ma包装のガス透過性が青果鮮度を左右する仕組み

MA包装のガス透過性とは何か、なぜフィルム選びで青果物の鮮度が大きく変わるのか気になりませんか?品目ごとの適切な酸素透過度や温度との関係、失敗しない選び方を解説します。

ma包装のガス透過性と青果物鮮度保持の仕組み

同じMA包装フィルムでも、温度が10℃上がるだけで野菜の呼吸速度が最大2倍になり、鮮度保持効果がほぼ消えます。


この記事でわかること
🌿
MA包装のガス透過性の基本

なぜフィルムのガス透過性が鮮度保持に直結するのか、仕組みをわかりやすく解説します。

📊
品目別・適正酸素透過度の目安

ブロッコリー、ほうれん草、レタスなど、品目ごとに必要な酸素透過度の違いを具体的に紹介します。

⚠️
温度変動とガス透過性の落とし穴

温度上昇がMA包装の効果を大幅に下げるメカニズムと、現場での対策ポイントを解説します。


MA包装とガス透過性:農業従事者が知るべき基本の仕組み


MA包装(Modified Atmosphere Packaging)とは、プラスチックフィルムのガス透過性を利用して、袋の内部を「低酸素・高二酸化炭素」の状態に保ち、青果物の鮮度を延ばす包装技術のことです。


「鮮度保持」と聞くと冷蔵を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、MA包装はガス環境のコントロールによって、冷蔵と組み合わせることで非常に高い効果を発揮します。


仕組みはシンプルです。収穫後の野菜や果物は、袋の中でも呼吸を続けています。その呼吸によって袋内の酸素が消費され、二酸化炭素が増えていきます。この「低酸素・高二酸化炭素」環境こそが、呼吸をゆっくりにして熟成・腐敗を遅らせるポイントです。


ここで重要になるのが、フィルムのガス透過性です。


透過性が高すぎると、外気の酸素がどんどん袋内に入ってきてしまい、低酸素状態を維持できません。逆に透過性が低すぎると、酸素濃度が極端に下がり「嫌気呼吸」が始まります。嫌気呼吸では、エタノールアセトアルデヒドが発生し、野菜に異臭が発生したり、組織が褐変したりする障害が起きます。


つまり、フィルムのガス透過性は「ちょうどよい」範囲に設計されていることが大切なのです。


一般的にMA包装で求められる袋内酸素濃度は、1〜3%程度が最低ラインとされています。これは大気中の酸素濃度(約21%)と比べると、はがきの横幅(約10cm)と爪楊枝の直径(約2mm)くらいの差ともいえる、非常に精密な管理です。


参考:MA包装とガス移動の基礎理論について詳しく解説されています。


日本包装学会誌「MA包装の技術基礎と最近の進展」椎名武夫(千葉大学大学院)


MA包装フィルムのガス透過性と品目別・適正酸素透過度の目安

農業の現場でよく起きる失敗のひとつに、「MA包装フィルムを使ったのに効果がなかった」というものがあります。原因の多くは、品目に合っていないフィルムを使っていることです。


青果物によって呼吸速度は大きく異なります。これは品目ごとに必要な酸素透過度が違うことを意味します。


たとえば、ブロッコリーは非常に呼吸が活発な品目です。5℃における呼吸量は、同じ重量のたまねぎの約28倍にもなります(石谷,1992データより)。このため、ブロッコリーには酸素透過度の高いフィルムが必要です。一方で、たまねぎや根菜類には透過度の低いフィルムでも対応できます。


カットレタスやカット野菜は特に注意が必要です。切断面からの呼吸が激しく、酸素透過度が3,000〜10,000 cc/m²/day(24時間・1気圧あたり)程度のフィルムが推奨されます。これは業務用の食品包装フィルムの中でもかなり透過性が高い部類に入ります。


