コスメティクス植物原料と栽培抽出設計

植物を「化粧品原料」にするには、栽培・収穫・乾燥・抽出・表示名称まで一気通貫で考える必要があります。農業従事者が押さえるべき品質の勘所と、付加価値化の具体策を整理するとどうなるでしょうか?

コスメティクス 植物 原料

この記事で分かること
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植物由来原料の全体像

油脂・エキス・セルロース・加水分解タンパクなど、化粧品に使われる「植物由来原料」の分類と注意点を整理します。

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栽培から抽出までの品質設計

収穫時刻、乾燥条件、溶媒、抽出法で成分が変わる前提で、農業側が管理できるポイントを深掘りします。

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表示名称と「伝え方」

日本の成分表示名称(JSCI)での考え方や、原料の由来表示で誤解を生まないための実務視点をまとめます。

コスメティクス植物原料の植物由来原料分類(油脂・エキス・セルロース・加水分解物)


化粧品でいう「植物由来原料」は、単に“植物から取れた何か”ではなく、いくつかの系統に分かれます。代表例として、圧搾などで得られる油脂(やし油、ひまし油、オリーブ油など)、根や葉などから水・エタノール等で抽出するエキス、セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース等)、さらに小麦や大豆などのタンパク質を酸・アルカリ・酵素で加水分解したオリゴペプチドが挙げられます。これらは同じ「植物由来」でも製造工程が大きく違い、求められる管理指標も変わります。


農業従事者の立場から重要なのは、「どの系統の原料を狙うか」で畑の作り方が変わる点です。たとえば油脂系なら、収量(油分)と酸化安定性のために脂肪酸組成を意識した品種・収穫熟度が焦点になりやすい一方、エキス系なら、香気・色・苦味など“副成分”が処方に影響し、同じ植物でも部位(葉・根・樹皮)や採取地で差が出ます。さらにエキスは、採取地・抽出溶媒・精製法で成分構成が異なるため、用途に応じた注意が必要だと専門用語集でも明記されています。


ここを曖昧にしたまま「植物を化粧品原料にしたい」と進めると、買い手が想定する“原料像”とズレます。まずは、作りたいのが「圧搾油」なのか「抽出エキス」なのか「多糖系増粘素材」なのかを決め、必要な品質項目(例えば油脂なら過酸化物価、エキスなら固形分や溶媒組成・微生物など)を逆算するのが現実的です。


参考リンク(植物由来原料の分類:油脂・タンパク質・繊維質・エキス、抽出溶媒で成分が変わる注意点)
https://www.sccj-ifscc.com/library/glossary_detail/793

コスメティクス植物原料の栽培と収穫(手摘み・朝摘み・雨後対応)

植物原料の品質は、加工工場に運ばれる前の「収穫のしかた」でかなり決まります。たとえば、オーガニック原料の事例として“朝摘み”を重視し、早朝に有効成分濃度が高くなりやすいという説明とともに、ハンドピック(手摘み)で収穫する運用が紹介されています。別のメーカー事例でも、雨の後はハーブの水滴を落としてから収穫するなど、物理的な水分管理を収穫現場で行う話が出ています。


農業側で再現性を上げるなら、まず「収穫ルール」を言語化します。以下は、化粧品用途で特に事故が起きやすいポイントです(加工側の都合も含めて、取引開始前にすり合わせると後が楽です)。


  • 収穫時刻:朝・昼・夕で香気や苦味、見た目(褐変)リスクが変わる前提で統一する。
  • 雨後の扱い:表面水分が多いと乾燥負荷が上がり、微生物・褐変・カビのリスクも増えるため、収穫可否の基準を決める。
  • 部位の混入:葉だけのはずが茎が混じる、根に土が付くなどは、抽出液の色・におい・沈殿の原因になる。

また、化粧品の買い手は「畑のストーリー」だけでなく「ロット差の小ささ」を見ます。品種、栽培記録(施肥防除・収穫日)、収穫後の温度管理、乾燥開始までの時間を“毎回同じ”に近づけるほど、原料としての信用が積み上がります。


参考リンク(朝摘み・手摘み収穫の考え方と理由)
https://ilcsi-beauty.com/organic

コスメティクス植物原料の乾燥と抽出(溶媒・粉砕・抽出設計)

植物を「エキス原料」にする場合、乾燥→裁断/粉砕→抽出という流れが典型です。OEMの説明でも、手作業収穫の後に乾燥・裁断を行い、溶媒に浸して抽出する工程が示されています。ここでの勘所は、乾燥が“保存のため”だけでなく“抽出のため”でもある点です。


