水菜再生(リボベジ)は「どこを残すか」で結果が変わります。根元は短すぎると再生の起点が減り、長すぎると水に浸かる面積が増えて腐敗しやすくなるため、まずは根元から3~4cm程度を残してカットする設計が扱いやすいです。
流通品の水菜は水耕由来のものも多く、根部が比較的きれいで再生に入りやすい一方、切り口に付いた汚れや土は初期の濁り・腐敗の誘因になるので、根元に付着物があれば洗い流してからスタートします。
再生開始直後にやりがちな失敗が「水にどっぷり沈める」運用です。根元が水に浸かる程度の水位でセットし、発根してきたら水位を下げて根の一部が水に触れる状態へ移行させると、根の酸欠と腐敗を避けやすくなります。
参考)https://www.bioinformation.net/019/97320630019925.pdf
また、明るさは必要ですが、立ち上げ初期は直射日光で水温が上がりやすく、濁りが加速しやすいので「直射は避けた明るい場所」という置き場が現場の事故率を下げます。
水菜再生を水耕栽培で安定させる鍵は、実は肥料以前に「水の鮮度」と「藻対策」です。水は放置すると濁りやすく、特に気温が高い時期は変質が早いので、基本は3日に1度は交換し、濁りが出たら前倒しで交換します。
交換時に容器を洗う運用を入れると、ぬめり由来の微生物増殖を抑えられ、再生の歩留まりが上がります。
藻は光が当たるほど出やすく、藻が増えると培養液の状態が崩れ、根の環境が悪化します。ペットボトル栽培のような透明容器は、アルミホイル等で遮光すると藻の発生を抑えやすく、根域環境も安定しやすいです。
さらに徒長(ひょろ長くなる)も失敗として多く、発芽後や再生で葉が動き出したら、日当たりの良い窓辺などで管理するのが基本になります。
実務で役立つ小技として、栽培を「観察しやすい」形に固定することも重要です。容器内の水位目盛り(油性ペン)を付け、交換日をテープに書いて貼るだけで、担当者が変わっても管理がブレにくくなります(現場の再現性は“手順の見える化”で上がります)。
水耕栽培は土から栄養を取れないため、基本的に肥料が必要です。
ただし水菜再生(リボベジ)では、元株に蓄えがあるので水だけでも一時的に伸びますが、水だけ運用は収穫が1回で終わりやすく、肥料を与えると複数回収穫が狙えます。
重要なのは「最初から濃くしない」ことです。小さい段階は規定より薄め(さらに半分程度)から始めるとリスクが下がり、根が十分に出てから段階的に上げる方が安定します。
培養液(肥料を入れた水)は3日1度は交換する、というルールを肥料運用とセットにすると、濃度の暴走や根傷みを抑えやすいです。
水耕栽培用肥料を選ぶ理由も押さえておくと、指導・共有が楽になります。水耕用肥料は一般肥料と組成が異なることがあり、微量要素なども含めて根が直接吸える形を前提に設計されているため、「水耕は水耕用」という線引きを現場標準にすると事故が減ります。
農業従事者の現場で水菜の再生・作付けを語るなら、立枯れ症の理解は避けられません。ミズナ立枯れ症は夏季に多発生しやすく、主な原因は萎凋病およびリゾクトニア病である、と整理されています。
さらに、立枯れ症は6月頃から増加し10月頃まで多発生になりやすい、という季節性が示されています。
圃場で「短期間で回す」必要がある場合、盛夏期に約10日間の短期太陽熱土壌消毒(施肥・耕起→灌水→ビニル被覆→ハウス密閉)を行う体系が提案されています。
参考)https://www.frontiersin.org/journals/horticulture/articles/10.3389/fhort.2024.1418447/pdf
この短期太陽熱土壌消毒は、消毒後1作目・2作目の発生株率を低下させる効果が示され、さらに効果を持続させるために消毒後1作目を不耕起で栽培すると、耕起する場合より2作目での発生株率が低い傾向が示されています。
意外に見落とされがちなのが「ハウス端部」です。消毒後でも端部(約20cm)では菌が検出される場合があり、消毒後であってもハウス端部まで栽培しないことが望ましい、という留意点が明記されています。
また、立枯れ症の発生圃場ではPythium sp.による立枯病が出ることもあり、短期太陽熱土壌消毒はそれにも高い防除効果が期待できる、とされています。
ここで水菜再生(家庭の水栽培)と現場(圃場)の話をつなぐと、「根の環境を悪化させる要因を減らす」という本質は同じです。家庭では水位・濁り・高温が根域を悪化させ、現場では高温期の土壌菌密度と過湿が根域を悪化させるため、対策も“根の環境設計”として統一して教えると現場教育が早くなります。
検索上位の解説は「切る→水に挿す→伸びる」に寄りがちですが、再生の再現性を上げる独自視点は“根に酸素が届く設計”です。水位を根元が浸かる程度に抑え、発根後は水位を下げる、という基本は「根の呼吸」を確保する方向の操作で、結果として腐敗を減らしやすいです。
同様に遮光は藻対策として語られがちですが、藻が増えるほど水が汚れやすくなり交換頻度が上がり、作業が増えて管理が乱れます。アルミホイル等で遮光して藻を抑えると、管理が単純化し、結果として収穫までの運用が安定します。
収穫回数を伸ばすなら「切り戻し位置」も実務論点です。草丈が15cm以上になったら収穫し、株元から2~3cm残して収穫すれば再度収穫が楽しめる、という考え方は水耕側でも有効です。
ただし、収穫回数を狙うほど根域への負荷(濁り、温度、肥料濃度のブレ)が効いてくるため、培養液の交換サイクル(3日目安)と薄めスタートの肥料設計を“同時に守る”ことが、現場では一番の近道になります。
参考:水耕栽培とリボベジ(水菜再生)の具体手順(根元3~4cm、発根後の水位調整、培養液交換、遮光による藻対策、収穫の切り戻し)がまとまっている
https://www.noukaweb.com/mizuna-hydroponics/
参考:ミズナ立枯れ症の原因(萎凋病・リゾクトニア病)と、約10日間の短期太陽熱土壌消毒+不耕起栽培の防除体系、端部を栽培しない留意点が整理されている(茨城県の成果資料)
https://www.pref.ibaraki.jp/nourinsuisan/enken/seika/yasai/yosai/documents/18mizuna1.pdf