柿の消毒で「スミチオン」と言うと、現場では幅広い害虫対策の“基幹剤”のように扱われがちですが、前提は必ず「かき」に対する登録内容です。住化スミチオン水和剤40(MEP水和剤)の登録では、かきの適用害虫としてカキノヘタムシガ、フジコナカイガラムシ、オオワタコナカイガラムシ(若齢幼虫)、カメムシ類、イラガ類、ドウガネブイブイ成虫が並び、いずれも「収穫30日前まで」「本剤3回以内」などの枠が設定されています。
ここで重要なのは「柿の消毒=何でも一律散布」ではなく、害虫の発生ステージに合わせて“散布の意味”を作ることです。たとえばカキノヘタムシガは、成虫発生~産卵~幼虫食入という流れの中で、タイミングがずれると「散布したのにヘタ落ち・虫食いが止まらない」という結果になりやすい害虫です。長野県の防除基準でも、カキノヘタムシガ第1世代成虫の発生時期に言及し、時期を外さない考え方が示されています。
一方でカメムシ類のように“飛来量が年で振れる”相手は、園地の周辺環境(山林・雑木・防風林)によって防除の組み立てが変わります。登録上は「かき・カメムシ類」で希釈倍率や回数が決められているため、飛来が見えた時点で、登録の枠内で追加散布をどう組むかを、最初から作業計画に織り込むのが実務的です。
参考)https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmicb.2017.02397/pdf
また、同じ「コナカイガラムシ」でも、効きやすいのは“若齢幼虫が動いている時期”で、成虫・卵の状態では手応えが落ちがちです。登録表に「オオワタコナカイガラムシ若齢幼虫」と明記されているのは、まさにこの生態に合わせた適用の考え方で、ここを外すと「消毒したのにベタつき(すす・煤病誘発)だけ残った」という失敗につながります。
希釈倍率は「濃くすれば効く」という単純な話ではなく、登録された範囲の中で、対象害虫・樹勢・散布の届き方に合わせて決めます。住化スミチオン水和剤40の登録では、かきに対して、カキノヘタムシガとフジコナカイガラムシが800~1200倍、カメムシ類・イラガ類・ドウガネブイブイ成虫が800~1000倍、使用液量が200~700L/10a、使用時期が収穫30日前まで、本剤の使用回数が3回以内と整理されています。
この「200~700L/10a」が、実は現場で効き目を分けるポイントです。散布水量が少ないと、倍率が適正でも葉裏や樹冠内部に届かず、残った個体が次の被害を作ります。逆に水量を増やして“濡れ”を作ると、同じ倍率でも結果が変わることがあります(ただしドリフトや作業時間は増えるので、圃場条件に応じた折り合いが必要です)。
使用回数についても「スミチオンだけ3回以内」と覚えるのでは不十分で、登録表には「MEPを含む農薬の総使用回数」も併記されています。つまり、同じ有効成分(MEP)を含む別剤を組み合わせれば、総回数の枠に影響するため、ローテーション設計で見落とすと“回数超過”になり得ます。
現場でよくあるのが、春~夏に複数の害虫が重なり、つい「困ったらスミチオン」で寄せてしまうケースです。結果として、必要なタイミング(例えばヘタムシガ適期)では回数が残っていない、という事故が起きます。防除暦を作る段階で、スミチオンを“いつのカードとして残すか”を決めておくと、後半の判断が軽くなります。
スミチオンは「使える」ことと「いつでも安全」は別で、品種・生育ステージでリスクが変わります。長野県の「柿・平核無病害虫防除基準」では、スミチオン水和剤40について「平核無の着色期以降の使用はしない。(薬害を生じることがある)」と明記されています。
この注意書きが意味するのは、登録上の“収穫前日数”だけ守っても、品質面(外観・着色・果面障害)で問題が出る可能性があるということです。特に市場出荷の柿は、食味よりも先に外観で選別される場面が多く、軽い薬害でも等級に直結します。防除の目的が「被害を止める」だけでなく「売れる果実を残す」ことである以上、着色期以降は別の選択肢(別系統の剤、物理的対策、園地環境対策)に切り替える判断が必要になります。