乾燥条件は、香気成分の飛び、色の変化、酵素反応、微生物増殖のしやすさに直結します。さらに、抽出溶媒(水、エタノール等)や精製方法でエキスの成分構成が変わるため、同じ植物名でも「別物」になり得ることが、専門用語集で注意点として述べられています。つまり、買い手が欲しいのは“植物名”ではなく、“特定の溶媒・工程で得られた特性”です。


農業従事者が加工側と話すときに、技術者扱いされるための質問例を挙げます(このまま商談メモに使えます)。


  • 抽出溶媒は水系か、エタノール系か(溶媒で溶ける成分が変わる)。
  • 乾燥は熱風・陰干し・低温など、どの温度域を想定しているか(色・香りが変わる)。
  • 目標は“香り”なのか“ポリフェノール”なのか“多糖”なのか(工程が変わる)。
  • 粉砕粒度の目安はあるか(抽出効率と濾過性のトレードオフがある)。

意外に見落とされがちなのが、「植物を丸ごと乾燥」より「部位別に前処理」したほうが、抽出液の濁りや沈殿が減るケースがある点です。葉・花・茎・根は細胞組成が違い、粉砕すると繊維やデンプンの出方も変わるため、目的成分の抽出効率と“扱いやすさ(濾過・充填)”を両立しやすくなります。


参考リンク(収穫→乾燥・裁断→抽出の工程例)
https://www.herblabo.jp/oem/

コスメティクス植物原料の表示名称(JSCI・INCI・ヤシ/ココ注意)

どれだけ良い植物原料を作っても、最終製品では「成分表示名称」の制約を受けます。日本では、化粧品の成分表示名称リストが公開されており、表示名称・INCI名・成分番号などの一部で検索できる仕組みが案内されています。つまり、農業側が“独自の呼び方”で原料を売ろうとしても、最終製品のラベルでは別表現になる可能性があるため、早い段階で「表示上の名前」を確認するのが安全です。


さらに実務で重要な注意点として、「ヤシ」「ヤシ油」「コカ」「ココ」などの文字を含む表示名称が、歴史的にココヤシ由来だったものが近年はアブラヤシ由来も包含する扱いになっている、という注記があります。これは、サプライチェーンの現実(原料調達や製造)によって、表示名称が“植物種を一意に指さない”ことがある例です。農産物として「ココヤシ由来」を強調したい場合でも、表示名称の枠組みでは伝え方に工夫が必要になります。


農業従事者がここでできる戦略は、原料名を“表示名称だけ”に寄せすぎず、BtoB資料側で「植物種・部位・栽培地・栽培法・乾燥条件・抽出溶媒」などの仕様書を整備することです。買い手は表示だけでなく、品質保証・トレーサビリティで差別化できる原料を求めます。


参考リンク(化粧品の成分表示名称リストの検索方法、ヤシ/ココ系の注意点)
https://www.jcia.org/user/business/ingredients/namelist

コスメティクス植物原料の独自視点:ロット差を“設計値”にする原料規格(畑の管理項目→受入規格)

検索上位の多くは「植物エキスが良い」「オーガニックが安心」といった一般論に寄りがちですが、農業側が“商材”として一段上に行くには、ロット差を減らすだけでなく、ロット差を「設計値」として扱う発想が有効です。エキスは採取地や抽出溶媒、精製法で成分構成が変わると注意されている通り、現実にはブレが出ます。ならば、ブレをゼロにするのではなく「どこまでのブレなら同等品か」を合意し、規格として先に固定します。


現場で作りやすい“原料規格”の例を、農業で管理できる項目に寄せて示します(取引先に合わせて調整してください)。


  • 原植物情報:学名、使用部位、栽培地、栽培期間、収穫日。
  • 収穫条件:収穫時刻帯(例:午前)、雨後ルール(例:降雨後24時間は収穫しない等)。
  • 乾燥条件:乾燥開始までの時間、乾燥温度帯、最終含水率の目標。
  • 外観・異物:土砂、茎混入率などの簡易基準(写真見本が効く)。
  • 加工前の衛生:保管温度、袋材、輸送時間の上限。

ここに、加工側(抽出・充填側)が欲しい指標を少数だけ追加すると、取引が安定します。たとえば「粉砕後の粒度レンジ」「抽出後の濁度」「微生物(一般生菌数)」「溶媒比率」などです。農業側が最初から全部やろうとすると負担が重いので、“畑で決まる項目”と“工場で決める項目”を分け、責任分界を明確にするのが継続のコツです。


また、独自性を作るなら「同じ植物」でも、用途別に“収穫・乾燥の型”を分けてしまう方法があります。例えば、香り狙いロットは低温・短時間寄り、ポリフェノール狙いロットは褐変を避ける前処理を優先、というように、最初から二系統の規格を持つと、買い手が処方設計しやすくなり、単価交渉もしやすくなります。




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