陽光発電」を行う仕組みは、一般的にソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)と呼ばれています。これは、農地の上に藤棚のような支柱を立てて太陽光パネルを設置し、その下で通常通り農業を行うという手法です。地面に降り注ぐ太陽の光を、上空のパネルで発電に使い、隙間から漏れる光で作物を育てるという、「太陽の恵みを分け合う」発想に基づいています。


このシステムの最大のメリットは、農業と発電事業という二つの収入源を確保できる点にあります。


  • 農業収入: 作物の販売による従来の収入。
  • 売電収入: FIT(固定価格買取制度)やFIP制度を利用して、電力会社に電気を売ることで得られる安定収入。

農業は天候不順や市場価格の変動により収入が不安定になりがちですが、毎月一定の売電収入が入ることで経営が安定します。これは、後継者不足に悩む農家にとって、新しい収益モデルとして大きな魅力となります。また、耕作放棄地の解消や、地域のエネルギー自給率向上にも寄与するため、社会的意義も非常に高い取り組みです。


一方で、無視できないデメリットも存在します。


  • 初期費用の負担: 通常の野立て太陽光発電に比べ、農業機械が下を通れるように架台(支柱)を高く、かつ強固にする必要があるため、設備コストが割高になります。
  • 営農の制限: パネルの下では、大型のコンバインやトラクターの操作がしにくくなる場合があります。また、日照量が減るため、栽培できる作物の種類に一定の制限がかかります。
  • 撤去義務: 万が一、農業を継続できなくなった場合や、パネル下の農地が荒廃したとみなされた場合は、許可が取り消され、設備を撤去して農地を原状回復しなければなりません。これは事業リスクとして非常に重いものです。

農林水産省:営農型太陽光発電取組支援ガイドブック(制度の概要やメリットが網羅的に解説されています)
さらに、近隣住民への説明や理解を得ることも重要です。景観の変化や反射光のトラブルを避けるため、事前の丁寧なコミュニケーションが不可欠です。メリットとデメリットを天秤にかけ、自身の営農スタイルに適合するかどうかを冷静に判断する必要があります。


農地で太陽光発電の収益性と設置費用の現実

多くの農家や事業者が最も関心を寄せるのが、具体的な収益費用のバランスです。「農地なら土地代がかからないから安く済むだろう」と安易に考えると、思わぬ落とし穴にはまります。


まず、設置費用について見ていきましょう。


一般的な野立て太陽光発電(低圧50kW未満)の相場よりも、ソーラーシェアリングは高額になる傾向があります。


  • システム総額の目安: 50kW規模で約1,200万円〜1,700万円程度。
  • 架台費用の増加: 高さ3メートル以上の空間を確保し、かつ強風や地震に耐える構造にするため、架台だけで数百万円のコストアップ要因となります。
  • 施工費: 足場の悪い農地での高所作業となるため、工事費も通常の1.2〜1.5倍程度を見込む必要があります。
  • 申請費用: 農地法に基づく許可申請(後述)や電力会社への申請に、行政書士への報酬などを含めて数十万円〜100万円程度がかかります。

次に収益性です。


FIT制度の買取価格は年々下がっていますが、それでも10円/kWh前後(年度による)での20年間固定買取は、農業経営にとって強力な下支えとなります。


例えば、50kWの設備で年間約55,000kWh発電し、全て売電できた場合、年間売電収入は約55万円〜60万円程度(買取単価による)が見込めます。


これに加え、農業収入があります。重要なのは、「農業収入が減らないか」という点です。遮光による収量減を考慮しても、売電収入がそれを補って余りあるプラスになるかが損益分岐点となります。


  • 収支シミュレーションの例:
    • 初期投資: 1,500万円(融資利用)
    • 年間売電収入: 60万円
    • 年間返済額: 80万円
    • キャッシュフロー: 単純計算ではマイナスに見えますが、ここに「自家消費による電気代削減効果」や「税制優遇」、そして「農業収入」を組み合わせて黒字化を目指します。特に最近では、全量売電ではなく、農業用ハウスの空調やポンプ、電動農機具に電気を使い、購入電力を減らす自家消費型のモデルが注目されています。

