ネクロシスは、植物の細胞が局所的に死んで褐変~黒変し、乾いて紙のようになる「壊死(えそ)」として見えます。
重要なのは「ネクロシス=特定の病名」ではなく、ウイルス病・菌類病・細菌病・生理障害・薬害など複数の原因が同じ“見た目(壊死)”を作る点です。
現場で役立つ観察ポイントを、言葉に落としてメモできる形にしておきます。
これらは「病害か生理障害か」を切るための最初の材料になります。
参考)https://gifu-agri.com/wp/wp-content/uploads/2023/10/0c92ef074fe54f7fd67df0d0d34ee0d7.pdf
また、似た言葉に注意です。
病害の基本は「病原がいる」「感受性のある植物がある」「発病に好適な環境」の3条件が重なると発生する、という考え方です。
この“3条件”を頭に置くと、ネクロシスが出た時に「薬剤散布だけ」へ短絡しにくくなり、換気・排水・潅水設計などの手当ても同時に進められます。
一方で、ネクロシスは病原体だけが原因ではありません。代表例が栄養障害です。
参考)https://www.takii.co.jp/tsk/bugs/aca/seiri/karusiumu_ketsubou/
参考)農業技術事典NAROPEDIA
さらに薬害も、ネクロシス様の症状を作ります。葉緑素が抜けるクロロシスだけでなく、細胞が破壊されて変形・ネクロシスが出る研究報告に触れた説明もあります。
薬剤や濃度、散布時の高温・強日射、混用などの条件で“病気そっくり”の壊死が出ることがあるため、発生直前の作業履歴は必ず残してください。
ウイルス性のえそ(ネクロシス)は、病徴が似ていて見た目だけでの断定が難しいケースが現場で起きます。
例えばキクでは、えそ病はトマト黄化えそウイルス(TSWV)、茎えそ病はキク茎えそウイルス(CSNV)で起こり、葉の退緑斑や褐色斑点、茎のえそ状斑などが説明されています。
しかも、CSNVによる病徴がTSWVによるキクえそ病に酷似する、と明記した資料もあり、「症状が似る」こと自体が重要な注意点です。
このため、被害が大きい・再発する・苗由来の可能性がある場合は、検定で確定させる価値が高いです。
参考)https://hokuriku-byochu.sakura.ne.jp/apph/files/articles/37/372730.pdf
診断の“現場チェック”としては、次をセットで行うと精度が上がります。
診断の目的は「原因名を当てる」だけでなく、「次の一手(止血策)を決める」ことです。
病害の場合、基本は“発病の3条件”のうち、現場で動かせる「環境」と「伝染経路」を優先して潰すのが現実的です。
栽培者がその日のうちに実行しやすい初動を、優先順位で並べます。
ここで意外に効くのが「対策の順番」です。病害を疑うとすぐ薬剤に寄りがちですが、環境条件(特に湿度・乾燥)を直す前に散布を重ねると、薬害リスクやコストだけが増えることがあります。
また、ウイルス性のえそが疑われる場合は、媒介昆虫対策(例:アザミウマ類)を含めた防除設計が必要になる、という整理がキク病害の資料に示されています。
参考)https://www.pref.oita.jp/uploaded/life/2221427_4588656_misc.pdf
検索上位の解説は「病原の種類」や「欠乏症」に寄りがちですが、現場で“なぜ壊死が急に広がるのか”を理解するには、病原が作る物質や植物側の反応もヒントになります。
農研機構の資料では、Alternaria属に関連して「宿主非特異的毒素(non-selective toxin / non-specific toxin)」という概念が述べられており、病原が作る毒素が幅広い植物に作用しうる、という見方ができます。
つまり、ネクロシスは「菌が増えた結果の腐れ」だけでなく、“毒素で細胞が先にやられる”ような形で目に見える場合がある、という理解が診断の幅を広げます。
さらに、学術誌の要旨レベルでも、炭疽病菌の変異体が壊死斑を形成するなど、病原側の性質の違いが壊死の出方に影響しうることが示されています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjphytopath/87/3/87_150/_pdf/-char/ja
この視点を現場に落とすと、同じ作物・同じ圃場でも「ある年だけ極端にえそが強い」「一部の系統だけ壊死が激しい」といった事象を、単なる運不運で片付けずに記録し、次作で品種・苗ロット・発生環境と突き合わせる動機になります。
参考:発病の3条件(病原・植物・環境)の考え方(病害の発生と防除の基本)
https://gifu-agri.com/wp/wp-content/uploads/2023/10/0c92ef074fe54f7fd67df0d0d34ee0d7.pdf
参考:カルシウム欠乏で出るスポット状ネクロシスの症状・診断・対策(生理障害としての壊死の見分け)
https://www.takii.co.jp/tsk/bugs/aca/seiri/karusiumu_ketsubou/
参考:キクのえそ病・茎えそ病(TSWV/CSNV)症状、媒介(アザミウマ)など(ウイルス性ネクロシスの典型例)
https://www.pref.oita.jp/uploaded/life/2221427_4588656_misc.pdf