酢酸エチル構造式作り方と化学式合成反応

農業現場でも活用される酢酸エチルの構造式や作り方を、化学式から合成反応まで詳しく解説します。エステル化反応の仕組みや実験方法を知ることで、農業資材への理解も深まりますが、あなたは正しい合成手順を把握していますか?

酢酸エチル構造式作り方

酢酸エチルの基本情報
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化学式と構造

分子式C4H8O2、示性式CH3COOCH2CH3で表される有機化合物

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合成方法

酢酸とエタノールの脱水縮合により生成されるエステル

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農業での活用

農薬の補助剤や殺虫剤として農業分野でも利用

酢酸エチル化学式と分子構造

 

酢酸エチルの化学式はC4H8O2で、炭素が4個、水素が8個、酸素が2個から構成されています。示性式ではCH3COOCH2CH3と表記され、酢酸のカルボン酸部分とエタノールのヒドロキシ基が脱水縮合した構造を持ちます。分子量は88.11で、沸点は約77℃、融点は-83℃という物性を示します。

 

参考)酢酸エチルとは?成分や特徴などをわかりやすく解説します

構造式を見ると、酢酸由来のCH3CO-部分とエタノール由来の-OCH2CH3部分がエステル結合(-COO-)でつながっている様子が分かります。この構造により、酢酸エチルは独特の芳香を持ち、樹脂溶解力が高いという特徴を発揮します。組成式は原子の最小比で表すため、C2H4Oとなります。

 

参考)酢酸エチル(C4H8O2)の化学式・分子式・構造式・電子式・…

水にはあまり溶けませんが、有機溶媒には溶けやすく、密度は0.898~0.902g/mL(20℃)です。この物性が農業用途でも活用される理由の一つとなっています。

 

参考)141-78-6・酢酸エチル・Ethyl Acetate・0…

酢酸エチル合成反応の仕組み

酢酸エチルの合成は、酢酸とエタノールを硫酸触媒の存在下で加熱することで進行する脱水縮合反応です。この反応では、酢酸のカルボキシ基(-COOH)とエタノールのヒドロキシ基(-OH)から水分子が取れ、両者が結合してエステルが生成されます。

 

参考)酢酸エチルとは?その性質や反応について解説|富士純薬株式会社

反応機構としては、まず硫酸から生じたプロトン(H+)が酢酸のカルボニル基に配位し、カルボニル炭素の電子密度を低下させます。これによりエタノールの酸素原子がカルボニル炭素を攻撃しやすくなり、付加体が形成されます。その後、脱水を経て酢酸エチルが生成し、最後にプロトンが離れることで反応が完結します。

 

参考)女子高生と学ぶエステルの加水分解と脱水縮合の反応機構

この反応は可逆反応であり、平衡定数は約4程度とされています。そのため、反応を完結させるには生成した酢酸エチルを連続的に蒸留で取り出すか、原料のどちらかを過剰に用いる必要があります。実験室では、酢酸とエタノールを2:1の割合で用い、濃硫酸を触媒として加熱還流する方法が一般的です。

 

参考)http://schnapper.cocolog-nifty.com/osaka/pdf/chem_ethyl_acetate.pdf

農薬の合成においても、エステル化反応は基本的な汎用反応として頻繁に用いられており、酸触媒による直接エステル化は最も経済的な方法とされています。

 

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpestics1975/27/1/27_1_77/_pdf

酢酸エチル作り方の実験手順

実験室での酢酸エチルの作り方は、まず200mLナス型フラスコに酢酸30.0mLとエタノール60.0mLを入れ、攪拌しながら濃硫酸5.0mLを徐々に加えます。濃硫酸は発熱を伴うため、慎重に添加することが重要です。

次に、沸騰石を数粒入れた後、ジムロート冷却器(またはアリーン冷却器)を取り付け、湯浴上で加熱還流します。還流により、蒸発した成分が冷却器で凝縮されて再びフラスコに戻り、反応が効率的に進行します。溶液のにおいが変化したら反応の進行を確認できます。

 

反応後は分液ロートに移し、炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄して未反応の酢酸を中和します。その後、塩化カルシウム溶液で脱水処理を行い、下層を除去します。酢酸エチルは水より軽いため、上層に分離します。

 

最終的に蒸留により純粋な酢酸エチルを得ることができます。生成した酢酸エチルはバナナやパイナップルのような芳香を持ちますが、実験ではセメダイン臭として感じられることもあります。

 

酢酸エチル工業的製法と触媒

工業的な酢酸エチルの製法には複数の方法があります。最も伝統的なのは、硫酸を酸触媒として酢酸とエタノールの混合液を加熱し、脱水縮合させる方法です。この方法では、生成された酢酸エチルを連続的に蒸留で取り出すことで平衡を生成物側に移動させます。

より先進的な製法としては、アセトアルデヒドを塩基触媒によって酢酸エチルに転換するティシチェンコ反応があります。この反応では、2分子のアセトアルデヒドが不均化反応を起こして1分子の酢酸エチルが生成します。

さらに、昭和電工が開発したエチレンと酢酸からの直接合成法も実用化されています。この方法ではシリカ担持ヘテロポリ酸触媒を用い、原料価格に応じてエチレンの代わりにエタノールを使用することも可能です。この技術は第56回日本化学会化学技術賞を受賞しており、環境調和型の製造プロセスとして評価されています。

触媒の選択は反応効率に大きく影響します。酸触媒を用いる場合、プロトンが触媒として働き、反応中に消費されずに繰り返し使用されます。近年では、回収・再利用可能な高活性脱水縮合触媒の開発も進められており、大量生産に適した環境調和型プロセスの実現が目指されています。

 

参考)https://yamadazaidan.jp/wordpress/wp-content/uploads/2021/09/2002_ishihara.pdf

酢酸エチル農業分野での活用法

酢酸エチルは農業分野でも多様な用途に活用されています。特に注目すべきは、農薬の補助剤としての役割です。酢酸エチルは浸透剤として機能し、水溶性の殺虫剤との共存により浸透作用を増強する効果があります。

 

参考)https://patents.google.com/patent/JP2007169189A/ja

昆虫標本の作製においては、防腐効果のある殺虫剤として使用されます。酢酸エチルの高い樹脂溶解力と揮発性が、標本作製に適した特性を提供しています。また、有機リン系農薬の製剤において、酢酸エチルは溶媒や抽出剤として利用されることがあります。

 

参考)有機溶剤とは?わかりやすく解説します

意外な活用例としては、バイオディーゼル燃料の製造における関連技術があります。農業残渣や廃食用油からメチルエステル化を行う際の知見は、酢酸エチルのようなエステル化合物の理解を深めることで得られます。無触媒メチルエステル化法など、環境調和型の技術開発が農業の持続可能性に貢献しています。

 

参考)無触媒メチルエステル化法による廃食用油からのバイオディーゼル…

さらに、アルカリ性不良土壌での作物栽培を可能にする次世代肥料の開発でも、有機合成技術が応用されています。ムギネ酸のエステル化により、砂漠や不良土壌での農業展開が期待されており、エステル化反応の理解が新しい農業技術の基盤となっています。

酢酸エチルの詳しい成分と特徴についての参考資料(三協化学株式会社)
酢酸エチルの性質と反応の詳細解説(富士純薬工業株式会社)
農業分野でのエステル化技術の応用例(農研機構)

 

 


緑十字 有機溶剤標識 酢酸エチル 600×450mm PP 412519