    ソーラーシェアリングの初期費用詳細解説(項目ごとの費用内訳が詳しく分かります)
    現実的には、投資回収期間は10年〜12年程度と言われています。通常の太陽光発電よりも長い目で見る必要がありますが、農地の固定資産税の安さなどを加味すれば、長期的な資産形成としては十分に合理的です。ただし、安すぎる見積もりを出す業者には注意が必要です。基礎工事を簡略化したり、強度の足りない資材を使ったりすると、台風で倒壊するリスクがあり、その場合の損害賠償は計り知れません。


    農地で太陽光発電で失敗しないための許可と農地転用

    農地で太陽光発電を行う上で最大のハードルとなるのが、農地法に基づく許可申請です。通常の野立て太陽光発電であれば、農地を完全に宅地や雑種地に変える「農地転用」を行いますが、ソーラーシェアリングの場合は「一時転用許可」という特殊な扱いになります。


    これは、「支柱が立っている部分(足元)の土地だけを一時的に農地以外として使うことを認める」という制度です。あくまで「一時的」であるため、原則として3年ごと(特定の条件を満たせば10年ごと)に許可の更新が必要です。ここで重要なのが、「営農が適切に行われているか」という点です。


    失敗しないための許可申請のポイントは、以下の最新動向(2024年〜2025年の制度改正含む)を押さえておくことです。

    1. 営農の継続が大前提:

      以前は「名ばかり営農」で発電収益だけを得ようとする悪質な事例が散見されましたが、規制が強化されました。現在は、「地域の平均的な収量の8割以上を確保すること」や、「農作物の品質に著しい劣化がないこと」などが求められます。これが達成できない場合、許可の更新が認められず、最悪の場合は設備の撤去を命じられます。


    2. 2024年・2025年の法改正と厳格化:

      農林水産省は、営農型太陽光発電の法的根拠を明確化し、違反者への対応を厳しくしました。2025年4月の農地法改正では、営農状況の報告が義務化され、農業委員会によるチェックがより厳格に行われます。


      • 10年許可の要件: 「担い手が営農する場合」「荒廃農地を再生する場合」「知見を有する者が営農する場合」などは、許可期間が10年に延長されます。これにより、長期的な融資が受けやすくなるメリットがあります。
    3. 下部農地の定義変更:

      以前はパネル下の農地全体が審査対象でしたが、現在は支柱の基礎部分のみが転用対象となります。しかし、パネル下の農地全体で適切な農業が行われていることが許可の条件であることに変わりはありません。


    農林水産省:再生可能エネルギー発電設備を設置するための農地転用許可(最新の法令や通知が確認できます)
    許可申請には、営農計画書、設備の設計図、資金計画書など膨大な書類が必要です。特に「どのような作物を育て、どの程度の収量を見込むか」という営農計画は、農業委員会の審査で厳しく問われます。地元の農業委員会と事前相談を重ね、信頼関係を構築しておくことが、スムーズな許可取得への近道です。「自分は発電事業だけやりたいから農業は誰かに任せる」という場合でも、その「任せる相手」が確実に営農できる裏付けがなければ、許可は下りません。


    農地で太陽光発電に適した作物と遮光率の科学

    「太陽光パネルの下で本当に野菜が育つのか?」という疑問は、多くの人が抱くものです。ここで重要になる概念が遮光率です。これは、農地に降り注ぐ光をパネルがどれだけ遮るかを示す割合です。ソーラーシェアリングでは、一般的に遮光率30%〜35%程度で設計されます。


    植物には「光飽和点」という性質があります。ある一定以上の強さの光を浴びても、それ以上は光合成の速度が上がらなくなる限界点のことです。真夏の直射日光は多くの作物にとって強すぎることがあり、実は光の量を3割程度カットしても、生育にほとんど影響しない、あるいは逆に生育が良くなる作物も存在するのです。