品目別の目安をまとめると、以下の通りです。


| 品目 | 呼吸活性 | 必要な酸素透過度 |
|---|---|---|
| ブロッコリー | 非常に高い | 高透過フィルム推奨 |
| ほうれん草 | 高い | やや高透過フィルム |
| いちご | 中〜高 | 中程度の透過フィルム |
| カットレタス | 極めて高い | 3,000〜10,000 cc/m²/day |
| たまねぎ | 低い | 低透過フィルムで対応可 |


フィルムの選定を誤った場合のリスクは2方向あります。透過度が「多すぎる」場合は低酸素環境を維持できず、鮮度保持効果がほぼ得られません。透過度が「少なすぎる」場合は、嫌気呼吸による異臭や褐変が発生します。これは想定外のクレームにつながりかねないリスクです。


フィルム選定では品目ごとの呼吸特性を確認することが原則です。


参考:青果物の呼吸速度と包装設計の関係について詳しく記載されています。


農畜産業振興機構「食品ロスの削減に貢献する青果物包装」住友ベークライト株式会社・大槻みどり


ガス透過性に大きく影響する「温度変動」の落とし穴

MA包装を正しいフィルムで設計しても、温度管理が不適切だと効果が大幅に落ちます。これを知らない農業従事者が多いのが現状です。


温度が呼吸速度に及ぼす影響は非常に大きく、「温度係数(Q10)」という指標があります。多くの青果物では、温度が10℃上昇すると呼吸速度が約2倍になります。Q10の値は一般に2〜4の範囲にあり、30℃では0℃と比べて8〜64倍もの呼吸速度になる品目も存在します。


実際の数字でイメージしてみましょう。えだまめを例にとると、5℃での呼吸量は42 mg-CO₂/kg/hrですが、25℃では223 mg-CO₂/kg/hrと、5倍以上になります(石谷,1992データより)。これはMA包装で設計した低酸素環境が、温度の変化によって一気に崩れることを意味しています。


では、フィルムのガス透過性自体も温度で変化するのでしょうか。変わります。


プラスチックフィルムのガス透過係数は、温度に依存して変化します(Arrhenius式に従う)。問題なのは、温度が上がると「青果物の呼吸速度の増加率」と「フィルムの透過性の増加率」がほぼ一致しないケースがある点です。特に微細孔フィルムと均質フィルムではその温度依存性の挙動が異なります。つまり、5℃向けに設計したMA包装が、輸送中に15℃になっただけで、袋内のガス組成が大きく変動する可能性があるのです。


厳しいところですね。


実際の農産物輸出の現場でも、「保冷剤を使用しなかったため、輸送中に温度が上昇し、過熟や品質劣化が発生した」という失敗事例が農林水産省の手引きにも記録されています。こうした失敗を防ぐには、MA包装のフィルム選定と並行して、コールドチェーン(低温流通体制)の徹底が不可欠です。予冷後出荷が基本です。


参考:青果物輸出における腐敗・品質劣化防止の具体的な失敗事例と対策が解説されています。


農林水産省「青果物の輸出における腐敗・品質劣化防止の手引き」


MA包装のガス透過性:フィルム種類別の特性と選び方

MA包装に使用されるフィルムは、主に「均質フィルム」と「微細孔フィルム」の2種類に大別されます。それぞれ構造や特性が異なるため、使い分けが鮮度保持の精度を左右します。


🌱 均質フィルム(素材のガス透過性を利用)


フィルム素材そのものが持つガス透過性を利用するタイプです。代表的な素材としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、酢酸ビニル含有量の多いエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)などがあります。均質フィルムはガスの通過が「フィルム内の分子拡散」によって行われるため、CO₂透過性と酸素(O₂)透過性の比率(選択性)が素材によって大きく異なります。


つまり、酸素はある程度通すがCO₂をより通しやすい素材を選ぶことで、袋内を「低酸素・高CO₂」に近い状態に保ちやすくなります。これが実は鮮度保持設計の肝です。


🔬 微細孔フィルム(孔の大きさ・数でコントロール)