さらに“薬害が出やすい条件”としては、一般に高温期の強い日射、散布直後の乾きムラ、濃度ミス、展着剤の選び方、樹勢低下などが絡みます。県の基準が注意喚起している以上、「自分の園地は今まで大丈夫だったから」と固定化せず、年の気象(猛暑・少雨)を見て安全側に寄せる方が事故を減らせます。
実務の小技としては、同じ日に別の“果面に影響しやすい資材”を重ねない、散布は気温が上がり切る前の時間帯を選ぶ、調製時に計量と攪拌を丁寧に行う、といった基本の徹底が結局いちばん効きます。特に水和剤はダマが残ると局所的な濃度ムラを生みやすいので、「散布ムラ=薬害ムラ」になる点は軽視できません。
登録表にある「200~700L/10a」という幅は、言い換えると“園地によって必要な液量が違う”という前提です。樹齢が若い・樹冠が小さい園で700L/10aを無理に打つと、垂れ落ち(流亡)で実質的な有効付着が増えず、周辺への飛散や地表流出リスクだけが上がることがあります。逆に成木で樹冠が茂る園で200L/10aに寄せすぎると、内側が乾いたままになり、結果として効き残りが出やすいです。
ドリフト対策は「近隣に迷惑をかけない」だけでなく、自分の園の事故防止でもあります。なぜならドリフトが増える条件は、同時に“付着効率が落ちる条件”だからです(風がある、ノズル圧が高すぎる、霧が細かすぎる、樹冠外に噴いている)。まずは、ノズルの種類と風量(送風式の場合)を“樹冠の中へ押し込む”方向に合わせ、外側に霧を捨てないセッティングを作るのが効果的です。
また、スミチオンのような殺虫剤は「当たった場所に効く」性格が強く、散布設計で差が出ます。葉裏に潜る害虫や、果実の陰に隠れる個体が多い時期は、走行速度を落とし、片側散布で終わらせず両側から当てるなど、付着を優先した作業手順が結果的に薬量節約につながります。
ここで意外と見落とされるのが「散布水のpH」や「水質」の影響です。登録表自体に水質条件が書かれていない場合でも、現場の水(井戸水・ため池水)には濁りや有機物があり、ノズル詰まりや付着ムラの原因になります。散布が“効かない”と感じた年ほど、薬剤そのものを疑う前に、噴霧の粒径・詰まり・攪拌・水量のログ(いつ、どのノズル、どの圧、どの走行速度)を残すと、翌年の改善が速いです。
検索上位の記事では「倍率・時期・害虫名」までは書かれていても、実際に儲けを左右するのは“再現できる運用”です。そこで独自視点としておすすめなのが、スミチオンを含む殺虫剤散布を「防除暦」ではなく「作業の見える化(記録)」として設計し、翌年の精度を上げる方法です。
記録と言っても難しくする必要はなく、最低限これだけで効果が変わります。登録上の枠(収穫30日前まで・本剤3回以内・液量200~700L/10a・害虫ごとの倍率)に沿って、実際の作業値を“数字で残す”ことがポイントです。
✅現場で効く記録テンプレ(入れ子なし)
この記録が効く理由は、翌年「同じ害虫・同じ時期」でも、樹勢や気象で条件が変わるからです。例えば、長野県資料が注意する「平核無の着色期以降は薬害の恐れ」という情報も、あなたの園地の“いつが着色期に入ったか”を記録していないと、現場では判断がブレます。
さらに、登録表で示されている「MEPを含む農薬の総使用回数」も、現場での混用・代替剤の選択を繰り返すと簡単に見失います。剤ごとに回数だけでなく“有効成分の軸”で管理するためにも、作業記録は「消毒の成否」だけでなく「コンプライアンスの証拠」としても価値があります。
🍀ちょっと意外な実務ヒント
スミチオンが効きにくいと感じた年に、翌年いきなり薬剤を変えるより、まず「散布が届いていない場所」を疑ってみてください。樹冠の外側は綺麗でも、内側の葉裏や果実の陰に“無散布帯”があると、害虫はそこから立ち上がります(薬剤の問題に見えて、実は散布設計の問題というパターンです)。
有用:住化スミチオン水和剤40の「かき」適用害虫、希釈倍数、使用液量、収穫前日数、使用回数(登録情報の根拠)
農薬登録情報提供システム(住化スミチオン水和剤40)
有用:平核無での「着色期以降は使用しない(薬害の恐れ)」など、県の防除基準に基づく注意点
令和5年度 柿・平核無病害虫防除基準(PDF)

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