    農地で太陽光発電に適した作物の代表例。

    • 陰性植物・半陰性植物: もともと強い光を好まない作物。
      • 茶(お茶): 直射日光を遮ることで旨味成分(テアニン)が増え、高級茶として栽培されることもあります。
      • シイタケ・キクラゲ: 原木・菌床栽培は日陰を好むため、パネル下は最適な環境です。
      • ミョウガ・フキ: 強い日差しで葉焼けを起こしやすいため、パネルが適度な日傘となります。
    • 意外な適合・果樹類:
      • ブドウ・梨: 棚栽培を行う果樹は、支柱を共用しやすく相性が抜群です。
      • ブルーベリー: 鉢植え養液栽培と組み合わせることで、高収益モデルとして人気があります。

      逆に、トウモロコシやトマト、イネなどの「陽性植物」は光を好みますが、これらも遮光率30%程度であれば、適切な株間を開けることで十分な収量を確保できることが実証されています。


      東京大学:営農型太陽光発電における遮光が水稲生育に及ぼす影響(科学的なデータに基づく生育への影響が分かります)
      さらに、興味深い「独自視点」として、パネルの「雨よけ効果」「微気象の変化」が挙げられます。


      • 病気の抑制: 雨によって広がる病気(トマトの疫病など)が、パネルが雨を遮ることで発生しにくくなる事例が報告されています。
      • 土壌乾燥の防止: 真夏の過酷な日差しを遮ることで、土壌の水分蒸発を抑え、水やりの手間を減らす効果があります。これは、近年の猛暑において、作物を「熱中症」から守る役割も果たしています。

      単に「光を遮る」だけでなく、「環境を制御する」という視点で捉え直すと、ソーラーシェアリングは新しい農業技術の一つと言えるかもしれません。


      農地で太陽光発電と災害対策や地域共生の未来

      最後に、単なる売電事業の枠を超えた、農地で太陽光発電の未来の可能性について触れたいと思います。それが、災害対策と地域コミュニティへの貢献です。


      近年、日本各地で台風や地震による大規模停電が頻発しています。農村地域は都市部に比べて復旧が遅れる傾向にありますが、ここに「自立した電源」があることは、地域全体のレジリエンス(回復力)を劇的に高めます。


      • 非常用電源としての活用:

        パワーコンディショナー(自立運転機能付き)や蓄電池を併設することで、停電時でも電気を使うことができます。


        • 農業のBCP(事業継続計画): 停電するとハウスの自動換気や井戸のポンプが止まり、作物が全滅するリスクがありますが、ソーラーシェアリングからの給電でこれを防げます。
        • 地域の充電スポット: 災害時に近隣住民にスマートフォンや携帯ラジオの充電場所として開放する協定を自治体と結ぶ事例が増えています。これにより、「迷惑施設」と思われがちな太陽光発電所が、「地域の守り神」として歓迎されるようになります。

        環境省:災害時の農村地域の電力を守る自家消費用太陽光パネルの設置(災害時の具体的な活用事例が紹介されています)
        さらに、「エネルギーの地産地消」という観点も重要です。


        発電した電気を、地域の電動トラクターやEV軽トラックの充電に使ったり、近隣の加工施設へ供給したりする「地域マイクログリッド」の構想も進んでいます。これは、燃料費高騰の影響を受けにくい、持続可能な農業モデルの構築につながります。


        また、環境意識の高い企業が、SDGsや脱炭素経営の一環として、ソーラーシェアリングで作られた作物を高値で買い取る動きも出てきています(「ソーラーシェアリング米」や「再エネワイン」など)。「環境に優しい電気の下で育った作物」という付加価値をブランディングに活かすことで、従来の市場価格競争から抜け出すチャンスも生まれています。


        農地で太陽光発電を行うことは、単にお金を稼ぐだけでなく、日本の農業を守り、地域の防災力を高め、次世代に豊かな環境を残すための有力な手段となり得るのです。あなたは、自分の農地が持つ「エネルギー生産」という隠れたポテンシャルを、どう活用しますか?




        農地の法律がよくわかる百問百答 4訂版