20〜100µmの目に見えない穴(孔)を高精度で加工したフィルムです。穴が小さすぎるため肉眼では確認できませんが、ガスは相互拡散によってこの穴を通ります。孔の径や数を変えることで酸素透過度を精密に設定できるのが最大のメリットです。


微細孔フィルムは特にカット野菜や呼吸速度が非常に大きい品目に向いています。均質フィルムでは対応できないような高い透過度が必要な場合に使われます。住友ベークライトの「P-プラス」もこの穿孔タイプのMA包装フィルムの代表例です。


選び方のポイントを整理すると以下の通りです。


| 種類 | 特徴 | 向いている品目 |
|---|---|---|
| 均質フィルム(LDPE等) | コスト安・透過性調整は厚みで対応 | たまねぎ、根菜、岩津ネギなど |
| 均質フィルム(EVA等) | CO₂選択透過性が高い | 果実類など |
| 微細孔フィルム | 高透過・精密設計可能 | カット野菜、ブロッコリー等 |


なお、LDPEフィルムは安価で比較的ガス通気性を持つため、厚さを変えることで袋内のガス組成を調整でき、岩津ネギのようなネギ類のMA包装貯蔵にも利用されています(兵庫県農林水産技術総合センター研究報告)。コストを抑えながら効果を出したい場合、まずLDPEフィルムの厚みの調整から試してみる方法があります。


参考:品目ごとのMA包装フィルム設計と実践事例が詳しく記されています。


兵庫県農林水産技術総合センター「MA包装貯蔵が岩津ネギの鮮度に及ぼす影響」


農業従事者が見落としがちなMA包装ガス透過性の「独自視点」:エチレンガスとの複合管理

MA包装のガス透過性の話をする際、酸素と二酸化炭素ばかりが注目されます。しかし、農業現場で意外に重要なのが「エチレンガス」の管理との組み合わせです。


エチレンは植物の成熟ホルモンであり、わずか1ppm(100万分の1)でも青果物の軟化・黄変・果皮障害などのマイナス現象を引き起こします。1ppmとは、25mプールの水(約500トン)に対してティースプーン1杯分(約5g)の割合です。非常に微量でも影響が出ることがわかります。


MA包装によって袋内を低酸素状態に保つことはエチレン生成を一定程度抑制しますが、完全に止めることはできません。特に「クライマクテリック型」の青果物(りんごメロン、バナナなど)は収穫後もエチレンを大量に生成し、さらにエチレンへの感受性も高く、相乗的に老化が進みます。


これを応用した鮮度保持策として、1-MCP(1-メチルシクロプロペン)というエチレン阻害剤との組み合わせがあります。1-MCPは日本ではりんご、なし、を対象に農薬登録されており、0.5〜1ppmの低濃度で12〜24時間処理するだけでエチレンの作用を大幅に阻害できます。


つまり「MA包装でガス環境を整える+1-MCP処理でエチレンをブロックする」という組み合わせが、特に高付加価値果実の輸出に有効な戦略になりえます。実際に青森産りんごでは、2012年産から本格利用が開始され、長期貯蔵による有利販売に活用されています。


一方、「ノンクライマクテリック型」の青果物(いちご、ほうれん草、レタスなど)はエチレン生成量が少なく、代わりにアセトアルデヒドの急増が劣化の指標になります。この場合、MA包装内のガス濃度をリアルタイムで確認できるガス測定装置を使った品質評価が有効です。


どの品目を扱っているかによって、MA包装×ガス透過性の管理戦略は変わります。これが原則です。


参考:エチレンガスとMA包装の関係、1-MCPの利用動向について詳しく解説されています。


農畜産業振興機構「野菜の品質保持技術について」(椎名武夫・千葉大学)




シンセイ(Shinsei) 農用不織布 らくらくガードスーパー 180cm×10m UV剤入り