ネクロシス 植物 病害 原因 症状 対策 診断

ネクロシス(壊死)は「病気」だけでなく薬害や栄養障害でも起きます。現場で迷いやすい見分け方と、被害を止める初動・再発防止までを整理しました。あなたの圃場の壊死は何が引き金でしょうか?

ネクロシス 植物 病害

ネクロシスの現場判断:まず何を見る?
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症状(壊死斑)の出方

葉のどこから始まるか、輪紋・えそ斑点・水浸状など「形」を先に観察します。

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環境(多湿・乾燥・温度)

高湿度や過乾燥、適温帯など、発病に好適な条件が重なったかを確認します。

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原因(病害/生理障害/薬害)の切り分け

ウイルス・菌類・細菌だけでなく、カルシウム欠乏やマンガン過剰なども疑います。

ネクロシス 植物 病害の症状(えそ・壊死斑点)を言語化する


ネクロシスは、植物の細胞が局所的に死んで褐変~黒変し、乾いて紙のようになる「壊死(えそ)」として見えます。
重要なのは「ネクロシス=特定の病名」ではなく、ウイルス病・菌類病・細菌病・生理障害・薬害など複数の原因が同じ“見た目(壊死)”を作る点です。
現場で役立つ観察ポイントを、言葉に落としてメモできる形にしておきます。


  • 斑点の輪郭:ぼやける/くっきり、輪紋(同心円状)っぽい/不整形
  • 進行:急に広がる/じわじわ、株全体へ波及/特定部位に偏る
  • 触感:水浸状→褐変(湿った腐れの前段)/乾いてパリパリ(乾性の壊死)
  • 位置:上位葉から/下位葉から、葉縁・葉先から/葉脈間から

    これらは「病害か生理障害か」を切るための最初の材料になります。


    参考)https://gifu-agri.com/wp/wp-content/uploads/2023/10/0c92ef074fe54f7fd67df0d0d34ee0d7.pdf

また、似た言葉に注意です。


ネクロシス 植物 病害の原因:菌類・細菌・ウイルスと生理障害

病害の基本は「病原がいる」「感受性のある植物がある」「発病に好適な環境」の3条件が重なると発生する、という考え方です。
この“3条件”を頭に置くと、ネクロシスが出た時に「薬剤散布だけ」へ短絡しにくくなり、換気・排水・潅水設計などの手当ても同時に進められます。
一方で、ネクロシスは病原体だけが原因ではありません。代表例が栄養障害です。


さらに薬害も、ネクロシス様の症状を作ります。葉緑素が抜けるクロロシスだけでなく、細胞が破壊されて変形・ネクロシスが出る研究報告に触れた説明もあります。

薬剤や濃度、散布時の高温・強日射、混用などの条件で“病気そっくり”の壊死が出ることがあるため、発生直前の作業履歴は必ず残してください。

ネクロシス 植物 病害の診断:現場チェックと検定(RT-PCR・ELISA)

ウイルス性のえそ(ネクロシス)は、病徴が似ていて見た目だけでの断定が難しいケースが現場で起きます。
例えばキクでは、えそ病はトマト黄化えそウイルス(TSWV)、茎えそ病はキク茎えそウイルス(CSNV)で起こり、葉の退緑斑や褐色斑点、茎のえそ状斑などが説明されています。
しかも、CSNVによる病徴がTSWVによるキクえそ病に酷似する、と明記した資料もあり、「症状が似る」こと自体が重要な注意点です。
このため、被害が大きい・再発する・苗由来の可能性がある場合は、検定で確定させる価値が高いです。


診断の“現場チェック”としては、次をセットで行うと精度が上がります。


  • 発生分布:畝の端・換気口側・灌水ムラの位置など、環境由来の偏りがないか
  • 新葉か古葉か:カルシウム欠乏は上位葉で目立ちやすいなど、栄養障害の典型パターンと照合する​
  • 直近の作業:薬剤散布、追肥、強風・低温・高温、定植直後の乾燥ストレス

    診断の目的は「原因名を当てる」だけでなく、「次の一手(止血策)を決める」ことです。

ネクロシス 植物 病害の対策:初動・隔離・環境改善・肥培管理

病害の場合、基本は“発病の3条件”のうち、現場で動かせる「環境」と「伝染経路」を優先して潰すのが現実的です。
栽培者がその日のうちに実行しやすい初動を、優先順位で並べます。

  • ①疑似株のマーキングと作業動線の分離:触った手・ハサミ・手袋で広げない(機械的伝搬も疑う)
  • ②多湿の解除:換気、株間の風通し、下葉整理、過湿灌水の見直し(病害の好適条件を崩す)​
  • ③土や葉が接触しやすい条件を減らす:マルチや敷きワラ等で泥はねを抑え、下葉が土に触れないようにする工夫が発病軽減につながる例が紹介されています。

    参考)【第11回】病原菌による根と地際のトラブル|こんな症状の時ど…

  • ④栄養障害の補正:カルシウム欠乏が疑われる場合、葉面散布は「有効とされるが効果は小さい」こと、過乾燥や窒素・リンの過剰施肥回避が要点とされています。​

ここで意外に効くのが「対策の順番」です。病害を疑うとすぐ薬剤に寄りがちですが、環境条件(特に湿度・乾燥)を直す前に散布を重ねると、薬害リスクやコストだけが増えることがあります。

また、ウイルス性のえそが疑われる場合は、媒介昆虫対策(例:アザミウマ類)を含めた防除設計が必要になる、という整理がキク病害の資料に示されています。


参考)https://www.pref.oita.jp/uploaded/life/2221427_4588656_misc.pdf

ネクロシス 植物 病害の独自視点:壊死は「毒素」と「免疫反応」でも起きる

検索上位の解説は「病原の種類」や「欠乏症」に寄りがちですが、現場で“なぜ壊死が急に広がるのか”を理解するには、病原が作る物質や植物側の反応もヒントになります。
農研機構の資料では、Alternaria属に関連して「宿主非特異的毒素(non-selective toxin / non-specific toxin)」という概念が述べられており、病原が作る毒素が幅広い植物に作用しうる、という見方ができます。
つまり、ネクロシスは「菌が増えた結果の腐れ」だけでなく、“毒素で細胞が先にやられる”ような形で目に見える場合がある、という理解が診断の幅を広げます。
さらに、学術誌の要旨レベルでも、炭疽病菌の変異体が壊死斑を形成するなど、病原側の性質の違いが壊死の出方に影響しうることが示されています。


参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjphytopath/87/3/87_150/_pdf/-char/ja

この視点を現場に落とすと、同じ作物・同じ圃場でも「ある年だけ極端にえそが強い」「一部の系統だけ壊死が激しい」といった事象を、単なる運不運で片付けずに記録し、次作で品種・苗ロット・発生環境と突き合わせる動機になります。

参考:発病の3条件(病原・植物・環境)の考え方(病害の発生と防除の基本)
https://gifu-agri.com/wp/wp-content/uploads/2023/10/0c92ef074fe54f7fd67df0d0d34ee0d7.pdf
参考:カルシウム欠乏で出るスポット状ネクロシスの症状・診断・対策(生理障害としての壊死の見分け)
https://www.takii.co.jp/tsk/bugs/aca/seiri/karusiumu_ketsubou/
参考:キクのえそ病・茎えそ病(TSWV/CSNV)症状、媒介(アザミウマ)など(ウイルス性ネクロシスの典型例)
https://www.pref.oita.jp/uploaded/life/2221427_4588656_misc.pdf




永い後日談のネクロニカ