農業現場での洗浄用途としてダイソーの除光液を使用する場合、最も重要になるのが「成分」の確認です。一般的に100円ショップの売り場には多種多様な除光液が並んでいますが、大きく分けて「アセトン入り」と「ノンアセトン(アセトンフリー)」の2種類が存在します 。
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農具のメンテナンスや強力な汚れ落としを目的にする場合、必ず「アセトン(Acetone)」が主成分として表記されているものを選ばなければなりません。アセトンは有機溶剤の一種であり、樹脂や油脂を強力に溶解する性質を持っています 。
参考)除光液について
参考)https://www.matsukiyococokara-online.com/useful-info/recommend/210
また、ダイソーの商品の中には「保湿成分配合」や「香り付き」のものもありますが、洗浄用として使う場合は余分なオイル成分が含まれていない、シンプルな構成のものが理想的です。オイルが含まれていると、洗浄後にヌルつきが残り、グリップが滑る原因になる可能性があるためです。ただし、入手できない場合は保湿成分入りでも洗浄効果自体(アセトンの溶解力)は期待できます 。
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成分表を確認する際は、裏面の「成分」欄を見てください。一番最初に書かれている成分が最も多く含まれている物質です。「アセトン、水、...」となっていれば、十分な洗浄力が見込めます。逆に「水、エタノール...」などの順序であれば、濃度が低い可能性があるため注意が必要です。
参考リンク:三協化学株式会社 | 除光液の成分とアセトンの特性について
ダイソーのアセトン入り除光液は、農作業で発生する「水洗いでは落ちない汚れ」に対して絶大な効果を発揮します。特に剪定バサミや収穫用ナイフに付着する樹液(ヤニ・シブ)の除去は、アセトンの得意分野です。
樹液、特に松ヤニや果樹の粘着質な液は、時間が経つと酸化して固まり、刃の動きを悪くしたり、切れ味を鈍らせたりします 。これを無理にこすり落とそうとすると刃を傷めますが、アセトンを使えば化学的に溶解させることができます。
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具体的な手順とコツ:
農具全体をドブ漬けするのは危険です(柄のプラスチック部分が溶ける可能性があるため)。コットンやキッチンペーパーにダイソーの除光液をたっぷりと染み込ませ、刃の汚れている部分だけに貼り付けます。
アセトンは非常に揮発性が高いため、すぐに乾いてしまいます。液を含ませたペーパーの上からサランラップなどを巻き付け、1分~5分ほど放置します。これにより、溶剤が固まった樹液の内部まで浸透し、柔らかくします。
ラップを外し、そのままペーパーで汚れを拭き取ります。驚くほど簡単にヤニが剥がれます。その後、必ず乾いた布で水分と薬剤を完全に拭き取り、最後に防錆油(椿油やクレ5-56など)を塗布してください。アセトンは油分を完全に奪うため、そのままにすると錆びる原因になります 。
参考)https://www.monotaro.com/s/c-94629/q-%E3%82%A2%E3%82%BB%E3%83%88%E3%83%B3/
その他の活用シーン:
育苗ポットやプラスチックラベル、ビニールハウスのパイプに書いた品種名やメモを書き直したい時、アセトンを含ませた布で拭くと一瞬で消すことができます。ただし、素材によっては表面が白く濁ることがあるため、目立たない場所で試してから行ってください。
農具の補修などで指に瞬間接着剤が付いてしまった場合や、はみ出した接着剤を取りたい場合、アセトンはシアノアクリレート系の接着剤を溶かすことができます。
小さな金属部品のグリス汚れを落としたい場合、ガラス瓶(ジャムの空き瓶など)に少量の除光液を入れ、金属部品だけを入れて軽く振ると、強力に脱脂洗浄できます。※パッキンなどのゴム製品は入れないでください。
注意点として、アセトンは引火性が強いため、作業中は絶対に火気厳禁です。タバコを吸いながらの作業は厳禁であり、換気の良い場所で行う必要があります 。
参考リンク:iecolle | 松ヤニの落とし方と除光液の活用法
ダイソーのアセトン入り除光液を農業現場で使う際、最も警戒しなければならないのが「プラスチックの溶解(ケミカルクラック)」です。農資材には様々な種類のプラスチックが使われていますが、アセトンに耐えられるものと、溶けてしまうものが混在しています。
アセトンが付着すると、数秒で表面がドロドロに溶けたり、白く変色(白化)したり、あるいは後からボロボロと割れてしまう素材があります 。大切な散布機や器具を壊さないために、素材の判別知識が不可欠です。
参考)https://www.sedeco.co.jp/technology/list/plastics/
アセトンに「弱い」プラスチック(使用厳禁):
アセトンに「強い」プラスチック(使用可能):
参考)樹脂素材耐溶剤性・耐薬品性一覧表
見分け方のポイント:
農資材には必ずリサイクルマークや材質表示(刻印)があります。「PE」「PP」と書かれていれば除光液を使えますが、何も書かれていない硬質プラスチックや、工具の持ち手部分(特にゴムとプラスチックの中間のような素材)には使わないのが無難です。
どうしてもプラスチック部分の汚れを落としたい場合は、必ず目立たない裏側で「パッチテスト」を行ってください。綿棒に少量の除光液をつけ、対象物にちょんと当てて数秒待ちます。指で触ってネチャつきが出たり、綿棒に色が移ったりしたら、すぐに使用を中止し、水拭きしてください。
参考リンク:SEDECO | プラスチック溶着相性・耐溶剤性一覧表
農業従事者がアセトンを入手しようと考えた場合、ダイソー(100円ショップ)で購入するか、ホームセンターの塗料・溶剤売り場で購入するか、迷うことがあります。それぞれのメリットとデメリット、そしてコストパフォーマンスを比較して、用途に合った選び方をしましょう。
ダイソー(除光液)のメリット・デメリット
ホームセンター(純アセトン)のメリット・デメリット
結論としての使い分け:
日常的な「ちょっとしたメンテナンス」や「現場への持ち運び」には、ダイソーのアセトン入り除光液が圧倒的に便利です。容器を買う必要もなく、使い切ったら捨てられる手軽さは農作業の合間に最適です。
一方で、年末の大掃除で大量の支柱やクリップを洗浄したい、あるいはFRP資材の補修を行いたいといった本格的な用途であれば、ホームセンターで純アセトンを購入する方が経済的です。まずはダイソーの除光液で効果を試し、使用頻度が高いようであればホームセンターの大容量品に切り替えるというステップがおすすめです。
アセトン入り除光液を農作業で活用する際、多くの人が見落としがちなのが「皮膚への影響」と「揮発性によるリスク」です。農家の方は普段から土や肥料に触れており、指先が乾燥気味や荒れ気味であることが多いですが、アセトンはその状況を急速に悪化させる可能性があります。
皮膚の「脱脂作用」への対策
アセトンは油分を溶かす力が極めて強いため、触れた瞬間に皮膚表面の皮脂膜を奪い去ります 。
参考)https://axel.as-1.co.jp/contents/ks/cr_list
揮発性ガスの吸引リスク
アセトンは常温でも猛烈な勢いで蒸発し、空気より重い可燃性ガスとなって床付近に溜まります。
廃棄時の注意点
使い終わった除光液や、拭き取った後のティッシュの処理にも注意が必要です。
参考リンク:マツキヨココカラ | 除光液の選び方とプロが教える使用上の注意